令和6年度 森林及び林業施策 3 林産物の供給及び利用の確保に関する施策
1 原木の安定供給
(1)望ましい安定供給体制
国産材の安定的かつ持続的な供給体制の構築に向け、生産流通の各段階におけるコスト低減と利益向上等を図るため、木材の生産流通の効率化に向けた取組や、路網整備、高性能林業機械の導入、伐採と造林の一貫作業、木材加工流通施設の整備等による林業・木材産業の生産基盤の強化等を支援する。
(2)木材の生産流通の効率化
原木を安定的に供給及び調達できるようにするため、木材加工流通施設等の整備を支援する際には、川上と川中の協定取引や直送等の取組を推進する。
また、森林経営の持続性を担保しつつ行う、川上から川下までが連携した顔の見える木材供給体制の構築を支援する。
2 木材産業の競争力強化
(1)大規模工場等における「国際競争力」の強化
木材製品を低コストで安定的に供給できるようにするため、大規模工場への施設整備の支援を強化するとともに、大径材の加工能力の強化、原木輸送の高効率化等を支援する。また、加工施設の大規模化・高効率化、他品目転換、高付加価値化等の取組を支援するとともに、ストック機能の強化等も含めた国産の製品の供給力強化に向けた取組を支援する。
(2)中小製材工場等における「地場競争力」の強化
中小製材工場等において、その特性を活かして競争力を強化していくため、
1)森林経営の持続性を担保しつつ行う、川上から川下までが連携した顔の見える木材供給体制の構築
2)大径材の価値を最大化するための技術開発・普及啓発
3)地域の状況に応じた木材加工流通施設の整備(リース料の一部助成による導入支援も含む。)
4)木材産業における作業安全対策や、外国人労働力確保
への支援等を実施する。
(3)JAS製品の供給促進
品質・性能の確かなJAS製品等を供給していくため、木材加工流通施設の整備を支援(リース料の一部助成による導入支援も含む。)するとともに、JAS製材に係るサプライチェーンの構築に向けた取組を支援する。また、JAS構造材の利用実証の支援に加え、JAS規格について利用実態に即した区分や基準の合理化に資するため、技術開発の支援において、製品の性能検証等に関する取組を推進する。
(4)国産材比率の低い分野への利用促進
木造住宅における横架材、羽柄材等の国産材比率の低い部材への国産材の利用を促進するため、横架材等の製材や加工、乾燥に係る技術開発の支援に加え、設計手法の普及や設計者の育成の支援を実施する。
花粉症対策として、スギ材の需要拡大に向けて、住宅分野におけるスギJAS構造材等の利用を図るための取組を支援するほか、製品の開発や製造の低コスト化、設計や建築に係る技術開発等を支援する。
3 都市等における木材利用の促進
「建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」(令和3(2021)年10月木材利用促進本部決定)に基づき、民間建築物を含む建築物一般における木材利用を促進する。
また、建築物木材利用促進協定制度の周知や効果的な運用を行う。
(1)公共建築物における木材利用
「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号。以下「都市(まち)の木造化推進法」という。)第10条第2項第4号に規定する各省各庁の⾧が定める「公共建築物における木材の利用の促進のための計画」に基づいた各省各庁の木材利用の取組を進め、国自らが率先した木材利用を推進するとともに、都市(まち)の木造化推進法第12条第1項に規定する市町村方針の策定及び改定を促進する。
また、地域で流通する木材の利用の一層の拡大に向けて、設計上の工夫や効率的な木材調達に取り組むモデル性の高い木造公共建築物等の整備を支援するほか、木造公共建築物を整備した者等に対する利子助成等を実施する。
(2)民間非住宅、土木分野等における木材利用
ツーバイフォー工法等に係る検証や建築関係法令改正への対応を含め、強度又は耐火性に優れた建築用木材等の技術開発・普及を支援するとともに、中層建築物に重点を置いた建築用木材(JAS構造材、木質耐火部材、内装材や木製サッシ)を利用した建築実証に対する支援を実施する。
CLTについては、令和4(2022)年に「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」において改定した「CLTの普及に向けた新ロードマップ」に基づき、モデル的なCLT建築物等の整備の促進、設計者等の設計技術等の向上、低コスト化に向けた製品や技術の開発等に係る取組を支援するとともに、需要動向等を踏まえたCLT製造施設の整備や、CLTパネル等の寸法等の標準化・規格化に向けた取組を促進する。
また、木材を活用した非住宅・中高層建築物について、設計者に向けた講習会の実施やマニュアル等の整備を実施するとともに、中層木造建築物について、国土交通省との連携の下、コスト・施工性等において高い競争力を有し広く展開できる構法と、部材供給等の枠組みの整備・普及を推進する。このほか、設計施工や部材調達の合理化に有効なBIMを活用した設計、施工手法等の標準化に向けた検討を行う。
非住宅建築物の木造化・木質化を推進するため、地域への専門家派遣や相談窓口の設置を支援するとともに、内外装の木質化による利用者の生産性向上、経済面への影響等、木材利用の効果を見える化・普及する取組を支援する。
くわえて、これまで木材利用が低位であった建築物の外構部等における木質化の実証の取組を支援する。
川上から川下までの各界の関係者が一堂に会する「民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会(通称:ウッド・チェンジ協議会)」において、引き続き木材利用拡大に向けた課題やその解決方策等について意見交換を行う。
このほか、農林水産省木材利用推進計画(令和4(2022)年4月改定)に基づき、土木分野等における木材利用について、取組事例の紹介等により普及を行う。
4 生活関連分野等における木材利用の促進
木材製品に対する様々な消費者ニーズを捉え、広葉樹材を活用した家具や建具、道具・おもちゃ、木製食器、間伐材等を活用した布製品など生活関連分野等への木材利用を促進する。
また、木材を活用した優れた製品や取組等の展開に関する活動を支援するとともに、デジタル技術を活用した情報発信等を実施する。
5 木質バイオマスの利用
(1)エネルギー利用
地域の林業・木材産業事業者と発電事業者等が一体となって⾧期安定的な事業を進めるため、関係省庁や都道府県等と連携し、未利用木質資源の利用促進や、発電施設の原料調達の円滑化等に資する取組を進めるとともに、木質燃料製造施設、木質バイオマスボイラー等の整備や、燃料用途としても期待される早生樹の植栽等を行う実証事業を支援する。
また、森林資源をエネルギーとして地域内で持続的に活用するため、行政、事業者、住民等の地域の関係者の連携の下、エネルギー変換効率の高い熱利用・熱電併給に取り組む「地域内エコシステム」の構築・普及に向け、関係者による協議会の運営や小規模な技術開発に加え、先行事例の情報提供や多様な関係者の交流促進、計画作成支援等のためのプラットフォーム(リビングラボ)の構築等を支援する。
(2)新たなマテリアル利用
スギを原料とする改質リグニンを始めとする木質系新素材の製造技術やそれを利用した高付加価値製品の開発・実証を支援する。
6 木材等の輸出促進
「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(令和5(2023)年12月改訂)に基づき、製材・合板等付加価値の高い木材製品の輸出を、中国、米国、韓国、台湾等に拡大していくため、輸出産地の育成支援、日本産木材の認知度向上、日本産木材製品のブランド化の推進、ターゲットを明確にした販売促進等に取り組む。
具体的には、
1)地域での合意形成の促進やセミナーの開催等を通じた木材輸出産地の育成
2)木造建築の技術者育成に資する、海外の設計者や国内の留学生等を対象とした木造技術講習会の開催
3)訪日外国人に向けた日本産木材製品のプロモーション活動
4)輸出先国・地域のニーズや規格・基準に対応した製品・技術開発や性能検証
等の取組を支援する。
このほか、農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律(令和元年法律第57号)に基づく認定品目団体を通じたオールジャパンでの輸出拡大の取組を支援する。
7 消費者等の理解の醸成
(1)「木づかい運動」の促進
10月8日が「木材利用促進の日」、同月が「木材利用促進月間」であることを踏まえ、官民一体による「木づかい運動」の促進を通じ、カーボンニュートラルの実現に向けた木材利用の重要性、建築物等の木造化・木質化の意義や木の良さ等について国民各層の理解や認知の定着等に取り組む。
具体的には、
1)建築物等におけるスギ材等の国産材利用の機運醸成
2)建築物や木製品における国産材利用の価値向上促進
3)事業者等における身近な木製品の導入促進
4)国産材利用の意義に関する情報発信・木育(もくいく)等学びの機会充実化
等の取組への支援等を実施する。
(2)違法伐採対策の推進
クリーンウッド法に基づき、合法性確認に取り組む木材関連事業者を対象とした研修の実施、消費者への普及啓発に対する支援を実施し、合法性が確認された木材及び木材製品(以下「合法伐採木材等」という。)の流通及び利用を促進する。
また、流通木材の合法性確認情報の伝達を確実かつ効率的に行うため、木材流通における情報伝達等を行うシステムを整備するとともに、事業者の合法性確認を指導かつ支援する人材の養成、第三者的な立場からの評価や助言を行う専門委員会の設置及び違法伐採関連情報等の提供により合法性確認の実効性の向上を図る。
さらに、令和5(2023)年5月に公布された改正クリーンウッド法の令和7(2025)年4月1日の施行に向け、新制度の周知を図る。
8 林産物の輸入に関する措置
国際的な枠組みの中で、持続可能な森林経営、違法伐採対策、輸出入に関する規制等の情報収集・交換、分析の充実等の連携を図るとともに、CPTPP協定や日EU・EPA等の締結・発効された協定に基づく措置の適切な運用を図る。また、経済連携協定等の交渉に当たっては、各国における持続可能な開発と適正な貿易の確保及び国内の林業・木材産業への影響に配慮しつつ対処する。
違法伐採対策については、二国間、地域間及び多国間協力を通じて、違法伐採及びこれに関連する貿易に関する対話、開発途上国における人材の育成、合法伐採木材等の普及等を推進する。
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林政部企画課
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