第1部 第5章 第1節 復興に向けた森林・林業・木材産業の取組(2)
(2)森林等の被害と復旧・復興
(ア)山地災害等と復旧状況
東日本大震災により、青森県から高知県までの15県において、山腹崩壊や地すべり等の林地荒廃(458か所)、津波による防潮堤(*1)の被災等の治山施設の被害(275か所)、法(のり)面・路肩の崩壊等の林道施設等の被害(2,632か所)、火災による焼損等の森林被害(約1,065ha)等が発生した(資料5-1)。
治山施設や林道施設等の被害箇所については、国が採択した山林施設災害復旧等事業591か所について、国、県、市町村が復旧工事を進め、令和3(2021)年度までに事業が完了した。

(*1)高潮や津波等により海水が陸上に浸入することを防止する目的で陸岸に設置される堤防。治山事業では、海岸防災林の保護のため、治山施設として防潮堤等を整備している。
(イ)海岸防災林の復旧・再生
(復旧に向けた方針)
被災した海岸防災林の復旧・再生に当たっては、「今後における海岸防災林の再生について(*2)」の方針を踏まえつつ、被災状況や地域の実情に応じて取り組むこととし、令和6(2024)年3月末時点で、要復旧延⾧約164km(*3)のうち、約163kmにおいて植栽等の復旧事業(*4)が完了した。これについては、津波に対する被害軽減、飛砂害・風害の防備、潮害の防備等の機能を発揮させるために、引き続き、健全な生育を促す保育作業を継続的に実施する必要がある。また、福島県における植栽未完了部分については、関係機関と調整しつつ、早期完了に向けて事業を継続することとしている(*5)。
(*2)「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」(平成24(2012)年2月)
(*3)「東日本大震災からの復興の状況に関する報告」(令和5(2023)年12月15日国会報告)
(*4)地盤高が低く地下水位が高い箇所では盛土を行うなど、生育基盤を造成した上で植栽を実施。
(*5)復興庁「復興施策に関する事業計画及び工程表(福島12市町村を除く。)(令和2年4月版)」(令和2(2020)年8月7日)、復興庁「福島12市町村における公共インフラ復旧の工程表」(令和5(2023)年9月29日)
(植栽等の実施における民間団体等との連携)

海岸防災林の復旧・再生については、地域住民、NPO、企業等の参加や協力を得ながら、植栽や保育が進められてきた(事例5-1)。
国有林では、海岸防災林の復旧事業地のうち、生育基盤の造成が完了した箇所の一部において、森林管理署との協定締結による国民参加の森林(もり)づくり制度を活用し、延べ98の民間団体が平成24(2012)年度から令和元(2019)年度末までに、宮城県仙台市内、名取(なとり)市内、東松島(ひがしまつしま)市内及び福島県相馬(そうま)市内の国有林33haにおいて植栽を行っており、植栽後も協定に基づき、下刈りなどの保育に取り組んでいる。
事例5-1 企業による海岸防災林の植樹・保育活動
福島県では、平成26(2014)年度から、「ふくしまの森と海岸林再生活動」として、NPO、企業等と連携した取組を進めている。同取組においてNPO、企業等は、福島県等の公有林の土地所有者と協定を締結し、生育基盤の造成が完了した部分において植樹・保育活動を行っている。
送電線の測量設計から建設・管理までの工事を専門として扱う株式会社メイワ(福島県南相馬(みなみそうま)市)は、同取組に参加し、令和2(2020)年に南相馬市において400本のクロマツの植樹を行い、令和3(2021)年からは春と秋に保育活動として下刈りを行っている。植樹場所を社内公募により「メイワ未来の森」と名付けるとともに、同社における業務内容を活かして植樹のための測量から下刈りまでを全て社員で行うなど、多くの社員が活動に参加している。
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