第1部 第4章 第2節 国有林野事業の具体的取組(3)
(3)「国民の森林(もり)」としての管理経営等
(ア)「国民の森林(もり)」としての管理経営
(国有林野事業への理解と支援に向けた多様な情報受発信)
国有林野事業では、国有林野を「国民の森林(もり)」として位置付け、国民に対する情報の公開、フィールドの提供、森林・林業に関する普及啓発等により、国民に開かれた管理経営に努めている。
さらに、国民の意見を聴取するため、一般公募により「国有林モニター」を選定し、「国有林モニター会議」や現地見学会、アンケート調査等を行っている。国有林モニターには、令和5(2023)年4月現在330名が登録している。
このほか、ホームページの内容の充実に努めるとともに、森林管理局の新たな取組や年間の業務予定等を公表するなど、国民への情報発信に積極的に取り組んでいる。
(森林環境教育の推進)
国有林野事業では、森林環境教育の場としての国有林野の利用を進めるため、森林環境教育のプログラムの整備、フィールドの提供等に取り組んでいる。
この一環として、学校等と森林管理署等が協定を結び、国有林野の豊かな森林環境を子供たちに提供する「遊々(ゆうゆう)の森」を設定している。令和4(2022)年度末現在146か所で協定が締結され、森林教室や自然観察、体験林業等の様々な活動が行われている。
(NPO、地域、企業等との連携)
国有林野事業では、NPO、地域、企業等と連携して国民参加の森林(もり)づくりを進めている。
森林(もり)づくりを行うことを希望するNPO等に森林(もり)づくりのフィールドを提供する「ふれあいの森」や、地域住民や民間団体等と合意形成を図りながら、協働・連携して地域や森林の特色を活かした森林整備・保全活動を実施する「モデルプロジェクトの森」を設定しており、令和4(2022)年度末現在、それぞれ122か所、14か所となっている(事例4-5)。
また、企業の社会的責任(CSR)活動等を目的とした森林(もり)づくり活動へのフィールドを提供する「社会貢献の森」、森林保全を目的とした森林パトロールや美化活動等のフィールドを提供する「多様な活動の森」を設定しており、令和4(2022)年度末現在、それぞれ155か所、84か所となっている。さらに、分収林制度を活用し、企業等が契約者となって社会貢献、社員教育及び顧客とのふれあいの場として森林(もり)づくりを行う「法人の森林(もり)」も設定しており、令和4(2022)年度末現在463か所となっている。
このほか、歴史的に重要な木造建造物や各地の祭礼行事、伝統工芸等の次代に引き継ぐべき木の文化を守るため、「木の文化を支える森」を設定しており、令和4(2022)年度末現在24か所となっている。
事例4-5 「ふれあいの森」における植樹活動
青森県生活協同組合連合会は、平成2(1990)年に開始した牛乳パックリサイクル活動の収益金を基に、社会貢献活動の一環として平成13(2001)年に青森森林管理署と協定を締結し、青森市内の内真部山(うちまんぺやま)国有林に設定した「生協ふれあいの森」で植樹活動を行っている。
「生協ふれあいの森」は青森ヒバの美林を擁する眺望山の山麓にあり、植樹祭では、県内の生協組合員親子などが多数参加し、これまでに約3,900本のヒバを植えてきた。植樹祭後には、署職員の案内による森林内の散策やコースターなどの小物づくりを実施している。同連合会は「生協ふれあいの森」における様々な体験活動を通じて、森林と人々の生活との関係に対する理解が深まることを期待している。
(イ)地域振興への寄与
(国有林野の貸付け・売払い)
国有林野事業では、農林業を始めとする地域産業の振興、住民の福祉の向上等に貢献するため、地方公共団体や地元住民等に対して、国有林野の貸付けを行っている。令和4(2022)年度末現在の貸付面積は約7.2万haで、道路、電気・通信、ダム等の公用、公共用又は公益事業用の施設用地が49.5%、農地や採草放牧地が13.9%を占めている。
このうち、公益事業用の施設用地については、FIT制度(*9)に基づき経済産業省から発電事業の認定を受けた事業者も貸付対象としており、令和4(2022)年度末現在で約310haの貸付けを行っている。
このほか、令和4(2022)年度には、ダム用地や道路用地等として、計74haの国有林野の売払い等を行った。
(*9)FIT制度については、第3章第2節(3)142ページを参照。
(公衆の保健のための活用)
国有林野事業では、優れた自然景観を有し、森林浴、自然観察、野外スポーツ等に適した国有林野について、令和5(2023)年4月現在576か所(約24万ha)を「自然休養林」や「自然観察教育林」等の「レクリエーションの森」に設定している(資料4-10)。令和4(2022)年度には、「レクリエーションの森」において、延べ約1億人の利用があった。
「レクリエーションの森」では、地元の地方公共団体を核とする「「レクリエーションの森」管理運営協議会」を始めとした地域の関係者と森林管理署等が連携しながら、利用者のニーズに対応した管理運営を行っている。一部の地域では、利用者からの協力金による収入のほか、「サポーター制度」に基づく企業等からの資金も活用している。令和4(2022)年度末現在11か所の「レクリエーションの森」において、延べ18の企業等がサポーターとなっている。

(観光資源としての活用の推進)

「レクリエーションの森」のうち、特に観光資源としての潜在的魅力がある93か所を「日本美(にっぽんうつく)しの森 お薦め国有林」として選定しており(*10)(資料4-11)、外国人観光客も含めた利用者の増加を図るため、標識類等の多言語化、歩道等の施設修繕などの重点的な環境整備及びホームページ等による情報発信の強化に取り組んでいる。令和6(2024)年3月に新たに1か所の「日本美(にっぽんうつく)しの森 お薦め国有林」の魅力を伝える動画を農林水産省公式YouTubeチャンネル及びホームページ等で公開したほか、SNS等に広告を掲載するなど、国内外の幅広い層への情報発信に取り組んだ。さらに、環境省との連携を強化し、優れた自然の保護と利用の両立を図りながら、「レクリエーションの森」と国立公園が重複している箇所における更なる利便性の向上に取り組んでいる。

(*10)「日本美しの森 お薦め国有林」の選定については、「平成29年度森林及び林業の動向」トピックス4(8-9ページ)を参照。
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