第1部 第3章 第3節 木材産業の動向(4)
(4)木材産業の各部門の動向
(ア)製材業
(製材業の概要)
我が国の製材工場数は、令和4(2022)年末現在で3,804工場であり、前年より144工場減少した。近年は、出力階層別にみると、75.0kW未満の階層で減少し、それ以外の階層では増加している(*72)。
令和4(2022)年の出力階層別の原木消費量をみると、出力規模300.0kW以上の大規模工場の消費量の割合が77.6% 、うち出力規模1,000.0kW以上の工場の消費量の割合は47.8%となっており、製材品の生産は大規模工場に集中する傾向がみられる(資料3-33)。
(*72)農林水産省「木材需給報告書」
(製材品の動向)
国内の製材工場における製材品出荷量は、新設住宅着工戸数の減少等を受けて、令和4(2022)年は、前年比5.4%減の860万m3であった。令和4(2022)年の製材品出荷量の用途別内訳をみると、建築用材(板類、ひき割類、ひき角類)が696万m3(80.9%)、土木建設用材が38万m3(4.4%)、木箱仕組板・こん包用材が103万m3(12.0%)、家具建具用材が5万m3(0.6%)、その他用材が18万m3(2.1%)となっている。建築用材に占める人工乾燥材の割合は58.3%となっている(資料3-34)。
また、国内の製材工場における製材用原木入荷量は令和4(2022)年には1,636万m3となっており、このうち国産材は前年比0.6%増の1,294万m3で、全体に占める国産材の割合は79.1%であった。輸入材は前年比9.6%減の343万m3であり、このうち米材(べいざい)が283万m3、ニュージーランド材が28万m3、北洋材が17万m3となっている(資料3-35)。
これに対し、製材品の輸入量は前年比4.1%増の464万m3であり(*73)、製材品の供給量(*74)に占める輸入製材品の割合は35.0%となっている。
(*73)「令和4年分貿易統計」による製材品の輸入量から「令和4年木材需給報告書」による半製品入荷量を控除した数量。
(*74)製材品出荷量860万m3と製材品輸入量464万m3の合計。
(イ)集成材製造業
(集成材製造業の概要)
集成材は、一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を複数、繊維方向が平行になるよう集成接着した木材製品である。狂い、反り、割れ等が起こりにくく強度も安定していることから、プレカット材の普及を背景に住宅の柱、梁(はり)及び土台に利用が広がっている。我が国における集成材工場数は、令和4(2022)年時点で140工場となっている(*75)。
(*75)農林水産省「令和4年木材需給報告書」
(集成材の動向)
国内での集成材の生産量は、新設住宅着工戸数の減少等を受けて、令和4(2022)年は前年比16.3%減の166万m3となった。令和4(2022)年の集成材生産量(*76)を用途別にみると、構造用が158万m3、造作用等その他が8万m3となっており、構造用が大部分を占めている(*77)。また、集成材生産量のうち国産材を原料としたものの割合は、⾧期的には増加傾向にあり、令和4(2022)年は47.1%(78万m3)となっている(資料3-36)。
また、集成材の製品輸入は、令和4(2022)年には104万m3となっており、集成材の供給量に占める割合は38.5%である。そのうち構造用集成材の輸入量は91万m3となっている。構造用集成材の主な輸入先国及び輸入量は、フィンランド(39万m3)、ルーマニア(15万m3)、オーストリア(12万m3)等である(*78)。
(*76)農林水産省「令和4年木材需給報告書」
(*77)構造用とは、建築物の耐力部材用途のこと。造作用とは、建築物の内装用途のこと。
(*78)財務省「令和4年分貿易統計」
(ウ)合板製造業
(合板製造業の概要)
合板は、木材を薄く剝いた単板を3枚以上、繊維方向が直角になるよう交互に積層接着した板である。狂い、反り、割れ等が起こりにくく強度も安定しており、また、製材品では製造が困難な大きな面材が生産できることから、住宅の壁・床・屋根の下地材やフロア台板、コンクリート型枠(かたわく)等、多様な用途に利用される。
我が国の合単板工場数は、令和4(2022)年末時点で、前年より3工場減の155工場であり、単板のみを生産する工場が20工場、普通合板(*79)のみが30工場、特殊合板(*80)のみが102工場、普通合板と特殊合板の両方を生産する工場が3工場となっている(*81)。また、LVL(*82)(単板積層材)工場は3工場減の12工場となっている(*83)。
(*79)表面加工を施さない合板。用途は、コンクリート型枠用、建築(構造)用、足場板用・パレット用、難燃・防炎用等。
(*80)普通合板の表面に美観、強化を目的とする薄板の貼り付け、オーバーレイ、プリント、塗装等の加工を施した合板。
(*81)農林水産省「令和4年木材需給報告書」
(*82)「Laminated Veneer Lumber」の略。単板を主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着したもの。本報告書では合板の一種として整理。
(*83)農林水産省「令和4年木材需給報告書」
(合板の動向)
普通合板の生産量は、令和4(2022)年は前年比3.6%減の306万m3であった。このうち、針葉樹合板は全体の95.4%を占める292万m3となっている。また、厚さ12mm以上の普通合板の生産量は全体の79.2%を占める242万m3となっている。また、令和4(2022)年におけるLVLの生産量は25万m3となっている(*84)。
用途別にみると、普通合板のうち、構造用合板が266万m3、コンクリート型枠用合板が3万m3等となっており、構造用合板が大部分を占めている(*85)。コンクリート型枠用合板では、輸入製品が大きなシェアを占めており、この分野における国産材利用の拡大が課題となっている。一方、海外における丸太輸出規制等の影響により、合板の原料をスギ、カラマツ、ヒノキを中心とする国産針葉樹に転換する動きがみられる。
令和4(2022)年における合板製造業への原木供給量は前年比5.1%増の536万m3であったが(*86)、このうち、国産材は前年比5.4%増の491万m3、輸入材は前年比2.5%増の44万m3となっており、令和4(2022)年には国内の合板生産における国産材割合は91.7%に上昇している。国産材のうち、スギは58.9%、カラマツは15.1%、ヒノキは12.5%、アカマツ・クロマツは4.6%、エゾマツ・トドマツは7.6%で、輸入材のうち、米材(べいざい)は88.9%、北洋材は1.8%となっている(*87)。
一方、輸入製品は前年比14.2%減の446万m3となっている。輸入製品を含む合板用材需要量全体に占める国産材割合は⾧期的には増加傾向にあり、令和4(2022)年は50.0%であった(資料3-37)。
(*84)農林水産省「令和4年木材需給報告書」
(*85)農林水産省「令和4年木材需給報告書」。コンクリート型枠用合板の数値は、月別調査でのみ調査実施しており、12か月分の合計となる。
(*86)LVL分を含む。丸太換算値。
(*87)農林水産省「令和4年木材需給報告書」。LVL分を含む。
(エ)木材チップ製造業
(木材チップ製造業の概要)
木材チップのうち、原木や工場残材等を原料とするものは、主に製紙用や燃料用に供される。一方、廃材等を原料とするものは、主にボイラー等の燃料及び木質ボードの原料に用いられる。我が国の木材チップ工場数は、令和4(2022)年末時点で、前年より28工場増の1,110工場となっている。このうち、製材又は合単板工場等との兼営が790工場、木材チップ専門工場が320工場となっている(*88)。
(*88)農林水産省「令和4年木材需給報告書」
(木材チップの動向)
木材チップ工場における木材チップの生産量(*89)(燃料用チップを除く(*90)。)は、令和4(2022)年は前年比13.0%減の528万トンであった。原材料別の生産量は、原木は前年比10.6%減の238万トン(生産量全体の45.1%)、工場残材は前年比17.8%減の216万トン(同40.8%)、林地残材は前年比38.7%減の5万トン(同0.9%)、解体材・廃材は前年比1.8%減の70万トン(同13.2%)となっている。
原材料のうち、木材チップ用原木の入荷量(燃料用チップを除く。)は、令和4(2022)年は前年比2.4%減の424万m3であり、そのほとんどが国産材となっている。国産材のうち、針葉樹は263万m3(62.2%)、広葉樹は160万m3(37.8%)となっている。国産材の木材チップ用原木は、近年では針葉樹が増加し、広葉樹を上回っている(資料3-38)。
一方、木材チップの輸入量(*91)(燃料用チップを含む。)は、令和4(2022)年には前年比2.9%増の1,131万トンであり、木材チップの供給量(*92)に占める輸入割合は68.2%であった。
(*89)農林水産省「令和4年木材需給報告書」
(*90)燃料用チップについては、第2節(3)141ページを参照。
(*91)財務省「令和4年分貿易統計」
(*92)木材チップ生産量528万トンと木材チップ輸入量1,131万トンの合計。
(オ)パーティクルボード製造業・繊維板製造業
(パーティクルボード製造業・繊維板製造業の概要)
パーティクルボード(削片板)、繊維板(ファイバーボード)等の木質ボードは、建築解体材を主な原料としているが、このほか工場残材(*93)、間伐材、林地残材等を原料としている。
パーティクルボードは、細かく切削した木材に接着剤を添加して熱圧した板製品である。遮音性、断熱性及び加工性に優れることから、家具や建築用に利用されている。
繊維板は、原料を繊維化してから成型した板状製品である。密度によって種類があり、高密度繊維板(ハードボード)は建築、こん包、自動車内装等に、中密度繊維板(MDF(*94))は建築、家具・木工、キッチン等に、低密度繊維板(インシュレーションボード)は畳床(たたみどこ)等に利用される。
(*93)製材業や合板製造業等において製品を製造した後に発生する端材等。
(*94)「Medium Density Fiberboard」の略。
(パーティクルボード・繊維板の動向)
令和4(2022)年におけるパーティクルボードの生産量(*95)は前年比1.9%減の98万m3、輸入量(*96)は前年比34.6%増の35万m3となっている。
令和4(2022)年における繊維板の生産量(*97)は、前年比0.4%減の72万m3となっている。
(*95)経済産業省「2022年生産動態統計年報」
(*96)財務省「令和4年分貿易統計」
(*97)経済産業省「2022年生産動態統計年報」における「繊維板換算値合計」。
(カ)プレカット製造業
(プレカット材の概要)
プレカット材は、木造軸組住宅等を現場で建築しやすいよう、柱や梁(はり)、床材や壁材等の継手や仕口といった部材同士の接合部分等をあらかじめ一定の形状に加工したものである。プレカット工場で、部材となる製材品、集成材、合板等を機械加工して生産する。
(プレカット材の動向)
プレカット加工率は上昇しており、令和4(2022)年には、木造軸組工法におけるプレカット加工率は94%に達している(*98)。
プレカット工場における材料入荷量は、平成30(2018)年は平成28(2016)年比21.7%減の768万m3で、その内訳は、国産材が285万m3(37.1%)、輸入材が483万m3(62.9%)となっている。材料入荷量のうち、人工乾燥材は324万m3(42.2%)、集成材は約343万m3(44.7%)となっている(*99)。
(*98)一般社団法人全国木造住宅機械プレカット協会「プレカットニュース Vol.111」(令和6(2024)年1月)
(*99)農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」
(キ)木材流通業(*100)
(木材流通業の概要)
我が国の木材流通事業者は、地域内または地域をまたいで木材産業の川上・川中・川下をつなぎ、原木や木材製品への多種多様な需要に応じている。具体的には、木材市売市場や木材販売業者等がある。
木材市売市場は、原木市売市場(*101)と製品市売市場に区分できる。原木市売市場は、主に原木の産地に近いところに立地し、素材生産業者等から原木を集荷し、製材工場等が必要とする規格(樹種、径級、品質、⾧さ等)や量に仕分けた上で、土場に椪積(はいづみ)して、セリ等により販売する。製品市売市場は、主に木材製品の消費地に近いところに立地し、自ら又は市売問屋が実需者のニーズに応じた木材製品を集荷し、セリ等により販売する。平成30(2018)年における木材市売市場の数は403事業所となっている。
木材販売業者は、原木又は木材製品を仕入れた上で、これを必要とする者に対して販売を行うとともに、実需者に対して原木又は木材製品に係る様々な情報等を直接提供する立場にある。原木を扱う木材販売業者には商社等があり、素材生産者等から原木を買い付け、製材工場等の実需者に販売する。また、木材製品を取り扱う木材販売業者には木材問屋や材木店・建材店等があり、製材工場等から直接、又は商社や市場等の様々なルートから製品を仕入れ、最終的には工務店やプレカット工場等の実需者に販売する。平成30(2018)における木材販売業者の数は8,552事業所となっている。
(*100)木材流通業の数値は、農林水産省「平成30年木材流通構造調査報告書」による。そのうち、木材市売市場と木材販売業者の数は、農林水産省「平成30年木材流通構造調査」(組替集計)による。
(*101)森林組合が運営する場合は「共販所」という。
(木材流通業の動向)
平成30(2018)年における、原木市売市場の原木取扱量(*102)は1,118万m3、製品市売市場の製材品取扱量(*103)は222万m3、木材販売業者の原木取扱量(*104)は1,648万m3、製材品取扱量(*105)は1,720万m3となっている(*106)。
同年に国内で生産された原木のうち、素材生産者から木材市売市場に出荷したものは40.7%、素材生産者から木材販売事業者等へ販売されたものは19.1%、伐採現場等から製材工場等へ直送されたものは40.2%となった。
(*102)木材市売市場における素材の入荷先別入荷量の計。
(*103)木材市売市場における製材品の販売先別出荷量の計。
(*104)木材販売業者における素材の入荷先別入荷量の計。
(*105)木材販売業者における製材品の販売先別出荷量の計。
(*106)原木取扱量(入荷量)及び製材品取扱量(出荷量)のいずれも、木材販売業者間の取引も含めて集計された延べ数量である。

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