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林野庁

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第1部 第1章 第3節 森林保全の動向(3)

(3)森林における生物多様性の保全

(生物多様性保全の取組を強化)

我が国の森林は、人工林から原生的な天然林まで多様な森林から構成されており、多くの野生生物種が生育・生息する場となっている。

政府は、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(*46)」を踏まえて、令和5(2023)年3月に、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国の基本的な計画として「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定し、その中において、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め反転させる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」を掲げている。また、自然環境を社会・経済・暮らし・文化の基盤として再認識し、自然の恵みを活かして多様な社会課題の解決につなげる「自然を活用した解決策(NbS)」を進める重要性が明記され、生態系を基盤として災害リスクを低減する「Eco-DRR(生態系を活用した防災・減災)」や、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする「グリーンインフラ」を推進することとしている。

農林水産省では、「みどりの食料システム戦略」や「昆明・モントリオール生物多様性枠組」等を踏まえ、令和5(2023)年3月に「農林水産省生物多様性戦略」を改定し、生物多様性保全を重視した農林水産業を推進している。

林野庁においても、針広混交林化、⾧伐期化等による多様な森林づくりを推進するとともに、国有林野においては「保護林」及びこれらを中心としてネットワークを形成する「緑の回廊」を設定して森林の生物多様性保全に取り組んでいる(*47)。

治山事業においては、例えば津波・風害の防備のため海岸防災林等を整備強化するなどしており、これらは森林の機能の維持・向上という生態系の活用により災害リスクを低減する取組としてEco-DRRやグリーンインフラの考え方に符合するものである。また、現地の実情に応じて、在来種による緑化や生物の移動にも配慮した治山ダムの設置・改良などにより生物多様性保全に努めている。

さらに、生物多様性保全に対する民間企業の関心が高まってきていることを受け、令和6(2024)年3月に、森林管理を担う林業事業体等を対象に、「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」を取りまとめた。


(*46)昆明・モントリオール生物多様性枠組については、第4節(3)78ページを参照。

(*47)国有林野の取組については、第4章第2節(1)170ページを参照。



(我が国の森林を世界遺産等に登録)

世界遺産について、我が国では、平成5(1993)年に「白神山地(しらかみさんち)」(青森県及び秋田県)と「屋久島(やくしま)」(鹿児島県)、平成17(2005)年に「知床(しれとこ)」(北海道)、平成23(2011)年に「小笠原諸島(おがさわらしょとう)」(東京都)、令和3(2021)年に「奄美大島(あまみおおしま)、徳之島(とくのしま)、沖縄島北部(おきなわじまほくぶ)及び西表島(いりおもてじま)」(鹿児島県及び沖縄県)が世界自然遺産として登録されており、これらの陸域の8割以上が国有林野となっている。このほか、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」(山梨県及び静岡県)など、いくつかの世界文化遺産にも国有林野が含まれている。

世界遺産のほか、ユネスコでは「ユネスコエコパーク(*48)」の登録を行っており、我が国では令和5(2023)年6月現在、みなかみユネスコエコパーク(群馬県及び新潟県)等10件が登録されている。

林野庁では、これらの世界遺産やユネスコエコパークが所在する国有林野の適切な保護・管理等を行っている(*49)。


(*48)「生物圏保存地域(Biosphere Reserve)」の国内呼称。生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)を目的として、「保全機能(生物多様性の保全)」、「経済と社会の発展」、「学術的研究支援」の3つの機能を有する地域を登録。

(*49)国有林野での取組については、第4章第2節(1)170-171ページを参照。



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