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林野庁

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第3章 木材需給・利用と木材産業

1.木材需給の動向

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(1)世界の木材需給の動向

➢ 世界の産業用丸太消費量は、近年おおよそ20億m3で推移し、2021年は前年比2%増の約20億1,786万m3

➢ 世界の産業用丸太輸入量は前年比3%増の約1億4,251万m3。最大の輸入国は中国で、世界の輸入量に占める割合は近年上昇し、2021年は44%


(2)我が国の木材需給の動向

➢ 木材需要量は、近年増加傾向にあったが、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により下落。2021年は前年比10.3%増の約8,213万m3となり新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の水準に回復

➢ 国産材供給量は、我が国の森林資源の充実等により2002年を底に増加傾向で、2021年は前年比8.3%増の約3,372万m3

➢ 木材輸入量は、2021年は燃料材等の輸入量の増加により、前年比11.8%増の約4,841万m3

➢ 2022年3月、ロシアはウクライナ侵略に関連して我が国を含む非友好国に対してチップ、丸太、単板の輸出を禁止。同年4月に我が国も輸入を禁止

➢ 木材自給率は、2021年は前年比0.7ポイント低下の41.1%と4割を維持。建築用材等は前年比0.8ポイント増の48.0%


(3)木材価格の動向

➢ 2022年の木材価格は、製品・素材(丸太)ともに、2021年の木材不足・価格高騰より前と比べて高い水準で推移


(4)違法伐採対策

➢ 2017年に施行された合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(通称:「クリーンウッド法」)により、合法性の確認等の措置を適切かつ確実に行う木材関連事業者は、登録木材関連事業者として登録。登録件数は609件(2023年3月末時点)。第一種登録木材関連事業者によって合法性が確認された木材は約3,600万m3で、2021年木材需要量の約4割

➢ 川上・水際の木材関連事業者による合法性確認等の義務付け等を内容とするクリーンウッド法改正案を2023年2月に国会に提出


2.木材利用の動向

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(1)木材利用の意義

循環利用のイメージ

➢ 森林から搬出された木材を建築物等に利用することにより、森林が吸収した炭素を長期的に貯蔵することが可能。また、木材はカーボンニュートラルな燃料として化石燃料を代替することが可能。製造・加工時のエネルギー消費が他資材よりも比較的少なく建築に係る排出削減に貢献

➢ こうした意義は、脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:「都市の木造化推進法」)に規定されるとともに、「地球温暖化対策計画」(2021年10月閣議決定)にも反映

➢ 木材には調湿作用や高い断熱性があるほか、生理・心理面に好影響


(2)建築分野における木材利用

建築分野における木材利用の概況

➢ 着工建築物において、床面積ベースでみると、低層住宅(1~3階建て)の木造率は80%を超えるが、低層非住宅建築物及び中高層建築物(4階建て以上)の木造率は低位。住宅(木造軸組工法)における国産材の使用割合は約5割

➢ 建築用木材の需要の大部分を占める低層住宅分野において、国産材の利用率を増やしていくことが重要。また、人口減少等により新設住宅着工戸数が長期的には減少していく可能性を踏まえると、非住宅・中高層建築物での木造化・木質化を進め、新たな木材需要を創出することが重要

住宅分野における木材利用の動向

➢ 大手住宅メーカーでは、横架材は輸入材が高いシェアを持つ状況。一方、柱材は国産のスギ集成柱の利用も増加

➢ 工務店では製材の使用率が高く、部材によらず国産材の使用率が高位

非住宅・中高層建築物における木材利用の動向

➢ 非住宅・中高層建築物については、CLTや木質耐火部材等に係る技術開発の進展、建築基準の合理化など、技術的・制度的に利用環境の整備が一定程度進み、木材を構造部材等に使用した10階建てを超える先導的な高層建築が進展

➢ 更に木材利用を進めるため、設計者等の育成、部材の標準化に加え建築基準の合理化等を推進するとともに、ウッド・チェンジ協議会での検討、2021年10月に施行された都市の木造化推進法による建築物木材利用促進協定の締結(国協定10件、地方協定65件)など、都市の木造化・木質化に向けた官民挙げた取組を実施

➢ 国の建築物の木造化・木質化に関する支援事業・制度等に関する一元的な案内窓口「建築物の木造化・木質化支援事業コンシェルジュ」を木材利用促進本部事務局に設置

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公共建築物等における木材利用

➢ 2021年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は13.2%、うち低層は29.4%

➢ 都道府県ごとでは、低層の公共建築物の木造率について4割を超える県も存在

➢ 大規模災害後に木造応急仮設住宅を速やかに供給するため、全国で災害協定の締結が進展


(3)木質バイオマスの利用

木質バイオマスの新たなマテリアル利用

➢ 「GX実現に向けた基本方針」において、森林由来の素材を活かしたイノベーションの推進等に向けた投資の促進を明記

➢ 軽量ながら高強度で、保水性に優れる素材であるCNF(セルロースナノファイバー)は、製造設備が各地で稼働し、食品、塗料等に使用

➢ リグニンは、高付加価値材料への活用が期待されており、改質リグニンの実用化に向けた製品開発を推進


木質バイオマスのエネルギー利用

➢ エネルギー利用される木質バイオマス量は年々増加し、2021年における燃料材の国内消費量は前年比15.1%増の約1,474万m3、うち国内生産量は同4.7%増の約934万m3

➢ 再生可能エネルギーの固定価格買取制度により木質バイオマス発電施設が各地で稼働

➢ 全木集材による枝条等の活用や林地残材の効率的な収集・運搬システムの構築等を支援

➢ また、地域の森林資源を熱利用・熱電併給により地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」の構築を推進


(4)消費者等に対する木材利用の普及

➢ 一般消費者を対象に木材利用の意義を普及啓発する「木づかい運動」を展開。都市(まち)の木造化推進法で、10月が「木材利用促進月間」として位置付け

➢ 「ウッド・チェンジロゴマーク」や「木づかいサイクルマーク」を企業等に使用してもらうことにより消費者等の認知度を向上させ行動を促進

➢ 「ウッドデザイン賞」では、木の良さや価値を再発見させる製品や取組等を評価・表彰。2022年度は新たに経済産業大臣賞、国土交通大臣賞及び環境大臣賞を創設

➢ 子供から大人までが木の良さや利用の意義を学ぶ「木育(もくいく)」を推進


(5)木材輸出の取組

➢ 木材輸出額は増加傾向であり、2022年は前年比11.0%増の527億円

➢ 品目別にみると丸太が約4割と最も多く、その8割が中国へ輸出され、こん包材、土木用等に利用。また、製材は、米国向けのスギフェンス材の輸出が増加

➢ 輸出に取り組む産地の育成、相手国の建築士を対象にした木造技術講習会の開催等の支援のほか、「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」に基づく認定農林水産物・食品輸出促進団体である日本木材輸出振興協会を中心として、販路開拓等を促進


3.木材産業の動向

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(1)木材産業の概況

➢ 木材・木製品製造業の付加価値額は、近年増加傾向で推移し、2020年は前年比1.7%増の約8,884億円


(2)木材産業の競争力強化

製材工場の規模別工場数と国産原木消費量

➢ 国際競争力の強化に向け、品質・性能の確かな製品を低コストで安定供給していくため、製材・合板等の工場において大規模化・集約化が進展

➢ 中小製材工場等では地場競争力の強化に向け、多品目の製品を生産する取組や、地域の素材生産業者、工務店等の関係者と連携し、地域のニーズに対応した特色ある取組等を促進

➢ 非住宅分野等の中大規模建築物への木材利用の促進のために、品質・性能の確かなJAS構造材の供給が必要。JAS構造材の生産体制の整備、利用実態に即したJAS規格の区分や基準の合理化等の見直しを行うとともに、JAS構造材の普及・利用実証を支援

➢ 大規模工場は原木を大量かつ安定的に調達する必要があることから、川上と川中の安定供給協定の締結等を支援


(3)国産材活用に向けた製品・技術の開発・普及

➢ 今後出材の増加が見込まれる大径材に対応した製材や加工、乾燥の技術の開発・普及を推進

➢ 非住宅・中高層建築物への木材利用拡大に向け、「CLTの普及に向けた新ロードマップ~更なる利用拡大に向けて~」に基づきCLTパネル等の寸法等の標準化等を進めるとともに、木質耐火部材の技術開発等を推進

➢ リフォーム・家具分野における需要拡大に向け、表面硬度を高めた床板等の新たな製品開発を推進


(4)木材産業の各部門の動向

(ア)製材業

➢ 製材品の出荷量は近年ほぼ横ばいで推移。2021年は前年比10.8%増の約909万m3
 製材用原木入荷量の77.2%が国産材


(イ)集成材製造業

➢ 集成材の生産量は、2021年には前年比13.9%増の約198万m3であり、用途別では構造用が大半。また、国産材を原料としたものの割合は長期的に増加傾向

➢ 集成材の製品輸入は約97万m3で、集成材供給量全体に占める割合は32.8%


(ウ)合板製造業

➢ 普通合板の生産量は、2021年には前年比5.8%増の約317万m3であり、用途別では構造用が大半

➢ 合板への国産材針葉樹の利用が拡大し、2021年には国内の合板生産における国産材割合は91.5%に上昇
 輸入製品を含む合板用材需要量全体に占める国産材割合は45.3%で増加傾向


(エ)木材チップ製造業

➢ 2021年の木材チップ(燃料用チップを除く。)の生産量は前年比27.7%増の約607万トン。原木以外に工場残材、解体材・廃材等から生産。一方、木材チップの輸入量は2021年には前年比15.9%増の約1,100万トン


(オ)パーティクルボード製造業・繊維板製造業

➢ 2021年のパーティクルボードの生産量は前年比4.4%増の約100万m3、繊維板の生産量は前年比3.6%増の約72万m3


(カ)プレカット製造業

➢ 木造軸組工法におけるプレカット加工率は2021年には94.1%まで拡大


(キ)木材流通業

➢ 2018年の国産原木の流通において、素材生産者から木材市売市場等に出荷したものは40.7%、木材販売業者等へ販売されたものは19.1%、伐採現場等から工場へ直送されたものは40.2%であり、直送の割合は増加傾向


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