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林野庁

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第1部 第1章 第3節 森林保全の動向(2)

(2)山地災害等への対応

(山地災害等への迅速な対応)

近年、「令和2年7月豪雨」や「令和元年東日本台風(台風第19号)」など、山地災害が激甚化・同時多発化する傾向がある。令和4(2022)年の山地災害等による被害額は、8月の大雨や9月の台風などにより、821億円に及んだ(資料1-24)。

特に、7月、8月の大雨や9月の台風第14号及び第15号においては、全国各地で山腹崩壊や土砂流出等が発生し、被害箇所は、林地荒廃774か所、治山施設76か所、林道施設等7,476か所に上り、被害額は約732億円となった。


林野庁では、このような山地災害が発生した際には、災害復旧等事業の実施に取り組むとともに、大規模な被害が発生した場合は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協定に基づく人工衛星からの緊急観測結果の被災県等への提供、ヘリコプターやドローンを活用した被害状況調査、被災地への職員派遣(農林水産省サポート・アドバイスチーム要員(MAFF-SAT))等の技術的支援を行い、早期復旧に向けて取り組んでいる。


(山地災害からの復旧)

近年、毎年のように激甚な山地災害等が発生しているが、令和2(2020)年に発生した「令和2年7月豪雨」では、単一の災害では過去10年で最多となる43道府県で山地災害等が発生した。山地災害に係る災害復旧等事業については、令和5(2023)年3月末時点で280地区で完了し、11地区で実施中である。特に被害が甚大であった熊本県では、県からの要請を受けた九州森林管理局が、県に代わって36地区の被災した治山施設や林地の復旧を実施している。また、令和3(2021)年には、新潟県において融雪に伴う大規模な地すべりが発生した。令和4(2022)年には、7月、8月の大雨や、台風第14号及び第15号による甚大な被害が発生しており、山地災害に係る災害復旧等事業を188地区で採択し、復旧対策を実施している。


(治山事業の実施)

国及び都道府県は、保安林等において治山施設の設置等を通じて山腹斜面の安定化、荒廃した渓流の復旧整備等を図る治山事業(*48)を実施している。こうした継続的な事業の実施による森林の維持・造成を通じて、森林土壌の有する浸透能・保水力が保たれ、国土保全機能が発揮されている。これらに加え、山地災害危険地区(*49)に関する情報を地域住民に提供する等のソフト対策を一体的に実施している。

また、こうした取組を計画的に推進するため、森林整備保全事業計画において、治山事業の実施により周辺の森林の山地災害防止機能等が確保される集落数の増加を目標として設定している。具体的には、令和5(2023)年度までに58,600集落を目標としており(基準値56,200集落(平成30(2018)年度))、令和3(2021)年度末では約57,300集落となっている。


(*48)森林法で規定される保安施設事業及び「地すべり等防止法」で規定される地すべり防止工事に関する事業。

(*49)都道府県及び森林管理局が、山地災害により被害が発生するおそれのある地区を山地災害危険地区として調査・把握。



(防災・減災、国土強靱化に向けた取組)

林野庁では、令和3(2021)年度から「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(令和2(2020)年12月閣議決定)に基づいて、山地災害危険地区や重要なインフラ施設周辺等を対象とした治山対策及び森林整備に重点的に取り組んでいる。また、こうした取組に際しては、「流域治水(*50)」として関連省庁と連携しつつ効果的な対策を実施している。


(*50)流域治水の取組については、特集第4節(2)21-22ページを参照。



(海岸防災林の整備)

我が国の海岸では、飛砂害や風害、潮害等を防ぐため、マツ類を主体とする海岸防災林の整備・保全が全国で進められてきた。これに加え、東日本大震災では、海岸防災林が津波エネルギーの減衰や到達時間の遅延、漂流物の捕捉等の被害軽減効果を発揮したことを踏まえ、平成24(2012)年に、海岸防災林の整備を津波に対する「多重防御」施策の一つとして位置付け(*51)、被災した海岸防災林の再生及び全国的な海岸防災林の整備を進めているところである。

具体的には根の緊縛力を高め、根返りしにくい林帯を造成するため、盛土による生育基盤の確保、植栽等の整備を進めてきたところであり、今後は、海岸部は地下水位が高いエリアが多いことに留意した適切な保育管理等を通じて、津波に対する被害軽減、飛砂害や風害、潮害の防備等の機能が総合的に発揮される健全な海岸防災林の育成を図ることとしている。林野庁は、令和5(2023)年度までに、適切に保全されている海岸防災林等の割合を100%とする目標を定めており(基準値96%(平成30(2018)年度))、令和3(2021)年度における割合は98%となっている。


(*51)中央防災会議防災対策推進検討会議「防災対策推進検討会議 最終報告」(平成24(2012)年7月31日)



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