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林野庁

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第1部 特集2 第4節 課題と対応(4)

(4)更なる国産材活用に向けた技術開発

(需要拡大に向けた技術開発・実証の取組)

木材の需要開拓に向けて、製品・技術の開発・普及も必要である。スギを始め、様々な森林資源が増加しており、齢級構成の変化にも合わせた技術開発・実証が進展している。


(住宅部材での国産材利用に向けた技術開発・実証の取組)

住宅では、様々な部材で木材が使われているが、横架材や羽柄材、ツーバイフォー工法部材等、これまで国産材があまり使われてこなかった分野での国産材利用に向けた技術開発・実証が進められている。

例えば、横架材については、大径木から平角を製造して使用することが期待されるが、断面が大きくなるため乾燥技術を確立し、歩留りを向上させていくことが必要である。国立研究開発法人森林研究・整備機構は、含水率、ヤング係数等を非破壊で計測する方法や適切な乾燥条件を研究し、公表している(*76)。ツーバイフォー工法についても、信州木材製品認証センター(長野県長野市)においてカラマツの大径木から幅広の208(ツーバイエイト)、210(ツーバイテン)材を生産し活用する試みが始まっており、木取り、乾燥方法、強度特性等の検証が行われている。


(*76)国立研究開発法人森林研究・整備機構「大径材の使い方 丸太段階で強度特性を予測して目指す、要求性能に応じた製材品の安定供給」(令和3(2021)年3月)



(CLTの利用と普及に向けた動き)

非住宅・中高層建築物での木材利用拡大において、CLTが注目されている。CLTは主に壁や床等に使用されており、コンクリート等と異なり養生期間が不要なため工期の短縮が期待できること、また、建物重量が軽くなり基礎工事の簡素化が可能なことなどが利点として挙げられる。

我が国では、令和3(2021)年4月には、北海道、秋田県、宮城県、石川県、鳥取県、岡山県、愛媛県、宮崎県及び鹿児島県において、JAS認証を取得したCLT工場が稼働しており、計9工場で年間8万m3の生産体制となっている。これにより、令和3(2021)年度末までに共同住宅、ホテル、オフィスビル、校舎等、710件を超える建物でCLTが活用されていると見込まれている(*77)。

CLTの普及に向けて、平成26(2014)年に「CLTの普及に向けたロードマップ(*78)」を林野庁と国土交通省が共同で作成し、平成28(2016)年から「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」を開催し、政府を挙げてCLTの普及に取り組んでいる。令和3(2021)年3月には同連絡会議において令和3(2021)年度から令和7(2025)年度までを期間とする「CLTの普及に向けた新ロードマップ~更なる利用拡大に向けて~」を策定した。

このロードマップに基づき、建築基準の合理化を進めており、平成28(2016)年3月及び4月には、CLTを用いた建築物の一般設計法等に関して、建築基準法に基づく告示が公布・施行され(*79)、告示に基づき構造計算を行うことで、国土交通大臣の認定を個別に受けることなく、CLTを用いた建築が可能となった。その後も基準の合理化が順次進み、平成31(2019)年3月には、CLTに用いられる材料について、従来のスギを基に位置付けられていた基準強度に、スギより強度のあるヒノキ、カラマツ等の基準強度が新たに位置付けられ、樹種の強度に応じた設計が可能となった(*80)。

また、林野庁では、設計等のプロセスの合理化、低コスト化に資する技術の開発・普及、設計者・施工者向けの講習会の開催等への支援を行っている。


(*77)内閣官房ホームページ「CLTを活用した建築物の竣工件数の推移」

(*78)農林水産省プレスリリース「CLTの普及に向けたロードマップについて」(平成26(2014)年11月11日付け)

(*79)国土交通省プレスリリース「CLTを用いた建築物の一般的な設計方法等の策定について」(平成28(2016)年3月31日付け)

(*80)「特殊な許容応力度及び特殊な材料強度を定める件の一部を改正する件」(平成30年国土交通省告示第1324号)



(木質耐火部材の開発)

建築基準法に基づき、木質耐火部材を用いることなどにより所要の性能を満たせば、木造でも大規模な建築物を建設することが可能である。耐火部材に求められる耐火性能は、建物の階数に応じて定められており、平成29(2017)年12月には、同法の規定により求められる耐火性能(*81)のうち最も長い3時間の性能を有する木質耐火部材の国土交通大臣認定が取得され、これにより耐火要件上は15階建て以上の高層建築物の建築が可能となっている。

木質耐火部材には、木材を石膏ボードで被覆したものや、モルタル等の燃え止まり層を備えたもの、鉄骨を木材で被覆したものなどがある。令和3(2021)年2月には、製材に石膏ボードとスギの化粧材を重ねた木質耐火部材により7階建ての木造ビルが建築され(資料 特2-33)、令和3(2021)年11月には、設備配管を貫通できる鉄骨内蔵型の木質耐火部材が国土交通大臣認定を取得するなど、設計自由度の向上や低コスト化に資する新たな木質耐火部材が開発されている。


(*81)通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能(建築基準法第2条第7号)。



(その他の非住宅・中高層建築物での木材利用に向けた技術開発)

非住宅分野・中高層分野では、CLTや木質耐火部材の開発に加えて、加重を支えるための新たな工法・木質部材の開発や低コスト化に向けた技術開発が進んでいる。例えば、高層建築物の木造化に向けて耐震性能を高めるため、接合部の強度を高める工法の開発が行われている。大空間を実現するために強度を高める方策としては、横架材の縦方向の厚さを大きくすることが有効であり、大断面集成材やLVL(*82)等が用いられてきたが、柱角等の一般流通材を用いた重ね梁(ばり)の開発等が進められている。また、コストを抑えるため一般流通材を用いるトラス工法が開発されており、設計により大空間を確保することが可能で、体育館、倉庫、店舗等で導入されている。


(*82)「Laminated Veneer Lumber」の略。



(内装・家具・リフォーム分野における需要拡大)

今後、市場の拡大が期待されるリフォーム分野についても、消費者ニーズに合わせた技術・製品の開発が期待される。例えば、内装用に向けては、圧密加工により表面硬度を高めた床板が開発されており、住宅に加え、学校等の公共施設での利用が行われている。一方で、住宅用には肌触りの良い無処理の床板も開発されており、株式会社西粟倉(にしあわくら)・森の学校等では購入者自らが敷ける床板も販売されている。

広葉樹資源も増加しており、これまで使用されてこなかった広葉樹の活用に向けた商品開発の取組が行われている。例えば、北海道や岐阜県等では、小径木の広葉樹を用いた家具の製品開発が行われているほか、福岡県では、センダン等の早生樹の広葉樹の家具等への活用に向けた取組が進められている。

このように山側の資源と消費者ニーズに対応した技術・製品開発により、内装・家具・リフォーム分野における国産材の需要拡大が期待される。

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