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林野庁

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第1部 特集 第3節 企業の森林に関わる意向と活動内容


(企業への森林・木材利用に関わるアンケート調査)

前節で紹介したような森林・木材の利用に係る様々な取組の広がりを把握することを目的に、林野庁は、令和元(2019)年11月に、国内企業を対象として、SDGsと森林・木材利用に関わるWebアンケートを実施した(*74)。この結果、中小企業から大企業まで、業種は製造業を中心に卸売・小売業、建設業、サービス業など幅広い業種の企業から392の回答を得ることができた(資料 特-17)。回答企業の約半数は従業員300人以上と規模が大きな企業の割合が高く、また、そもそもSDGsや森林及び木材利用に関心が高い企業が回答したとも考えられるが、森林・木材利用に関する取組に対する企業の考え及び傾向を知ることができる。


このアンケートの結果から、SDGsを経営戦略等に組み込んでいる企業が約半数、特に従業員が1,000人を超える企業では4分の3を超えるなど、企業のSDGsへの取組が経営の中心に組み込まれ始めている様子がうかがえた(資料 特-18)。一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン及び公益財団法人地球環境戦略研究機関が平成30(2018)年度に行った企業・団体向けの調査においても、SDGsが「経営陣に定着している」とした回答が59%、「従業員にも定着している」とした回答が17%となっており、今回のアンケートも、これに近い数字となっている(*75)。一方、中小企業におけるSDGsの認知度は低いと考えられている(*76)が、今回回答した従業員が20人以下の企業の33%が経営戦略等に組み込んでいると回答している。


森林・林業・木材利用に関わる活動を現在実施又は実施予定の企業は、247社と全回答の6割を超えた。その活動内容は、「森林の整備・保全」が半数以上を占めており、「子供・地域住民・市民向けイベント」、「林業分野への技術提案・販売」、「木育など木材利用の普及・啓発」、「森林に関わるNPO等への支援・寄附」と続いている。また、木育等も含めて木材利用に関わる活動を実施している企業は、60.3%あった(資料 特-19)。


森林・林業・木材利用に関わる活動の開始時期についてみると、平成12(2000)年以前から開始した企業が27.9%である一方、2000年代後半以降に開始した企業が半分程度あり、最近になって森林・林業・木材利用に関わる取組を始める企業が増えている様子がうかがえた(資料 特-20)。


期待する効果(主な目的)としては、「社会貢献」が74.9%と多く、「地域との交流」が47.4%で続いた。期待に対応し、活動内容は、森林整備に加え、イベント、木育等の地域住民と関わる取組が多いことがうかがえる。一方で、平成28(2016)年以降に活動を開始した企業においては、「社会貢献」が55.6%と回答者全体より少なく、「新規顧客開拓」が51.2%、「事業領域の拡大」が46.3%と多い。社会全体でSDGsへの関心が高まる中、社会貢献的な性格が強かった従来のCSR(企業の社会的責任)活動としてだけではなく、事業活動を通じて森林・林業に貢献しようという企業のインセンティブが高まっていると考えられる。

実際の効果も、期待する効果と同様の傾向であったが、特に「地域との交流」は期待よりも効果の方が上回った。これは、森林整備等の別の目的で始めた取組が、結果的に地域との交流に結びついたものがあるためと考えられる。また、売上向上に結びついたとする企業も25.9%と一定数存在した(資料 特-21)。


活動に際しての苦労に関する質問への回答は、「予算確保」が最も多く、次に「社内での説明・理解」や「社外の参加者集め・広報」が続いた(資料 特-22)。


森林・林業・木材利用に関わる活動を拡大していくための条件整備としては、「森林に関わる企業側のメリットについての情報」が58.8%と半数以上を占め、具体的には予算確保や社内での説明、参加者集めの材料となる情報を必要としている企業が多いと考えられる。また、「企業との連携に積極的な森林組合・林業事業体等の紹介」が43.5%に上っており、地方公共団体を始めとする「つなぐ」主体の取組が重要と考えられる(資料 特-23)。


活動の予定がない企業についてみると、その理由としては「関心がない」、「利益につながらない」という回答を挙げた企業は少なく、むしろ、「活動するきっかけがない」という回答が7割を占めた(資料 特-24)。何らかのきっかけがあれば取組を始める企業は一定数あると考えられ、そのためには、林業・木材産業関係者からの後押しが重要と考えられる。


(*74)令和元(2019)年11月から令和2(2020)年1月にかけて林野庁Facebook、一般社団法人日本経済団体連合会、公益社団法人経済同友会、日本商工会議所、一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)及び公益社団法人国土緑化推進機構を通じた周知により実施。有効回答数は392。

(*75)公益財団法人地球環境戦略研究機関(2019)主流化に向かうSDGsとビジネス~日本における企業・団体の取組現場から~: 7.

(*76)関東経済産業局、一般財団法人日本立地センター「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」(平成30(2018)年)



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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