このページの本文へ移動

林野庁

メニュー

第1部 第3章 第3節 木材産業の動向(2)

(2)需要者ニーズへの対応に向けた木材産業の取組

(品質・性能の確かな製品の供給)

近年、木造住宅の品質・性能に対する消費者ニーズが高まっており、品質・性能の確かな木材製品の供給が求められるようになっている。

木造住宅の建築現場においては、柱やはり継手つぎて仕口しぐちを工場で機械加工した「プレカット材」が普及してきている。プレカット材は、部材の寸法が安定し、狂いがないことを前提に機械で加工する物であり、含水率の管理された人工乾燥材(*142)や集成材が使用される。加えてプレカット材は施工期間の短縮や施工コストの低減等のメリットがあることから利用が拡大しており、木造軸組構法におけるプレカットの利用率は平成26(2014)年から9割を超えて推移している。

また、木材の品質については、「日本農林規格等に関する法律」(JAS法)に基づく「日本農林規格(JAS(ジャス))」として、製材、集成材、合板、フローリング、CLT(直交集成板)、接着重ね材、接着合せ材等の11品目(*143)の規格が定められている。JAS制度では、登録認証機関(*144)から製造施設や品質管理及び製品検査の体制等が十分であると認証された者(認証事業者)が、自らの製品にJASマークを付けることができる(*145)。

木材の新たな需要先として非住宅分野等の大規模な建築物の木造化が期待されているが、このような建築物には、設計時に構造計算が求められる。近年高まっている住宅の品質・性能に対する消費者ニーズに加えて、非住宅分野等への木材利用の拡大を図るためにも、このような品質・性能の確かな部材としてのJAS製品等の供給体制の整備を着実に進めていくことが必要である。林野庁では、JAS構造材の積極的な活用を促進するため、令和元(2019)年度に「JAS構造材活用拡大宣言」を行う建築事業者等の登録及び公表による事業者の見える化及びJAS構造材の実証支援を実施した。


(*142)建築用材等として使用する前に、あらかじめ乾燥させた木材。乾燥させることにより、寸法の狂いやひび割れ等を防止し、強度を向上させる効果がある。

(*143)製材、枠組壁工法構造用製材及び枠組壁工法構造用たて継ぎ材、集成材、直交集成板、単板積層材、構造用パネル、合板、フローリング、素材、接着重ね材及び接着合せ材。CLT(直交集成板)について詳しくは、第3章第3節(9)210-212ページを参照。

(*144)ISO/IECが定めた製品の認証を行う機関に関する基準等に適合する法人として、農林水産大臣の登録を受けた法人(ISOは「国際標準化機構(International Organization for Standardization)」、IECは「国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)」)。

(*145)「日本農林規格等に関する法律」(昭和25年法律第175号)第14条第1項



(需要者のニーズに応じた製品の安定供給)

大手住宅メーカー等においても国産材を積極的に利用する動きが見られる中、実需者(住宅メーカーや工務店)のニーズに応じた製品を安定的に供給する体制の構築が求められている。そのためには、実需者の求める需要規模に応じた木材加工・流通体制の整備を進めることが重要であり、製材業者等はそれぞれの規模ごとの強みを活かして、(ア)大型工場単独での規模拡大、(イ)複数の工場との連携による生産の効率化、(ウ)地域ごとに木材生産者、製材工場、工務店等が連携して、特色のある家づくりを行う取組(*146)等を進めている。

林野庁では、木材製品の安定的・効率的な供給体制構築に資する加工・流通施設の整備、地域の林業・木材生産者から工務店等の関係者までが連携し地域で流通する材を利用した家づくり(顔の見える木材での家づくり)や付加価値の高い内装材、家具、建具等の利用拡大に向けた取組に対して支援を行っている。


(*146)詳しくは、第3章第2節(2)179-180ページを参照。



(原木の安定供給体制の構築に向けた取組)

近年、国産材を主な原料とする年間素材消費量が数万m3から10万m3を超える規模の大型の製材・合板工場等の整備が進み(資料3-37)、また、木質バイオマスエネルギー利用が拡大の傾向をみせる中、木材産業においては安定的かつ効率的な原木調達が更に重要となっている。

資料3-37 近年整備された大型木材加工工場及びCLT工場の分布状況

このような需要に対する原木の安定供給体制の構築に向けて、林野庁では、川上側である素材生産業者や森林組合による原木供給力の増大を進める取組と併せて、原木流通の効率化や需給情報の共有を推進するための取組を行っている。

具体的には、製材・合板工場等、素材生産業者、木材流通業者等との原木安定供給のための協定締結の推進、川上(供給側の森林所有者、素材生産業者)、川中(需要側の工場等)及び川下(国産材製品の実需者である木造の建築物や住宅を建設しようとする工務店・住宅メーカー等)のマッチングや需給情報の共有化の推進により、原木の安定供給体制の構築を図ることとしている(*147)。このような中、需要者ニーズにきめ細やかな選木を行いつつ、集荷・販売能力を高め、原木の安定供給体制を構築する取組もみられる(事例3-7)。

このほか、林野庁では、国有林野事業等による立木や素材等の協定取引を進めている(*148)。

また、全国において、持続的な林業や将来にわたる原木の安定供給に向けて、木材の生産、流通、利用等に関わる事業者が、それぞれ協力金を拠出して基金等を造成し、再造林経費を助成する仕組みを創設する動きもみられる。

事例3-7 需要者ニーズに応じた原木の安定供給体制の構築

東信とうしん木材センター協同組合連合会(長野県小諸こもろ市)は、「一目選木ひとめせんぼく」と呼ばれる細やかな仕分けにより、需要者に合わせた原木の安定供給体制を構築している。

同センターでは、持ち込まれてくるA~D材全てを無駄なく活用するため、細やかな仕分けを行い、一般建築用から集成材、合板用、土木用、チップ・バイオマス燃料用と多岐にわたる需要に対応している。

「一目選木」では、同センターに運び込まれてきた末口6~14cmの小径木を、直材と曲がり材に大別した後、自動選別機により1cm刻みで選別して販売している。需要者側としては、選別する手間が省け、選別の作業効率が向上するメリットがある。

また、需要者が必要な時に品質・量を揃えて原木を供給できる体制があることにより、県内のみならず県外の大口需要者からの受注も増え、平成30(2018)年度の同センターの取扱量は17万m3を超え過去最高となった。

同センターでは、今後も取扱量の更なる拡大を目指しつつ、売上の一部を山元へ還元することで、循環林業の推進にも寄与していきたいとしている。

資料:平成28(2016)年6月8日付け林政ニュース: 14-17、平成28(2016)年6月22日付け林政ニュース: 15-18、平成31(2019)年4月18日付け日刊木材新聞16面、令和2(2020)年1月15日付け日刊木材新聞17面



(*147)「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月)。安定供給体制の構築に向けた取組の現状と今後の課題について詳しくは、「平成27年度森林及び林業の動向」第1章第3節18-37ページを参照。

(*148)詳しくは、第4章第2節(2)230-231ページを参照。



(ICTによる流通全体の効率化)

我が国の林業・木材産業をめぐる状況は、川上の林業経営体と、川中・川下の製材・合板業者、工務店等の需要者との連携が十分でないことなど、流通の合理化が進んでいないこと等により、木材の加工流通コストが海外に比べて割高という状況にある。

林業の成長産業化を進めるためには、木材製品の需要動向に応じて、需要者側の求めている品質、数量の木材を的確に生産し、必要なときに迅速かつ有利に供給できるような、マーケットインの発想に基づく川上から川下までを通じたサプライチェーンの再構築により、森林から建築等の現場に至る流通全体の効率化を図ることが必要である。素材生産事業者等の川上から工務店等の川下までのサプライチェーンを通じた需給情報の共有により、丸太の採材や在庫管理、木材の運搬等の効率化や、生産・流通の各段階における製品の付加価値の向上が求められる。また、サプライチェーンに携わる多様な担い手や消費者が、森林の機能、成長段階、利用状況等を把握し、理解できるような情報の整理及び集約が図られるようにすることも必要である。

そのためには、情報通信技術(ICT)の利活用による、森林調査及び施業計画の高度化等の森林資源のデータベースの整備やスマート林業を推進するとともに、それを基盤として川上から川下までの事業者が相互に需給情報を共有でき、互いに連携することのできる情報共有プラットフォームの構築を図っていく必要がある(資料3-38)。

そのようなプラットフォームの構築に向けて、流通の各段階におけるサプライチェーン構築に意欲のある事業者同士のマッチングの推進や需給情報の共有化の取組を支援している。

資料3-38 ICTを活用したサプライチェーンの構築イメージ

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader