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林野庁

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第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(5)

(5)木材輸出対策

(我が国の木材輸出は年々増加)

我が国の木材輸出は、中国等における木材需要の増加及び韓国におけるヒノキに対する人気の高まり等を背景に、平成25(2013)年以降増加傾向にある。令和2(2020)年の木材輸出額(*53)は、前年比3%増の357億円となった。品目別にみると、丸太が163億円(前年比11%増)、製材が68億円(前年比13%増)、合板等が58億円(前年比11%減)となっており、これらで全体の輸出額の約8割を占めている。特に丸太の輸出額は、輸出額全体の約5割を占めており(資料3-15)、このうち、中国、韓国、台湾向けが97%を占めている。

また、輸出先を国・地域別にみると、中国が170億円で最も多く、フィリピンが65億円、米国が38億円、韓国が30億円、台湾が20億円と続いている(資料3-15)。中国向けについては、輸出額の約8割を丸太が占めており、主にスギが輸出されて、梱包材、土木用材、米国向けに輸出されるフェンス用材等に利用されている。米国向けについては、輸出額の約7割を製材が占めており、近年は、フェンス材等に使用されるべいスギの代替材需要としてスギ製材の輸出が伸びている。韓国向けについては、輸出額の約6割を丸太が占めており、ヒノキは内装材等に利用されている。フィリピン向けについては、輸出額の約8割を合板等が占めている。


(*53)貿易統計における確々報値(令和3(2021)年3月12日時点)。



(木材輸出拡大に向けた方針)

我が国においては、少子化に伴う人口減少により、市場規模が縮小傾向にある。一方、海外においては、新興国の経済成長や人口増加に伴い市場規模は拡大傾向にあり、我が国の農林水産事業者の所得向上を図り、持続的に発展していくためには、農林水産物及び食品の輸出の大幅な拡大を図り、世界の市場を獲得していくことが不可欠である。

このような中、我が国の農林水産物・食品の輸出額は、平成24(2012)年の約4,497億円から令和2(2020)年には9,217億円と2倍以上に増加した。この間政府は、「農林水産業・地域の活力創造本部」に置かれた「農林水産業の輸出力強化ワーキンググループ」において、「農林水産業の輸出力強化戦略」(平成28(2016)年5月)を取りまとめた。また、農林水産物・食品の更なる輸出拡大を図るため、「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律(*54)」を令和2(2020)年4月に施行した。同法に基づき「農林水産物・食品輸出本部」を農林水産省に設置し、政府一体となって輸出先国による食品安全等の輸入規制等への対応を強化するなど、輸出促進の取組を進めてきた。さらに、「食料・農業・農村基本計画」(令和2(2020)年3月31日閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2020」・「成長戦略フォローアップ」(令和2(2020)年7月17日閣議決定)において、令和7(2025)年までに2兆円、令和12(2030)年までに5兆円という輸出額目標を設定した。

このうち、林産物の輸出額については、令和7(2025)年までに718億円、令和12(2030)年までに1,660億円を目指すこととしている。

この目標の実現のため、令和2(2020)年11月に開催された、「第10回農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」において、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(資料3-16)が取りまとめられ、同年12月に、同戦略を含む「農林水産業・地域の活力創造プラン」の改訂が「農林水産業・地域の活力創造本部」において決定された。


同戦略においては、第一に、日本の強みを最大限に活かす品目別の具体的目標を設定、第二に、マーケットインの発想で輸出にチャレンジする農林水産事業者を後押し、第三に、省庁の垣根を越え政府一体として輸出の障害を克服する、との三つの基本的考え方に基づき、生産から現地販売までのバリューチェーン全体を「プロダクトアウト」から「マーケットイン」に徹底的に転換し、農林水産物・食品の輸出拡大を加速することを目指している。

木材については、製材・合板を重点品目とし、中国、米国、韓国、台湾等をターゲットに、日本式木造建築物の普及による建築部材の輸出促進、高耐久木材の海外販路の拡大やマーケティング等に取り組むこととしている。具体的には、付加価値の高い木材製品を生産する木材加工施設を中心に、原料を供給する川上から販売を担う川下までの企業等が連携する輸出産地を育成することとしている。また、輸出産地の育成・展開を図るため、輸出産地をリスト化し、製材について4産地、合板について8産地を掲載している(*55)。さらに、安定的に原料を供給するための生産基盤の強化、合法性確認の一般化、生産・輸送にかかるコスト削減に取り組むほか、国際競争力の高い生産体制を実現するため、輸出先国・地域の規格や高品質な木材製品を生産する加工施設等の整備を行うとともに、原料となる原木の安定供給、生産コストを削減するための路網の整備・機能強化や高性能林業機械等の整備を推進することとしている。加えて、輸出先国・地域のニーズの絞り込みや日本産木材製品のブランディング、マーケティング等を、JETRO(*56)や品目団体等で連携して行い海外販路開拓等を進めることで、輸出目標の達成を目指すこととしている。


(*54)「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(令和元年法律第57号)

(*55)令和3(2021)年4月1日時点。輸出産地リストについては、農林水産省ホームページ「輸出産地の取組(輸出産地リスト)」を参照。(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_action/yusyutsu-list.html)

(*56)「Japan External Trade Organization」の略。



(木材輸出拡大に向けた具体的な取組)

林野庁では、輸出力強化に向けて、日本産木材製品のブランド化の推進、日本産木材製品の認知度向上、輸出に取り組む事業者が行う販売促進活動の推進等に取り組んでいる(事例3-1)。

事例3-1 中国への地域材木材製品輸出に向けた取組

宮崎県木材組合連合会では、プレカット製品等の木材製品の中国での販路拡大に積極的に取り組んでいる。同会では、北京市に拠点を置く富裕層向けの住宅やオフィス等の設計を行っている現地企業と連携し、令和3(2021)年1月に北京市中心部のオフィスビル内にあるショールームに宮崎県産の木材製品をPRする展示コーナーを設置した。展示コーナーでは、プレカット製品により木造軸組構法で組み立てられたキャビンや専門の職人が製作した家具、中空パネル等の木材製品のサンプルを展示している。

このほか同会では、ショールームや展示会等での木造軸組構法のマニュアルや木材製品のカタログの配布、木材製品のPRビデオの上映、現地企業と連携した市場調査等を通じて現地の工務店や施工業者とのネットワークを形成し、県産材木材製品の輸出拡大を目指すこととしている。



まず、日本産木材製品のブランド化の推進として、中国の「木構造設計規範」の改定に向けた取組を進めてきた。中国ではこれまで、我が国の「建築基準法(*57)」に相当する「木構造設計規範」において、日本の在来工法である木造軸組構法(*58)の位置付けと日本産のスギ、ヒノキ及びカラマツの構造材としての規定がなされておらず、同国において構造部材として日本産木材を使用することや木造軸組構法による建築が困難な状態であった。このため、平成22(2010)年から、関係団体や国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所等の日本側専門家が連携し、同規範の改定作業に参加してきた。その結果、平成29(2017)年11月に同規範の改定が公告され、平成30(2018)年8月1日に「木構造設計標準」として施行された。改定に当たっては、日本産のスギ、ヒノキ及びカラマツの基準強度と木造軸組構法が盛り込まれており、これらの樹種を構造材として使った同構法の住宅建設が中国で可能となった。

また、木造軸組構法の普及を目的に、設計・施工に当たっての現場向けの具体的な指針の作成や、建設関係の技術者等を対象とした技術講習会の開催等に取り組んでいるところである。

日本産木材製品の認知度向上としては、これまで海外における展示施設の設置や展示会への出展、モデル住宅の建築・展示、商談会の開催等に対する支援を行ってきた。

さらに、今後の国内需要の減少を見据え、輸出に取り組もうとする事業者に対し、輸出先国における市場調査や住宅用部材輸出の実証、輸出先国のニーズ・規格等に対応した技術開発、輸出先の事業者とも連携したプロモーション活動等への支援のほか、単独の企業では輸出に取り組むリスクや負担が大きいことから、企業同士が連携して行う輸出向け製品の開発や試作、海外への製品PR、バイヤーの開拓等の取組についても支援している。

本年度は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い海外との往来等が制限されるなど、輸出拡大に向けた取組への影響が生じたが、WEB等のデジタルツールを活用し、商談会や講習会等を実施する取組も進められている。

また、地方公共団体においても、近年、輸出促進のための協議会等を設置し、地域の企業同士の連携による共同出荷体制を構築する動きや、海外で日本の木造軸組構法の住宅建築セミナーを開催するなど、木材製品の輸出促進に向けた動きが広がっている。


(*57)「建築基準法」(昭和25年法律第201号)

(*58)木造住宅の工法については、第2節(2)175-176ページを参照。


挿絵4

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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