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林野庁

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第1部 第1章 第1節 森林の適正な整備・保全の推進(3)

(3)研究・技術開発及び普及の推進(*18)


(*18)ここでは主に研究・技術開発の体制の概要を記述し、具体的な技術等については各章ごとの項目を参照。



(研究・技術開発のための戦略)

林野庁は、森林・林業・木材産業分野の課題解決に向けて、研究・技術開発における対応方向及び研究・技術開発を推進するために一体的に取り組む事項を明確にすることを目的として、「森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略」を策定している。

同戦略は、平成28(2016)年の森林・林業基本計画の変更、同年の「地球温暖化対策計画」の策定等の情勢変化を受け、政策課題を的確に捉え、長期的展望に立って、更に研究・技術開発を推進するために、平成29(2017)年3月に改定された。

同戦略を踏まえて、国や国立研究開発法人森林研究・整備機構、都道府県、大学、民間企業等が連携しながら、研究・技術開発を実施している。


(「グリーン成長戦略」によるイノベーションの推進)

令和2(2020)年12月、政府の成長戦略会議において「2050年カーボンニュートラル(*19)に伴うグリーン成長戦略」が公表された。脱炭素化で成長が期待される産業(14分野)において、高い目標を設定した上で政策を総動員し、技術開発から社会実装、さらには量産化によるコスト低減を目指すこととした。この中で、食料・農林水産業分野が重要分野の一つに位置付けられ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた役割を十分に果たしていくため、スマート農林水産業等の実装の加速化による化石燃料起源の二酸化炭素のゼロエミッション化、森林及び木材・農地・海洋における炭素の長期・大量貯蔵の技術確立等に取り組んでいく必要があるとされた。

農林水産省においても、生産から消費までの各段階における新たな技術体系の確立と更なるイノベーションの創造により、食料・農林水産業の生産力向上と、環境負荷軽減を始めとする持続性の両立を推進するための新たな戦略として、「みどりの食料システム戦略」の策定に向けた検討を開始した。令和3(2021)年3月には、生産者、団体、企業等との意見交換会を踏まえ、中間取りまとめを公表した。

同戦略により、林業イノベーション等による「って、使って、植える」循環サイクルの確立を通じた森林の二酸化炭素吸収や木材の炭素貯蔵の最大化等によるカーボンニュートラルへの貢献が期待される。中間取りまとめでは、成長に優れたエリートツリーの普及等による森林吸収量の向上と、高層建築物等の木造化の推進、改質リグニンを始めとしたバイオマス素材の開発・普及等の木材利用拡大による炭素貯蔵・二酸化炭素排出削減効果の最大化を推進していくこととしている。


(*19)2050年カーボンニュートラルについては、第1節(1)68-69ページを参照。



(成果をあげるべき研究・技術開発の取組)

「森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略」では、おおむね今後5年間に実施し、成果をあげるべき取組が明確化されている。

現在、森林・林業基本計画に示された対応方向に沿って、新たに情報通信技術(ICT)等を活用したものとして、森林資源把握の手法の高度化に向けた多様な森林情報を統合し解析する技術、効果的かつ効率的に捕獲と防除を行うための野生鳥獣の監視・捕獲技術、林業経営体の生産性や経営力向上に向けた生産管理手法等の開発を進めている。さらに、新たな木材需要創出のためのCLTの低コスト製造法や内装材、外構材等の付加価値の高い非構造用部材の開発、家具等への利用を念頭に置いた早生広葉樹の栽培・利用技術の開発、セルロースナノファイバーや改質リグニン等の新素材の開発等といった新たな分野の研究も進めている。


(林業普及指導事業の実施)

新たな技術のうち、その有効性が実証されたものについては、森林所有者や林業経営体、市町村の担当者に対して積極的に普及を進めていく必要がある。そのような中にあって、都道府県が「林業普及指導員」を設置し、森林所有者等に対して森林施業技術の指導及び情報提供等を行う「林業普及指導事業」を活用して、関係者への普及を推進していくことが有効である。

林業普及指導事業は、都道府県が本庁や地方事務所等に「林業普及指導員」を配置して、試験研究機関による研究成果の現地実証等を行うとともに、関係機関等との連携の下、森林所有者等に対する森林施業技術の指導及び情報提供、林業経営者等の育成及び確保、地域全体での森林整備及び木材利用の推進等を行うものである。令和2(2020)年4月現在、全国で1,264人が林業普及指導員として活動している。


(森林総合監理士(フォレスター)を育成)

林野庁では、森林・林業に関する専門的かつ高度な知識及び技術並びに現場経験を有し、長期的・広域的な視点に立って地域の森林づくりの全体像を示すとともに、市町村森林整備計画の策定等の市町村行政を技術的に支援し、施業集約化を担う「森林施業プランナー」等に対し指導・助言を行う人材として、「森林総合監理士(フォレスター)」の育成を進めている。

森林総合監理士には、森林調査、育林、森林保護、路網、作業システム、木材販売及び流通、関係法令、諸制度等に関する知識等に基づき、地域の森林・林業の姿を描く能力や、地域の関係者の合意を形成していくための行動力、コミュニケーション能力が必要とされている。このため、林野庁は、平成26(2014)年度から森林総合監理士の登録・公開を行うとともに、森林総合監理士を目指す若手技術者の育成を図るための研修や、森林総合監理士の技術水準の向上を図るための継続教育等を行っている。令和3(2021)年3月末現在で、都道府県職員や国有林野事業の職員を中心とした1,477名が森林総合監理士として登録されている。

挿絵3

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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