このページの本文へ移動

林野庁

メニュー

第2部 平成30年度 森林及び林業施策


概説

1 施策の重点(基本的事項)

「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月閣議決定)等を踏まえ、以下の森林・林業施策を積極的に推進した。

また、林業の成長産業化と森林資源の適正な管理の両立を図るため、「森林経営管理法案」を第196回国会(常会)に提出(平成30(2018)年5月に可決成立)、経営管理が行われていない森林について市町村が仲介役となり、森林所有者と意欲と能力のある林業経営体をつなぐ森林経営管理制度の構築等を行った。

さらに、本制度を踏まえ、地方団体が行う森林整備等の財源として、森林環境税及び森林環境譲与税を創設することとした。

「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成30(2018)年11月27日改訂(農林水産業・地域の活力創造本部決定))等を踏まえ、国有林野の一定の区域で、公益的機能を確保しつつ、意欲と能力のある林業経営者が、一定期間・安定的に立木の伐採を行うことができる仕組み等の検討を行った。

このほか、森林経営管理制度の活用促進、流木対策の推進、花粉発生源対策等を盛り込んだ、新たな「全国森林計画」(平成30(2018)年10月16日閣議決定)を策定した。

また、平成30(2018)年12月に「国有林野の管理経営に関する法律」(昭和26年法律第246号)に基づき、新たな「国有林野の管理経営に関する基本計画」を策定した。


(1)森林の多面的機能の発揮に関する施策

森林の有する多面的機能を将来にわたって持続的に発揮させていくため、面的なまとまりをもった森林経営の確立、再造林等による適切な更新の確保、適切な間伐等の実施、路網整備の推進、多様で健全な森林への誘導、地球温暖化防止策及び適応策の推進、国土の保全等の推進、国際的な協調及び貢献に関する施策を推進した。

特に、平成30(2018)年4月に「スギ花粉発生源対策推進方針」を改正し、スギの花粉症対策に資する苗木の生産拡大など花粉発生源対策を推進した。

また、自然災害に対する山地防災力の強化のため、荒廃山地の復旧整備や予防治山対策による事前防災・減災対策を推進するとともに、平成30年7月豪雨を受け、ぜい弱な地質地帯における山腹崩壊等について、今後の効果的な治山対策の在り方を検討し、中間取りまとめとして公表した。さらに、平成30年7月豪雨や平成30年北海道胆振東部地震を始めとする近年の自然災害の発生を受けて、全国の山地災害危険地区等において、緊急点検を実施し、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30(2018)年12月14日閣議決定)に基づき、治山施設の設置等の対策を推進した。


(2)林業の持続的かつ健全な発展に関する施策

林業の持続的かつ健全な発展を図るため、望ましい林業構造の確立、人材の育成及び確保等、林業災害の補填に関する施策を推進した。


(3)林産物の供給及び利用の確保に関する施策

林産物の供給及び利用を確保するため、原木の安定供給体制の構築、木材産業の競争力強化、新たな木材需要の創出、消費者等の理解の醸成、林産物の輸入に関する措置に関する施策を推進した。

また、平成30(2018)年12月にTPP11、さらに平成31(2019)年2月には日EU・EPAが発効する中、「総合的なTPP等関連政策大綱」(平成29(2017)年11月24日TPP等総合対策本部決定)を踏まえ、加工施設の生産性向上、競争力のある製品への転換、原木供給の低コスト化等を推進した。


(4)東日本大震災からの復旧・復興に関する施策

東日本大震災により被災した治山施設や林道施設、地震により発生した崩壊地や被災した海岸防災林等の復旧及び再生を実施するとともに、放射性物質の影響に対応した木材製品等の安全証明体制の構築、安全な特用林産物の供給確保のための支援、被災地域の林業・木材産業の復興を図るための地域で流通する木材等の活用を推進した。


(5)国有林野の管理及び経営に関する施策

「国有林野の管理経営に関する法律」に基づき、12月に新たな「国有林野の管理経営に関する基本計画」を策定するとともに、国土保全等の公益的機能の高度発揮に重要な役割を果たしている国有林野の特性を踏まえ、公益重視の管理経営を一層推進した。

また、林業の成長産業化を推進するため、森林施業の低コスト化の推進、技術の普及等を実施するとともに、「国民の森林」としての管理経営と国有林の所在する地域における産業の振興等のための国有林野の活用を推進した。

さらに、「未来投資戦略2018」(平成30(2018)年6月15日閣議決定)に基づき、新たな民間活力の導入の適否やその方向性について「農林水産業・地域の活力創造プラン」における木材の生産流通構造改革の推進に資するよう検討を進めた。


(6)団体の再編整備に関する施策

森林組合等に対して、国民や組合員の信頼を受けて地域の森林施策や経営の担い手として重要な役割を果たすよう、事業・業務執行体制の強化、体質の改善に向けた指導を行った。


2 財政措置

(1)財政措置

諸施策を実施するため、表のとおり林業関係の一般会計予算及び東日本大震災復興特別会計予算の確保に努めた。


平成30(2018)年度林野庁関係予算においては、一般会計に非公共事業約1,097億円、公共事業約1,900億円、また1次補正として約469億円、2次補正として約759億円を計上した。

特に、森林経営管理法の制定により、森林所有者自らが適切な経営管理を行うことができない森林の経営管理の委託を市町村が受け、意欲と能力のある林業経営者に再委託を行い、森林の経営管理の集積・集約化を行うとともに、再委託できない森林及び再委託に至るまでの森林においては、市町村が公的管理を行う「森林経営管理制度」を創設した。

「森林経営管理制度」の下で森林の経営管理の集積・集約化が見込まれる地域を中心として路網整備等を重点化し、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を図ることとした。

このため、

1)「林業成長産業化総合対策」として、

(ア)「林業・木材産業成長産業化促進対策」による、意欲と能力のある林業経営者の育成、「森林経営管理制度」の下で森林の経営管理の集積・集約化が見込まれる地域を中心とした路網整備や高性能林業機械の導入、主伐時の全木集材及びそれと一貫して行う再造林、木材関連事業者等が行う施設整備等の支援

(イ)「ICT、人づくりによる成長産業化支援対策」による、ICT等の先端技術を活用した森林施業の効率化や需給マッチングによる流通コストの削減等スマート林業の構築に向けた取組、施業現場の管理者育成等の支援

(ウ)「木材需要の創出・木材産業活性化対策」による、非住宅分野を中心としたJAS構造材等の利用拡大、中高層建築物等に活用できるCLTの利用促進、公共建築物の木造化・木質化に向けた普及促進、「地域内エコシステム」の構築促進等による新たな木材需要の創出、地域材の生産・加工・流通体制づくり、高付加価値木材製品の輸出拡大等の支援

2)「森林・林業人材育成対策」による、林業への就業前の青年に対する給付金の支給や、新規就業者を現場技能者に育成する研修等の支援のほか、効率的な現場作業を主導することのできる現場管理責任者を育成するためのキャリアアップ研修等の支援

3)「森林・山村多面的機能発揮支援対策」による、地域における活動組織が実施する森林の保全管理や森林資源の利用等の取組の支援のほか、地域における自伐林業グループ等による将来的な林業経営の集約化に資する森林管理や資源利用等の取組の支援

4)「花粉発生源対策推進事業」による、花粉症対策苗木への植替えの支援、花粉飛散防止剤の実証試験、スギ・ヒノキの雄花着花状況調査等の推進やこれらの成果の普及啓発等の一体的な実施

5)「シカによる森林被害緊急対策事業」による、被害が深刻な地域等における林業関係者が主体となった広域かつ計画的な捕獲等のモデル的な実施

6)林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現するため、意欲と能力のある林業経営者や、その経営者が経営管理を集積・集約化する地域に対し、間伐や路網整備、主伐後の再造林等を重点的に支援する森林整備事業の推進

7)集中豪雨、流木災害の拡大等に対する山地防災力の強化のため、荒廃山地の復旧・予防対策、総合的な流木対策の強化等を行う治山事業の推進

等の施策を重点的に講じた。

また、東日本大震災復興特別会計に非公共事業約58億円、公共事業約266億円を盛り込んだ。


(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進した。

「森林・山村対策」としては、

1)公有林等における間伐等の促進

2)国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した施業の集約化に必要な活動

3)国が実施する「緑の雇用」新規就業者育成推進事業等と連携した林業の担い手育成及び確保に必要な研修

4)民有林における長伐期化及び複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

5)地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

6)市町村の森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講じた。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置、上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講じた。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とした。

また、上記のほか、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の整備、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じた。


3 立法措置

第196回通常国会において以下の法律が成立した。

森林経営管理法(平成30年法律第35号)

独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律(平成30年法律第36号)


4 税制上の措置

林業に関する税制について、平成30(2018)年度税制改正において、

1)木質バイオマス発電設備等の再生可能エネルギー発電設備等の取得等をした場合に、取得価額の20%の特別償却ができることとすること(所得税・法人税)

2)山林所得に係る森林計画特別控除(収入金額の20%控除等)の適用期限を2年延長すること(所得税)

3)軽油引取税の課税免除の特例措置(林業、木材加工業、木材市場業、堆肥製造業)の適用期限を3年延長すること(軽油引取税)

等の措置を講じた。

このほか、令和元(2019)年度税制改正において森林環境税及び森林環境譲与税を創設することとした。


5 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫資金の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金について、貸付計画額を223億円とした。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を60億円とした。

森林の取得や木材の加工及び流通施設等の整備や災害からの復旧を行う林業者等に対する利子助成を実施した。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施した。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について、貸付計画額を42億円とした。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

木材の生産又は流通の合理化を推進するために必要な資金等を低利で融通した。

意欲と能力のある林業経営者等を支援するため、貸付利率の優遇、伐採・造林の一貫作業に対応した資金の新設等を行い貸付枠は600億円とした。

また、本資金の借入れに債務保証を利用する場合に低位の貸付利率を適用する措置を講じた。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証の活用を促進した。

東日本大震災により被災した林業者・木材産業者に対する保証料の免除等を実施した。

「独立行政法人農林漁業信用基金法」(平成14年法律第128号)の一部改正により、債務保証を受けるための資本金要件を「1,000万円以下」から「3億円以下」に引き上げるとともに、政府及び都道府県以外の出資者に対して出資持分の払戻しが可能とされた。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行った。

その貸付枠は、4億円とした。


6 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、「農林水産省政策評価基本計画」(5年間計画)及び毎年度定める「農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を実施した。

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader