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林野庁

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第1部 第4章 第3節 木材利用の動向(2)


(2)建築分野における木材利用

(住宅分野は木材需要に大きく寄与)

我が国では、建築物の木造率は住宅分野で高く、新設住宅着工戸数の約半分が木造となっている(*171)。また、平成27(2015)年に農林水産省が実施した「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」で消費者モニター(*172)に対して今後住宅を建てたり、買ったりする場合に選びたい住宅について尋ねたところ、「木造住宅(昔から日本にある在来工法のもの)」及び「木造住宅(ツーバイフォー工法など在来工法以外のもの)」と答えた者が74.7%となり、「非木造住宅(鉄筋、鉄骨、コンクリート造りのもの)」と答えた者の11.1%を大きく上回った(資料4-43)。このように、住宅の建築用材の需要が、木材の需要、特に国産材の需要にとって重要となっている。


我が国における木造住宅の主要な工法としては、「在来工法(木造軸組構法)」、「ツーバイフォー工法(枠組壁工法)」及び「木質プレハブ工法」の3つが挙げられる(*173)。平成30(2018)年における工法別のシェアは、在来工法が76%、ツーバイフォー工法が22%、木質プレハブ工法が2%となっている(*174)。在来工法による木造戸建て注文住宅については、半数以上が年間供給戸数50戸未満の中小の大工・工務店により供給されたものであり(*175)、中小の大工・工務店が木造住宅の建築に大きな役割を果たしている。

林野庁では、川上からの安定的な原木供給、生産、流通及び加工の各段階でのコストダウンや、住宅メーカー等のニーズに応じた寸法安定性に優れた乾燥材の供給等の最適な加工・流通体制の構築等の取組、地域材の需要を喚起する取組を進めてきた。住宅メーカーにおいても、国産材を積極的に利用する取組が拡大している。

また、平成27(2015)年3月には、ツーバイフォー工法部材のJASが改正(*176)され、国産材(スギ、ヒノキ、カラマツ)のツーバイフォー工法部材強度が適正に評価されるようになった。さらに、九州や東北地方においてスギのスタッド(*177)の量産に取り組む事例がみられるなど、国産材のツーバイフォー工法部材の安定供給体制も整備されつつある(事例4-8)。

これらの取組により、これまであまり国産材が使われてこなかったツーバイフォー工法において、国産材利用が進んでいる。

事例4-8 国産材スギツーバイフォー工法部材の安定供給体制を構築

平成23(2011)年に株式会社伊万里(いまり)木材市場により設立された株式会社さつまファインウッド(鹿児島県霧島(きりしま)市)は、ハウスメーカーからツーバイフォー工法部材の国産材化の依頼を受けたことを契機に、枠組壁工法(注)構造用製材のJAS認証を平成27(2015)年7月に取得し、国産材でのツーバイフォー工法部材の量産ラインを整備してきた。

株式会社伊万里木材市場が九州全域の製材工場に原木を供給し、そこから株式会社さつまファインウッドに向けてツーバイフォー工法部材向けの原板が供給される安定供給体制が構築されており、現在同社では、月間3,000m3のスギ2×4用材及び2×6用材の生産・販売を行っている。同社の製品は、九州を中心にツーバイフォー工法建築物のたて枠材や、上下枠材に利用されている。

同社は、為替の変動リスクがないことや輸送距離が短いこと等の利点により国産材のツーバイフォー工法部材の需要が増加していることから、今後も国産材製品の品質を担保しながら、地域の製材所等と連携し、国産材の新たな需要へ対応していきたいとしている。


注:ツーバイフォー工法

資料:木材建材ウイークリー, No.2171, 13頁


(*171)新設住宅着工戸数と木造率については、156-157ページを参照。

(*172)この調査での「消費者」は、農林水産行政に関心がある20歳以上の者で、原則としてパソコンでインターネットを利用できる環境にある者。

(*173)「在来工法」は、単純梁形式の梁・桁で床組みや小屋梁組を構成し、それを柱で支える柱梁形式による建築工法。「ツーバイフォー工法」は、木造の枠組材に構造用合板等の面材を緊結して壁と床を作る建築工法。「木質プレハブ工法」は、木材を使用した枠組の片面又は両面に構造用合板等をあらかじめ工場で接着した木質接着複合パネルにより、壁、床、屋根を構成する建築工法。

(*174)国土交通省「住宅着工統計」(平成30(2018)年)。在来工法については、木造住宅全体からツーバイフォー工法、木質プレハブ工法を差し引いて算出。

(*175)請負契約による供給戸数についてのみ調べたもの。国土交通省調べ。

(*176)「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格の一部を改正する件」(平成27年農林水産省告示第512号)

(*177)ツーバイフォー工法における壁構面のたて枠。



(地域で流通する木材を利用した家づくりも普及)

平成の初め頃(1990年代)から、木材生産者や製材業者、木材販売業者、大工・工務店、建築士等の関係者がネットワークを構築し、地域で生産された木材や自然素材を多用して、健康的に長く住み続けられる家づくりを行う取組がみられるようになった(*178)。

林野庁では、平成13(2001)年度から、森林所有者から大工・工務店等の住宅生産者までの関係者が一体となって、消費者の納得する家づくりに取り組む「顔の見える木材での家づくり」を推進している。平成29(2017)年度には、関係者の連携による家づくりに取り組む団体数は553、供給戸数は18,759戸となった(資料4-44)。


また、国土交通省では、平成24(2012)年度から、「地域型住宅ブランド化事業」により、資材供給から設計・施工に至る関連事業者から成るグループが、グループごとのルールに基づき、地域で流通する木材を活用した木造の長期優良住宅(*179)等を建設する場合に建設工事費の一部を支援してきた。平成27(2015)年度からは「地域型住宅グリーン化事業」により、省エネルギー性能や耐久性等に優れた木造住宅等を整備する地域工務店等に対して支援しており、平成31(2019)年3月現在、794のグループが選定され、約9,000戸の木造住宅等を整備する予定となっている。

総務省では、平成12(2000)年度から、都道府県による地域で流通する木材の利用促進の取組に対して地方財政措置を講じており、地域で流通する木材を利用した住宅の普及に向けて、都道府県や市町村が独自に支援策を講ずる取組が広がっている。平成30(2018)年8月現在、38府県と275市町村が、地域で流通する木材を利用した住宅の普及に取り組んでいる(*180)。


(*178)嶋瀬拓也(2002)林業経済, 54(14): 1-16.

(*179)構造の腐食、腐朽及び摩損の防止や地震に対する安全性の確保、住宅の利用状況の変化に対応した構造及び設備の変更を容易にするための措置、維持保全を容易にするための措置、高齢者の利用上の利便性及び安全性やエネルギーの使用の効率性等が一定の基準を満たしている住宅。

(*180)林野庁木材産業課調べ。都道府県や市町村による取組の事例については、ホームページ「日本の木のいえ情報ナビ」を参照。



(非住宅分野における木材利用)

住宅取得における主たる年齢層である30歳代、40歳代(*181)の世帯数の減少や、住宅ストックの充実と中古住宅の流通促進施策の進展などにより、今後、我が国の新設住宅着工戸数は減少する可能性がある。令和12(2030)年の新設住宅着工戸数は60万戸程度に減少するとの試算もある(*182)。

我が国の建築着工床面積の現状を用途別・階層別にみると、1~3階建ての低層住宅の木造率は8割に上るが、4階建て以上の中高層建築及び非住宅建築の木造率はいずれも1割以下である(資料4-45)。これまで木材需要の大半を占めていた低層住宅分野の需要が減退していくことが見込まれる中、林業・木材産業の成長産業化を実現していくためには、中高層分野及び非住宅分野の木造化や内外装の木質化を進め、新たな木材需要を創出することが極めて重要である。

資料4-45 階層別・構造別の着工建築物の床面積

平成27(2015)年に農林水産省が実施した「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」で、消費者モニターに対して都市部において木材が利用されることを期待する施設について尋ねたところ、「学校や図書館などの公共施設」が88.2%、「駅やバスターミナルなどの旅客施設」が51.7%、「ホテルなどの宿泊施設」が39.0%などとなっており、非住宅分野での木材利用が期待されている(資料4-46)。


木材を建築材料として活用することは、循環型社会の形成や地域経済の活性化への貢献が期待される等の背景を踏まえ、建築物の木造・木質化に資する観点等から、建築基準の合理化が進められている。

平成30(2018)年6月、建築基準法の一部を改正する法律(*183)が公布され、木造建築物の防耐火に係る制限の合理化が図られた。同改正により、耐火構造等とすべき木造建築物の規模が、高さ13m超から16m超へ見直されたほか、耐火構造等とすべき場合でも、必要な措置を講ずることにより、木材をそのまま見せる現しで使うこと等が可能となった。同法の施行により、中層建築物や市街地における建築物の木造化の一層の促進が期待される(資料4-47)。

資料4-47 中層建築物において構造部材である木材をそのまま見せる「現し」の実現

林野庁では、非住宅分野を中心に木造建築の需要を開拓し、品質及び性能の確かなJAS構造材の積極的な活用を促進するため、平成30(2018)年度に「JAS構造材活用拡大宣言」を行う建築事業者等の登録及び公表による事業者の見える化及びJAS構造材の実証支援を実施した。また、平成31(2019)年2月に、民間企業(建設事業者、建材流通事業者、施主等の木材需要者)や関係団体、行政等が連携し、非住宅分野における木材利用促進に向けた検討を行う場である「ウッド・チェンジ・ネットワーク」を立ち上げ、需要サイドとしての木材利用を進めるための課題・条件の整理や、建築物への木材利用方策の検討等を進めていくこととしている。

近年では、低層の非住宅建築において、木造建築の競争力が向上しつつあり、工務店・住宅メーカーが木造非住宅建築に取り組む動きや(事例4-6)、都市部の商業施設等において、木造と他構造の混構造による木造化や内装木質化を図る事例もみられる(*184)。

非住宅分野における木材利用の拡大に向けたシンボル性の高い取組として、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」における木材利用がある(*185)。同大会の主要施設となる新国立競技場では、スギ・カラマツの集成材と鉄骨のハイブリッド屋根構造等に約2,000m3の木材を使用する予定であるほか、全国の63地方公共団体が事業協力者として提供するものを含め、約1,500m3の木材が使用される予定の選手村ビレッジプラザや、木造のアーチ屋根の梁(はり)や外装に約2,300m3の木材を使用する予定の有明体操競技場の建設が進められている(*186)。


(*181)国土交通省「平成29年度住宅市場動向調査」

(*182)野村総合研究所 (2018) 2030年の住宅市場:11.

(*183)「建築基準法の一部を改正する法律」(平成30年法律第67号)

(*184)都市部の建築事例について詳しくは、トピックス5-6ページ及び214ページ「各種施設等での木材利用の事例」も参照。

(*185)これまで国内外で開催されたオリンピック・パラリンピック競技大会における木材利用の例については、「平成25年度森林及び林業の動向」の177ページを参照。

(*186)詳しくは、「平成27年度森林及び林業の動向」の3ページを参照。



(木材利用に向けた人材の育成)

戸建て住宅のみならず様々な建築物について、幅広く木材利用を推進していくためには、木造建築物の設計を行う技術者等の育成も重要である。このため、林野庁では、国土交通省と連携し、平成22(2010)年度から、木材や建築を学ぶ学生等を対象とした木材・木造技術の知識習得や、住宅・建築分野の設計者等のレベルアップに向けた活動に対して支援してきた(*187)。平成26(2014)年度からは、木造率が低位な非住宅建築物や中高層建築物等へのCLT等の新たな材料を含む木材の利用を促進するため、このような建築物の木造化・木質化に必要な知見を有する設計者等の育成に対して支援している。また、都道府県独自の取組としても、木造建築に携わる設計者等の育成が行われている。


(*187)一般社団法人木を活かす建築推進協議会「平成25年度木のまち・木のいえ担い手育成拠点事業成果報告書」(平成26(2014)年3月)



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-3502-8036

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