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林野庁

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第1部 第4章 第2節 木材産業の動向(7)


(7)木材流通業

木材流通業者は、素材生産業者等から原木を集荷し、樹種や径級、品質、長さ等によって仕分けた上で、個々の木材加工業者が必要とする規格や量に取りまとめて供給し、また、木材加工業者から木材製品を集荷し、個々の実需者のニーズに応じて供給する(*124)(事例4-4)。

事例4-4 山元への利益還元をモットーに「木材総合事業」を展開

奈良県及び愛知県に本社拠点を持ち、9府県で事業展開を行っている西垣林業株式会社は、社有林の山林経営のノウハウを活かし、林業経営者・山林所有者等への施業提案、立木評価、素材生産、立木買いも含め、材質・流通に応じた販売方法のコーディネートを行っており、山林経営、素材生産から市売、製材、建築まで手がける「木材総合事業」を展開している。

素材生産事業においては、地域の森林資源を有効に活用し、製材工場等に向けたスギ・ヒノキ並材の協定販売と市売向けの丸太を選別し、山元への適切な利益還元ができる方策に取り組んでいる。また、山林所有者や素材生産業者へも出材・造材方法、仕分け、配送コスト等を提案し、奈良県の桜井市場で地元の奈良県産材を中心に原木市売を行っているほか、名古屋本社では、複数の木材卸売問屋と協業して製品市場を運営している。

同社社長の西垣氏は、「大量生産の工場だけでなく、需要に合わせて地域の良材を一本一本挽く製材メーカーもまだまだ多く、木を見て木の良さを川下に提案している製材所に対し原木を安定的に供給する市場の役割は大きい」と語る。

同社は、どうすれば山元への利益還元が大きくなるのかを念頭に、協定販売や、山からの直送販売、市場でのセリ売り販売を組み合わせながら、地域に即した木材流通体制を地域と連携して構築していきたいとしている。


資料:平成30(2018)年3月9日付け日刊木材新聞2面


(*124)以下のデータは、農林水産省「平成28年木材流通構造調査」による。



(木材市売市場の動向)

木材市売市場には、原木市売市場(*125)と製品市売市場がある。木材市売市場は、生産者等から集荷した商品(原木又は製品)を保管し、買方を集めてセリ等にかけ、最高値を提示した買方に対して販売を行う(*126)。販売後は商品の保管、買方への引渡し、代金決済等の一連の業務を行い、主として出荷者からの手数料により運営している。木材市売市場等(*127)の数は平成28(2016)年には413事業所となっている。

原木市売市場は、主に原木の産地に近いところに立地し、素材生産業者等(出荷者)によって運び込まれた原木を、樹種、長さ、径級、品質、直材・曲がり材等ごとに仕分けをし、土場に椪積(はいづみ)して、セリ等により販売する。原木の仕分けに当たっては、自動選木機(*128)を使用する市場が増えている。平成28(2016)年における原木取扱量は1,068万m3で(*129)、その内訳は、国産材が1,056万m3(99%)、輸入材が12万m3(1%)となっている。

原木市売市場における国産材の主な入荷先は、素材生産業者(61%)、国・公共機関(17%)等となっているほか、自ら素材生産したもの(13%)の割合も上昇傾向である。国産材の主な販売先は製材工場(77%)、木材販売業者(15%)となっている。

また、原木市売市場は、国産材原木の流通において、素材生産業者の出荷先のうち43%、製材工場の入荷先のうち44%(うち7%は伐採現場等から直接入荷(*130))を占めている。

一方、製品市売市場は、主に木材製品の消費地に近いところに立地し、製材工場や木材販売業者(*131)(出荷者)によって運び込まれた製品や市場自らが集荷した製品を、出荷者ごと等に陳列してセリ等により販売する。平成28(2016)年における製材品取扱量(*132)は207万m3で、その内訳は、国産材製品が182万m3(88%)、輸入材製品が26万m3(12%)となっている。


(*125)森林組合が運営する場合は「共販所」という。

(*126)このほか、相対取引(売方と買方の直接交渉により価格を決める売買方法)により販売を行う場合もある。また、市場自らが商品を集荷し、販売を行う場合もある。

(*127)「木材センター」(二つ以上の売手(センター問屋)を同一の場所に集め、買手(木材販売業者等)を対象として相対取引により木材の売買を行わせる卸売機構)を含む。

(*128)原木の径級、曲がり等により自動で仕分けをする機械。

(*129)統計上は入荷量。「木材センター」の入荷量を含まない。

(*130)製材工場が、原木市売市場との間で事前に取り決めた素材の数量、造材方法等に基づき、市場の土場を経由せず、伐採現場や中間土場から直接入荷する場合。市場を経由する輸送やセリ等に係るコストの削減が図られる。

(*131)製材工場等から製品を集荷し、それらをまとめて製品市売市場に出荷する木材販売業者(木材問屋)のことを、特に「市売問屋」という。

(*132)統計上は入荷量。「木材センター」の入荷量を含まない。



(木材販売業者の動向)

木材販売業者は、自ら木材(原木又は製品)を仕入れた上で、これを必要とする者(木材市売市場、木材加工業者、消費者・実需者)に対して販売を行う。木材販売業者には木材問屋や材木店・建材店があり、その数は平成28(2016)年には7,487事業所となっている。このうち木材問屋は、素材生産業者等から原木を仕入れ、製材工場等に販売し、また、製材工場等から製品を仕入れ、材木店・建材店等に販売する。材木店・建材店は、製品市売市場や木材問屋を通じて仕入れた製品を、工務店等の建築業者等に販売するほか、これらの実需者に対して木材製品に係る様々な情報等を直接提供する立場にある。

平成28(2016)年における木材販売業者の原木取扱量(*133)は1,452万m3で、その内訳は、国産材が921万m3(63%)、輸入材が531万m3(37%)となっている。主な入荷先は、国産材の場合は商社(23%)、素材生産業者(18%)、原木市売市場(11%)等のほか、自ら素材生産したもの(11%)となっている。輸入材の場合は商社(56%)、木材販売業者(14%)、製材工場(14%)となっている。また、木材販売業者は、国産材原木の流通において、素材生産業者の出荷先のうち約1割、合板製造業の入荷先のうち約2割を占めており、輸入材原木の流通においては、製材業の入荷先のうち約6割を占めている。

木材販売業者の製材品取扱量(*134)は1,663万m3で、その内訳は、国産材製品が770万m3(46%)、輸入材製品が893万m3(54%)となっている(*135)。主な出荷先は、国産材製品、輸入材製品いずれの場合も建築業者(それぞれ43%、37%)となっている。また、木材販売業者は、木材製品の流通において、製材業の出荷先のうち、国産材製品では約2割、輸入材製品では約3割を占めている。


(*133)統計上は入荷量。

(*134)統計上は出荷量。

(*135)原木取扱量(入荷量)及び製材品取扱量(出荷量)のいずれも、木材販売業者間の取引も含めて集計された延べ数量である。


コラム インターネットを活用した木材の売り手と買い手のマッチング

国産の間伐材を活用したノベルティグッズ製作・販売等を中心に行うフロンティアジャパン株式会社(東京都江東区)は、平成30(2018)年1月からウェブサイトを通じた全国の木材・木材製品の売り手と買い手を直接つなぐマッチングサービスを開始している。

売り手となる登録業者は、全国各地の製材・加工業者であり、登録業者が自社製品や実績などの情報を専用ウェブサイトに掲載し、在庫情報もリアルタイムに公開することが可能な仕組みとなっている。一方、買い手は工務店、設計事務所、家具メーカー等を中心に多様なユーザーが対象となり、ウェブサイトで希望条件に合う各地の製材・加工業者、各種製品を探すことができ、登録業者と直接コンタクトが行えるようになっている。

同社は、買い手側には、「欲しい材がどこにあるか分からない」などの川上側の情報が少ないとの声がある一方で、売り手側である製材・加工業者には、「業界が閉鎖的で人脈に広がりがない」、「商流が多段階でユーザーのニーズを把握しづらい」などの課題があることに着目し、両者が直接コンタクトを取れるウェブサイトを開設することにした。このサイトでマッチングした製材所とメーカーの協働により、新たな商品開発に取り組む事例も出てきている。

同社は、オープンな情報で取引を活性化し、国内の林業・木材産業を活性化したいとしている。


資料:フロンティアジャパン株式会社プレスリリース(平成30(2018)年7月12日付け)

専用ウェブサイト

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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