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第 IV 章 木材産業と木材利用

1. 木材需給の動向

(1)世界の木材需給の動向

世界の木材消費量は2008年秋以降減少したが、2010年以降は再び増加傾向。

北米では針葉樹製材の消費が回復傾向。欧州では針葉樹製材の生産が主要生産国で軒並み増加、中国、米国向けの輸出も大幅に増加。ロシアでは針葉樹製材の輸出が過去最高を更新、最大の輸出先は中国。中国は16年連続で世界第一の針葉樹丸太輸入国。

平成29(2017)年11月にはTPP11協定が大筋合意に至り、平成30(2018)年3月に署名。平成29(2017)年12月には日EU・EPAが交渉妥結。


(2)我が国の木材需給の動向

木材需要量は、平成21(2009)年を底に回復傾向で、平成28(2016)年には7,808万m3(丸太換算、以下同じ)。

国産材供給量は、平成14(2002)年を底に増加傾向で、平成28(2016)年には2,714万m3。燃料用チップを含む燃料材は前年比59%増の446万m3となり、大幅に増加。

木材輸入量は、平成8(1996)年をピークに減少傾向も、平成28(2016)年には微増し5,094万m3。約9割が製品での輸入。

木材自給率は、平成28(2016)年には6年連続で上昇し、34.8%。


(3)木材価格の動向

平成28(2016)年には、国産材の素材価格、製材品価格ともに、やや上昇。

国産木材チップ価格は上昇傾向。輸入木材チップ価格は2年連続で下落。


(4)違法伐採対策

平成29(2017)年5月に「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)が施行。全ての事業者に、合法伐採木材等を利用するよう努力を義務付け。特に木材関連事業者は、取り扱う木材等について「合法性の確認」等の取組を実施。

合法伐採木材等の利用を確保するための措置を適切かつ確実に行う木材関連事業者は、登録実施機関に登録を行い、「登録木材関連事業者」という名称を使用可能。同10月から順次5機関が登録業務を開始(同年末時点)。

木材の合法性を適切に確認できるよう林野庁ホームページ「クリーンウッド・ナビ」を通じた情報提供のほか、木材関連事業者の登録促進等の取組を実施。


(5)木材輸出対策

木材輸出額は平成25(2013)年以降増加し、平成29(2017)年は前年比37%増の326億円。

中国の「木構造設計規範」の改定が、平成29(2017)年11月に公告され、平成30(2018)年8月に施行予定。この改定には、日本のスギ、ヒノキ、カラマツを構造材として規定するとともに、木造軸組構法を新たに位置付ける予定。これを見込んで、日中の木材関係者等が共同で、設計・施工に当たっての現場向けの具体的な指針の作成を実施。

平成29(2017)年12月に、ベトナムに続き、台湾に「ジャパンウッドステーション」を設置。日本産木材製品を展示・PRするとともに、市場動向等の情報を収集・提供。

平成29(2017)年6月に中国、韓国、台湾及びベトナムを対象とした「木材・木材製品の輸出拡大に向けた取組方針」を取りまとめ。


「木材・木材製品の輸出拡大に向けた取組方針(平成29(2017)年6月)」の概要

事例 プレカット加工等の技術を活かした製品輸出(「林産物の輸出取組事例集」(平成29(2017)年6月)より)

株式会社中東(石川県能美市)は、海外からの引き合いに応じて、プレカット加工した大断面構造用集成材等を韓国、中国、台湾、シンガポールに輸出。部材は駅舎、共同住宅、寺院、校舎、レストラン等に使用されており、現地での建方指導も実施。

加工技術に裏打ちされたブランド力を活かし、海外の業者に対してスギ・能登ヒバ・カラマツ等の地域材利用を提案。


2. 木材産業の動向

木材産業は、原木の購入を通じて林業や森林整備を支え、需要者のニーズに応じた様々な木材製品の供給・開発等を通じて木材利用を推進。

我が国の木材産業では、競争力のある木材製品を供給できる体制の構築が課題。林野庁では、品質及び性能の確かな製品を低コストで安定供給するため、木材加工・流通施設の整備等に対して支援。

大型の製材・合板工場等の整備の進展や木質バイオマスのエネルギー利用の拡大に対して、安定的かつ効率的な原木供給体制が課題。施業及び林地の集約化、主伐・再造林対策の強化等による原木供給力の増大、地域の核となる者が原木を取りまとめて供給する体制への転換、川上・川中・川下のマッチングの円滑化を推進。

製材業では、素材入荷量に占める国産材割合は7割。大規模工場に生産が集中する傾向。消費者ニーズや非住宅分野への対応等のため、JAS(日本農林規格)製品等の品質・性能の確かな製品の供給が必要。出荷量に占める人工乾燥材の割合は増加傾向。

集成材製造業では、国産材を原料とした集成材が徐々に増加しているものの、輸入製品を含む供給量全体に占める割合は15%。工場は大規模化の傾向。

合板製造業では、素材入荷量に占める国産材の割合は8割まで上昇。輸入製品を含む合板用材全体に占める国産材の割合は38%。工場は大規模化の傾向。

木材チップ製造業では、原料のうち木材チップ用素材のほとんどが国産材である一方、輸入木材チップを含む木材チップ消費量全体に占める国産木材チップの割合は3分の1程度。工場は大規模化の傾向。

プレカット加工業では、木造軸組構法におけるプレカット材利用率が92%まで拡大し、施工時に使用される木材の選択に重要な役割。工場は大規模化の傾向。

事例 品質・性能の確かな国産材製材の供給拡大の取組

二宮木材株式会社(栃木県那須塩原市)は、スギ平角製材をJAS認証に基づく品質・性能が明らかな製品として生産し、供給拡大に向けた取組を実施。製品の全量測定によるデータ管理と在庫保有により、強度指定や短納期の発注にも対応。地域材の需要拡大と高付加価値化に期待。

事例 国産材への原料転換

株式会社ノダは、富士川工場(静岡県富士市)において、国産材合板を生産。従来、南洋材合板が多くを占めていたフロア台板を国産材から生産。

株式会社オービス(広島県福山市)は、輸入丸太の調達価格上昇から国産材への原料転換の取組を実施。

CLT(直交集成板)を用いた中高層建築物等の木造化に期待。CLTの利用と普及に向け、CLTを用いた建築への支援、生産体制の整備等に加え、需要の一層の拡大に向けた取組を実施。木質耐火部材や、地域材を活用した横架材等の開発・普及も進展。

木質バイオマスについては、効率的なエネルギー変換・利用、セルロースナノファイバーや改質リグニン等を活用した高付加価値製品の開発が進展。

日EU・EPAやTPP11の交渉結果を受けた「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき、加工施設の生産性向上、競争力のある品目への転換、原木供給の低コスト化等を推進。

事例 CLTによる2時間耐火床構造の6階建てビル

松尾建設株式会社(佐賀県佐賀市)は、鉄骨造6階建ての事務所棟と木造2階建ての会議室棟からなる本店新社屋を建設。

事務所棟の2~6階には2時間耐火構造のCLT床を採用。高層建築物における新たな木材需要の開拓には、床へのCLTの活用も有効。

会議室棟においては異樹種構造用集成材とLVLの合成梁等を使用。

3. 木材利用の動向

(1)木材利用の意義

木材利用は、快適で健康的な住環境等の形成に寄与するだけでなく、地球温暖化の防止、森林の多面的機能の持続的発揮や地域経済の活性化にも貢献。

木材には、調湿作用、高い断熱性等の特徴。木材の香りによるリラックス効果など、木材による嗅覚、触覚、視覚刺激が生理・心理面に与える影響についても科学的根拠の蓄積等が進展。

(2)建築分野における木材利用

我が国における木材需要の約4割、国産材需要の半数が建築用材。新設住宅着工戸数の約半分は木造。住宅向け建築用材の需要が、特に国産材の需要にとって重要。

関係事業者が連携した地域で流通する木材を利用した家づくり(「顔の見える木材での家づくり」)を推進。

低層住宅分野の需要減退が見込まれる中、中高層及び非住宅分野の木造化や内外装の木質化を進め、新たな国産材需要を創出することが重要。非住宅分野における木材利用の拡大に向けたシンボル性の高い取組として「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」における木材利用を推進。設計者等の人材の育成も支援。

事例 ツーバイフォー工法による5階建て商業ビル

株式会社リヴ(京都府向日市)は、同市内に、 2~5階がツーバイフォー工法による木造(耐火建築物)となっている大型商業ビルを建設。

同社は、地域材を活用したツーバイフォー工法の採用により、品質・性能を確保しながら一般的な鉄骨造、鉄筋コンクリート造と比べて低コスト化を実現。地域の工務店による木造大型商業ビルの建築事例として注目。

(3)公共建築物等における木材利用

公共建築物等木材利用促進法に基づき公共建築物等における木材の利用を促進。平成29(2017)年6月に同法に基づく基本方針を変更。3階建ての学校等の木造化の促進、CLTや木質耐火部材等の新たな木質部材の活用に積極的に取り組むことなどを規定。

平成28(2016)年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は、前年度と同程度の11.7%。うち低層では前年比0.4ポイント上昇の26.4%。都道府県ごとの公共建築物の木造率は、都市部では低位など、ばらつきがある状況。

低層の公共建築物では民間事業者が整備するものが全体の6割以上、うち約9割が医療・福祉施設であり、これらの木造化・木質化を推進するための取組が必要。

地盤改良用の木杭やコンクリート型枠(かたわく)用合板など土木分野における木材利用を推進。

事例 木質材料による医療施設が都市部で実現(「公共建築物における木材利用優良事例集」より)

医療法人社団中郷会新柏クリニック(千葉県柏市)は、医院の新築移転に当たり、木の癒し効果に着目。新たな建物は、鉄筋コンクリート造・鉄骨造・木造の混構造で、木質構造部材にはモルタルによる燃え止まり層を持つ長野県産カラマツの耐火集成材を、内装材には静岡県産ヒノキを使用。



(4)木質バイオマスのエネルギー利用

エネルギー利用された間伐材・林地残材等は年々増加し、平成28(2016)年には前年比61%増の433万m3。薪、炭等を含めた燃料材の国内生産量は446万m3(自給率76.8%)。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用した木質バイオマス発電施設が各地で整備され、主に間伐材等由来のバイオマスを活用した発電施設については、平成29(2017)年3月末現在、出力2,000kW以上の施設35か所、出力2,000kW未満の施設11か所が稼働。

木質バイオマスの熱利用・熱電併給は、初期投資の少ない小規模な施設であっても高いエネルギー変換効率を実現可能。近年、公共施設、一般家庭、施設園芸等において、木質バイオマスを燃料とするボイラーやストーブの導入が進展。「地域内エコシステム」の構築に向けた先行的なモデル事業を実施し、成果や課題を検証。

(5)消費者等に対する木材利用の普及

一般消費者を対象に木材利用の意義を普及啓発する「木づかい運動」を展開。

「ウッドデザイン賞」では、木の良さや価値を再発見させる製品や取組について、特に優れたものを消費者目線で評価、表彰。平成29(2017)年度は250点が受賞。

子どもから大人までが木の良さや利用の意義を学ぶ「木育」を推進。ワークショップ等を通じた実践的な活動や、関係者間のネットワーク構築の取組等が全国で展開。

事例 地域の活性化につながる木材利用の取組

3回目となる「ウッドデザイン賞」では、東日本旅客鉄道株式会社等による「ノーザンステーションゲート秋田プロジェクト」が農林水産大臣賞を受賞。秋田駅周辺施設のリニューアルにおいて、産学官が連携し、県産材を活用して木の持つ「親しみやすさ」や「心地よさ」を引き出し、集客効果にも寄与。

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