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林野庁

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第 III 章 林業と山村(中山間地域)

1. 林業の動向

(1)林業生産の動向

林業産出額は、近年はほぼ横ばいで推移。平成28(2016)年は前年比3%増の4,662億円と、平成14(2002)年以降で最も高い水準となった。

国産材の生産量は平成14(2002)年の1,509万m3を底に増加し、平成28(2016)年は2,066万m3。樹種別ではスギが1,185万m3(57%)、ヒノキが246万m3(12%)、カラマツが231万m3(11%)。地域別では東北(25%)、九州(24%)、北海道(16%)等が多い。



(2)林業経営の動向

「2015年農林業センサス」によると、林家の数は約83万戸。保有山林面積が10ha未満の林家が88%を占め、小規模・零細な所有構造。

林業経営体による素材生産量は1,989万m3で5年前の前回調査から27%増加。民間事業体と森林組合による素材生産量の合計は1,367万m3で41%増加し、素材生産量全体に占める割合は、62%から69%に上昇。

素材生産量のうち、受託若しくは立木買いによる素材生産量の合計は1,555万m3で、その割合は70%から78%に上昇。

5年前の前回調査から素材生産量規模が大きい林業経営体の割合は増加しているが、素材生産量規模が小さい林業経営体が多い状況。

平成29(2017)年度税制改正により相続税の立木評価に関する標準価額の引下げ等の見直しを実施。


(3)林業の生産性の向上に向けた取組

効率的な作業システムにより生産性向上を図るためには、複数の森林所有者の森林を取りまとめ、森林施業を一体的に実施する「施業の集約化」が必要。このため、提案型集約化施業を担う「森林施業プランナー」の育成、森林経営計画制度の現場の状況に応じた運用、集約化に必要な調査や合意形成等を推進。

林道、林業専用道、森林作業道を適切に組み合わせた路網の整備を推進。

林業機械を活用した効率的な作業システムを普及するとともに、我が国の森林に対応した林業機械を開発・改良。

近年は情報通信技術(ICT)の活用が進展。出材する木材の数量や出荷量等について、瞬時に把握する取組、レーザ計測やドローンにより把握した森林資源量の解析や丸太の計測作業、路網整備や間伐等の森林整備の計画策定等に活用。

事例 航空レーザ計測データを活用した施業集約化と林業経営の効率化の取組

山形県の金山町森林組合は、航空レーザ計測の実施により詳細な森林資源情報を整備。これらの情報を活用することで、森林のゾーニングや机上での路網計画の検討、木材生産量の予測が可能に。

タブレット端末等により取得した現場の画像を組み合わせて共有し活用することで、効率的な業務が実行可能となり、組織全体の生産性も向上。

事例 製造業と連携した林業の収益性向上に向けた取組

石川県では、コマツと連携し、低コスト作業システムの構築による林業の収益性向上のモデルづくりを推進。

伐採前の森林資源量調査では、コマツが建設現場で実用化しているドローンの3D計測技術の活用により森林資源量を解析し、作業を省力化。また、丸太の計測装置を取り付けた高性能林業機械の活用により、造材時に自動的に直径や材積を計測し、作業を省力化。


(4)林業労働力の動向

林業従事者数は減少傾向。伐木・造林・集材従事者は近年増加している一方で、育林従事者は長期的に減少傾向で推移。高齢化率(65歳以上)は平成22(2010)年には21%まで低下したが、平成27(2015)年は25%に上昇。若年者率(35歳未満)は平成22(2010)年には18%まで上昇したが、全産業の若年者率が低下する中、平成27(2015)年はほぼ横ばいの17%に。平均年齢は若返り傾向。

平成15(2003)年度から、林業就業に意欲を有する若者に対して基本的な技術の習得を支援する「緑の雇用」事業を実施。平成28(2016)年度までに同事業活用による新規就業者は約1万7千人。平成23(2011)年度以降、新規就業者数は3千人前後で推移。

全国各地で、就業前の若手林業技術者の教育・研修機関を新たに整備する動きが活発化。

林業の労働災害発生率は依然として高水準であり、安全な労働環境の整備が課題。


2. 特用林産物の動向

特用林産物は林業産出額の約5割を占め、地域経済の活性化や雇用の確保に貢献。

特用林産物の生産額の9割近くがきのこ類。きのこ類の生産量は平成23(2011)年以降はほぼ横ばい。きのこ生産者戸数は減少傾向。

きのこ類の価格は、平成28(2016)年は全体的に上昇し、平成27(2015)年に前年から大幅に上昇した乾しいたけについても引き続き上昇。きのこ類の消費拡大・安定供給等に向けた取組を支援。

木炭の生産量は長期的に減少傾向(平成28(2016)年は2.4万トン)。竹材(竹紙等の原料)の生産量は平成22(2010)年以降増加(同127万束)。薪の生産量は平成25(2013)年以降5万m3(丸太換算)前後で推移。このほか、山菜、薬草、漆等も生産。

3. 山村(中山間地域)の動向

(1)山村の現状

その多くが中山間地域に位置する山村は、住民が林業を営む場であり、森林の多面的機能の発揮に重要な役割。林業は、雇用の確保を通じて山村の振興に貢献する産業であり、これらの地域の振興を図る上でも、林業の成長産業化が大きな政策的課題。

「山村振興法」に基づく振興山村は国土面積の5割、林野面積の6割を占めるが、過疎化・高齢化が進行し、里山林等が荒廃。

一方、山村には豊富な森林資源、水資源、美しい景観、伝統・文化等があり、都市住民の関心も高まり。

(2)山村の活性化

「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)」(平成29(2017)年12月)等において、地方創生の基本目標達成のための施策の一つとして林業の成長産業化が位置付け。森林資源の循環利用を図りつつ、成長産業化を実現することが必要。

里山林等の保全管理を進めるためには、地域住民が森林資源を活用しながら持続的に里山林等と関わる仕組みをつくることが必要。地域住民による里山林の保全管理や森林資源利用等の取組を支援。

自ら伐採等の施業を行う「自伐林家」が、近年、地域の林業の担い手として、特に地域活性化の観点から注目。

都市との交流を促進するため、森林空間を観光資源として活用する「農泊」の取組や環境教育、体験活動等の場として総合的に利用する取組を推進。

事例 住民自ら伐採等の施業を行い地域の山を守る活動を実施

島根県津和野町の「高田里山を守る会」は、里山林に侵入してきた竹の伐採や間伐等の森林整備を実施。里山林の景観が改善されるとともに、獣害も軽減。地区の自治会が主体となって立ち上げた同会の活動には、様々な世代が参加。地域のつながりを強めるとともに、高齢者にとっての生きがいにも。

事例 森林組合が中心となって農泊を推進

岐阜県中津川市加子母(旧加子母村)では、加子母森林組合が中心となり、地域が一丸となって「農泊」をビジネスとして実施できる体制の整備に向けた取組を実施。

マーケティングに基づく体験プログラムの開発等を行い、プロモーションの強化によってインバウンドを含む観光客の増加を目指す。

お問合せ先

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