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林野庁

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第1部 第 IV 章 第2節 木材産業の動向(9)

(9)合板・製材・構造用集成材等の木材製品の国際競争力強化

平成27(2015)年10月の12か国によるTPP交渉の大筋合意を受けて同11月に決定された「総合的なTPP関連政策大綱」に基づき、合板・製材の国際競争力強化対策が実施されてきた。

さらに、平成29(2017)年7月の日EU・EPAの大枠合意及び同11月の11か国によるTPP11協定の大筋合意を踏まえ、同11月24日にTPP等総合対策本部において同大綱を改訂し、「総合的なTPP等関連政策大綱」として決定した。この中で、強い農林水産業の構築(体質強化対策)として、林産物については、原木供給の低コスト化を含めて合板・製材の生産コスト低減を進めること、構造用集成材等の木材製品の競争力を高めるため、加工施設の生産性向上、競争力のある品目への転換、木材製品の国内外での消費拡大対策に取り組むことのほか(資料 IV -35)、違法伐採対策に取り組むこととしている。

資料IV-35 合板・製材・集成材等の競争力強化対策

コラム 製材・集成材メーカーによる四半世紀以上にわたる非住宅分野への挑戦

木造車道橋「杉の木橋(すぎのきばし)」(宮崎県小林市、平成9(1997)年完成)
木造車道橋「杉の木橋(すぎのきばし)」
(宮崎県小林市、平成9(1997)年完成)
CLT加工機を導入した新工場棟(鹿児島県肝付町、平成29(2017)年完成)
CLT加工機を導入した新工場棟
(鹿児島県肝付町、平成29(2017)年完成)
大断面集成材を用いたホテル施設(鹿児島県鹿児島市、平成3(1991)年完成)
大断面集成材を用いたホテル施設
(鹿児島県鹿児島市、平成3(1991)年完成)

製材・集成材等を製造する山佐木材(やまさもくざい)株式会社(鹿児島県肝付町(きもつきちょう))は、平成3(1991)年にスギ構造用集成材では全国初のJAS認証(注1)を取得(後にスギ大断面集成材でもJAS認証を取得)、平成9(1997)年から木造車道橋を建設してきたほか、スギ構造用集成材に鉄筋を挿入して高剛性、高耐力とした構造部材(注2)の開発や、CLT(注3)の製造など、新たな木質部材の開発・活用にも積極的に取り組み、四半世紀以上にわたり非住宅分野への挑戦を続けてきた。

更なる挑戦として、同社は平成29(2017)年11月に、全国でのCLT需要の長期的な増加を見越し、同町内にCLT工場棟などを新設してスギCLTの製造体制を増強した。

同工場棟には、3.5m×13.5mまでのCLTパネルを切削できる加工機を導入した。CLTパネルのプレカット加工は、意匠面はもとより、建て方の工期短縮というCLTパネル工法の利点の更なる発揮や、CLT同士の接合による大規模建造物への対応等につながるもので、CLTの需要の一層の拡大への貢献が期待される。また、同工場棟の建屋自体にも、同社で生産する新たな木質部材が多く活用され、耐力壁としてCLTが使用されているほか、柱や梁(はり)にはスギ構造用集成材に鉄筋を挿入した構造部材が使用されている。

同社が大断面集成材を使用して取り組んだ最初の非住宅建築は、ホテルのレストラン棟(鹿児島県鹿児島市)である。平成3(1991)年に完成したこの建物には、湾曲集成材が用いられるなど、同社が当時持っていたノウハウが意匠面、構造面ともに多く活かされている。この建物は、明治維新で日本の礎を築いた西郷隆盛の最期の地として知られる高台の上にあり、鹿児島市街地から錦江湾、桜島までを一望する観光地において、四半世紀以上にわたり、国内外の観光客等に木造建築の魅力と可能性を伝え続けている。


注1:取得当時はJAS認定と呼称。平成29(2017)年のJAS法の改正により、現在はJAS認証と呼称。

2:集成材に鉄筋を挿入した構造部材について詳しくは、「平成26年度森林及び林業の動向」の42ページを参照。

3:CLTについて詳しくは158-160ページを参照。

資料:森林技術第910号(平成30(2018)年1月10日)、平成29(2017)年11月8日付け日刊木材新聞8面、山佐木材株式会社ホームページ「施工実績」、福岡大学 橋と耐震システム研究室 ホームページ「木橋資料館」



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