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第1部 第 III 章 第2節 特用林産物の動向(1)

「特用林産物」とは、一般に用いられる木材を除き、森林原野を起源とする生産物の総称であり、食用のきのこ類、樹実類や山菜類等、うるしや木ろう等の伝統工芸品の原材料、竹材、桐材、木炭等が含まれる。特用林産物は、林業産出額の約5割を占めており、木材とともに、地域経済の活性化や雇用の確保に大きな役割を果たしている(*80)。以下では、きのこ類をはじめとする特用林産物の動向について記述する。


(*80)栽培きのこ類の産出額については、84-85ページを参照。



(1)きのこ類の動向

(きのこ類は特用林産物の生産額の9割近く)

平成28(2016)年の特用林産物の生産額は、前年比3%増の2,812億円であった。このうち、きのこ類は前年比1%増の2,400億円となり、全体の9割近くを占めている。このほか、樹実類や山菜類等のその他食用が前年比14%増の324億円、木炭やうるし等の非食用が同6%増の88億円となっている。

平成28(2016)年のきのこ類の生産額の内訳をみると、生しいたけが733億円で最も多く、次いでぶなしめじが487億円、まいたけが350億円の順となっている(*81)。

また、きのこ類の生産量は、長期的に増加傾向にあったが、近年は46万トン前後で推移しており、平成28(2016)年は前年比1%増の45.7万トンとなった。内訳をみると、えのきたけ(13.3万トン)、ぶなしめじ(11.6万トン)、生しいたけ(7.0万トン)で生産量全体の約7割を占めている(資料 III -33)。

きのこ生産者戸数は、減少傾向で推移しており、きのこ生産者戸数の多くを占める原木しいたけ生産者戸数についても同様の傾向となっている(資料 III -34)。


(*81)林野庁プレスリリース「平成28年の特用林産物の生産動向等について」(平成29(2017)年8月25日付け)



(輸入も輸出も長期的には減少)

きのこ類の輸入額は、平成28(2016)年には、円高方向への推移により輸入単価が下落したこと等の影響により、前年比15%減の142億円となった。このうち、乾しいたけが前年比21%減の63億円(5,134トン)、まつたけが同6%減の47億円(981トン)、生しいたけが同25%減の6.8億円(2,015トン)、乾きくらげは同9%減の23億円(2,350トン)となっている。これらのきのこ類の輸入先のほとんどは中国である(*82)。生しいたけの輸入量は、ピーク時の平成12(2000)年には4万トンを超えていたものの、平成13(2001)年のセーフガード暫定措置の発動の影響等により、大幅に減少し、その後も減少傾向で推移し、平成28(2016)年には2,015トンとなっている(資料 III -35)。

一方、輸出について乾しいたけをみると、平成28(2016)年は、前年に全体の5割以上を占めていた台湾への輸出量が大きく減少した影響により、輸出額は前年比26%減の1.8億円(30トン)となっている。乾しいたけは、戦後、香港やシンガポールを中心に輸出され、昭和59(1984)年には216億円(輸出量は4,087トンで当時の国内生産量の約2割に相当)に上った。しかし、昭和60年代以降、中国産の安価な乾しいたけが安定的に供給されるようになったことから、日本の輸出額は長期的に減少してきている。


(*82)林野庁「特用林産基礎資料」



(きのこ類の消費拡大・安定供給に向けた取組)

きのこ類の消費の動向を年間世帯購入数量の推移でみると、他のきのこが増加傾向であるのに対し、生しいたけは横ばい、乾しいたけは下落傾向で推移している(資料 III -36)。

きのこ類の価格は、平成28(2016)年は、全体的に上昇した。乾しいたけについては平成20(2008)年の5,022円/kgをピークに下落が続いていたが、平成27(2015)年に前年から大幅に上昇し、平成28(2016)年は東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響により生産量が少ない状況が続いていること等により、前年比4%増の5,047円/kgと引き続き上昇した(資料 III -37)。

林野庁では、きのこ類の消費拡大のため、関係団体とも連携して、消費者に向けてきのこ類のおいしさや機能性(*83)についてPR活動を実施している。さらに、きのこの生産団体等においても、きのこの消費拡大に向けて様々な取組を行っている(事例 III -4)。

また、きのこの安定供給に向けて、効率的で低コストな生産を図るためのほだ場等の生産基盤や生産・加工・流通施設の整備に対して支援している。

事例 III -4 原木しいたけのブランド化の取組

のとてまり
のとてまり
鳥取茸王
鳥取茸王

石川県能登半島の先端に位置する奥能登(おくのと)地域は、県内の原木しいたけ生産量の約8割を占める産地であるが、過疎化や高齢化に加えしいたけの価格の低迷によりその生産量は年々減少し、産地の衰退が危惧されてきた。

このような中、同地域で生産されている原木しいたけ「のと115」による産地再生を図るため、平成22(2010)年に「奥能登原木しいたけ活性化協議会」を設立し、最高級品の「のとてまり」を牽(けん)引役にPR活動等に努めており、平成29(2017)年12月の初競りでは最高値が17万円/箱(6個入)と過去最高を更新するなど、知名度が向上している。

また、鳥取県においても、平成26(2014)年に「原木しいたけブランド化促進協議会」が設立され、一度は生産が途絶えかけた「鳥取茸王(たけおう)」のブランド再興に取り組んでおり、生産者育成や販路開拓を進めている。最近では、首都圏有名百貨店で定番商品化されるとともに、京都老舗料亭からの引き合いも多くなっている。


(*83)低カロリーで食物繊維が多い、カルシウム等の代謝調節に役立つビタミンDが含まれているなど。




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