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第1部 第 III 章 第1節 林業の動向(3)

(3)林業の生産性の向上に向けた取組

(ア)施業の集約化

新たな森林管理システムは、自ら適切に経営管理を行うことができない森林所有者の森林を集積・集約化するものである(*33)が、林業経営に関心のある森林所有者であっても所有規模が小規模零細であるため、個々の森林所有者が単独で効率的な施業を実施することが難しい場合が多い。このため、隣接する複数の森林所有者が所有する森林を取りまとめて、路網整備や間伐等の森林施業を一体的に実施する「施業の集約化」の推進が必要となっている。


(*33)新たな森林管理システムの構築の方向性については、第 I 章(25-32ページ)を参照。



(生産性の向上には施業の集約化が必要)

施業の集約化により、作業箇所がまとまり、路網の合理的な配置や高性能林業機械を効果的に使った作業が可能となることから、素材生産コストの縮減が期待できる。また、一つの施業地から供給される木材のロットが大きくなることから、径級や質の揃った木材をまとめて供給することが容易となり、市場のニーズに応えるとともに、価格面でも有利に販売することが期待できる。

施業の集約化の推進に当たっては、森林所有者等から施業を依頼されるのを待つのではなく、林業事業体から森林所有者に対して、施業の方針や事業を実施した場合の収支を明らかにした「施業提案書」を提示して、森林所有者へ施業の実施を働き掛ける「提案型集約化施業」が行われている(*34)(事例 III -1)。

事例 III -1 航空レーザ計測データを活用した施業集約化と林業経営の効率化の取組

山形県金山町(かねやままち)では、木材価格の長期低迷等による森林所有者の所有意識の低下や共有林等の所有者不明の森林の増加が危惧される中、県内では大型集成材工場の進出や木質バイオマス発電所の設置により新たな木材需要が生まれており、更なる生産性向上が求められる状況となっている。

これらの問題解決のため、金山町森林組合は、航空レーザ計測の実施により短期間で、傾斜や路網等の詳細な地理・地形情報や単木レベルの森林資源情報を整備した。これらの情報を活用することで、森林資源量や傾斜・標高、路網等の細かい条件を考慮したゾーニングや、机上での路網計画の検討、その集材範囲から木材生産量の予測を行うことが可能となった。

また、航空レーザ計測のデータに、タブレット端末やドローン(無人航空機)により取得した現場の画像を組み合わせて共有し活用することで、効率的な業務が実行可能となり、組織全体の生産性の向上につながっている。さらに、作業員に携帯させたGPS ロガーにより取得した位置情報から作業実施範囲を見える化し、共有することで安全性と施業の確実性が担保できるようになった。

同森林組合では、ICT等の最新の技術を活用した森林データベースを活用して、正確な立木評価と生産性の高い伐採計画により森林所有者に主伐・再造林を提案し、山元に利益を還元できるよう取り組んでいくこととしている。

航空レーザ計測データを活用した施業集約化と林業経営の効率化の取組

(*34)提案型集約化施業は、平成9(1997)年に京都府の日吉町森林組合が森林所有者に施業の提案書である「森林カルテ」を示して森林所有者からの施業受託に取り組んだことに始まり、現在、全国各地に広まっている。



(施業集約化を推進する「森林施業プランナー」を育成)

林野庁では、提案型集約化施業を担う人材を育成するため、平成19(2007)年度から、林業事業体の職員を対象として、「森林施業プランナー研修」を実施している。同研修として、平成27(2015)年度までは、組織としての体制強化を目的とする「ステップアップ研修(*35)」等を実施してきたが、平成28(2016)年度からは、地域ごとの特性を踏まえたより実践力のあるプランナーの育成を図るため、「プランナー研修(*36)」等を新たに実施しており、平成29(2017)年度までに、1,038名が当該研修を修了している。

また、平成21(2009)年度から、「ステップアップ研修」を修了又はそれと同等レベルに達している事業体に対して、外部審査機関が評価を行う実践体制評価(*37)を実施しており、平成29(2017)年度までに、12の事業体が同評価に基づく認定を受けている。

さらに、都道府県等においても地域の実情を踏まえた森林施業プランナーの育成を目的とする研修を実施している。

一方、これらの研修修了者は、技能、知識、実践力のレベルが様々であることから、平成24(2012)年10月から、「森林施業プランナー協会」が、森林施業プランナーの能力や実績を客観的に評価して認定を行う森林施業プランナー認定制度を開始した。同制度では、森林施業プランナー認定試験に合格した者、実践体制評価の認定を受けた事業体に所属し、提案型集約化施業の取組実績を有する者等を「認定森林施業プランナー」として認定しており、平成30(2018)年3月までに、1,933名が認定を受けている(*38)。


(*35)「ステップアップ研修」は、「基礎的研修」修了者のスキルアップを図るとともに、同修了者と経営管理者、現場技術者等が一緒に参加して、組織として提案型集約化施業に取り組むことを学ぶ研修。

(*36)「プランナー研修」は、森林施業プランナー資格の取得を目指し、地域における提案型集約化施業に必要な知識及び技能を習得するため、地域ごとに実施する研修。

(*37)提案型集約化施業を実施するための基本的な体制が構築されているかについて、外部評価を受けることで、林業事業体が抱える課題を具体的に把握し、取組内容の質の向上に結び付けることが可能となる。

(*38)森林施業プランナー認定制度ポータルサイト「平成29年度 認定森林施業プランナー名簿を公開しました」(平成30(2018)年3月30日付け)



(森林経営計画により施業の集約化を推進)

平成24(2012)年度から導入された「森林法(*39)」に基づく森林経営計画制度では、森林の経営を自ら行う意欲のある森林所有者又は森林の経営の委託を受けた者が、林班(*40)又は隣接する複数林班の面積の2分の1以上の森林を対象とする場合(林班計画)や、所有する森林の面積が100ha以上の場合(属人計画)に、自ら経営する森林について森林の施業及び保護の実施に関する事項等を内容とする森林経営計画を作成できることとされている。森林経営計画を作成して市町村長等から認定を受けた者は、税制上の特例措置や融資条件の優遇に加え、計画に基づく造林や間伐等の施業に対する「森林環境保全直接支援事業」による支援等を受けることができる。

同制度については、導入以降も現場の状況に応じた運用改善を行っている。平成26(2014)年度からは、市町村が地域の実態に即して、森林施業が一体として効率的に行われ得る区域の範囲を「市町村森林整備計画」において定め、その区域内で30ha以上の森林を取りまとめた場合(区域計画)にも計画が作成できるよう制度を見直し、運用を開始した。この「区域計画」は、小規模な森林所有者が多く合意形成に多大な時間を要することや、人工林率が低いこと等により、林班単位での集約化になじまない地域においても計画の作成を可能とするものである。これにより、まずは地域の実態に即して計画を作成しやすいところから始め、計画の対象となる森林の面積を徐々に拡大していくことで、将来的には区域を単位とした面的なまとまりの確保を目指すこととしている(資料 III -19)。

しかし、森林所有者の高齢化や相続による世代交代等が進んでおり、森林所有者の特定や森林境界の明確化に多大な労力を要していることから、平成29(2017)年3月末現在の全国の森林経営計画作成面積は542万ha、民有林面積の約31%となっている。

資料III-19 森林経営計画制度の概要

(*39)「森林法」(昭和26年法律第249号)

(*40)原則として、天然地形又は地物をもって区分した森林区画の単位(面積はおおむね60ha)。



(施業の集約化を推進するための取組)

森林経営計画の作成や施業の集約化に向けた取組を進めるためには、その前提として、森林所有者等の情報を一元的に把握できるよう整備していくことが不可欠である。

林野庁では、「森林整備地域活動支援交付金」により、森林経営計画の作成や施業の集約化に必要となる森林情報の収集、森林調査、境界の明確化、合意形成活動や既存路網の簡易な改良に対して支援している。平成28(2016)年度からは多くの労力を必要とする現地での境界確認の効率化に向けて、GISの地図データが反映された空中写真を立体視することにより、現地に行くことなく境界を明らかにする取組を進めている。

また、平成28(2016)年5月の「森林法」の改正において、林業事業体等が施業集約化に取り組む際に所有者の所在の把握を行いやすくするため、所有者に関する情報や境界情報等を掲載した林地台帳を市町村が作成する制度が創設され、平成30(2018)年度までに整備が行われることとなっている。このような中、林野庁では施業の集約化を効率的に行うために、林地台帳による所有者情報の整備と併せ、精度の高い森林資源情報の整備や、森林GIS、最新のICTの活用を促進している。

このほか、民有林と国有林との連携による森林施業団地の取組を推進しており、平成28(2016)年度末現在で、164か所において設定されている(*41)。


(*41)民有林と国有林との連携による森林共同施業団地の取組については、第 V 章(196-197ページ)を参照。



(イ)低コストで効率的な作業システムの普及

素材生産は、立木の伐倒(伐木)、木寄せ(*42)、枝払い及び玉切り(造材)、林道沿いの土場への運搬(集材)、椪積(はいづみ)(*43)といった複数の工程から成り、高い生産性を確保するためには、各工程に応じて、林業機械を有効に活用するとともに、路網と高性能林業機械を適切に組み合わせた作業システムの普及・定着を図る必要がある。また、我が国では木材販売収入に対して特に初期段階での育林経費が高い状況にあることから(*44)、主伐後の再造林の確保に向けて、造林作業に要するコストの低減を図る必要がある。


(*42)林内に点在している木材を林道端等に集める作業。

(*43)集材した丸太を同じ材積や同じ長さごとに仕分けして積む作業。

(*44)木材販売収入と初期段階での育林経費について詳しくは、90ページを参照。



(路網の整備が課題)

路網は、木材を安定的に供給し、森林の有する多面的機能を持続的に発揮していくために必要な造林、保育、素材生産等の施業を効率的に行うためのネットワークであり、林業の最も重要な生産基盤である。また、路網を整備することにより、作業現場へのアクセスの改善、機械の導入による安全性の向上、労働災害時の搬送時間の短縮等が期待できることから、林業の労働条件の改善等にも寄与するものである。さらに、地震等の自然災害により一般公道が不通となった際に、林内に整備された路網が迂回路として活用された事例もみられる(*45)。

林業者モニターを対象に路網整備の状況と意向を聞いたところ、現在の路網の整備状況は50m/ha以下の路網密度であると回答した者が約6割であったのに対し、今後の路網整備の意向は50m/ha以上の路網密度を目指したいと回答した者が約6割となっている(資料 III -20)。


このような中、我が国においては、地形が急峻で、多種多様な地質が分布しているなど厳しい条件の下、路網の整備を進めてきたところであり、平成28(2016)年度末現在、林内路網密度は21m/haとなっている(*46)。

「森林・林業基本計画」では、森林施業の効率的な実施のために路網の整備を進めることとしており、林道等の望ましい延長の目安を現状の19万kmに対し33万km程度としている。特に、自然条件等の良い持続的な林業の経営に適した育成単層林を主体に整備を加速化させることとしており、林道等については2025年に24万km程度とすることを目安としている。また、「全国森林計画」では、路網整備の目標とする水準を、緩傾斜地(0°~15°)の車両系作業システムでは100m/ha以上、急傾斜地(30°~35°)の架線系作業システムでは15m/ha以上等としている(資料 III -21)。


(*45)国有林林道が活用された事例については、「平成23年度森林及び林業の動向」の11ページ、「平成28年度森林及び林業の動向」の182ページを参照。

(*46)「公道等」、「林道」及び「作業道」の現況延長の合計を全国の森林面積で除した数値。林野庁整備課調べ。



(丈夫で簡易な路網の作設を推進)

林野庁では、路網を構成する道を、一般車両の走行を想定した幹線となる「林道」、大型の林業用車両の走行を想定した「林業専用道」及びフォワーダ等の林業機械の走行を想定した「森林作業道」の3区分に整理して、これらを適切に組み合わせた路網の整備を進めている。

丈夫で簡易な路網の作設を推進するため、林業専用道と森林作業道の作設指針(*47)を策定し、林業専用道については、管理、規格・構造、調査設計、施工等に関する基本的事項を、森林作業道については、路線計画、施工、周辺環境等について考慮すべき基本的な事項(*48)を目安として示している。

現在、各都道府県では、林野庁が示した作設指針を基本としつつ、地域の特性を踏まえた独自の路網作設指針を策定して、路網の整備を進めている(*49)。平成28(2016)年度には、全国で林道(林業専用道を含む。)等(*50)582km、森林作業道14,481kmが開設された。


(*47)「林業専用道作設指針の制定について」(平成22(2010)年9月24日付け22林整整第602号林野庁長官通知)、「森林作業道作設指針の制定について」(平成22(2010)年11月17日付け22林整整第656号林野庁長官通知)

(*48)例えば、周辺環境への配慮として、森林作業道の作設工事中及び森林施業の実施中は、公道又は渓流への土砂の流出や土石の転落を防止するための対策を講ずること、事業実施中に希少な野生生物の生育・生息情報を知ったときは、必要な対策を検討することとされている。

(*49)なお、林業専用道については、現地の地形等により作設指針が示す規格・構造での作設が困難な場合には、路線ごとの協議により特例を認めることなどにより、地域の実情に応じた路網整備を支援することとしている。

(*50)林道等には、「主として木材輸送トラックが走行する作業道」を含む。



(路網整備を担う人材を育成)

路網の作設に当たっては、現地の地形や地質、林況等を踏まえた路網ルートの設定と設計・施工が重要であり、高度な知識・技能が必要である。このため、林野庁では、林業専用道等の路網作設に必要な線形計画や設計、作設及び維持管理を担う技術者の育成を目的として、国有林フィールドを活用するなどして、平成23(2011)年度から「林業専用道技術者研修」に取り組んでおり、これまで2,152人が修了し、地域の路網整備の推進に取り組んでいる。

また、森林作業道を作設するオペレーターとその指導者の育成を目的として、平成22(2010)年度から研修を実施しており、平成28(2016)年度までに、これから森林作業道づくりに取り組む初級者を対象とした研修で2,101人、高い技術力を身に付け地域で指導的な役割を果たすオペレーターを育成することを目的とした、中級者等を対象とした研修で1,532人を育成した。

これらの研修の受講者等は、各地域で伝達研修等に積極的に取り組んでおり、平成28(2016)年度は全国で131回の「現地検討会」を開催し、2,372名が参加した。このように、現場での路網整備を進める上で指導的な役割を果たす人材の育成にも取り組んでいる。


(高性能林業機械の導入を推進)

高性能林業機械(*51)を使用した作業システムには、林内の路網を林業用の車両が移動して、伐倒した木を引き寄せ、枝を除去して用途に応じた長さに切断し、集積する場所まで運搬するといった作業を行う車両系作業システムや、伐倒した木を林内に張った架線で吊り上げ、集積する場所まで運搬する架線系作業システムがある(資料 III -22)。車両系作業システムは、比較的傾斜が緩やかな地形に向いており、路網が整備されていることが必要である。架線系作業システムは、高い密度で路網を開設できない傾斜が急な地形でも導入が可能である。

資料III-22 我が国における高性能林業機械を使用した作業システムの例

我が国における高性能林業機械の導入は、昭和60年代に始まり、近年では、路網を前提とする車両系のフォワーダ(*52)、プロセッサ(*53)、ハーベスタ(*54)等を中心に増加しており、平成28(2016)年度は、合計で前年比7%増の8,202台が保有されている。保有台数の内訳をみると、フォワーダが2,328台で3割弱を占めているほか、プロセッサが1,851台、プロセッサと同様に造材作業に使用されることの多いハーベスタは1,572台となっており、両者を合わせて4割強を占めている。このほか、スイングヤーダ(*55)が1,012台で1割強を占めている(資料 III -23)。平成28(2016)年度において、素材生産量全体のうち、高性能林業機械を活用した作業システムによる素材生産量の割合は7割となっている(*56)。


また、我が国の森林は急峻な山間部に多く分布することから、林野庁では、急傾斜地等における効率的な作業システムに対応した次世代の架線系林業機械の開発・導入を推進しているとともに(*57)、急傾斜地等における高度な索張り技術等を備えた技能者の育成に取り組んでいる。

このほか、ロボット技術を活用した機械の開発も進められており、丸太の品質を自動判定できるハーベスタや無人走行できるフォワーダ、林業用アシストスーツの開発等が進められている。


(*51)従来のチェーンソーや刈払機等の機械に比べて、作業の効率化、身体への負担の軽減等、性能が著しく高い林業機械のこと。

(*52)木材をつかんで持ち上げ、荷台に搭載して運搬する機能を備えた車両。

(*53)木材の枝を除去し、長さを測定して切断し、切断した木材を集積する作業を連続して行う機能を備えた車両。

(*54)立木を伐倒し、枝を除去し、長さを測定して切断し、切断した木材を集積する作業を連続して行う機能を備えた車両。

(*55)油圧ショベルにワイヤーロープを巻き取るドラムを装備し、アームを架線の支柱に利用して、伐倒した木材を架線により引き出す機能を備えた機械。木材を引き出せる距離は短いが、架線の設置、撤去や機械の移動が容易。

(*56)林野庁研究指導課調べ。

(*57)高性能林業機械の開発については、「平成28年度森林及び林業の動向」の19-20ページを参照。



(造林コストの低減に向けた取組)

林野庁では、造林作業に要するコストの低減のため、伐採と造林の一貫作業システムの導入、コンテナ苗(*58)や成長に優れた苗木(*59)の活用、低密度での植栽等を推進している。

伐採と造林の一貫作業システムは、グラップル(*60)等の伐採や搬出に使用した林業機械を用いて、伐採してすぐに伐採跡地に残された末木枝条を除去して地拵えを実施し、これらの機械で苗木を運搬した上で、植栽を行うものである。このため、地拵えから植栽までの工程を省力化することとなり、全体として育林の作業コストを大きく縮減することが可能となる(*61)。

また、低密度での植栽は、植栽にかかる苗木代や植付に要する経費の縮減が期待できる一方で、下草が繁茂しやすくなることや、下枝の枯れ上がりが遅くなって完満な木材が得られなくなるおそれがあることなどの課題があることから、試験地を設定して、成長状況の調査や技術開発・実証等に取り組んでいる。

このような取組に加え、林野庁では、傾斜地での再造林を省力化する機械等の開発も進めている。


(*58)コンテナ苗については、第 II 章(46ページ)参照。

(*59)成長等に優れた優良品種の開発については、第 II 章(46-47ページ)参照。

(*60)木材をつかんで持ち上げ、集積する機能を備えた車両。

(*61)複詳しくは、「平成28年度森林及び林業の動向」の13ページを参照。



(ウ)ICTの活用による林業経営の効率化の推進

林業事業体の収益確保や森林所有者の所得向上を図るためには、経営力の向上を図ることが必要となっており、出材することが可能な木材の数量やその品質を即時に把握したり、木材需要の変動に応じて木材の出荷量を調整したりするなどの生産管理手法の導入が必要となっている。

近年は、情報通信技術(ICT)を活用した生産管理手法の導入が進められており、デジタルカメラ画像を用いて林内の土場に椪積(はいづみ)された製材用材や合板用材を自動解析する取組や、出材する木材の数量や出荷量等について、情報通信技術(ICT)を用いて瞬時に把握する取組が進展している。

また、レーザ計測やドローンにより把握した森林資源量の解析や丸太の計測作業、路網整備や間伐等の森林整備の計画策定等への活用も進んでいる(事例 III -1、2)。

このような中、林野庁では、適切な生産管理のできる人材の育成やICTを活用した生産管理手法の開発等を推進している。

事例 III -2 製造業と連携した林業の収益性向上に向けた取組

戦後造成された人工林が資源として成熟し、今後は間伐とともに主伐を積極的に進めていくことが必要となる中、素材生産コストの一層の削減による林業の収益性の向上が急務となっている。

このような中、石川県では、コマツと連携し、製造業で培ったノウハウを積極的に取り入れ、伐採前の森林資源量調査や丸太の計測作業等にICTを活用することにより、低コスト作業システムの構築による林業の収益性向上のモデルづくりを進めている。

伐採前の森林資源量調査では、これまで人の手により行っていた調査に代えて、コマツが建設現場で実用化しているドローンの3D計測技術を活用し、ドローンで撮影した森林の空撮画像から森林資源量を解析することにより作業の省力化を図る取組を進めており、今後、現場での実用化に向け、森林組合の職員や県の林業普及指導員を操縦技術者として育成していくこととしている。

また、丸太の計測作業においても、これまで山土場等で人の手により行っていた作業に代えて、丸太の計測装置を取り付けた高性能林業機械(注)を活用し、造材時に自動的に直径や材積を計測することにより省力化を図る取組を行っており、運用ノウハウの蓄積に向けた現地実証を進めている。


注:コマツ製ハーベスタ PC138US-10


ドローンによる撮影状況
ドローンによる撮影状況
森林の3D解析画像
森林の3D解析画像
コマツ製ハーベスタ
コマツ製ハーベスタ


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