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林野庁

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第1部 第 VI 章 第1節 復興に向けた森林・林業・木材産業の取組(3)

(3)復興への木材の活用と森林・林業の貢献

(応急仮設住宅や災害公営住宅等での木材の活用)

東日本大震災では、地震発生直後には最大約47万人の避難者が発生し、平成28(2016)年12月現在でも約13万人が避難生活を余儀なくされている。平成28(2016)年12月現在の避難者等の入居先は、応急仮設住宅(約2.0万戸)、民間住宅・公営住宅等(約2.5万戸)となっており、仮設住宅等への入居戸数は減少し、恒久住宅への移転が進められている(*14)。

「応急仮設住宅(*15)」については、被災地の各県が平成25(2013)年4月までに約5.4万戸を建設した(*16)が、被災3県(岩手県、宮城県及び福島県)では、この4分の1以上に当たる約1.5万戸が木造で建設された(*17)。

「一般社団法人全国木造建設事業協会」では、東日本大震災における木造応急仮設住宅の供給実績と評価を踏まえて、大規模災害が発生した場合に、木造の応急仮設住宅を速やかに供給する体制を構築するため、各都道府県との災害協定の締結を進めている。同協会では、平成29(2017)年3月までに、24都県(*18)と災害協定を締結している。

また、災害時の木材供給について、地元の森林組合や木材協会等と協定を結ぶ地方公共団体もみられる。

一方、「災害公営住宅(*19)」については、平成28(2016)年9月末時点で、被災3県において約29,700戸の計画戸数が見込まれている。「東日本大震災からの復興の基本方針」では、「津波の危険性がない地域では、災害公営住宅等の木造での整備を促進する」とされており、構造が判明している計画戸数約29,300戸のうち、約7,100戸が木造で建設される予定である。平成28(2016)年9月末時点で、約20,300戸の災害公営住宅が完成しており、このうち約5,200戸が木造で建設されている(資料 VI -3、事例 VI -3)。

また、被災者の住宅再建を支援する取組も行われている。平成24(2012)年2月には、被災3県の林業・木材産業関係者、建築設計事務所、大工・工務店等の関係団体により、「地域型復興住宅推進協議会」が設立された。同協議会に所属する住宅生産者グループは、住宅を再建する被災者に対して、地域ごとに築いているネットワークを活かし、地域の木材等を活用し、良質で被災者が取得可能な価格の住宅を「地域型復興住宅」として提案し、供給している(*20)。

このほか、非住宅建築物や土木分野の復旧・復興事業でも地域の木材が活用されている(*21)(事例 VI -4)。

事例 VI -3 木造の応急仮設住宅の部材を再利用した災害公営住宅が完成

解体した応急仮設住宅の部材を一時保管
解体した応急仮設住宅の部材を
一時保管
応急仮設住宅の部材を利用して建設された災害公営住宅
応急仮設住宅の部材を利用して
建設された災害公営住宅

平成28(2016)年8月、福島県会津若松市(あいづわかまつし)城北(じょうほく)地区に、木造の災害公営住宅30戸が完成した。当地区は応急仮設住宅が整備されていた場所であり、完成した30戸のうち20戸は、応急仮設住宅の部材を再利用して建設された。

応急仮設住宅は、当初から災害公営住宅への転用を見通し、板倉構法(注)で建設された。18棟36戸の応急仮設住宅を一度全て解体した後、木材の約66%を再利用し、仮設住宅2世帯分から木造平屋建て3LDKタイプ1世帯の災害公営住宅等が建設された。

注:スギ材の柱や土台に溝を掘ってスギ材の厚板をはめ込む構法。伝統構法を基本としており、構成部材を骨太にして、補強金物や接着剤による接合を用いず、解体移築再利用を円滑に行うことが可能。

資料:福島県ホームページ「城北団地(会津若松市)の現場進捗状況」
安藤邦廣(2011) 森林技術, 2011年10月号: 2-7.

事例 VI -4 木質耐火部材を活用した庁舎を新築

新庁舎の外観
新庁舎の外観
庁舎1階の窓口カウンター
庁舎1階の窓口カウンター

福島県伊達郡(だてぐん)国見町(くにみまち)は、庁舎が東日本大震災で被災し使用が不可能となったことから、平成27(2015)年3月に庁舎を新築した。

新庁舎は、地上3階、地下1階、延べ床面積約4,800m2であり、主要構造部の柱、梁(はり)に1時間耐火の国土交通大臣の認定を取得した木質ハイブリッド集成材(鋼材内蔵型)を公共建築としては国内で初めて使用した。これらの木質ハイブリッド集成材を現(あらわ)しとしたほか、壁、床の内装材にも積極的に県産材を使用し、庁舎内は木に包まれた空間となっている。また、外壁にガラスを使用することで、ガラスを通して外部から柱や梁(はり)が見えるようにするとともに、外装にも木材を使用することで、建物周辺の広場の樹木や背景の山の風景と庁舎が一体的に見えるような工夫が施されている。


(*14)復興庁「東日本大震災からの復興の状況と取組」(平成29(2017)年1月)

(*15)「災害救助法」(昭和22年法律第118号)第4条第1項第1号に基づき、住家が全壊、全焼又は流失し、居住する住家がない者であって、自らの資力では住家を得ることができないものを収容するもの。

(*16)国土交通省ホームページ「応急仮設住宅関連情報」

(*17)国土交通省調べ(平成25(2013)年5月16日現在)。

(*18)徳島県、高知県、宮崎県、愛知県、埼玉県、岐阜県、長野県、愛媛県、秋田県、静岡県、広島県、東京都、香川県、神奈川県、三重県、大分県、千葉県、滋賀県、富山県、青森県、山梨県、熊本県、山口県及び兵庫県。

(*19)災害により住宅を滅失した者に対し、地方公共団体が整備する公営住宅。

(*20)地域型復興住宅推進協議会ほか「地域型復興住宅」(平成24(2012)年3月)。地域型復興住宅の供給とマッチングの取組については、「平成27年度森林及び林業の動向」196ページを参照。

(*21)土木分野での活用については、「平成25年度森林及び林業の動向」45ページを参照。



(木質系災害廃棄物の有効活用)

東日本大震災では、地震と津波により、多くの建築物や構造物が破壊され、コンクリートくず、木くず、金属くず等の災害廃棄物(がれき)が大量に発生した。13道県239市町村で約2,000万トン発生した災害廃棄物(*22)は、平成27(2015)年3月末時点で99%が処理され、福島県の2市町を除く12道県237市町村において処理が完了した。このうち、木くずの量は、約135万トンであった(*23)。

木くずについては、平成23(2011)年5月に環境省が策定した「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」では、木質ボード、ボイラー燃料、発電等に利用することが期待できるとされ、各地の木質ボード工場や木質バイオマス発電施設で利用された。


(*22)福島県の避難区域を除く。

(*23)環境省ホームページ「災害廃棄物対策情報サイト」



(木質バイオマスエネルギー供給体制を整備)

「東日本大震災からの復興の基本方針」では、木質系災害廃棄物を活用したエネルギーによる熱電併給を推進するとともに、将来的には、未利用間伐材等の木質資源によるエネルギー供給に移行するとされるなど、木質バイオマスを含む再生可能エネルギーの導入促進が掲げられた。

平成24(2012)年7月に閣議決定された「福島復興再生基本方針」では、目標の一つとして、再生可能エネルギー産業等の創出による地域経済の再生が位置付けられた。これを受けて、福島県会津若松市(あいづわかまつし)では、同月から、未利用間伐材等を主燃料とするバイオマス発電施設が稼働している。

また、「岩手県東日本大震災津波復興計画」や「宮城県震災復興計画」においても、木質バイオマスの活用が復興に向けた取組の一つとして位置付けられている。岩手県宮古市(みやこし)では、平成26(2014)年4月から製材端材及び未利用間伐材等を燃料とする発電施設が稼動しており、また宮城県気仙沼市(けせんぬまし)でも、同3月から主に未利用間伐材を燃料とする発電施設が稼働している(*24)。


(*24)木質バイオマスを活用した発電については、第 IV 章(174ページ)を参照。



(復興への森林・林業の貢献)

被災地では、震災復興の中で、人口減少、高齢化、産業の空洞化等といった課題の解決に向けて、平成25(2013)年度から平成27(2015)年度にかけて実施された復興庁の「「新しい東北」先導モデル事業」等により先導的な取組が展開されており、林業分野でも、森林資源の活用を通じた復興に向けた取組が行われている(*25)。また、「「新しい東北」復興ビジネスコンテスト」や「地域復興マッチング「結(ゆい)の場(ば)」」(*26)の開催等を通じ、被災地の産業復興に向けた取組が広がっている(*27)(事例 VI -5)。

事例 VI -5 地域材を活用した被災地の産業復興への取組

公共施設向けロビー家具シリーズ
公共施設向けロビー家具シリーズ

岩手県の久慈(くじ)地域は森林の約3分の1をアカマツが占めており、関係者が一丸となって地域のアカマツ材の販路や用途の拡大に取り組んでいる。

このような中、住宅用及び産業用木材の製造・販売を行う有限会社マルヒ製材(岩手県久慈市)と、オフィス家具メーカーの株式会社イトーキが復興庁主催の「地域復興マッチング「結(ゆい)の場(ば)」」で出会い、マルヒ製材のもつ地域材の加工力と、イトーキのもつ商品開発・デザイン力等を活かして、地域のアカマツを使用した製品の開発に着手した。この取組には、林野庁の補助事業「地域材利用拡大緊急対策事業」が活用され、岩手県産の原材料にこだわって自然塗料を製造している株式会社シオン(岩手県紫波郡(しわぐん)矢巾町(やはばちょう))も参加した。その結果、和風建築の建具を想起させるデザインが特徴の公共施設向けロビー家具シリーズが商品化された。


(*25)詳しくは、「平成27年度森林及び林業の動向」197ページを参照。

(*26)大手企業等が技術、情報、販路等自らの経営資源を、東日本大震災の被災地域企業へ幅広く提供する支援事業の形成の場として、復興庁が平成24(2012)年から18回開催。参加した被災地域企業は147社、支援企業は延べ473社。

(*27)「「新しい東北」復興ビジネスコンテスト」について詳しくは、「平成27年度森林及び林業の動向」197ページを参照。


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