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第1部 第 III 章 第2節 特用林産物の動向(1)

「特用林産物」とは、一般に用いられる木材を除き、森林原野を起源とする生産物の総称であり、食用のきのこ類、樹実類や山菜類等、うるしや木ろう等の伝統工芸品の原材料、竹材、桐材、木炭等が含まれる。特用林産物は、林業産出額の約5割を占めており、木材とともに、地域経済の活性化や雇用の確保に大きな役割を果たしている(*75)。以下では、きのこ類をはじめとする特用林産物の動向について記述する。


(*75)栽培きのこ類の産出額については、88-89ページを参照。



(1)きのこ類の動向

(きのこ類は特用林産物の生産額の9割近く)

平成27(2015)年の特用林産物の生産額は、前年比1%増の2,736億円であった。このうち、きのこ類は前年比2%増の2,370億円となり、全体の9割近くを占めている。このほか、樹実類や山菜類等のその他食用が前年比4%減の283億円、木炭やうるし等の非食用が同6%減の83億円となっている。

平成27(2015)年のきのこ類の生産額の内訳をみると、生しいたけが704億円で最も多く、次いでぶなしめじが522億円、えのきたけが342億円の順となっている(*76)。

また、きのこ類の生産量は、長期的に増加傾向にあったが、平成23(2011)年以降は減少傾向となっており、平成27(2015)年は前年比1%減の45.3万トンとなった。内訳をみると、えのきたけ(13.2万トン)、ぶなしめじ(11.6万トン)、生しいたけ(6.8万トン)で生産量全体の約7割を占めている(資料 III -36)。

きのこ生産者戸数は、減少傾向にあるものの、平成27(2015)年は3.1万戸と前年よりも増加しており、下げ止まりの兆しがみられる。きのこ生産者戸数の多くを占める原木しいたけ生産者戸数は、平成27(2015)年は1.9万戸であり、近年減少のペースは緩やかになっている(資料 III -37)。

きのこ類生産量の推移
データ(エクセル:51KB)
        きのこ生産者戸数の推移
データ(エクセル:63KB)

(*76)林野庁プレスリリース「平成26年の特用林産物の生産動向等について」(平成27(2015)年9月29日付け)



(輸入も輸出も長期的には減少)

きのこ類の輸入額は、平成27(2015)年には、前年比1%減の167億円であった。このうち、乾しいたけが前年比5%増の80億円(5,029トン)、まつたけが同8%減の50億円(897トン)、生しいたけが同12%減の92億円(2,388トン)、乾きくらげは同4%増の25億円(2,313トン)となっている。これらのきのこ類の輸入先のほとんどは中国である(*77)。

生しいたけの輸入は、ピーク時の平成12(2000)年には4万トンを超えていたものの、平成13(2001)年の中国に対するセーフガード暫定措置の発動の影響等により、大幅に減少した。以降も減少傾向で推移し、平成27(2015)年には2,388トンとなっている(資料 III -38)。

一方、輸出について乾しいたけをみると、平成27(2015)年には輸出額が2.4億円(59トン)となっている。主な輸出先は台湾や香港である。乾しいたけは、戦後、香港やシンガポールを中心に輸出され、昭和59(1984)年には216億円(輸出量は4,087トンで当時の国内生産量の約2割に相当)に上った。しかし、昭和60年代以降、中国産の安価な乾しいたけが安定的に供給されるようになったことから、日本の輸出額は長期的に減少してきている。


(*77)林野庁「特用林産基礎資料」



(きのこ類の消費拡大・安定供給に向けた取組)

きのこ類の消費の動向を年間世帯購入数量の推移でみると、他のきのこが増加傾向であるのに対し、生しいたけは横ばい、乾しいたけは下落傾向で推移している(資料 III -39)。

きのこ類の価格は、平成27(2015)年は、全体的に上昇した。乾しいたけについては平成20(2008)年の5,022円/kgをピークに下落が続いていたが、平成27(2015)年は前年比66%増の4,839円/kgと大幅に上昇した(資料 III -40)。乾しいたけの価格が大幅に上昇した要因として、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴ういわゆる風評被害の影響による価格の落ち込みから回復したこと、従来の消費量の減少傾向や同事故の影響により生産量が減少傾向にあった中、天候不順等による不作が加わり、大幅に生産量が減少したことなどが考えられる。

林野庁では、きのこ類の消費拡大のため、関係団体とも連携して、消費者に向けてきのこ類のおいしさや機能性(*78)についてPR活動を実施している。さらに、きのこの生産団体等においても、きのこの消費拡大に向けて様々な取組を行っている(事例 III -5)。

また、きのこの安定供給に向けて、効率的で低コストな生産を図るためのほだ場等の生産基盤や生産・加工・流通施設の整備に対して支援している。

きのこ類の年間世帯購入数量の推移
データ(エクセル:49KB)
        きのこ類の価格の推移
データ(エクセル:60KB)

事例 III -5 都内の商業施設でしいたけと地域の魅力をアピール

会場の様子
会場の様子

平成28(2016)年10月15日、同日が「きのこの日」(注)であることに合わせて、別府市(べっぷし)おいしい食のモデル地域実行協議会と、大分県椎茸商協は、東京都台東区の商業施設において、「大分しいたけ祭り」を開催した。

会場では、乾しいたけを使用した料理の試食のほか、加工品の販売や料理法を記載したパンフレットの配布を行い、大分県の特産であるしいたけのおいしさや料理への活用方法を、訪れた家族連れ等約400人にアピールした。

パンフレットには、大分県の観光地等の情報も記載されており、しいたけとともに、地域の魅力をアピールするきっかけとなった。また、同商業施設における熊本地震への支援活動の一環としても注目を集めることとなった。

注:きのこの消費拡大と生産振興を目的に、きのこに関する正しい知識や健康食品としての有用性、調理方法等の浸透を図るため、日本特用林産振興会によって平成7(1995)年に制定された。


(*78)低カロリーで食物繊維が多い、カルシウム等の代謝調節に役立つビタミンDが含まれているなど。


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