急傾斜地における架線系高性能林業機械を用いた集材システムとコンテナ苗造林による一貫作業システム実証試験
キーワード:一貫作業システム、架線集材、全木集材、地拵え、タワーヤーダ、防護柵、低コスト
1 開発目的
架線系高性能林業機械(タワーヤーダ)を用いた集材システムとコンテナ苗造林を組み合わせて造林の低コスト化の実証試験を実施するとともに、シカ食害対策についても併せて効果の検証を行う。
2 成果の概要
- タワーヤーダを使用して全幹集材と全木集材を行ったところ、全木は枝払いがないぶん全幹に比べて56%省力化、また枝条が林地に残らないことから地拵えは74%省力化となった。(写真1、写真2、図1)
- 集材架線を用いた苗木運搬は、人力に比べhaあたり39,000円の削減となった。(図2)
- シカ防除柵の縦張りと斜め張りの設置作業の比較調査を実施し、斜め張りは縦張りの58%の作業効率で設置できる結果が得られた。(写真3)

写真1 欧州製タワーヤーダ、自走式搬器で下げ荷集材、ハーベスタ造材

写真2 欧州製自走式搬器
3 成果の詳細
- タワーヤーダと高速自走式搬器を使用した下げ荷集材での全幹集材と全木集材による伐倒及び地拵えの功程比較、集材架線による苗木運搬の功程調査を実施。結果として、全木伐倒は全幹伐倒に比べ枝払いを行わないので56%省力化になり、地拵えについては、全木集材は全幹集材に比べ74%の省力化となった。(写真1、写真2、図1)
- 集材架線による上げ荷による苗木運搬効率は、人力に比べhaあたり39,000円の労務の削減となった。(図2)さらに、コンテナ苗の植栽功程については、急傾斜地である当事業地においては、唐鍬がディプルに比べ1.28倍となる結果が得られた。
- 集材機とウッドライナーを使用した上げ荷集材を実施。上げ荷と下げ荷集材における集材功程比較を実施して、下げ荷が14.7m3/人日に対して、上げ荷が21.42m3/人日となり、上げ荷集材が有効であるとの結果になった。これは上げ荷集材の方が下げ荷集材と比べて材を安定的に扱えるということが一因と考えられる。
- タワーヤーダと集材機の功程等の比較については、架線の架設・撤去に係る所要人工を調べたところ、1線あたりタワーヤーダでは18.45人、集材機では31.63人という結果となり、タワーヤーダは集材機の59%の効率で架設・撤去できることが分かった。
- 土場での造材作業について、広い場所と狭い場所との功程比較を行ったところ、狭い土場では荷はずし・造材作業に2人の配置となったが、広い土場では1名で実施することができた。
- 急傾斜地におけるシカ防護柵の縦張りと斜め張りの設置作業の比較調査を実施し、斜め張りは5.35m/人時で縦張りは9.28m/人時であったことから、斜め張りは縦張りの58%の作業効率で設置できるとの結果が得られた。(写真3)

図1 全木伐倒集材と全幹伐倒集材の功程比較

図2 苗木の架線運搬による労務コスト削減

図3 シカ防護柵張り方別設置功程比較
4 技術開発担当機関及びお問合せ先等
- 担当機関:関東森林管理局 資源活用課、森林整備課、技術普及課、天竜森林管理署、森林技術・支援センター
- 共同研究機関:森林総合研究所、静岡県森林・林業研究センター
- 実施箇所:天竜森林管理署管内
- 開発期間:平成26年度~平成27年度
- お問合せ先:関東森林管理局 技術普及課、ダイヤルイン(027-210-1175)