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林野庁

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天然更新を活用した牧草地の森林化について

キーワード:牧草地、天然更新、播種、地がき

1 開発目的

牧草地の森林化を低コストで行うため、天然更新や播種による人工更新技術の活用を検討する。

2 成果の概要

  • 稚樹発生のための地表処理の工法は建設用バックホウ等による牧草剥離がよく、草本の侵入を遅らせるために秋の処理が効果的。地表処理は傾斜20度位以下の斜面で行うことと、列状に残草地を設けることで土壌の流出を防止できる。(写真2)
  • 母樹林の常風方向の風下に天然更新箇所を設定する。アカマツ、イタヤカエデ等の飛散種子は母樹から100m程度までが可能範囲。(図1)
  • 天然更新が困難な場合は、播種更新をするため周辺森林の状況に合わせた多種の播種が良い。また、急傾斜で地表処理ができない箇所は植栽で対応するが、5年残存率70%を考慮した本数が必要。
  • 牧草地の森林化計画作成にあたっては、調査結果を踏まえ、天然更新、播種更新、人口植栽、施業せずそのまま保全などのゾーニングをして実行する必要がある。
  • 天然更新の場合、植付による人工造林の30~40%程度の経費となる。
農業用トラクタ掻き起こし耕耘処理後の試験地

写真1 農業用トラクタ掻き起こし耕耘処理後の試験地

建設用バックホウによる牧草剥離後の状況列状に牧草を剥離。写真左と奥が母樹林

写真2 建設用バックホウによる牧草剥離後の状況列状に牧草を剥離。写真左と奥が母樹林

図1 4年目の母樹からの距離と稚樹の発生及び植生の被覆状況

図1 4年目の母樹からの距離と稚樹の発生及び植生の被覆状況
(建設用バックホウによる牧草剥離試験区)

3 成果の詳細

  • 試験区として、農業用トラクタによる掻き起こしを行う箇所(以下「トラクタ試験区」と建設用バックホウによる牧草剥離を行う箇所(以下「バックホウ試験区」)を設定。(写真1、写真2)
  • 掻き起こし等の作業後の種子の発生状況について、牧草地となってから40年近くを経過したことから両試験区に木本類の埋土種子はなかった。しかし、バックホウ試験区では飛散種子のアカマツ、イタヤカエデ、ウリハダカエデ等の発生があり、haあたり、多い区画で100,000本、平均で30,000本程度となった。トラクタ試験区の稚樹発生率は低く、また、草本再生のスピードが速く飛散種子の稚樹発生も少ない。
  • 稚樹発生量が多いバックホウ試験区ではミズナラの播種区画の発生量も多く、全体で35,000本程度の稚樹が発生し、そのうちミズナラは15,000本程度となった。
  • バックホウ試験区での高木性稚樹の発生量と草本の被覆率の関係について、被覆率の低い箇所は稚樹の発生量が多い。(図1)
  • 母樹林の主要樹種はアカマツ、イタヤカエデ、シラカンバが主体の林で、点在的にウリハダカエデ、ヤマモミジが見られた。母樹からの距離別に稚樹の発生量を調べると、25m~60m付近がhaあたりの発生量が高く、100m付近でかなり低くなる。(haあたり5,000本)(図1)
  • ブナなど広葉樹の植栽密度を1,000本/haから3,000本/haで植栽したが、生育状況や生存率に明確な違いは見られなかった。
  • 比較試験として行った植栽試験は、天然更新と比べて、苗木代と植栽・下刈りが必要であり経費が3倍以上かかる。また、ウサギの食害率が70%程度と高い。なお、播種による人口更新の場合は天然更新の12%増であった。

4 技術開発担当機関及びお問合せ先等

  • 担当機関:東北森林管理局 岩手北部森林管理署
  • 共同研究機関:八幡平市、森林総合研究所東北支所、森林林業振興会
  • 実施箇所:岩手北部森林管理署46林班、71林班(岩手県八幡平市)
  • 開発期間:平成21年度~平成25年度
  • お問合せ先:東北森林管理局 岩手北部森林管理署、ダイヤルイン(0195-72-2221)

5 参考情報

印刷版(PDF : 1,112KB)

[東北森林管理局Webサイト掲載情報]
完了報告(PDF:1925KB)

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