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北海道森林管理局

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    各地からの便り

    東京大学大学院農学生命科学研究科附属北海道演習林での成果報告会に参加しました!

    上川中部森林管理署


    令和7年10月23日(木曜日)~24日(金曜日)の2日間、東京大学大学院農学生命科学研究科附属北海道演習林(以下「北海道演習林」という。)において、下記の成果報告会(現地見学会)が開催され、北海道森林管理局および各森林管理署の若手職員を中心に20名が参加しました。

    北海道演習林においては、昨年度に2回の見学会が行われています。第1回は、北海道演習林において連綿と継承され、極めて優れた森林管理手法である「林分施業法」について、第2回は「林分施業法」に基づき行われる伐採と丸太の生産・販売のほか、苗木生産等についてご説明いただきました。第3回となる今回は、二国間国際共同研究事業の成果報告会と題して、スロベニア共和国(リュブリャナ大学)との共同研究分野である「デジタル技術と3次元空間情報を活用した近自然型林業の計画・管理システム構築と実証」の研究成果をご報告いただきました。
    1日目には、北海道演習林の山部事務所にて前記の研究成果に関する座学を行い、2日目には、林内にて前日に説明を受けたデジタル機器を用いた現地実習を行いました。以下に、特に印象に残った点を中心にその概要を紹介します。

    室内_研究成果の講義の様子
    室内_研究成果の講義の様子

    【デジタル技術とデジタル機器】
    (1) 地上LiDAR
    地上LiDARは森林内の計測に使用される機器であり、林野庁でも導入が進められています。本研究では、北海道演習林とスロベニア共和国でそれぞれ3種類の地上LiDARが使用され、樹種、胸高直径、樹高等に関するデータの解析や従来の手動測定との結果の比較が双方で行われていました。北海道演習林では、広葉樹択伐林・針葉樹択伐林(更新少)・トドマツ人工林を対象に、手動計測輪尺「TruPulse360」、バックパック型地上LiDAR「LiGrip 01 Lite」、「Mapry LA03」を用いて200m×200mの格子点で標準地調査を行い、システマティックサンプリングを試行するなどしていました。
    また、地上LiDARを使用し、標準地調査における労力の省力化への適否に関する研究が行われており、歩き方、歩行ルートの設計、林分構造(更新木、枝葉など)に影響されることが分かりました。現地実習の際に見た機体は、市販のモバイルバッテリーを電源として使用できるなど、汎用性に優れていると感じました。機械の特性上、降雨時には使用困難ですが、降雪時には使用可能とのことで、今後の発展の余地を残している印象でした。

    (2) UAVの活用
    北海道演習林では、約23,000haに及ぶ広大な面積の森林管理を効率的に行うため、森林のタイプ分け等にUAV(ドローン)を使用しています。現在使用されている機体は、「DJI Matrice300」、「DJI Mavic3M」等で、特に「DJI Matrice300」については、機体下部のカメラを付け替えることが可能で、用途に応じた多様なデータを取得できます。
    ドローン活用により、「DCHM(数値樹冠高モデル)とオルソ画像を重ねて表示することによって林冠高と樹種の空間分布が把握でき、おおよその林種区分が可能になる」、「調査人工数を大きく削減できる」等のメリットがある一方、「林冠下の更新木が確認できない」、「初期投資にお金がかかる」等の課題があることをご説明いただきました。

    室内_ドローン機器の紹介
    室内_ドローン機器の紹介

    (3) 「選木」におけるデジタル技術
    森林管理の伐採には、その対象となる樹木を選ぶ技術が必要で、それらの技術を「選木」といいます。見学会では、その「選木」の際に使用する、位置を把握する技術と樹木の情報を記録する技術についてご説明いただきました。
    位置を把握する技術に関して、従来の方法では、歩いてきた軌跡のデータが表示されないことや、GPS端末を使用するため画面が小さいなどの問題がありましたが、新たな手法(QGIS関連アプリケーションの導入)によって、軌跡データのリアルタイムでの表示、市販のスマートフォンを使用することにより大きな画面での操作が可能、小型かつ高性能なGNSS受信機による位置精度の向上などが実現しました。これにより伐採事業者への立木情報の提供や伐採後の検収作業、UAVデータ等との比較材料に役立てることができるとのことでした。

    現場_演習林で使用している地上LiDARの紹介
    現場_演習林で使用している地上LiDARの紹介

    現場_位置情報ソフトの操作画面(*現在位置と調査対象木を表示させて調査)
    現場_位置情報ソフトの操作画面(*現在位置と調査対象木を表示させて調査)

    現場_GNSS機器
    現場_GNSS機器

    (4) 施業システムへの応用
    Drogger GNSS Moving Baseという新技術もご紹介いただきました。これは2つのアンテナ間の相対位置をリアルタイムに高精度で測定する装置で、方位・傾きの計測が可能です。まだ模索中の技術ですが精度は非常に高く、タワーヤーダに設置した際には、MovingBaseの標高の値から、架線のたわみ具合を推察できるほどでした。現地でフォワーダ上部にアンテナ機器を設置した際は土場内の数十cmの傾きにも反応できるとご説明がありました。
    当技術の活用により、きめ細やかに重機の動きを記録することや、軌跡から集材道や山土場を抽出すること、そして重機のナビゲーションにも活用することができます。今後はDEM(数値標高モデル)や立木位置等LiDARデータと組み合わせることによる功程分析や施業設計への応用を模索しているとのことで、大変有用な技術となると考えました。

    現場_フォワーダ(集材車)へのアンテナ取付作業等の説明
    現場_フォワーダ(集材車)へのアンテナ取付作業等の説明

    2日目は、北海道演習林の土場に案内していただき、国有林では見る機会の少ない貴重な材を前にしながら意見交換の時間となりました。これまでの講義・見学の中で思った疑問点などを質問させていただき、非常に有意義な時間となりました。最先端のデジタル技術を森林・林業の現場に導入するためには様々な壁がありますが、北海道演習林では先人から受け継いだ森林づくりに対する確固とした強い信念を持ち、時代の流れや情報通信技術の進歩にも即応しつつ、「林分施業法」の継承とその更なる発展に向け、試行錯誤されながらも、同演習林の皆様が一丸となって取り組む姿が印象に残りました。

    (業務グループ)

    お問合せ先

    総務企画部 企画課
    ダイヤルイン:011-622-5228

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