
ナラ枯れ被害木くん蒸処理の実施
【檜山森林管理署】
令和7年5月中旬から下旬にかけ、昨年度檜山森林管理署管内で発生したナラ枯れ被害木のくん蒸処理を北海道森林管理局、近隣森林管理署のほか、檜山振興局、森林総合研究所等にも参加いただき、実施しました。
ナラ枯れとはカシノナガキクイムシという昆虫により媒介される「ナラ菌」によりナラ類が通水障害を起こし枯死してしまう病害で、特にミズナラの被害が顕著に発生することが知られています。
北海道では令和5年度に初めてナラ枯れ被害木が松前半島南端部で確認され、令和6年度には檜山森林管理署管内の国有林でも4か所6本のミズナラ被害木が確認されました。
そのうち、1か所については、昨年度中に伐採くん蒸処理による駆除が完了していましたが、残りの3か所については昨年度伐採し、今年度くん蒸処理を行う必要がありました。
ナラ枯れ被害木のくん蒸処理については、北海道の「ナラ枯れ被害木処理マニュアル」(令和6年10月22日発行)などにも掲載されているように、くん蒸に用いる薬剤が気化し、くん蒸効果を発揮する日最低気温が5℃以上となる4月中旬以降から、ナラ枯れを引き起こすカシノナガキクイムシの新成虫が飛び始める6月までの短い期間で作業を行う必要があります。
初回のくん蒸処理は5月14日に実施しました。
ナラ枯れ被害木は昨年度中に伐倒され、くん蒸処理が適切に行えるように約1m3ずつ椪積みされています。ナラ枯れ被害は林内で生育しているナラ類の中でも大木で発生する傾向があり、くん蒸処理のためには1~2本の被害木でも椪数が多くなります。
また椪積みされている丸太や伐根部にはくん蒸の薬剤が内部まで浸透しやすいように斜めに5cmほどの切れ込みを入れてあります。
椪積みされている丸太の辺材部は、ナラ枯れにより通水障害が起こり変色してしまった部分が多数見られました(写真の濃い部分が変色した辺材部)。
くん蒸処理は、くん蒸用シートの裾を埋めるために椪の周りを10cmほど掘削するところから始まります。
椪の周りの掘削が終了した後、くん蒸用シートで覆い、シートを固定するためにシートの裾に土を被せ、薬剤を椪にかけていきます。薬剤は密閉されたシートの中で気化することでくん蒸効果が発揮されます。
薬剤散布終了後、シートを完全に被せ、裾に盛土し椪を密閉します。
最後にシートの破損を防ぐため、丸太がシートに当たっている部分をガムテープ等で補強し、くん蒸処理中の掲示を貼り、椪のくん蒸処理は完了です。
同様の作業をすべての椪で行い、椪積みされた部分の処理は終了です。
伐根部については特にカシノナガキクイムシが多く生育している可能性が高いため、さらに追加作業を行います。
まず電動ドリルを用いて、カシノナガキクイムシが生育している辺材部に深さ5~7cmほどの穴を斜めに10cmほどの間隔で入れていきます。根部についても露出している部分にはできるだけ穴を空けていきます。
その後薬剤を空けた穴に注入していきます。
最後にシートを被せ周りを土で密閉し、椪と同様にガムテープでシートを補強・掲示を貼って伐根部のくん蒸処理作業は完了です。
他の2箇所についても同様に作業を行い、5月末までにすべてのナラ枯れ被害木のくん蒸処理を終了することができました(以下の写真の上段は5月21日、下段は5月28日の作業箇所)。
今年の気象条件や昨年度の青森県でのナラ枯れ被害拡大状況から、今年度もナラ枯れ被害地域の拡大が懸念されています。檜山森林管理署を含め北海道森林管理局では巡視を強化し、早期発見に努め、ナラ枯れ被害拡大防止対策に取り組んでいきます。
(森林整備官 佐藤)
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