五稜郭保安林におけるアメリカシロヒトリ防除~こも巻きの実施~
【檜山森林管理署】
近年、檜山森林管理署管内が管理する函館市内の五稜郭保安林では、毎年のように、外来種の蛾(ガ)であるアメリカシロヒトリの幼虫が大発生しています。
アメリカシロヒトリの幼虫は年2回発生しますが、特に、夏季において幼虫が五稜郭保安林から逸脱し、近隣の住宅や店舗などに侵入してしまい、たびたび苦情や問い合わせが当署にありました。
アメリカシロヒトリの幼虫
今年度もアメリカシロヒトリの防除対策として、令和6年8月21日に「こも巻き」を行いました。
「こも巻き」とは、本来はマツの害虫であるマツカレハを防除する目的で、江戸時代から続けられてきた日本の伝統的な防除法です。最近では、アメリカシロヒトリの防除にも効果があると考えられています。
アメリカシロヒトリの幼虫は夏の終わり頃、樹皮の隙間などの狭い場所に移動した後、蛹(さなぎ)になってその場で越冬します。「こも巻き」は、アメリカシロヒトリの幼虫が特定の場所で蛹になる習性を逆手に取り、ワラで作られた「こも」を幼虫の活動期に幹の外周に巻いて、「こも」の隙間に幼虫を誘い込み、春より前に「こも」を外して誘い込まれた蛹を駆除することが狙いです。
越冬中のアメリカシロヒトリの駆除は、春に繁殖する個体数を減らし、夏における幼虫の大発生を抑制することが期待できます。
「こも巻き」の様子
今年度は、函館市内の他の公園等でもアメリカシロヒトリの幼虫が大発生したこともあり、テレビや新聞で報道されました。
一方、昨年度の五稜郭保安林での「こも巻き」では、作業中に大量の幼虫がまとわりつきましたが、今年度は幼虫がかなり少なかったです。
「こも巻き」が完了した様子
「こも」の回収は、令和7年3月12日に行いました。
昨年度は、外した「こも」にアメリカシロヒトリの蛹が多数見られましたが、今年度は付着している蛹の数が少なく、全く蛹が付着していない「こも」もあり、昨年度と比較して個体数が減少しているようでした。
「こも」を外す様子
「こも」に付着したアメリカシロヒトリの蛹
個体数の増減には、気象条件等、様々な複合的要因が存在します。今年度の個体数の減少は、これまでの取組成果とは断言できませんが、「こも巻き」以外にも、職員が葉などに付着した幼虫をこまめに早期から一網打尽にする駆除作業をしていることなども、少なからず影響したのかもしれません。
とはいえ、次年度の幼虫の発生状況がどうなるか油断はできませんが、一喜一憂することなく、今後も発生状況に注視しながら、防除対策に取り組んで行きたいと思います。
(森林整備官 加藤)