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北海道森林管理局

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    各地からの便り

    東京大学北海道演習林の「林分施業法」による森林管理を見学

    【上川中部森林管理署


     令和5年6月28日(水曜日)、東京大学北海道演習林にて森林管理の見学会が開催され、北海道森林管理局長をはじめ近隣の森林管理署職員63名が出席しました。
    東京大学北海道演習林(以下、演習林)は北海道中央部に所在し、日本や世界の天然林施業をリードしていくことを目標として教育研究に取り組んでいます。

    今回の見学会は、北海道森林管理局の重点取組事項として掲げている「天然力を活用した多様な森林づくり」「広葉樹資源の安定供給体制の整備」を具体的に取り組むため、また国有林職員が天然林施業に関する知識・経験を積むことを目的として、演習林の優良木単木管理と、60年以上にわたり行われている「林分施業法」に基づく森林管理を見学しました。

    演習林内の優良木は、1保存木・プラス木 2優良広葉樹登録木 3銘木販売候補木 4ミズナラ優良木の4つのカテゴリーに分けて単木管理されています。
    このうち保存木は巨木や特殊形質木、生態学的に価値の高い個体が指定され、原則として伐採対象とはしないそうです。
    保存木のミズナラ
    保存木のミズナラ

    銘木販売候補木は、銘木市へ出品予定の立木を管理しています。
    このうちウダイカンバは材の赤みが多いほど価値が高く、赤みは枯れる直前に増すため伐採のタイミングを見定めることが重要になります。

    見学した元候補木のウダイカンバは、ベテラン職員が着葉量や腐朽状況を観察し伐採時期を決定し、旭川銘木市で155万円/立方メートルの高値がつけられたそうです。
    元・銘木販売候補木のウダイカンバ伐根
    元・銘木販売候補木のウダイカンバ伐根

    「林分施業法」とは、タイプ分けした森林(=林分)ごとに最も相応しいと考えられる取り扱いを行い、健全で価値の高い林分へ誘導する森林管理方法です。

    この施業法の工程は次のようになっています。
    1.林種区画調査 生育する樹木の種類や大きさ、密度、天然更新の良否などに基づいて森林のタイプ分け(林種区分)をし、区画のプランを立てます。
    2.標準地調査 林種区画調査を行った後、林分の状態を調べるため、各林分の標準地調査を行い、資源量を算出します。

    林種区画調査・標準地調査では最先端の空間情報技術(GNSS測量をはじめ小型無人航空機(UAV)を用いた空中写真撮影と3次元モデリング、航空機レーザー測量(LiDAR)など)の実践により、広範囲の林分を少人数で精密に調査を行うことが可能となっているそうです。
    レーザーコンパス
    レーザーコンパス

    ドローン
    ドローン

    3.収穫調査 標準地調査により林種ごとの施業方針が立案されると、演習林教職員で現地検討会を行い、最終方針を決定します。施業計画で伐採が可能と判断された場合、将来どのような森林にするかを考えつつ、価値の高い森林をつくることを目指し、その森林の中から収穫する木(主に形質不良木)を一本一本選んでいきます。
    私たちも選木を体験してみましたが、国有林の現場では単木の抜き伐りを目的とした選木の経験がほとんどないことから、密度調整に偏ったものとなってしまい、選木する目を養うことの重要性を再認識しました。

    4.伐出作業・伐採監護 広葉樹は針葉樹と異なり樹形が様々で木の重心を考えながら伐倒する必要があり、伐倒技術が失われると復活させることが難しくなります。
    演習林においては銘木伐倒を含む広葉樹大径木の伐倒を請負により行っており、業界における技術継承につながっています。

    また、北の森づくり専門学院の学生実習において銘木伐倒を見学し広葉樹伐倒技術を学んでもらう取り組みも行われています。

    立木販売を行った区域では、伐採木として選ばれ印のついた立木が正しく収穫されているか、集材路の配置は適切に行われているかなどの検査(伐採監護)も行われます。
    今回の演習林見学で、林分施業法による丁寧な森林管理技術と、それをより効率的に行うための最先端の森林調査技術を学ぶことができ大変貴重な経験となりました。

    GNSS測量やドローン測量などの最先端の調査技術は事業規模での実証も行われており、国有林では収穫調査をはじめ労働力不足が課題となっていることから、取り入れられる技術は積極的に取り入れていく必要性を感じました。

    また、天然林施業を行うためには伐採木特に優良木と形質不良木を見極める目も必要となります。技術革新が進み山に入らず林分を判断し適切な森林管理が可能になったとしても、実際に山に入らなければ得られない「山を見る目」も国有林の現場で養っていきたいという思いが高まりました。

     (森林整備官 谷本)