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職員による「くくりわな」でのエゾシカ捕獲実施
【宗谷森林管理署】
令和3年1月19日~2月10日、宗谷森林管理署では、この冬職員自ら「くくりわな」を設置し、エゾシカ捕獲を実施しました。
稚内市では森林内にはエゾシカによる食害や角こすりなどが多くみられ、牧草への食害も多く発生しています。 また市街地にもエゾシカが多く出没し、交通事故も発生するなど人との距離が近くなっています。
エゾシカの有害捕獲に当たっては、市街地近くなどでは銃器による捕獲が安全上難しいところです。 そこで、銃器に頼らない捕獲方法として北海道内の森林管理署として初めて職員によるくくりわなでの捕獲を実施することとしました。
わなの設置はヒグマ冬眠後の1月から始めることとしましたが、それまで捕獲予定地に多くのエゾシカを誘引させるため、11月末から給餌を行いました。 捕獲場所は見回りの効率を考え森林管理署から車で5~10分程度の国有林内でシカの痕跡が多く、給餌や捕獲後の運搬に支障がない道路近くの人工林を選定しました。
エサはシカの嗜好性を考慮し、圧片大麦、圧片トウモロコシ、えん麦の3種類を用意し、各5キログラムずつ週2回程度給餌を行いました。 また、給餌箇所にはIoT自動撮影カメラを設置し、動物が通った時にセンサーで感知し撮影された画像が送信されるので、現地へ行かなくても誘引状況を確認できるようにしています。
エサを置いて2日後くらいにはシカが集まってきて、1枚に4~5頭、多いときで11頭写った時もあり、エサは1日で空になってしまう日もありました。
 IoT自動撮影カメラ
 エサに誘引されるエゾシカ(11頭写っています)
約1か月半給餌による誘引を実施後、1月18日に北海道森林管理局保全課から2名来署し、くくりわな実施に当たっての講習会を開催、森林管理署職員15名が受講しました。 安全確保やわなに関する基礎的なことを座学で学んだ後、現地で実習を行いました。
この日は翌日暴風雪が予想されたため、実際に設置は行いませんでしたが、わなを見るのも初めての職員もおり、知識向上に役立ったと思います。
 現地でのくくりわな講習
講習翌日19日午後からわな設置を行いました。 設置に当たってはシカの通り道にある立木にワイヤーをくくりつけてわなを設置して雪をかぶせ、わな前後にはシカの歩幅に合わせてまたぐように木の枝などを置き、わなをシカが踏むように工夫しています。
また、わな設置箇所にはIoT自動撮影カメラを設置し、シカがかかれば画像で確認できるようにしています。
 わな設置の様子
設置後翌日には早速3頭のシカが捕獲されていました。 捕獲したエゾシカは電気による止め刺しと処理施設への運搬を処理業者へ委託しています。
その後は、金曜日にわなを外し、月曜日にまた設置し、捕獲状況とわなの状態確認などのため毎日見回りを行いました。 その結果、2月10日にすべて撤去するまで計23頭(メス17頭、オス6頭)の捕獲に至りました。
1日当たりわな設置台数約25台と実質設置日数12日で総設置台数約300台なので、捕獲効率として7.6%に達しました。 実施前はそんなに獲れないだろうと思っていたのですが、思った以上に捕獲がうまくいき、予想を大きく裏切る結果になりました。
やってみないと分からないこともたくさんあり、次年度は準備等含めもっと効率的に実施できるよう改善していきたいと思います。
 わなにかかったエゾシカ
大雪のためわなが作動しづらいときもありましたが、概ねわなに問題はなく、懸念されていた凍結なども発生しなかったようです。 また、わな設置前の誘引がうまくいったためか捕獲が続いてもシカが警戒して寄らなくなるということもなく、ほぼ連日1~3頭の捕獲がされました。
わな捕獲を実施して感じた問題点としては、週2回程度の給餌による労力がかかること、毎日の見回りに最低2人は必要となり、見回りに少なくとも1時間半はかかってしまうため、実行体制が厳しいときもあること、止め刺しには危険が伴うこと、くくりわなによる捕獲個体は食肉利用に向かないことなどがあげられます。 しかし、大型囲い罠などと比較して安価に実施できる上、銃器による捕獲と違って市街地近くでの実行が可能であり、銃による重大事故の可能性がなく、日中出没しにくいシカも捕獲できることなどが利点としてあげられます。
北海道でのエゾシカ捕獲は銃によるものが主流ですが、わなによる捕獲を上手く活用することで効率的に捕獲することができると思いました。 エゾシカ捕獲を進めることで、農林業被害の軽減に貢献できるよう今後も取り組んでいきたいと思います。
(主任森林整備官 小林)
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