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北海道森林管理局

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    渡島地域における低コストで効率的な森林施業の普及・定着に向けて

    渡島森林管理署
    森林技術指導官  平  恵司

     渡島森林管理署(以下、当署)管内の民有林は戦後積極的な造林が進められたものが多く、利用期を迎えた高齢級人工林の比率が高いため、その活用に伴う伐採量の増加と伐採後の造林作業量の増加が始まっています。

     しかし、その一方でこれらを担う地域の林業労働者は減少の一途をたどっており、長年かけて育ててきた人工林の利用、伐採後に元の森林に戻すための造林作業や間伐作業が円滑に進まない恐れがあり、
    (1)森林施業の効率化、(2)低コスト化、(3)林業労働の省力化等が課題となっています。

     このため当署では国有林で行っている上記(1)~(3)の課題解決を目指した作業方法である「伐採と造林の一貫作業」「コンテナ苗」の活用について民有林への普及、定着を図るために、各種会議、現地検討会、勉強会等の場を通じ、地域の自治体の林務担当者、民有林所有者、民間林業事業体等への技術的な支援を行ってきていますので、これらの取組を紹介します。

    当署管内の概要

     当署は北海道の南西部、八雲町にあり、渡島檜山森林計画区にある7町(七飯町・鹿部町・森町・八雲町・長万部町・今金町・せたな町)に広がる約14万3千ヘクタールの国有林野を管理経営しています。

     これらの国有林は国土の保全機能、水源涵養機能、兜野海岸林に代表される飛砂防備機能、豊かな森林が育む漁場の保全等様々な公益的機能を発揮し地域住民の生活に貢献しています。また、渡島半島の南東部に所在し、秀峰駒ヶ岳を中心に大沼・小沼を含めた観光名所である大沼国定公園や、狩場山や遊楽部岳等の高峰があり、麓には後志利別川や遊楽部川等が流れ、雄大な自然景観を有した地域となっています。 
      
          
              大沼から望む駒ヶ岳(七飯町)

    管内の森林・林業の現状と問題

     管内の人工林の現状を見ると、昭和30~50年代にかけて造林が進められ、植付から40~60年を経過したものの比率が突出して高くなっています。
    これらは間もなく利用期に入り、本格的な伐採時期を迎えることから、伐採後に必要となる再造林の事業量も大幅な増加が見込まれます。
     また、森林内には丸太の生産にともなう副産物である末木枝条(丸太にならない梢や枝葉)や、利用期手前の若齢人工林では間伐の実施による間伐材が大量に発生、産出されます。

     その一方で、(1)地域内では高齢化と過疎化の進行により林業労働者が減少していることや高額な再造林費が森林所有者にとって大きな負担となり、再造林が適切に実施されない造林未済地が増加するのではないか、(2)木材生産の現場では、急傾斜が多い地形等から高性能林業機械の導入が進んでいないこと等から安全で効率的な作業ができない、間伐材や末木枝条が搬出できず未利用で放置せざるをえないのではないかといったことが危惧されています。

    課題解決に向けた取組

     これらの問題を解決するには、作業の省力化、効率化、造林コストの低減を図ることができる「伐採と造林の一貫作業」の導入が必要です。
     そこで当署では自治体の林務担当者、森林所有者、林業事業体等の民有林関係者を対象とした「現地検討会」を開催し、その普及・定着に取り組んでいます。
     

    (1)伐採と造林の一貫作業とは
     
    一貫作業の説明図 これまでの伐採から造林までの作業は、(a)高性能林業機械である「ハーベスタ」(伐倒造材機)等による立木の「伐採」、(b)木材を荷台に積んで運ぶ集材専用の自走式機械「フォワーダ」(積載式集材車両)による丸太の「搬出」、(c)エンジン刈払機による植付準備のために地面を整える「地拵」(じごしらえ)、(d)苗木の「植付」という各作業が、連続することのない個別のものとして行われ、その終了とともに大型機械類は搬出し現場を撤収。その完了までには複数年かけることが一般的でした。

     これに対して「一貫作業」では上記の(a)~(d)の各作業を連携した一連の作業として基本的に単年度で実施します。

     この中では「伐採」に用いた大型機械(アタッチメントを伐採用から地拵用に交換)で「地拵」を行います。この方法では、その機械力で笹などの根茎を切断できることから苗木の生長を妨げる下草等の回復を抑制し、造林後の下刈回数の削減にもつながります。また、これまで大型機械は作業の都度、費用をかけて運搬していたことから、連続的に作業することでこの経費も削減できるといったメリットもあります。

     苗木の植付については、これまでの普通苗(いわゆる裸苗)では作業時期が春と秋に限定されることから、伐採時期によっては連続して作業することが困難でしたが、植付時期が限定されにくい「コンテナ苗」(※次項で説明)を活用し作業時期を平準化します。

     検討会では、これらの作業方法について説明し、一連の作業を通じ総合的に作業の省力化、効率化、造林コストの低減が図れることを紹介し、その普及に努めています。


     伐採と造林の一貫作業のデモンストレーション

    ※「伐採と造林の一貫作業」につきましては、まんが「人to木」の中でも紹介しております。ぜひ、こちらからダウンロードしてご覧ください。
     URL https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/square/kinoehon/index.html          

     
    (2)コンテナ苗を活用するメリット

     
     コンテナ苗とは硬質樹脂等で作られた特殊な形のコンテナ容器で育苗された「根鉢付きの苗木」です。
     普通の林業用苗木(裸苗)は通常2~6年程度育てたものを使用し、苗木を造林地に運ぶ際には土を払うため根がむき出しになっています。このため芽の成長が休止している春と秋などの限定された期間にしか植付できません。

     一方、コンテナ苗は「根鉢」が付いているため、根がむき出しの苗木(裸苗)と比べ、その扱いが簡単であること、また、細い根が育っていることから、根づきが良好で、植付適期が裸苗のように限定されないこと、専用器具を使うことで熟練者でなくても確実に植え付けることができ、その行程を大幅に短縮することができることなどのメリットがあります。

     林業先進地の北欧では1980年代から使われ出し、すでに林業の現場に定着していますが、北海道では2011年に国有林で使われ始めたため、まだ日が浅く、民有林での普及には至っていません。また、流通量の関係等から普通苗より価格も高めとなっています。

     検討会では、コンテナ苗とその活用方法、また、今後、低価格化の切り札の1つとして期待されている、播種した当年に苗木として出荷できるように栽培された「カラマツの1年生苗」の紹介も行いました。

     普通苗の育苗が2~6年程度かかるのに対して、この苗は1年以内ですむため、実用化されれば苗木価格が下がり普及しやすくなることから、その導入の意向などについて民有林関係者と意見交換を行うことができました。


    検討会でコンテナ苗について説明する森林管理署職員

    ※「コンテナ苗」につきましては、まんが「お山ん画」の中でも紹介しております。ぜひ、こちらもご覧ください。
    URL https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/square/kinoehon/index.html


    さらなる高効率・低コスト化に向けて


     一般的に民有林は国有林と比べると、森林所有者毎の森林面積が小規模かつその所在が分散していることが多いことから、森林施業のさらなる効率化と低コスト化を目指すには、これらを集約・団地化して、その経営規模を大きくしていくことが必要になります。

     このため当署では、民有林と国有林を一体として整備する森林共同施業団地を設定するために民有林の森林所有者等と「森林整備推進協定」の締結を目指す取組を行っています。

     協定を締結することにより、施業の集約化、両者が連携した効率的な路網整備などが行えるようになることから効率的な作業システムへの移行と合わせて、さらなる低コスト化を図ることができます。

     今般、当署では国有林に隣接する町有林を持つ自治体から、林道等の路網整備が整わず造林未済地となっている森林に植付を行うための技術的支援等について相談を受けたことから、その所有者である自治体・民有林を管轄、指導する振興局・隣接国有林を管理経営している当署との3者で、将来の「森林整備協定の締結」を視野に、今後の共同施業に向け検討を進め、その結果、この自治体では町有林内に効率的な路網整備を行うことが決まりました。

     今後は、これと連携する形で国有林内の路網を整備、協定を締結し、集約化した施業が具体化できるようサポートを行っていきたいと考えています。

    国有林フォレスターとして


     これらの取り組みを実行できたのは、渡島檜山地域林政連絡会議を中心に地元振興局や森林室、市町村等の関係機関、森林組合や林業事業体等の関係機関の連携があったからであり、国有林フォレスターとして、道のフォレスター等との連携・調整を密に行った結果だと思います。

     戦後造成された人工林の多くが本格的な利用期を迎えている今、「伐って、使って、植える」サイクルを確立するためには、この豊富な森林資源を活用して林業を成長産業化させていくことが不可欠です。

     民国連携の取り組みは今始まったばかりであり、難しい課題が山積みしていると思いますが、民国の路網の連結や土場の共同利用などによる効率的な森林整備を進めていくため、森林整備推進協定の締結を目指して取り組んでいきたいと考えています。


                   渡島檜山地域林政連絡会議





    お問合せ先

    渡島森林管理署

    ダイヤルイン:0137-63-2141