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北海道森林管理局

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    令和5年9月28日 天然林からの持続可能な木材供給に向けた取組


    ~樹群択伐天然更新施業という新たな施業方法についての現地勉強会(上川北部森林管理署)~


    計画課

    はじめに

    北海道森林管理局では、森林の多面的機能を持続的に発揮するため、立地条件や森林の現況等に応じた施業を行い様々な林種・樹種・樹齢からなる森林をつくる「多様な森林づくり」を進めており、その一環として天然林における「樹群択伐天然更新施業」という新たな施業方法に注目しています。令和5年9月下旬、北海道森林管理局では、2009年(平成21年)に樹群択伐天然更新施業を実施した試験地において、職員等を対象として現地検討会を開催し、施業実施後の稚樹の更新状況を確認したとともに、この施業方法やその留意点への理解を深めました。


     

    開 催 日:令和59月28日(木曜日)

    開催場所:2009年(平成21年)に試験的に樹群択伐天然更新施業を実施した上川北部森林管理署2069林班(士別市()(さま)国有林)

    参 加 者:北海道森林管理局、上川北部森林管理署など管内の5森林管理署及び東京大学北海道演習林から合計で50名が参加

    現地勉強会の様子
    現地勉強会の様子


                            
     

    試験地の概要

    この試験地は、北海道森林管理局森林技術・支援センターが森林総合研究所北海道支所と共同で「天然林での樹種の多様化を図る更新方法の開発」を目的に樹群択伐天然更新施業を実施した箇所です。 

    かつて広く行われてきた大規模な地がき(※)では、陽樹であるカンバ類が優占的に更新してそれ以外の樹種が更新しなくなり、単純な林相となりがちです。この経験を踏まえ、この試験地では、多様な樹種の更新が期待できる「小面積の地がき」と複雑な地表面の更新環境を形成する「根返し」を施業として実施することとしました。

    ※地がきとは、樹木の更新を阻害するササなどを建設機械により剥ぎ取り、腐植の乏しい鉱質の土壌を露出させる作業です。

    試験地の施業実施前の林況は、トドマツを主体とした針広混交林でした。2008年(平成20年)に小面積の択伐を実施したとともに、その翌年(2009年)に小面積の地がき(10箇所)と根返し(9個所)を実施しました。地がきを実施した箇所はそれぞれSCP1~SCP10、根返し箇所をUPR1~UPR9とし、更新状況のモニタリングを継続して実施しています。

     

    小面積の地がき

    地表処理

    森林技術・支援センター作成資料より

    根返し

    根返し

    森林技術・支援センター作成資料より


    プロット位置図

    プロット位置図
            SCP=地がきプロット、UPR=根返しプロット

    種子散布量調査

    小面積地がきを実施する前年に当たる2008年(平成20年)から実施した翌年の2010年(平成22年)までの期間において、試験地において種子の散布量を調査しました。

    試験地に多く分布するウダイカンバやトドマツからの種子散布量が多くみられました。また、2010年(平成22年)はミズナラの種子が豊作でした。

    種子散布量調査結果
    種子散布調査結果

                                                 

    地がきを実施した区域の調査結果(10年目)

    小面積地がきを実施した区域において、施業実施後2年目から5年目までの3年間及び施業実施10年目に更新木やササの調査を行っています。その結果は、次のグラフのとおりです。

    10箇所の調査結果を左から相対照度(※)の低い順に並べてあります。

    相対照度が高くなるに従い更新本数(棒グラフ)も増加する傾向がみられますが、相対照度が50%と最も高いSCP7プロットは更新本数が少なくなっています。これは、相対照度が低い場合は更新した稚樹も必要な光が得られないため生存が難しく、相対照度が高い場合はササ(折れ線グラフ)の回復が早く被圧されるため、このような結果になったと考えられます。

    ※相対照度とは、ある場所に到達する照度を、全く被陰されない場所での照度に対する相対値として表したもの。

    地がき区の調査結果
    地がき区の調査結果(10年目)

    相対照度と更新樹種の関係を次のグラフで示しています。相対照度が3040%(グラフの赤丸のあたり)の場合は、遷移初期種(※)と遷移後期種(※)のどちらも更新している傾向がみてとれます。この調査結果から、相対照度30%~40%であれば、多様な樹種が更新する可能性が高いことが示唆されます。

    ※遷移初期種とは、カンバ類など裸地など明るい環境に最初に更新する樹種を指す。
    ※遷移後期種とは、トドマツやミズナラなどある程度暗い環境でも更新する樹種を指す。

    相対照度と更新樹種の関係
    相対照度と更新樹種の関係


    今回の現地検討会では、このほかSCP6及びSCP7の2年目から10年目にかけての経年変化や周囲のササの高さと更新木の比較等についても報告され、照度管理の重要性等について理解を深めました。

    SCP7(令和5年7月撮影)
    SCP7(令和5年7月撮影)

    SCP6(令和5年7月撮影)
    SCP6(令和5年7月撮影)

    根返し区の調査結果(10年目)

    根返しを行った9箇所のうち、代表的なプロットの2年目から10年目の樹木の更新本数(棒グラフ)とササの本数(折れ線グラフ)の推移をみると、以下のグラフのとおり、10年たってもササがあまり回復していません。

    根返しプロットUPR2の調査結果
    根返しプロットUPR2の調査結果


    下の写真のように、根返しを行い盛り上がったマウンド部分は周囲の地表面より高いためササが侵入しづらく、トドマツなど比較的成長の遅い樹種にとっても更新・成長できる環境となっています。

    UPR2(令和5年6月撮影)
    UPR2(令和5年6月撮影)

    まとめ

    地がき区及び根返し区の各プロットを回り、上記のような更新状況などの調査結果について説明を受けました。その後、質疑・意見交換を行い、事業レベルで実施する際に考えられる問題点や相対照度と伐採面積の関係、また施業を繰り返し行う場合の間隔(年数)などについて活発なやり取りがなされました。

    今後については、樹群択伐天然更新施業は多様な樹種更新が期待できる施業方法であり、天然林施業を行う上では森林資源の持続可能性と生物多様性の保全への配慮が重要であることから、様々な条件下で試行的に実施し施業方法の確立に向け取組を進めます。

    お問合せ先

    計画保全部 計画課

    ダイヤルイン:050-3160-6283