東（ひがし）ヌプカウシ山コマクサ希少個体群保護林

1．設定目的

   東ヌプカウシの山頂部から亜高山帯にかけて局所的に自生するコマクサの生育に必要な森林を保護・管理することにより、当該野生生物個体群の持続性を向上させ、野生生物の保護、遺伝資源の保護、学術の研究等に資することを目的とする。

		【左上】  保護林の遠景。 【右上】  保護林内のガレ場。 【左下】  ガレ場の砂礫地に生育するコマクサ。

2.保護対象

コマクサ（分布限界域等に位置する個体群：大雪山系南端）（温暖化等の影響により将来的に消滅が懸念される個体群）

3.設定の経緯

• 昭和50（1975）年4月1日に、「東ヌプカウシ、コマクサ保護林」として学術参考保護林に設定された。
  
• 平成元（1989）年4月1日付け元林野経第25号「保護林の再編・拡充について」により、植物群落保護林として再編し設定された。
  
• 平成30（2018）年4月1日の保護林再編の中で、「東ヌプカウシ山コマクサ希少個体群保護林」として設定された。

4．所在地 （関係森林管理署）

• 河東郡  鹿追町  （十勝西部森林管理署東大雪支署）

5．面積

   14.69 ha

6．位置図

7．現況

 【植生現況】

• コマクサは高山帯の山頂や尾根などの気候的に厳しい場所の砂礫地（凍結・融解作用や昼夜の温度差などによる）に生育する代表的な高山植物の一つで、北海道内では、大雪山、阿寒、知床、日高山脈ペンケヌーシ岳に分布する。
• 当該保護林に生育するコマクサは、大雪山系の南端部に位置しており、大雪山の主要なコマクサ生育地と離れており、かつ標高1,230mの尾根部から亜高山帯に生育する非常に貴重な個体群である。
  
• 保護対象種のコマクサは、東ヌプカウシ山の稜線部に見られる保護林内の砂礫地や石礫地に限定的に生育する。
  
• コマクサの生育地は、凍上により形成される崩壊砂礫地や石礫地で、生育箇所の規模は1平方m～350平方m程度。
  
• コマクサの生育地はパッチ状に分布しており、生育地単位で数株～数十株単位で生育するが、面積の大きなところは百株規模で生育する。
  
• 稜線部の木本類は風衝による矮性ダケカンバ林が形成され樹高4～5m、胸高直径15cm程度である。
  
• 林床はササ類を主体に、ハナヒリノキやスズラン、キキョウなどが見られる。
  
• シカ足跡が多く、生育地内の一部に踏圧が見られた。

8．法指定等

保健保安林、国立公園第1種特別地域（大雪山国立公園）

9．取り扱い方針

(1) 基本的に人為を加えず、自然推移に委ねるものとする
(2) 個体群の状況に応じた取扱い
  ア 目的とする個体群の保護・増殖に必要な森林施業は可能とする
  イ 一時的な裸地の出現等、遷移過程におけるかく乱が対象個体群の持続的な生育・生息に不可欠な場合には、必要な森林
    施業を行うことにより、人為による環境創出等を行うことができる
(3) 必要に応じて行うことができる行為
  ア 学術の研究、自然観察教育、遺伝資源の利用その他公益上の事由により必要と認められる行為
  イ 山火事の消火、大規模な林地崩壊・地すべり・噴火等の災害復旧及びこれらに係る予防的措置等、非常災害に際して必要
    と認められる行為
  ウ 鳥獣・病害虫被害及び移入種対策として必要と認められる行為
  エ 学術の研究、自然観察教育等のための軽微な施設の設置
  オ 標識類の設置等
  カ その他法令等の規定に基づき行うべき行為