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林業専用道技術者研修(平成25年度_4)

 

林業専用道技術者研修
第一回(1日目 2日目  3日目 第二回(1日目 2日目  3日目 第三回(1日目 2日目  3日目 第四回1日目 2日目 3日目

 第4回研修が始まりました~研修1日目(平成25年10月9日)

 

    本日から、平成25年度 東北ブロック林業専用道技術者研修の第4回目が、岩手県盛岡市の「ホテル エース盛岡」において始まりました。

    当研修は、日本型フォレスター研修育成事業の一環として、森林・林業再生プランにおける今後の路網区分の一つである「林業専用道」につ いての基礎知識の習得と路線選定、設計方法等の技術の向上を目的としています。 

    今回は、測量・建設コンサルタントの職員6名、建設事業体の職員1名、合計7名が参加しています。受講者は、3日間の日程で講義・現地実習等の研修を受講します。

 

挨拶   

        開講に当たり、東北森林管理局 盛岡森林管理署 伊藤署長から以下のとおりご挨拶がありました。

    「豪雨による被害が全国的で発生していますが、東北地方でも激甚災害に指定されるほどの想像を絶する局所的な災害が発生しました。特に、森林へのアクセスが失われたことは深刻であり、今後、多方面での影響が出てくるものと心配しているところです。このような災害に身近に遭遇して、改めて、路網アクセスによる恩恵とともに、災害に強い路網整備の重要性を再認識することにもなりました。」

    「さて、10年後の木材自給率を50%まで引き上げることを目的にした森林・林業の再生に向けて、平成23年度に見直しされた森林・林業基本計画においては、路網の整備が重要な柱として位置付けられています。日本の森林は、戦後造成された人工林を中心に今後10年間で、人工林資源の6割が50年生以上となり、本格的な木材利用が可能と見込まれますが、外材に対抗できる価格競争力を持たないことから、国産材の自給率は、依然として2割台に止まっています。そこで、意欲と能力のある経営体に森林経営の委託を進め、面的なまとまりのある施業団地を設定し、その団地の中で、高性能林業機械が十分に活躍できるように、路網密度を高めていくことが重要な課題となっています。」

    「オーストリアの林内路網密度は89m/haと、日本の18m/haの5倍以上あり、生産コストは、間伐材で比べると、日本の9,300円/m3の1/4~6割と低くなっています。従来の大規模林道など、一般道に近い林道とは違って、林業専用道の場合は、尾根と谷の連続する森林内の路網整備であるため、局所的な地形・地質をよく把握することが重要です。10トン積みのトラックが走行できる線形と縦断勾配を保ちつつ、低コストで丈夫な道を造るため、構造物を少なくし、地形に応じた波形線形、こまめな排水処理等々の工夫が必要であり、これまでとは違った知識、技術、経験が求められます。日本の森林・林業の再生の実現に向け、先頭を切って取り組むべき路網整備の推進に、皆さんの力を奮って頂ければと期待する次第です。」

 

講師 

斉藤・柴田・中田の各講師

 

講義の前に、各班で自己紹介を実施

紹介2  紹介1

   

 

林業専用道作設指針等の概要(講義)

    なぜ、今、路網整備が必要なのかを理解するために、森林・林業再生プラン、路網の現状、路網整備の考え方、林業専用道作設指針、林業専用道の設計上・管理上の留意点等について講義が行われました。 

概1

           講師:東北森林管理局 森林整備課 斉藤技術指導官

 

《森林・林業の再生に向けて》

    森林・林業の再生に向けて、路網整備や人材育成を集中的に実施し、国内林業の基盤を確立、利益還元型により、やる気のある森林所有者や林業事業体を育成などを取り組むこととしています。路網の整備や施業の集約化については、直ちに取組を開始しています。 

概2

    制度的な検討事項として、1)  安定的な木材供給、2)  フォレスター制度、3)  セーフティネット体制、セーフティネットの整備については、今後10年間(実質あと7年間)でドイツ並みの路網密度(100m/ha)を確保し、木材自給率50%を目指すこととしています。

    出口施策としては、1)  公共建築物等への木材利用の促進、2)  バイオマス利用の促進など、これらを達成するため、林業専用道を中心とした路網整備の加速化が必要とされており、この研修において、これを担う技術者の育成を図ることとしています。 

  

《森林・林業の再生に向けた改革の姿》

    改革の姿における路網整備の考え方は、 施業集約化の推進や民有林と国有林が併存する地域において森林協同施業団地の設定を推進するとともに、「林業専用道」、「森林作業道」の区別を新設し、路網整備を加速化させます。 

概3 

    具体的には、1)  機械を組み合わせた作業システムの整備、2)  森林所有者が不明な場合にも路網整備が進められるよう措置を講じます。林業専用道の作設にあたっては、作業システムを考慮しつつ、森林作業道の取り付け箇所等の配慮が必要です。

  

《新たな路網整備の方向》 

    第二次世界大戦以前までは、資材や人員の輸送は人の足に頼ることがほとんどであり、木材の搬出も木馬や筏流しが主流で、その後森林鉄道が作設、利用されるようになりました。 

概4

    1960年代以降、国産トラックの性能が向上して以降、自動車が通行する道路として林道の建設が始まり、高度成長に伴い、山村の社会資本として集落間を結ぶ生活用道路として整備されてきました。 

    これからの林道等の路網整備については、林道、林業専用道、森林作業道、それぞれの役割が適切に発揮されるよう整備することとし、特に、林業専用道については、森林作業道との組み合わせにより、林業の生産性を第一に考え、地域の林業振興の一翼を担う林業経営のための道として整備していくこととしています。

                                          

《諸外国の路網整備状況》 

    このグラフは、日本、オーストリア、ドイツの林内路網密度を示したものです。 日本の路網密度は、ドイツの1/7、オーストリアの1/5の水準です。 

概5

 

《ドイツ、オーストリアとの比較》

    ドイツ、オーストリアでは、恒久的な路網(大型のトラックが通行できる基幹道)が高密度で整備されており、ウィンチ付きトラクタやタワーヤーダを基幹道上に据え付けて、道端まで荷揚げ集材し、トラックで運材する作業システムが一般的ですが、 日本は地形が急峻だったり谷密度が高いなどの制約が多いことから、路網の全てをトラック道とすることは困難であるため、地域に合った作業システムに応じて、林業専用道と森林作業道を組み合わせて整備していく必要があります。  

概6

    長期的に停滞している林業を再生するためには、林業の採算性の回復を図ることが重要ですが、木材価格は国際価格であり今後大幅な上昇は望めないことから、採算性を回復するには生産費の縮減が必要であり、生産費の縮減のためには、作業システムに応じた路網整備が不可欠です。

 

《路網整備の考え方》

「林道」は、原則として不特定多数の者が利用する恒久的公共施設です。

概7

    「林業専用道」は、主として特定の者が森林施業のために利用する恒久的施設です。 林業専用道については、林道規定の自動車道1、2級の設計車両と同じ普通自動車が通行できる規格構造とすることしていますが、一般の者にわかりやすいように普通自動車(10t積み程度のトラック)と表記としていす。

「森林作業道」は、特定の者が森林施業のため利用する施設です。

  

《路網整備水準》

    これからの路網整備は、道づくりそのものが目標となるものではなく、効率的な森林経営を継続していくために必要な基盤づくりを進めていくことを目標として実施していかなければなりません。

概8   

    路網配置を計画するに当たっては、林業専用道や森林作業道を利用する森林所有者や素材生産業者、森林組合等の地域の関係者の間で、森林整備のための作業システムや整備が必要な森林の配置等に配慮した路網配置となるよう十分な検討を行う必要があります。さらに、それぞれの担当者の中で、林道、林業専用道、森林作業道、それぞれの必要な整備の姿に関する認識をお互いに認識を共有する必要があります。

 

《これからの路網整備の課題》

    10年後(実質7年後)の木材自給率50%の実現に向け、充実した人工林資源の活用にあたって、森林施業に主眼を置いた路網を早急に整備していくことが課題です。そのためには、森林施業に使い勝手の良い道(森林作業道が分岐して林地へ入れる道)にすることや簡易な構造とするなど、林道開設コストの低減が必要です。

概9

    搬出間伐が原則となるため、B材C材と言われている曲がり材や根元の材で一般の製材に仕向けられない安価な材を搬出するためには、搬出・輸送コストを含めたトータルコストの縮減が必須です。また、搬出・輸送コストの低減のためには、導入する作業システムに応じた高密度の路網整備が必要です。

  

《林業専用道作設指針  第1 趣旨》

    路網・作業システム検討委員会において、今後の路網整備の課題等を踏まえ、林業専用道作設指針が示されました。この指針では、山を壊さない道づくりのために必要な事項を示すことが重要とし、林業専用道の規格・構造や路線選定、排水処理の方法等について具体的に示されています。

概10

    開設にあたっては、森林作業道との組み合わせを念頭に、地形図の判読や現地踏査等により自然環境に配慮し、土工総量や構造物量を抑制した計画とします。 

    路網・作業システム検討委員会で指針作成にあたって、何度も議論となったことのひとつが、平均傾斜の記載です。結局は「~程度以下を基本」というような少しファジィな書き方となっています。平均傾斜30度程度以下は、山地の地形は一様でないため平均傾斜としたものです。また、土構造を原則としているため、30度を目安としたものであり、地質条件や一定の構造物の設置を踏まえて程度以下としています。

 

《林業専用道作設指針  第2 管理》

    林業専用道(基金事業は除く)は林道の一部であることから、管理者は市町村又は森林組合等となります。通常の林道との管理上の違いは、門扉の設置や一般車両の交通規制に関する表示の必要性です。

概11

    平成23年度の第三次補正予算で基金事業として予算化された「林業専用道(規格相当)」は本指針に準ずるものですが、林道の位置付けとはなっていません。「林業専用道(規格相当)」の管理者は、地方公共団体、森林組合以外でも可能です。

                                           

《林業専用道作設指針  第3 規格・構造》

    設計車両は、車両制限令で、通行許可を受けずに公道等を走行できる普通自動車としました。土工総量や構造物量を抑制するとともに、路面侵食等を受けにくくし、開設経費や維持管理費を極力抑えることができる構造とするため、設計速度を15km/hとしました。

概12

    路肩は林道規程12条に定めるやむを得ない場合の値を適用し、片側25cmとしました。最小曲線半径は、林道規程第15条の解説の曲線半径の算定式及び車両制限令第3条に規定されている最小回転半径の12mを参考に決定しました。

    林業専用道は砂利道であることから、できる限り緩勾配とすることが必要です。ただし、やむを得ない場合は、交通安全施設等を設置して14%以下(延長100m以内に限り16%)とすることができます。横断勾配を設けない構造としていることから、側溝は設けず、波形勾配を利用した路面水の分散等に努めることとしています。

 

《林業専用道作設指針  第4 測量・調査・設計》

    路線選定にあたっては、図上測設の段階から複数の路線を比較する方法により路線選定を行うものとします。

概13

    林業専用道は、地形・地質の安定した箇所を通過させることが必要であることから、地形図では把握できない微地形を把握して設計する必要があります。このため、現地での直接測量(線形目標杭(とんぼ)を設置しながら、繰り返し線形の検討を行う方法)によることが原則です。

 

《林業専用道作説指針  第5 土工》

    切土のり面勾配は、現地の土質条件等から標準値では切土のり面の安定が保てないと判断できる場合は、必要に応じて安定のり勾配とします。

    なお、労安則では、切土高が2m未満であって、崩落のおそれがない場合は、切土のり面勾配を直とすることができることとなっています。

概14   

    盛土のり勾配は、1割2分を標準としていることから、良質な盛り土材料の使用が必須です。特に、保安林内等においては、十分な安定性を確保した構造としなければなりません。(ただし、1割5分を要求するものではない)

 

《林業専用道作設指針  第6 構造物/第7 排水施設》

    林業専用道は、土構造を原則としますが、やむを得ず構造物を設置する場合は、地形・地質等を踏まえ、車両の安全通行の確保と経済性を考慮し、工種・工法の比較検討を行い、最も適切な施設を選定して計画します。

追加2

    横断排水工の設置間隔は、50mにとらわれることなく、地形・地質や縦断勾配を勘案し、その間隔を決定します。 また、施工段階においても現地の状況を確認して、柔軟に設置位置の変更を検討します。

                                           

《林業専用道作設指針のポイント》

    林業専用道作設指針のポイントは、 (1) 地形に沿った線形とする、(2) 土構造を基本とする、(3) 波形勾配と横断排水による分散排水、であり、この考え方に基づき、詳細な規格・構造等を定めています。

追加

 

《林業専用道の施工管理上の留意点》

    林業専用道の工事施工に当たっては、施工業者にも林業専用道の主旨を理解してもらい、発注者と共により良い専用道を造るという意識を共有する必要があります。

概17

    工事施工に当たっては、設計図書、仕様書に基づき施工管理を行うが、現地と設計図書を確認する起工測量がその第一歩です。

    林業専用道の目的は、林業ができる道づくりであり、必ずしも設計図どおりに造ることが目的ではない。現地に照らし当該設計がこの目的に合致しない場合は、監督職員と相談して対応します。具体的には、地形の変化に応じた線形の微調整、森林作業道の取付部の確保、林業作業用施設(土場)の確保等についての変更協議を行います。

    林業専用道の設計に当たっては、ボーリング調査等による土質調査は行っていないため、工事施工の段階で想定と異なる土質が出現する場合が多々あります。特に、切り土のり勾配について、監督職員と相談して臨機に対応する必要があります。

    林業専用道については、路面水を分散排水により処理することとしているが、横断排水工の設置を予定した現地が、盛り土区間であったりした場合は、洗堀防止対策の検討や横断排水工の設置箇所の移動等について、監督職員と相談して臨機に対応する必要があります。

 

《林業専用道の管理上の留意点》

    林業専用道の管理については、これまでの林道と全く同じです。

概18

 

      

 林業専用道の調査設計(演習)

    明日の藪川林道における現地実習の準備として、班ごとに図面上で路線の検討と、縦横断図等から見直すべき線形、工法等について検討しました。

演1

          講師:(株)森林テクニクス青森支店 柴田業務課長

 

    演2  演3

     

この演習や実習により、林業専用道の適正な線形の選択や適切な施工管理の知識を習得します。

演4  演5

    演6  演7

    演8  演9

演10  演11

      

 研修2日目(平成25年10月10日)

現地実習 

    盛岡市藪川林道において、現地実習を実施しました。

    1日目に班毎に図面上で検討した藪川林道の路線を実際に作設された林業専用道の線形とを比較し確認を行いました。

    また、縦横断図等から線形、工法等を見直すべきとした箇所を歩きながら確認し、線形を見直す箇所、法面緑化や構造物の必要性等について検討及び、 検討内容について意見発表を行いました。

実1 

  概況説明:東北森林管理局森林整備課 中田路網整備係長

                           

    実2  実3

実習の進め方等について説明    

                                                                                                            

班毎に踏査を実施し、見直すべき線形・工法等について検討

実4  実5

実6  実7

実8  実9

 

踏査の途中、曲線半径と中心線形について解説がありました。

実10  実11 

実12  実13

実14  実15

 

踏査を再開

実16  実17

実18  実19

実20  実21

実22  実23

   

検討内容について意見発表 

    実25  実24

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実32  実33

実34

                                                    全員で記念撮影。現地実習お疲れ様でした。

 

 

3日目の発表に向けた準備(演習)

    バスで岩洞湖活性化センターに移動し、遅い昼食をとった後研修会場に戻り、藪川林道の現地調査を踏まえて、5千分の1図面上で検討した路線を再検討し、図面作成と路線選定理由のとりまとめと、既設藪川林道の線形、工法等の見直すべき事項のとりまとめ作業を行いました。 

整1  整2

整3  整4

 

 

路網計画策定時における地域情報の事前収集について(講義)

     インターネットで入手可能な情報等について講義を行いました。 

情1  情2

  

 

 研修3日目(平成25年10月11日)

研修最終日は、今後の活動に向けたディスカッションや林業専用道設計のポイントについて講義が行われました。

 

今後の活動に向けたディスカッション(演習)  

     一昨日、図面上で検討した路線について、昨日の藪川林道の現地調査を踏まえて再検討した図面をスライドで映しながら、路線選定理由を班ごとに発表しました。

路発1

 

  •  1班の発表と質疑

路発2  路発3

路発5  路発7

 

  • 2班の発表と質疑

路発10  路発9 

路発12  路発13

 

  •  講評

1・2班の発表と質疑のあと、線形の考え方や講師の路線案等について解説がありました。

路講1  路講2

      

    昨日の藪川林道の現地調査を踏まえて、平面図をスライドで映しながら、線形、工法等の見直すべき事項について、班ごとに発表しました。

  •  1班の発表

見発1  見発3

見発2

 

  • 2班の発表

見発4  見発6

見発5

    

斉藤講師から、上層路盤講工について説明がありました。

路盤厚1  路盤厚3

路盤厚2

 

柴田講師から、実習時に説明した外側拡幅、中心線形等についておさらいと補足説明がありました。

ま1

ま2  ま3

ま4  ま5

 

 

林業専用道設計のポイントについて説明(講義)

林業専用道に求められる機能、路線選定の考え方、回避すべき地形等について講義が行われました。    

 

《林業専用道に求められる機能》

  • 国産材の自給率50%以上を達成するためには、これまで以上に加速的に高密度の路網を整備する必要があります。
  • そのためには、開設コストの安い道づくりが求められます。
  • だからといって、崩れては意味がありません。
  • 耐久性と経済性をあわせた道の整備が重要(維持管理費を含めた経済性)です。
  • また、森林経営の観点からは、森林・林地へのアクセス性の高い道が必要(森林作業道との取り付けを充分考慮)です。
  • そのうえで、林業専用道は輸送機能も求められるため、走行性の確保も必要とされます。(10トン積トラックが15km/hで走行できる設計)
  • これまで以上に、路線選定や設計に対する比重は大きくなり、我々のように路網に携わる技術者の技術力が問われることになります。
  • 「林業専用道作設指針」では、林業専用道の基本は、地形の傾斜が25~35度程度以下に作設することとなっています。
  • 特にルート選定、路線選定に重点を置いて、これからの路網配置を考えていく必要があります。 

ポ1

  

《路線選定i》

    路線選定、ルートの選定が重要となってきますが、 その場合に注意すべきは、次のようなこと。ただし、ここに示した事項は、ほんの一部です。

  1. 踏査、予測が特に重要。
  2. 踏査、予測で地形地質上の安定斜面を探して通過させる。
  3. 尾根部は比較的、地形が安定しており緩斜面のところが多い。
  4. さらに、尾根に近くなればなるほど集水区域が小さくなるので、林道災害の最大の要因である水処理対策が少なくなる。結果、開設コストが安くなる。
  5. 地形の安定したところ、遷急線の上部など。
  6. 河川、沢等の通過を極力少なくする。ルートを変更することにより河川を通過しないルートはないかなどを検討。
  7. 測量方法によっても異なる。小規模な道路ほど、微地形の変化が開設コストに影響を与える。地形測量からルートを選定すると微地形の変化を見落とすことがある。
  8. 地形のヒダに沿った平面・縦断線形を採用してコストの縮減に努めるとともに、結果、森林施業にとって使い易い道となる(ただし、地形に追従した路線選定だけにとらわれると、小さな曲線半径が連続することになり、拡幅が連続する路線となることがあるので、注意が必要)。

ポ2

 

《路線選定ii》

    林業専用道では、極力、谷渡りがないような路線選定とすることが基本ですが、やむを得ず横断する必要が生じた場合は、河川や渓流の通過に最も注意を要します。

    通過位置の選定は、開設コスト、災害発生等に直結します。通過する場合の工法の選定とあわせて検討が必要となります。その他、地形図上や現地においてルートを選定する場合の留意事項は以下のとおりです。

ポ3

 

《白亜紀後期の西日本の地質》

    現地の地形について、路網を開設するのに適、不適を判断するうえで、日本列島の生い立ちについて理解しておく必要があります。はるか大昔、日本列島はユーラシア大陸とつながっていました。それが、約6,500万年前の白亜紀の終わりに、東端が割れて日本海ができ、西日本と東日本が別々に大陸から離れて、その後、太平洋上で合体して日本列島の骨格が形成されたと考えられています。

    日本列島の乗るユーラシアプレートの下には、海洋プレートが沈み込んでいます。沈み込む際に、海洋プレートの堆積物がはぎ取られて、古い地層の下に新しい地層がもぐり込む形で、くさびのように日本列島を下から押し上げています。これを付加体と呼んでいます。

    日本列島は、海洋プレートがユーラシアプレートの下に潜り込む時に傾いたまま隆起した付加体と考えられており、多くの場所で地層が傾いています。このように傾いた地層が、雨で浸食されたり崩れたりして、谷や尾根ができ、そこに樹木が茂ったのが日本の山であり、森林なのです。

ポ4

 

《地層の傾斜流れ盤と受け盤》

    流れ盤とは、地質体のもつ面構造が地表斜面に対して、平行またはそれに近い関係にあるものです。受け盤とは、地質体のもつ面構造が地表斜面に対して交差の関係にあるものです。

流れ盤は、斜面方向の不連続面をなし、のり面や斜面の地すべりや崩壊を引き起こす可能性が高いです。

ポ5

 

《回避すべき地形》

    崖錐とは、断崖絶壁のように切り立った急な山腹の下に、30度くらいの緩やかさで、上から落ちてきた岩の風化物などの堆積したところです。地すべりは、地層界への地下水の影響、温泉などによる基盤岩層の変質、地質構造線が要因になることが多いです。

    断層とは、地層や岩石の割れ目にそって、両側の地層や岩石がずれている部分をいいます。断層により破壊された物質が幅をもっている部分を破砕帯といいます。

    扇状地とは、沢が谷から急に広い平地のようなところに出た場合、沢が運んできた土砂が平地に扇状地に吐き出されて堆積したところをいいます。

ポ6

 

《地形・地質上の安定斜面を選定》

    厚く堆積した土砂を切り取ったのり面は、大雨による崩壊の危険が非常に高くなります。また、緩く安定した斜面をできるだけ利用した線形にしていくためには、斜面の形と土砂の堆積様式を踏まえた路線選定が必要です。

    土砂の堆積は、一般的には丸みを帯びた凸地形の緩やかな尾根部では「残積土(母岩から風化してできた母材がそのままの位置で土になったもの)」となり、土や石が重力により少しずつ落ちているところは「匍行土(土や石が上から重力の作用で少しずつ移動しているところ)」といい、斜面の上から崩れ落ちてたまった土は、堆積土といいます。

    このような中で、緩やかで安定的な地形がベルト状に形成されることがあり、それを路線計画における「タナ(岩石・軟岩などが硬く残ったところで、地形図等での把握は困難)」と呼んでいます。ただし、タナ地形は、傾斜変換線(斜面勾配が変化する点を結んだ線)のように明瞭ではありません。

ポ7 

 

《シンプルな構造物での施工を検討》

 関東森林管理局で以前から使用されているコンクリート土のう積工です。ある程度の土圧にも耐えられます。

    構造がシンプルでどのような地形条件にも追従できるのが特徴です。余分な床堀等を必要としませんが、大きな土圧には適用できません。

ポ8

  

《シンプルな構造の横断溝》

排水施設としては、構造がいたってシンプルですが、路面排水工としては有効です。

    盛土箇所などでは、のり面の崩壊を誘発する場合があるので流末に注意が必要です。できれば、排水は尾根部などの安定した斜面に設置します。また、流末を根株などで散らすのも一つの方法です。

ポ9

 

《洗越工の構造例》

    通常は、この図のような構造を洗い越し工と呼んでいます。排水計算は、暗渠と路面排水部を合計して安全率1.2倍以上を確保します。維持管理上は、暗渠のみより有効です。場所によっては高価な構造物となるので、地形の条件、集水条件等を十分検討して設置します。

ポ9

 

 

 

 

 

 

 

《ルート選定及び設計上の留意事項i》

  1. これまでの林道90路線程度を調査した結果では、IP間距離は25mから35m程度が多い(一つの目安として) 。
  2. 地形の変化に沿った曲線半径が設定されているか。
  3. 土工量や構造物を削減するためには、外側拡幅も有効。
  4. 地形に沿った線形でない場合には、縦断勾配の変化が極端になることがある。路線の選定におかしなところがないか照査する。
  5. 上り勾配、下り勾配が長く続く場合でも、一定勾配とせず緩勾配区間を設定することにより、土工量の低減や分散排水を検討する。
  6. これからの林業専用道では、部分的には10mをこえるのり面が出現しても、連続することの無いような路線選定を行わなければならない。
  7. 開設コストの縮減を考慮すれば、土工量のバランスをとることは重要。
  8. 切土・盛土のバランス、残土処理等の兼ね合いなどを考慮して設計 (1000mの設計で300~500m3程度の残土は必ず必要)。
  9. これからの林業専用道の設計においては、極力利用することを検討(残土運搬や産廃処理に要する経費の低減にも有効)。
  10. 横断溝の排水は、尾根部の安定した箇所で排水、縦断勾配を考慮して適切な間隔で設置する。縦断勾配が3%以下のような箇所には横断工は不要、縦断勾配が急になるほど、設置間隔を短くするなどの検討。
  11. 林道技術基準等を十分把握しているか。
  12. 構造物は、林道の開設単価に最も深く関係する。
  13. 法勾配、土工量に影響する。表面調査からの判定では難しいところではあるが、十分な経験と既設箇所ののり面から判定する。
  14. 適切な理由が必要、会計検査等に説明できるだけの理由があるか。
  15. 適正に選定されていないで、構造物が沈下したり転倒したりする事例は少なくない。土質条件や地盤条件に適合した構造物選定する。 

ポ10  ポ12

 

 

 

 

《林業専用道の施工上の留意事項》

  1. 起工測量結果、設計図書と現地が一致しない場合は、監督職員に連絡し、確認を求める。
  2. より効果的・効率的な路線選定や簡易な構造物の提案を積極的に行う。
  3. 岩質、土質に加え、掘削の結果想定岩盤線と異なる場合は、監督職員に連絡し、確認を求める。
  4. より丈夫で安価な林業専用道とするための提案を積極的に行う。
  5. 設計図どおりの位置、方向等が最良か現地の状況に応じた判断が必要。
  6. 湧水箇所を見逃したり、排水処理方法が適正でないと、施設災害発生の原因となるおそれがあるため、監督職員に通知し、確認を求める。
  7. 森林施業が効率的に実施できることを考慮した提案を積極的に行う。
  8. 構造物の設計が過大となっている、または低コストを意識しすぎて現地に適合しない無理な設計となっている場合は監督職員に連絡し、確認を求める。
  9. 使用する資材に関して設計より有利な提案があれば積極的に提案する。

ポ12

 

講義により林業専用道の設計のポイントを確認することができました。

 

 

総括

研修の全日程を終了し、畠山講師からとりまとめコメントがありました。

総括

 

    受講者の皆さん3日間の研修お疲れ様でした。研修で習得した知識を現場で実践して頂くとともに、路網整備加速化を推進する技術者としての活躍を期待しています。

 

 

 

 

お問い合わせ先

森林整備部技術普及課
ダイヤルイン:018-836-2053
FAX:018-836-2012

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