このページの本文へ移動

四国森林管理局

    文字サイズ
    標準
    大きく
    メニュー

    愛媛県主催林業普及指導員全体研修会における講演概要(愛媛県と愛媛森林管理署との連携について)

    令和5年8月21日
    愛媛森林管理署

    ○林業普及指導員全体研修会(令和5年8月1日開催)

    林業普及指導員全体研修会は、林業普及指導員の資質の向上を図るため、林業普及指導員が地域の林業活性化や地域の森林づくり等の取組を発表し、意見交換をする場です。愛媛県森林局が主催しています。今年度のテーマは、「地域林業の活性化に向けた森林総合監理士等による普及指導の取組」であり、「新たな技術の導入や関係機関と連携した普及指導の取組」に合致した発表となっているか等が審査され、最優秀発表者は普及指導員中国・四国ブロックシンポジウムで発表することになっています

    ○愛媛森林管理署が林業普及指導員全体研修で講演を行った背景

     日本の森林・林業施策の基本的な方針等を定める新たな森林・林業基本計画が令和3年6月に閣議決定され、従来の施業等を見直し、開発が進みつつある新技術を活用して、伐採から再造林・保育に至る収支のプラス転換を可能とする「新しい林業」の取組みが推進されています。具体的には、ドローン等による苗木運搬、伐採と造林の一貫作業や低密度植栽、エリートツリー等を活用した造林コストの低減等の取組を積極的に推進する必要があります。
     愛媛森林管理署は、令和元年に愛媛県林業研究センターからエリートツリーの提供を受けたことを契機に、エリートツリーの植栽が下刈回数の軽減になるかどうかを検証する造林試験地を令和元年に設定しました。植栽から3年が経過し、エリートツリーの成長量や下刈回数の軽減可否が明らかとなりました。エリートツリーの成長量結果は苗木を提供していただいた愛媛県にフィードバックし、民国が連携して新しい林業を推進する必要があります。
     また、愛媛森林管理署は、令和5年度から、宇和島市、松野町、鬼北町、南予地方局が設立・運営している林業の担い手育成機関である南予森林アカデミーに対して、講師派遣や国有林の研修フィールド提供などの協力を行っています。
     これらのことは、林業普及指導員全体研修会のテーマである「新たな技術の導入や関係機関と連携した普及指導の取組」に合致するものであることから、愛媛県のご厚意により、今般初めて、愛媛森林管理署が林業普及指導員全体研修会で講演をすることとなりました。

    ○講演の内容

     「愛媛県と愛媛森林管理署との連携について」と題した講演は、3部構成で、具体的には以下の内容の講演を行い、愛媛森林管理署の若手職員が質疑対応をしました。講演会の資料は以下のとおりです。


    愛媛森林管理署の業務内容、南予森林アカデミーへの協力(PDF : 6,639KB)
    エリートツリーの試験結果(PDF : 4,094KB)
    点状複層林における上木伐採について(PDF : 5,329KB)
    1.国有林に期待されている役割、愛媛森林管理署の業務内容、南予森林アカデミーへの協力(説明:藤平署長)

    <説明の概要>
    ・国有林に期待されている役割は、民有林への指導やサポート、民有林の経営に対する支援、生産性やコストの低減等林業及び木材産業の成長産業化への実現に貢献すること。すなわち、民有林への貢献が国有林の役割。
    ・愛媛森林管理署は、主伐・間伐事業、造林事業のほか、国有林野の活用(貸付け)やふれあい活動等を実施。
    ・南予地方局等の要望を受け、令和5年度から南予森林アカデミーに対して、署職員の講師派遣、国有林の研修フィールドの提供を実施。

    <主な意見>
    ・愛媛森林管理署の協力がなかったら、林業担い手の育成機関として、南予森林アカデミーは機能していなかったものと思われる。今後とも協力関係を維持していきたい。

    2.愛媛県林業研究センターから提供いただいたエリートツリーの植栽試験結果(説明:藤平署長)

    <説明の概要>
    ・四国の国有林には、3箇所(高知中部森林管理署杉ノ熊山国有林、安芸森林管理署矢筈谷山国有林、愛媛森林管理署小田深山国有林)のエリートツリー植栽地がある。植栽3年後の樹高成長量を比較すると、愛媛森林管理署小田深山国有林のエリートツリーの樹高成長量が最も悪く、普通苗に比べても成長が劣る。他の植栽地に比べ標高が高く(1,000m以上)、平均気温が低く、降水量が少ないためと考えられる。エリートツリーは万能ではなく、適地を選んで植栽しないとその能力を発揮できない。

    <主な意見>
    ・エリートツリーの成長量は、これまでいいデータしか公表されていない。今回の愛媛森林管理署小田深山造林試験地のエリートツリーの成長量データは、どのような場所でエリートツリーの成長がよくないかを示した大変貴重なデータである。エリートツリーはどこでも良好な成長をするという誤解に対して、警告を与えるデータでもある。
    ・風が強い場所では、植栽木は上長成長よりも直径成長を優先する。エリートツリーの成長量が悪いのは、風の影響もあると考えられる。


    3.点状複層林における上木伐採について(説明:白石署員)

    <説明の概要>
    ・点状複層林とは、単層林において約50%程度点状に抜き伐りした跡地に下木を植栽し、上下2段林となっているもの。上木を伐採しても下木が残り、林地が裸地化せず、水源涵養や土砂流出防備機能の発揮が期待できる。
    ・愛媛森林管理署蔭地山点状複層林の上木を間伐した結果、約半分の下木が生存することが明らかとなった。蔭地山点状複層林は標高が高く(8001,000m)、表土が浅く、風害や雪害が散見されるなどスギ・ヒノキの適地と言い難い。他方、周辺に母樹となる広葉樹が多く生育しているため、裸地化しない点状複層林のメリットを活かし、上木を広く間伐し、天然更新を促して、針広混交林への誘導を検討すべきである。

    <主な質問と回答>
    ・上木も下木も両方間伐すればいいのではないか。
    ・点状複層林は、上木を伐採しても裸地化しないことがメリット。上木を伐採し、下木はできるだけ生存させたい。

    講演
    県林業普及指導員全体研修会の特別講演の様子



    署長国有林の役割について説明する藤平署長
    白石
    点状複層林の説明をする白石署員
    質疑対応質疑対応した若手職員(左から木村、本山、棚橋、白石)



    お問合せ先

    愛媛森林管理署
    ダイヤルイン:089-924-0550