林業の低コスト化の推進~収益性の高い林業・魅力ある林業の確立に向けて~
民有林・国有林を問わず、戦後に植林した人工林が成熟期を迎えています。地球温暖化防止等に資する施業を行うとともに、この成熟した森林資源を循環利用して林業の成長産業化を実現していくことが喫緊の課題となっています。そのためには、林業の低コスト化を推進することが重要であり、近畿中国森林管理局では、
(1)素材生産と造林の一貫作業
(2)コンテナ苗の使用
(3)植栽本数の削減
(4)獣害防護柵設置コストの低減
(5)下刈の省力化の推進
(6)列状間伐の推進
(7)丈夫で効果的な路網整備等に取り組みます。
また、これらの成果について、国有林のフィールドを活用しながら、地域へ普及していきことにも努めていきます。
1 一貫作業システムによるコスト低減
植付けの時期を選ばないコンテナ苗を用いることで伐採と連動した植付が可能となり、また、伐採・搬出に使う車両系の運搬機械を苗木や防護柵等資材の運搬に活用することで、造林コストの低減が図られます。
近畿中国森林管理局では、前年度比25%増の81haを一貫作業システムで実施する予定です。
一貫作業システム: 伐採から植栽までを一体的に行う作業
2 コンテナ苗の積極的な利用
コンテナ苗とは、容器の内面にリブ(縦筋状の突起)を設け、容器の底面を開けるなどによって、根巻きを防止できる容器(林野庁が開発したマルチキャビティコンテナや宮崎県林業技術センターが開発したMスターコンテナ等)で育成された苗です。
平成30年度は、当年生苗実証試験を実施します。
当年生苗とは、育苗期間が1年以内の苗をいい、メリットは以下のとおりです。
1.苗木生産コストの削減、苗木生産性の向上
2.残苗発生リスクの減少
3.コンテナ苗設備投資資金の回収期間を短縮
- 低コスト造林の普及拡大
- 苗木生産者の経営の安定
苗齢9ヶ月のスギコンテナ苗
3 植栽本数の縮減
従来は、植栽本数を3000本/haとするのが一般的でしたが、これを2000本/haにすることで、苗木代、植付経費を削減するとともに、間伐等その後の保育コストの低減も見込めます。近畿中国森林管理局では、平成15年度から2000本/ha植栽を標準としています。今後は、さらなる植栽本数の削減を目指します。
現地検討会(ヒノキ14年生 2000本/ha) 試験地(ヒノキ54年生 2000本/ha)
4 シカ防護柵設置のコスト縮減
シカによる食害を防ぐため、新植箇所では植栽木を保護するため防護柵を設置しています。また、設置コストを縮減するため、柵の支柱として周囲の立木を使用することに取り組んでいます。
平成30年度は、ドローンを活用した防護柵の点検方法について現地検討会を開催し、効果的・効率的な防護柵の維持管理に取り組みます。
防護柵の立木使用 ドローンによる防護柵点検(四国局)
5 下刈省力化の推進
通常、植栽後5年にわたり行う下刈は、保育作業の中で最も労力と経費が必要な作業です。近畿中国森林管理局では、現地の雑草木の繁茂状況を確認しながら、下刈の省略や刈り払い方法の見直しなど、下刈の省力化に向けて取り組みます。
平成30年度は下刈対象面積の48%を省略する予定です。
6 列状間伐の推進
列状間伐は一定の間隔で直線的に間伐木を選定し伐採する方法です。近畿中国森林管理局では搬出間伐は100%列状間伐で実施しています。
列状間伐のメリット
- 選木の手間が省ける
- 伐採・集材が容易である
- 多くの労働災害の原因となる「かかり木」が発生しにくい
- 残存木の損傷が少ないなどがあります。
かかり木 : 伐採した木が倒れずに、隣の木などに引っかかってしまうこと
平成16年度 伐採前 平成29年度現在
7 効果的な路網整備の推進
森林整備や木材生産の低コスト化、生産性の向上及び木材の利用を推進するため、地形・地質を考慮し、作業システムにも配慮した、丈夫で簡易な路網の開設を推進し、路網密度の向上を図ります。【下図】
また、施工時期の平準化を図る取組として、奈良森林管理事務所において、複数年契約による林業専用道を開設を実施する予定です。
兵庫署 深山林業専用道