シカ被害対策
森林被害の状況
近畿中国地⽅では、ニホンジカの個体数の増加と分布域の拡⼤が著しくなっており、管内の国有林においても苗⽊の⾷害や下層植⽣の衰退等が発⽣し、一部で被害が深刻化しています。このまま下層植⽣が無くなると⼟壌流出のほか、⼟砂災害等のリスクが⾼まることが危惧されます。
このような被害を防止するため、地域と一体となったシカ被害対策の推進が重要であることから、地域との情報共有を図り、効果的なシカ被害対策に取り組みます。
多発する森林被害の状況
ヒノキ苗木の食害
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ヒノキの樹皮剥ぎ
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下層植生の食害
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下層植生の亡失による土壌流出
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【地域連携】
近畿地方環境事務所、奈良県上北山村、三重森林管理署の3者で協定を締結。三重と奈良の県境に位置する大台ヶ原・大杉谷地域において、捕獲期間をあわせ、連携してシカ捕獲を実施。データの収集・共有を行い捕獲効率の向上を図ります。
協定締結式(29.6.30) (奈良県吉野郡上北山村 山村振興センター)
【技術開発等】
関係機関等と連携して捕獲技術等の効率的・効果的なシカ被害対策の促進・普及に取り組みます。(新たな捕獲技術の実証)
- 首用くくり罠
- 小林式誘引罠
シカ被害対策技術交流会(30.3.6)(近畿中国森林管理局(大阪市))
捕獲等の推進
シカ捕獲対策足くくり罠や囲い罠等による捕獲を府県・市町村猟友会等地元関係者と連携して取り組みます。 |
新植箇所等の保護新植箇所等の苗木等の保護を図るため防護柵等を設置し、侵入・食害の防止に取り組みます。
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生息状況等の調査シカ被害対策を効率的に実施するため、糞塊密度調査、自動撮影カメラの設置による生息状況等のモニタリング調査を実施します。 |
新たな捕獲技術の実証
首用くくり罠使用の推進
「首用くくり罠」は、バケツ型の罠の中にヘイキューブ(成形乾燥飼料)を入れ、縁にバネ仕掛けのワイヤーを張っておき、誘引されたシカが餌を食べようと首を入れた際に罠が作動し、シカを捕らえます。
「首用くくり罠」には以下のメリットがあります。今後、府県・市町村猟友会等地元関係者の理解を得つつ使用拡大に取り組みます。(計4署等)
【首用くくり罠のメリット】
- クマの錯誤捕獲が極めて少ない
- 設置に特別な技術を要しない
- 雌シカを選択的に捕獲 (牡シカはツノが邪魔でバケツに頭が入らない)
【クマ錯誤捕獲の危惧への対応】
- 事業等の中で、首用くくり罠を使用し、カメラで撮影。(データの蓄積を図る。)
- 平成29年度の事業地におけるカメラ撮影において、クマが首用くくり罠に接近する様子が撮影されたが、誘引用のヘイキューブを餌と認識しておらず、バケツに頭を入れる等の行動は見られない。
- 平成30年度は、さらにカメラ撮影を実施し、データの蓄積を図る。
首用くくり罠の設置状況
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首用くくり罠による捕獲
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小林式誘引捕獲
和歌山森林管理署において、簡易、低コスト、捕獲効率の向上を目的に、足くくり罠の設置位置等を工夫した新たな捕獲手法を提案しています。
(平成29年度 国有林野事業業務研究発表会 林野庁長官賞最優秀賞)
【ポイント】
- 林道沿いのような、アクセスしやすく設置が簡易な箇所に設置でき、効率アップ
- 設置期間を限定することで、短期集中で労力を軽減
シカの行動を調査した結果餌を食べる時の足の位置に着目。 |
わな設置餌を食べる際、口の横付近に足を置くことを想定し、設置した罠を中心にドーナツ状にヘイキューブ(餌)を撒く |
小林式誘引捕獲 短期集中 1週間捕獲プログラム(設置例)
- 捕獲ポイントの選定1日目
- 給餌・・・ポイント選定と同時1日目(2~3日目は待機)
- 採食状況の確認・・・給餌から4日後が目安4日目
- わな設置(捕獲)・・・採食状況確認と同時4日目
- 見回り・止めさし・・・わな設置翌日から3日間連続 5~7日目
(参考)平成30年度 シカ捕獲・調査予定箇所
個体数推計において初めて増加が止まり減少に転じている可能性がある。
一方、現在の捕獲率では平成35年度に359万頭に再び増加するとの見込みも示されている。
主要な野生鳥獣による森林被害面積(平成28年度) (※全国ベース)
出典:(林野庁)都道府県等からの報告による、民有林及び国有林の被害面積の合計