このページの本文へ移動

林野庁

メニュー

第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(4)

(4)違法伐採対策

(世界の違法伐採木材の貿易の状況)

2022年9月に英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)が公表した報告書(*16)によると、主要な木材由来製品輸出国37か国について調査した結果、木材由来製品の違法取引の割合は、過去20年間で輸出量、輸出額ともに減少しているものの、国際貿易の全体的増加に伴いその数量及び金額は増加している。調査対象以外の全ての国の輸出が完全に合法であると仮定すると、調査対象37か国による2018年の違法伐採に係る貿易は、材積ベース(丸太換算)で世界の輸出の少なくとも4%(約4,000万m3)、金額ベースで3%(約70億ドル)を占めたと推定している。違法伐採や違法伐採木材の流通は、森林の有する多面的機能に影響を及ぼすおそれがあり、また、木材市場における公正な取引を害するおそれがある。EU、豪州などの諸外国では、木材の取引に当たり、市場における最初の出荷者等に対し、木材等の違法伐採のリスクの確認やそのための体制整備等について義務を課している。


(*16)CHATHAM HOUSE(2022)Establishing fair and sustainable forest economies



(政府調達において合法性・持続可能性が確保された木材等の利用を促進)

我が国では、まずは政府調達において合法性・持続可能性が確保された木材等の利用を促進するため、平成18(2006)年に、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(以下「グリーン購入法」という。)に基づく基本方針において、合法性や持続可能性が証明された木材・木材製品を政府調達の対象とするよう明記した。同基本方針に併せて林野庁が作成した「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」の証明方法を活用し木材を供給する事業者として、令和6(2024)年3月末時点で、149の業界団体により12,081の事業者が認定されている。


(「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」による合法伐採木材等の更なる活用)

合法伐採木材等に関する情報提供ホームページ「クリーンウッド・ナビ」

民間需要においても、平成29(2017)年に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(以下「クリーンウッド法」という。)により、全ての事業者は合法伐採木材等(*17)を利用するよう努めることが求められ、特に木材関連事業者(*18)は、扱う木材等について「合法性の確認」等の合法伐採木材等の利用を確保するための措置を実施することとなった。この措置を適切かつ確実に行う木材関連事業者は、国に登録された第三者機関である登録実施機関に申請して登録を受けることができる。登録木材関連事業者は、令和6(2024)年3月末時点で、660件登録されている。第一種登録木材関連事業者(*19)により合法性が確認された木材は、令和4(2022)年度は約3,500万m3と令和4(2022)年の木材需要量の約4割となっている。

林野庁では、情報提供サイト「クリーンウッド・ナビ」を公開し、本サイトを通じて合法伐採木材等に関する情報提供や、木材関連事業者の登録促進等の取組を行っている。

なお、政府調達については、グリーン購入法に基づく基本方針の下、木材関連事業者は、クリーンウッド法に則し、合法性の確認や分別管理等をすることとなっている。

クリーンウッド法の施行状況等を踏まえ、違法伐採対策の取組を強化することを目的として、川上・水際の木材関連事業者(*20)が合法性確認等に確実に取り組むよう義務付けること等を内容とするクリーンウッド法の一部改正法が、令和5(2023)年4月に第211回通常国会において成立した。


(*17)我が国又は原産国の法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材等。

(*18)木材等の製造、加工、輸入、販売等を行う者。

(*19)樹木の所有者から丸太を受け取り、加工、輸出等の事業を行う木材関連事業者又は木材等の輸入を行う木材関連事業者のうち、登録を受けた者。

(*20)樹木の所有者から丸太を受け取り、加工、輸出等の事業を行う木材関連事業者又は木材等の輸入を行う木材関連事業者。



(国際的な取組)

我が国は、木材生産国における合法性・持続可能性が確保された木材等の流通及び利用に向けた支援に取り組んでいる。令和3(2021)年から令和5(2023)年にかけては、ベトナムにおける持続可能な木材消費の促進のためのプロジェクトへの支援を、国際熱帯木材機関(ITTO)を通じて実施した(事例3-1)。

また、「アジア太平洋経済協力(APEC)」の「違法伐採及び関連する貿易専門家グループ(EGILAT)会合」では、令和5(2023)年2月及び7月に違法伐採対策の取組状況についての情報交換が行われた。我が国からは改正したクリーンウッド法の概要等について報告を行った。

事例3-1 国際熱帯木材機関(ITTO)への拠出によるベトナムにおける持続可能な木材消費促進プロジェクト

ベトナムの木材産業は、過去20年間、輸出を中心に急速に成⾧してきたが、新型コロナウイルス感染症等の影響により、輸出依存による不安定性が露呈した。

このため、林野庁では、ITTOへの資金拠出を通じ、我が国の経験を活かして、同国内における木材利用の促進に向けたプロジェクトへの支援を行った。

本プロジェクトでは、木材利用の促進に向けた政策的な基盤づくりに向け、我が国や欧米における先進事例の収集と同国内の現状・課題等の分析等を行った。その結果、人工林育成の主体となる小規模生産者(農家)と国内市場への家具等の木製品供給の主体となる小規模木材加工業者に対する支援が効果的であると判明したことから、その組織化やガバナンスの向上に取り組んだ。

また、現地ニーズに沿った実証的取組として、木造モデル住宅の展示、茶葉乾燥に用いる木質バイオマスガス燃焼装置の試験的導入等により、同国内における新たな木材の需要や市場の開拓を行った。さらに、将来的に木材産業での活躍が期待される学生や若手専門家を対象としたキャリア開発セミナーや木材製品デザインコンテストの開催等を通じ、木材利用促進の担い手となる人材の育成を行った。

こうした取組を通じ、同国内で木材利用の意義に対する理解や木材利用に対する意識が一層深まることにより、過度に輸出に依存しない木材産業構造への転換とカーボンニュートラルの実現に貢献することが期待される。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219