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林野庁

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令和5年度 森林及び林業施策

概説

1 施策の背景(基本的認識)

我が国の森林は、国土の約3分の2を占め、国土の保全、水源の涵(かん)養、生物多様性の保全、地球温暖化の防止、文化の形成、木材等の物質生産等の多面的機能を有しており、国民生活に様々な恩恵をもたらす「緑の社会資本」である。それらの機能を適切に発揮させていくためには、将来にわたり、森林を適切に整備及び保全していかなければならない。

また、適切に管理された森林から生産された木材を利用することは、森林整備の促進のみならず、二酸化炭素の排出抑制及び炭素の貯蔵を通じて、循環型社会の実現に寄与する。

しかしながら、世界的な木材需給の変動やロシア・ウクライナを巡る情勢、急激な円安など、森林・林業・木材産業を取り巻く情勢はその複雑さを増しており、海外情勢の影響を受けにくい木材需給構造の構築が必要となっている。

このため、国産材供給体制の強化と森林資源の循環利用の確立に向けて、路網の整備・機能強化や搬出間伐、木材加工流通施設の整備等とともに、伐採と造林の一貫作業等による再造林の低コスト化に向けた取組等を支援する。また、適切な経営管理が行われていない森林については、森林経営管理制度及び森林環境譲与税を活用した適切な森林整備等を推進していく。さらには、エリートツリーや自動化機械等の新技術を取り入れて、伐採から再造林・保育に至る収支のプラス転換を可能とする「新しい林業」の経営モデルの構築や、地域一体となってデジタル技術をフル活用し収益性の高い林業を実践する「デジタル林業戦略拠点」の構築に取り組む。

さらに、エネルギー利用も含めた木材の利用拡大に向けて、木造公共建築物等や木質バイオマス利用促進施設の整備等の取組を支援することに加え、都市等における木材利用の促進を図るため、CLT、木質耐火部材やJAS構造材等の技術開発・普及等を通じた建築物への利用環境整備への取組を支援する。また、住宅分野における建築用木材の国産の製品等への転換に向けた取組を支援する。

こうした取組を踏まえ、国土と自然環境の根幹である森林の適切な管理と、森林資源の持続的な利用を一層推進し、林業・木材産業が内包する持続性を高めながら成長発展させ、カーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」を実現するための取組を推進する。

また、国有林においては、「国有林野の管理経営に関する基本計画」(平成30(2018)年12月25日策定)に基づき、公益重視の管理経営を推進する。

このほか、近年の地球温暖化に伴い激甚化・同時多発化のリスクが増大する山地災害等に対する治山対策を一層強化するとともに、令和4(2022)年8月の大雨等により発生した森林被害や山地災害の復旧整備を推進する。


2 財政措置

(1)財政措置

令和5(2023)年度林野庁関係当初予算においては、一般会計に非公共事業費約1,077億円、公共事業費約1,979億円を計上する。本予算において、

1)「森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策」として、

(ア)木材需要に的確に対応できる安定的・持続可能な供給体制の構築のための取組を総合的に推進する「林業・木材産業循環成長対策」

(イ)都市部における木材利用の強化や建築用木材の供給体制の強化を支援する「建築用木材供給・利用強化対策」

(ウ)非住宅建築物等の木造化・木質化に向けた環境整備や、木材輸出等による木材の需要拡大を支援する「木材需要の創出・輸出力強化対策」

(エ)新技術の導入により収益性等の向上につながる経営モデルの実証等を支援する「「新しい林業」に向けた林業経営育成対策」

(オ)植樹等の森林(もり)づくりや木材利用を国民運動として進めていくための取組を支援する「カーボンニュートラル実現に向けた国民運動展開対策」

2)新技術の開発・実証や実装を支援する「林業デジタル・イノベーション総合対策」

3)林業への新規就業者の育成・定着、これからの林業経営を担う人材等の確保・育成に向けた取組等を支援する「林業・木材産業における「人への投資」総合対策」

4)森林の多面的機能の適切な発揮と山村地域のコミュニティの維持・活性化を図るための取組を推進する「森林・山村地域振興対策」

5)花粉症対策苗木への植替え等を支援する「花粉発生源対策推進事業」

6)シカ被害を効果的に抑制するための取組等を支援する「シカ等による森林被害緊急対策事業」

7)間伐や主伐後の再造林、幹線となる林道の開設・改良等を推進する「森林整備事業」

8)激化する降水形態や活発化する地震及び火山活動に対応するため、復旧の加速化・効率化や事前防災力の向上を図るとともに、事業体等の負担軽減を推進する「治山事業」

等に取り組む。

また、東日本大震災復興特別会計に非公共事業費約51億円、公共事業費約49億円を盛り込む。


(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進する。

「森林・山村対策」としては、

1)公有林等における間伐等の促進

2)施業の集約化に必要な森林境界の明確化など森林整備地域活動の促進

3)林業の担い手確保及び育成対策の推進

4)民有林における長伐期化及び複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

5)地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

6)市町村による森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講ずる。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置及び上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講ずる。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とする。

さらに、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の運用、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講ずる。


3 税制上の措置

林業に関する税制について、令和5(2023)年度税制改正において、

1)林業用軽油に対する石油石炭税(地球温暖化対策のための課税の特例による上乗せ分)の還付措置の適用期限の3年延長(石油石炭税)

2)独立行政法人農林漁業信用基金が受ける抵当権の設定登記等の税率の軽減措置の適用期限の2年延長(登録免許税)

3)森林組合等が株式会社日本政策金融公庫資金等の貸付けを受けて取得した共同利用施設に係る課税標準の特例措置の適用期限の2年延長(不動産取得税)

4)森林組合等が林業・木材産業改善資金等の貸付けを受けて取得した農林漁業者等の共同利用に供する機械及び装置に係る課税標準の特例措置の適用期限の2年延長(固定資産税)

5)中小企業投資促進税制について、 対象資産の見直しを行った上、その適用期限の2年延長(所得税・法人税)

6)中小企業経営強化税制について、関係法令の改正を前提に対象資産の見直しを行った上、その適用期限の2年延長(所得税・法人税)

7)新型コロナウイルス感染症により影響を受けた事業者に対して行う特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の非課税措置の適用期限の1年延長(印紙税)

等の措置を講ずる。


4 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金の貸付計画額を255億円とする。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を110億円とする。

森林の取得、木材の加工・流通施設等の整備、災害からの復旧を行う林業者等に対する利子助成を実施する。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施する。

新型コロナウイルス感染症や原油価格・物価高騰等の影響を受けた林業者等に対し、実質無利子・無担保等貸付けを実施する。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について貸付計画額を38億円とする。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

林業経営の基盤強化並びに木材の生産及び流通の合理化又は木材の安定供給を推進するための木材産業等高度化推進資金について貸付枠を600億円とする。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証や林業経営者に対する経営支援等の活用を促進する。

債務保証を通じ、重大な災害からの復旧、「木材の安定供給の確保に関する特別措置法」(平成8年法律第47号)に係る取組及び事業承継・創業等を支援するための措置を講ずる。

東日本大震災により被災した林業者等に対する保証料の助成等を実施する。

新型コロナウイルス感染症や原油価格・物価高騰等の影響を受けた林業者等に対し、実質無担保等により債務保証を行うとともに、保証料を実質免除する。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行う。


5 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、5年ごとに定める「農林水産省政策評価基本計画」及び毎年度定める「農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を実施することとし、特に実績評価においては、「森林・林業基本計画」(令和3(2021)年6月15日閣議決定)に基づき設定した51の測定指標について、令和4(2022)年度中に実施した政策に係る進捗を検証する。


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