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林野庁

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令和4年度 森林及び林業施策

概説

1 施策の背景(基本的認識)

我が国の森林は、国土の約3分の2を占め、国土の保全、水源の涵(かん)養、生物多様性の保全、地球温暖化の防止、文化の形成、木材等の物質生産等の多面的機能を有しており、国民生活に様々な恩恵をもたらす「緑の社会資本」である。それらの機能を持続的に発揮させていくためには、将来にわたり、森林を適切に整備及び保全していかなければならない。

また、木材を利用することは、森林整備の促進のみならず、二酸化炭素の排出抑制及び炭素の貯蔵を通じて、循環型社会の実現に寄与する。

森林・林業政策については、林業・木材産業の成長産業化を図った結果、十分な成長量と森林蓄積を維持しつつ木材供給量は拡大し、林業産出額や従事者所得の増加を実現するなど一定の成果を上げてきた。他方、その過程において、伐採しやすい箇所に皆伐が偏り再造林がなされない森林が見受けられる、豪雨の増加等により山地災害が頻発するといった、多面的機能の発揮に支障を及ぼしかねない新たな課題も生じている。

また、我が国の経済社会は、急速な少子高齢化と人口減少による経済停滞・地方の衰退が懸念され、地球温暖化に伴う気候変動の影響が各方面で表れるなど、大きな情勢の変化が生じている。これらの課題に対処していくためには、短期的な効率性や合理性のみを重視するのではなく、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指していくこと、すなわち、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組が重要であり、森林・林業・木材産業分野においても必要となる視点である。

このような状況を踏まえ、令和3(2021)年6月には、新たな「森林・林業基本計画」が閣議決定され、今後の森林・林業・木材産業に関する各種施策の基本的な方向が明らかにされたところである。

令和4(2022)年度においては、新たな「森林・林業基本計画」に基づき、(ア)森林資源の適正な管理及び利用、(イ)「新しい林業」に向けた取組の展開、(ウ)木材産業の「国際競争力」と「地場競争力」の強化、(エ)都市等における「第2の森林」づくり、(オ)新たな山村価値の創造、という5つの柱を通じて、林業・木材産業が内包する持続性を高めながら成長発展させ、カーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」を実現するための取組を推進する。


2 財政措置

(1)財政措置

令和4(2022)年度林野庁関係当初予算においては、一般会計に非公共事業費約1,013億円、公共事業費約1,972億円を計上する。本予算において、

1)間伐や主伐後の再造林、幹線となる林道の開設・改良等を推進する「森林整備事業」

2)激甚かつ同時多発化する災害に対し、国土強靱(じん)化を図るため、流域治水との連携強化や山地災害への機動力の向上、津波に強い海岸防災林の整備を推進する「治山事業」

3)「森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策」として、

(ア)新技術の導入により収益性等の向上につながる経営モデルの実証等を支援する「「新しい林業」に向けた林業経営育成対策」

(イ)長期にわたる持続的な林業経営を確立するための取組を総合的に支援する「林業・木材産業成長産業化促進対策」

(ウ)新技術の開発・実証や実装を支援する「林業イノベーション推進総合対策」

(エ)都市部における木材利用の強化や建築用木材の供給体制の強化を支援する「建築用木材供給・利用強化対策」

(オ)非住宅建築物等の木造化や、木材輸出等による木材の需要拡大を支援する「木材需要の創出・輸出力強化対策」

(カ)植樹等の森林(もり)づくりや木材利用を国民運動として進めていくための取組を支援する「カーボンニュートラル実現に向けた国民運動展開対策」

4)林業への新規就業者の育成・定着及びこれからの林業経営を担う人材の育成に向けた取組を支援する「「緑の人づくり」総合支援対策」

5)森林・山村の多面的機能の発揮や山村地域の活性化を図る取組を支援する「森林・山村多面的機能発揮対策」

6)花粉症対策苗木への植替え等を支援する「花粉発生源対策推進事業」

7)シカ被害を効果的に抑制するための取組等を支援する「シカ等による森林被害緊急対策事業」

等に取り組む。

また、東日本大震災復興特別会計に非公共事業費約50億円、公共事業費約52億円を盛り込む。


(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進する。

「森林・山村対策」としては、

1)公有林等における間伐等の促進

2)国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した施業の集約化に必要な活動

3)国が実施する「緑の雇用」新規就業者育成推進事業等と連携した林業の担い手育成及び確保に必要な研修

4)民有林における長伐期化及び複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

5)地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

6)市町村による森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講ずる。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置及び上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講ずる。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とする。

さらに、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の運用、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講ずる。


3 税制上の措置

林業に関する税制について、令和4(2022)年度税制改正において、

1)山林所得に係る森林計画特別控除の適用期限を2年延長すること(所得税)

2)森林組合等の合併に係る課税の特例措置について、適用対象から出資を有しない組合のみで行う合併を除外した上、その適用期限を3年延長すること(法人税)

3)新型コロナウイルス感染症により影響を受けた事業者に対して行う特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の非課税措置の適用期限を1年延長すること(印紙税)

等の措置を講ずる。


4 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金について貸付計画額を229億円とする。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を110億円とする。

森林の取得、木材の加工・流通施設等の整備、災害からの復旧を行う林業者等に対する利子助成を実施する。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施する。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた林業者等に対し、実質無利子・無担保等貸付けを実施する。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について貸付計画額を38億円とする。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

林業経営の基盤強化並びに木材の生産及び流通の合理化又は木材の安定供給を推進するための木材産業等高度化推進資金について貸付枠を600億円とする。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証や林業経営者に対する経営支援等の活用を促進する。

債務保証を通じ、重大な災害からの復旧、「木材の安定供給の確保に関する特別措置法」(平成8年法律第47号)に係る取組及び事業承継・創業等を支援するための措置を講ずる。

東日本大震災により被災した林業者等に対する保証料の助成等を実施する。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた林業者等に対し、実質無担保等により債務保証を行うとともに、保証料を実質免除する。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行う。


5 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、5年ごとに定める「農林水産省政策評価基本計画」及び毎年度定める「農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を実施することとし、特に実績評価においては、「森林・林業基本計画」に基づき設定した51の測定指標について、令和3(2021)年度中に実施した政策に係る進捗を検証する。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219