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特集 持続可能な開発目標(SDGs(エスディージーズ))に貢献する森林・林業・木材産業

1. 持続可能な開発目標(SDGs)と森林

(1)持続可能な開発目標(SDGs)に高まる関心

➢ 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)は、2015年9月の国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2030アジェンダ)に含まれるもので、持続可能な世界を実現するための17の目標・169のターゲットから構成

➢ 前身のミレニアム開発目標(MDGs)とは異なり、途上国だけでなく先進国を含む全ての国が対象となっており、また、政府や国際機関だけでなく、市民社会、民間セクターなど全ての人々の参画を重要視

➢ 気候変動問題等が経済にも負の影響を及ぼすという危機感等により、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資が増加するなど、SDGsへの関心の広がりを示す様々な動き


(2)森林・林業・木材産業とSDGsとの関係

➢ 2017年4月に国連総会で採択された「国連森林戦略計画2017-2030」では、様々な主体による協力や活動の強化等による森林分野のSDGsを含む2030アジェンダ等への貢献を提示

➢ 我が国の森林においては、蓄積量が年々増加し、森林を広く活用できる状況にあり、山村地域において進行する過疎化への対応や生活の質の向上を求める声の高まりの中で、様々な角度からSDGsに貢献できる可能性

SDGsロゴマーク

【我が国の森林の循環利用とSDGsとの関係】

➢ SDGsの目標15に「持続可能な森林の経営」と掲げられているほか、森林そのものが様々なSDGsに貢献(目標6,11,13,14,15)

➢ 木材やきのこ等の森林資源の利用(生産・加工・流通のプロセスを含む)や、森林空間の利用は、その目的・内容に応じ様々なSDGsに貢献(目標2,3,4,5,7,8,9,11,12,13)

➢ これらの利用は、森林の整備・保全に還元されるという大きな循環につながっており、SDGsで重視されている環境・経済・社会の諸課題への統合的取組の表れといえるもの

➢ この循環においては、再造林や合法性が確認された木材の利用等を通じて森林が健全に維持されることが前提であり、林業・木材産業は要の役割

我が国の森林の循環利用とSDGsとの関係

2. 多様化する森林との関わり

➢ 我が国において、森林との多様な関わりが広がっており、森林の整備、森林資源の利用、森林空間の利用の3つに分類し、SDGsの目標に関連付けながら紹介


(1)森林の整備に関わる取組

(ア)様々な主体による森林もりづくり活動

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➢ 森林の整備は、森林保全や地球温暖化への関心の高まり等から、NPOや企業等の多様な主体が参加するようになっており、この10年でも、その数は増加

➢ 森林整備の目的は、水源保全、生物多様性保全、土壌保全、海洋環境改善など様々

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事例 サントリー「天然水の森」

サントリー関連施設での木材利用

➢ サントリーでは、原料となる地下水を守るために、全国21か所で森林整備活動を実施

➢ 専門家を交え、100年先の森林を考え、施業計画を検討

➢ 森林整備により生産した木材は、関連施設の床材やテーブル等で活用


(イ)他分野の企業と林業との協働

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➢ 林業・木材産業以外の企業による、自社の得意分野を活かした林業との協働が進展

➢ 測量、IT関連企業等との連携や、産官学で連携したプロジェクトの実施


(2)森林資源の利用に関わる取組

➢ 森林の整備・保全や地域活性化に加え、木材利用は炭素の貯蔵や省エネ、化石燃料の代替等により気候変動対策にもつながる。持続可能な材料として森林資源利用の取組の裾野も拡大


(ア)建築物における木材利用の拡大

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➢ 低層住宅に加えて、低層非住宅建築物や中高層建築物においても木造化や内装木質化の動き

➢ 木材の温かみから、商業施設や福祉施設等で木材を取り入れる動き。オフィスの働きやすさにも期待

➢ 森林の整備・保全や地域活性化への寄与を考え、木材の利用に踏み出す例も

➢ 他材料と比較し建設時の環境負荷・コストの低減につながる点に着目した木造化・木質化の取組も

➢ 従来木材の利用が少ない中高層建築物において木造化・木質化を進めるための様々な技術開発の進展に期待


(イ)プラスチック・金属等の代替材料

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➢ プラスチック代替製品として、木製・紙製ストロー等の新製品が注目

➢ 木の主成分を原料とした新たなバイオマス素材(セルロースナノファイバーや改質リグニン)を開発

➢ 自動車内外装部品など、特徴を活かした製品化の取組が進展

自動車の内外装部品・木製品用の塗料

(ウ)木質バイオマスエネルギー

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➢ 再生可能エネルギーの一つとして、木材チップや木質ペレット等を利用した木質バイオマスエネルギーの利用も拡大

➢ CO2排出量や燃料費を削減するため、食品、化学工場等でも木質バイオマスボイラー等を導入する動き

➢ 集荷・加工等が必要なことから、地域の経済や働く場の創出にも貢献


(エ)きのこ・漆・ジビエ等

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➢ きのこ、山菜、たけのこ等の山の恵みを活用する取組も、多様な主体の参画を得て拡大

➢ 森林整備と一体となった活用の取組や、漆の需要増に対応し企業との連携によるウルシ林づくりといった取組が進展

➢ ジビエ(シカやイノシシ等の野生鳥獣の肉)を利用する取組も増え、利用量が拡大

➢ 障がい者によるしいたけ生産など「林福連携」の取組も


(3)森林空間の利用に関わる取組

➢ 森林空間を観光、健康、教育等を目的として利用する新たな動きが拡大

➢ 都市と農村の交流の進展、森林への理解を通じて、森林の整備・保全にもつながるもの


(ア)観光・レジャー

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➢ 登山・ハイキング等で自然を楽しむ人も多いが、さらに森林内でのアスレチック、ツリーハウスの設置等により、森林内のレジャーの幅が拡大

➢ トレイルランニングで地域活性化を図る取組や、林業体験や森林散策等のプログラムを組み、誘致する取組も


(イ)健康

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➢ 各地域で取り組む生活習慣病等の疾病予防・健康づくりに森林空間を利活用する動き

➢ さらに企業や医療保険者が、森林を研修や保養で使い、従業員の意欲向上、チームワーク強化や健康増進に役立てる取組も拡大


(ウ)教育

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➢ 乳幼児に自然体験の機会を提供する「森のようちえん」等の自然保育を行う活動が拡大

➢ 小学生に対しても「総合的な学習の時間」等を利用して、環境教育を行う取組が拡大

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事例 森のようちえん「まるたんぼう」(鳥取県)

➢ 「まるたんぼう」は2009年に鳥取県智頭町ちづちょうに母親・父親たちが立ち上げた、森のようちえん

➢ 町内の14か所の森林をフィールドとし、子供の自主性を尊重し、見守る保育を徹底して実施

➢ 移住者等の希望が多く、2園目も開園


(エ)ワーケーション

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➢ テレワークを活用し、環境の良い地方で仕事を行うワーケーションの取組が始動

➢ テレワークと森林整備活動を組み合わせた合宿や、サテライトオフィスの開設等の取組


3. 企業の森林に関わる意向と活動内容

➢ 国内企業を対象とし、SDGsと森林・木材利用に関わるアンケートを実施

➢ 中小企業から大企業まで、業種は製造業を中心に幅広い業種から392の回答

➢ SDGsを経営戦略等に組み込んでいる企業が約半数、特に従業員が1,000人を超える企業では4分の3超

➢ 森林・林業・木材利用に関わる活動を実施、又は予定している企業は約6割の247社

➢ 活動内容は「森林の整備・保全」が半数以上

➢ 期待する効果では、「社会貢献」が最も多い。次いで「地域との交流」

➢ 活動拡大に向け、企業側のメリットについての情報、連携に積極的な森林組合の紹介等に期待



4. 今後の課題と関係者の役割

(1)SDGsからみた林業・木材産業の役割と課題

➢ 様々な主体による森林・木材の利用に係る取組の実行に当たっては林業・木材産業関係者の行動が不可欠

➢ SDGsの観点から経営を見直すことは、林業・木材産業の持続性につながるもの


(ア)持続可能な森林経営

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➢ 計画的に間伐等の森林整備を進めることが重要。その際には渓畔林の保全など環境面への配慮も必要

➢ 伐採後に再造林されていない箇所が発生しており、その要因の一つは、現在の山元立木価格では伐採後の造林・育林コストを賄えず、森林所有者が再造林の意欲を失っていること

➢ 山元への利益還元に向け、施業の低コスト化や、川中・川下とも連携した取組が重要


(イ)合法性や持続可能性に配慮した木材の調達

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➢ SDGsへの関心の高まりが、木材を利用する側における持続可能性への問題意識につながり、施工業者に加え発注者からも木材の合法性を問う動き

➢ 木材の合法性の担保に当たっては、「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)に基づく合法性の確認や木材関連事業者の登録の更なる活用が重要

➢ 合法伐採木材や森林認証材等を求める傾向は更に強くなっていくものと考えられ、適切な供給体制の構築が求められている


(ウ)林業従事者の安全確保

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➢ 生産年齢人口の減少が見込まれる中、安全で働きやすく魅力ある職場づくりを進めることは、これまで以上に重要

➢ 伐倒作業の反復練習や現場環境を再現する機材の活用等で、伐倒技術の向上や安全動作の確認を進めることが必要


(エ)女性参画

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➢ 林業の女性従事者は男性に比べて大きく減少してきたが、機械化の進展等を背景に、伐木・造材・集材従事者においては増加

➢ 女性従事者の雇用が全従事者の作業環境改善の契機になる面もあり、定着率の向上も期待


(2)森林・林業・木材産業を支える関係者の役割

(ア)企業・個人の役割

➢ 経団連が企業行動憲章にSDGsを入れ、経営理念にSDGsの考え方を取り入れる企業が増加。中小企業においては、SDGsを知り、その観点から事業のあり方を見直してみることが大切。森林が重要な地域資源である地域も多い中で、域内の企業が連携・協働し森林を活用することで、環境・経済・社会の各方面での好ましい流れにつながっていくことも期待

➢ 個人の関わり方としても、SDGsに関わる一歩として「知る」ことが重要。森林に関しても、観光やレジャーで森林地域に行くことや木製品の利用など、楽しみながらできることから、森林・木材の良さを体感することが可能


(イ)大学等の教育研究機関の役割

➢ SDGsに関わる新たな動きを促進する以下のような役割を期待

 ・木材の利用や森林サービス産業など新たな取組の経済的、社会的メリットの分析

 ・森林レクリエーション等の健康面の効果の明確化

 ・木材を扱う設計士など、木材を扱える技術者の育成

 ・企業・地方公共団体等にSDGsへの意識向上やその実践を企画提案できる人材の育成


(ウ)地方公共団体の役割

岡山県西粟倉村のベンチャー企業による木工品

➢ 森林・林業・木材産業に関わる取組を促進するには、地域の体制づくりが大切な要素

➢ 移住者や企業の受入れにおける地域の受け皿づくりを含め、多様な主体の結節点として、ますます役割を果たしていくことを期待


(エ)政府の役割

➢ 政府は2016年5月に「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」、2017年12月に具体的な取組の方向性を示したSDGsアクションプランを策定し、その後も更新。林業の成長産業化と森林の多面的機能の発揮のための取組を始め、森林・林業・木材産業に関わる様々な対応を記載

➢ 民間や地方公共団体の取組が活性化するように、2017年12月から「SDGsアワード」を、2018年6月から「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」を選定しており、この中で森林を活用する取組も選定

➢ 林野庁ではSDGsアクションプラン等も踏まえ、民有林・国有林における森林整備等を促進するとともに、民間の様々な取組を支援する施策を実行。また、世界におけるSDGsの実現を図るため開発途上地域への森林分野での協力を実施



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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