このページの本文へ移動

林野庁

メニュー

第1部 特集 第1節 持続可能な開発目標(SDGs)と森林(1)


気候変動、自然災害といった課題が、経済成長や社会問題にも波及している中で、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs。以下「SDGs」という。)への関心が社会全体で高まっている。森林は、SDGsの目標15の中に「持続可能な森林の経営」と掲げられているほか、様々な目標に関連しており、森林分野においても様々な取組が広がっている。

本節では、特集の導入として、SDGsに関わる動向、森林・林業・木材産業とSDGsの関わり等について記述する。

(1)SDGsに高まる関心

(SDGsとは)

経済発展や技術開発により、人間の生活は豊かで便利なものとなった。一方で、この大量生産や大量消費に支えられる生活は、天然資源に依存し、地球環境に大きな負荷を与えてきた。温室効果ガスは気候変動をもたらし、世界中で深刻な影響を与えつつある。人間活動に起因する大気・水の汚染により、健康が脅かされる事態も起きている。さらに、鉱物・エネルギー資源の無計画な消費は、途上国の紛争の一因となっている。グローバル経済の下、一国の経済危機が他国に連鎖するのと同様、気候変動、自然災害、感染症といった課題も連鎖して発生し、経済成長や社会問題にも様々に影響していく。

このような複合的な問題に対して世界全体で取り組む必要があるとの考えから、平成27(2015)年9月の国連サミットにおいて令和12(2030)年までの国際社会共通の目標として「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下「2030アジェンダ」という。)が採択され、その中でSDGsが示された。

2030アジェンダでは、「誰一人取り残さない」ことを前文で掲げており、SDGsの前身で、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)は開発途上国を中心とした目標であったが、SDGsは先進国を含む全ての国が対象となっている。また、政府や国際機関だけでなく、市民社会、企業等全ての人々の参画を重要視している。

SDGsは、我が国を含めた世界全体の目標であり、17の目標、169のターゲットから構成されている。SDGsは、経済、社会及び環境の三側面を不可分なものとして調和させ、持続可能な世界を実現するための統合的取組である。

コラム SDGsの目標とターゲット

SDGsでは、17の目標の下に169のターゲットがある。それぞれの目標とターゲットは相互に関連しており、1つの行動が複数の課題を統合的に解決することや、目標同士がトレードオフの関係となる場合もある。例えば、持続可能な森林経営は、目標6、13、15など様々な目標に貢献する。一方、飢餓(目標2)を解決するためといって森林を乱開発することは避けなければならない(目標15)。このように、SDGsの推進に当たっては、相乗効果の増大やトレードオフの最小化を図ることが重要である。

また、平成29(2017)年には、SDGsの進捗度を知るためのターゲットごとの指標が採択されており、各国政府は、この指標又は各国独自の指標を基にSDGsの達成に向けたフォローアップを実施している。


SDGsの17の目標

(SDGsへの関心の広がり)

政府や国際機関は自らSDGsに取り組むとともに、市民社会や企業の参画を促しており、地球環境や社会・経済の持続性への危機意識を背景に、市民や企業の間でもSDGsへの関心が高まっている。

世界経済フォーラムが毎年実施しているグローバルリスク(*1)に関する意識調査では、10年前は経済的なリスクが上位を占めていたが、近年は大量破壊兵器に加え、「気候変動の緩和や適応への失敗」や「異常気象」等の環境関係のリスクが上位を占めている(*2)。

環境関係のリスクが企業の成長にも大きな影響を及ぼすという意識は、投資の世界において気候変動等の長期的なリスクマネジメントを重視する動きの高まりへとつながっており、従来の財務情報に加え、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を判断材料とするESG投資が拡大している。世界全体のESG投資額は2016年から2018年までの2年間で34%増加し、30兆6,830億ドルとなった(*3)。

このため、企業においてもESG投資への対応や環境問題への危機意識等から具体的な行動を取る動きが始まっている。例えば、事業活動で使う電力の全量を再生可能エネルギーで賄うことを目指す「RE100」は、その参加企業が世界で増加しており、米国のアップルやグーグルなど、既にこの目標を達成している企業も存在する(*4)。

また、海洋生物のプラスチックごみ摂取への危惧等を契機として、脱プラスチックの動きも世界的に広がっており、令和7(2025)年までにプラスチック使用量を半減すると宣言した世界的企業も出ている(*5)。

このような動きは日本企業にも広がってきており、環境・社会への配慮はリスク回避のために重要という認識に加え、新たなビジネスチャンスにつながるとも期待されている。例えば、一般社団法人日本経済団体連合会は、平成29(2017)年に企業行動憲章を改定し、持続可能な社会の実現が企業の発展の基盤であるとし、会員企業に対しSociety5.0(*6)の実現を通じたSDGsの達成に向けた行動を促している。

SDGsは、新しい概念ではあるが、日本の「三方良し」(「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」)の考え方に近いとも言われており、日本企業の考え方とも親和性が高い(*7)。

SDGsでは全ての人々の参画を促しているが、個人の動きが社会を変える動きも見られるようになってきている。スウェーデンの高校生が火付け役となった気候変動対策を訴える動きは、今後の地球環境の持続性により敏感と言われる若い世代を中心として世界中に広まり、令和元(2019)年9月20~27日のデモでは、185か国で660万人以上が参加(主催団体発表)した(*8)。また、欧州では、なるべく飛行機を使わないという考えが広がりつつあり、この対策として鉄道会社と連携し鉄道での移動を提供する欧州の航空会社も出てきている(*9)。


(*1)発生した場合、今後10年間で複数の国又は産業に著しい悪影響を及ぼす可能性のある不確実な事象又は状況。

(*2)世界経済フォーラム「グローバルリスク報告書2019」

(*3)The Global Sustainable Investment Alliance “2018 Global Sustainable Investment Review”

(*4)令和元(2019)年12月2日付け日経新聞25面

(*5)令和元(2019)年12月2日付け日経新聞23面

(*6)情報社会(Society 4.0)に続く、仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。

(*7)経済産業省(2019)SDGs経営ガイド:10

(*8)令和元(2019)年9月28日付け時事ドットコムニュース

(*9)令和元(2019)年12月18日付け日経新聞夕刊1面



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader