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林野庁

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第2部 令和元年度 森林及び林業施策

概説

1 施策の重点(基本的事項)

平成31(2019)年4月に森林経営管理法が施行され、適切な経営管理が行われていない森林の経営管理を、市町村や林業経営者に集積・集約化する森林経営管理制度がスタートするとともに、同年9月からは地方公共団体が実施する森林整備等の財源に充てるため、森林環境譲与税の譲与が開始された。

また、「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成30(2018)年11月27日改訂(農林水産業・地域の活力創造本部決定))等を踏まえ、「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」を第198回国会(常会)に提出(令和元(2019)年6月5日可決成立)し、森林経営管理制度の要となる林業経営者を育成するため、国有林の一定の区域において、公益的機能を確保しつつ、一定の期間、安定的に樹木を採取できる権利(樹木採取権)の仕組みや、川上の林業事業者と川中・川下の木材関連産業の事業者が共同して計画する、木材の安定的な取引関係の確立を図る事業に対して金融上の措置を講じる仕組みを構築した。

また、新型コロナウイルス感染症により影響を受ける林業者等が資金調達を行う際の実質無利子化・実質無担保化等の資金繰り支援等を実施した。さらに、林業経営体及び木材産業事業者の従業員に新型コロナウイルス感染者が発生した際の対応や事業継続を図る際の基本的なポイントをまとめたガイドラインを策定し、周知した。

このほか、「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月閣議決定)等を踏まえ、以下の森林・林業施策を積極的に推進した。


(1)森林の有する多面的機能の発揮に関する施策

森林の有する多面的機能を将来にわたって持続的に発揮させていくため、(ア)面的なまとまりをもった森林経営の確立、(イ)再造林等による適切な更新の確保、(ウ)適切な間伐等の実施、(エ)路網整備の推進、(オ)多様で健全な森林への誘導、(カ)地球温暖化防止策及び適応策の推進、(キ)国土の保全等の推進、(ク)研究・技術開発及びその普及、(ケ)山村の振興及び地方創生への寄与、(コ)国民参加の森林もりづくりと森林の多様な利用の推進、(サ)国際的な協調及び貢献に関する施策を推進した。

特に、山村地域が有する森林空間を活用することにより、新たな雇用と収入機会を生み出す「森林サービス産業」について、その創出・推進に向けた課題解決方策を明らかにするとともに、今後の展開方向について、幅広い視点から検討を進めることを目的として、「森林サービス産業」検討委員会を令和元(2019)年8月より複数回開催した。

また、令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風等に伴う大規模災害発生時には、ヘリコプターによる広域的な被害状況調査や、災害復旧に向けた技術支援職員の派遣等、地方公共団体に対する支援を迅速かつ円滑に実施した。

さらに、地域の安全・安心の確保に向け「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30(2018)年12月14日閣議決定)等による森林整備や治山対策を推進した。


(2)林業の持続的かつ健全な発展に関する施策

林業の持続的かつ健全な発展を図るため、(ア)望ましい林業構造の確立、(イ)人材の育成・確保等、(ウ)林業災害による損失補塡に関する施策を推進した。


(3)林産物の供給及び利用の確保に関する施策

林産物の供給及び利用を確保するため、(ア)原木の安定供給体制の構築、(イ)木材産業の競争力強化、(ウ)新たな木材需要の創出、(エ)消費者等の理解の醸成、(オ)林産物の輸入に関する措置に関する施策を推進した。


(4)東日本大震災からの復旧・復興に関する施策

東日本大震災により被災した治山施設、海岸防災林及び地震により発生した崩壊地等の復旧及び再生を推進するとともに、放射性物質の影響に対応した木材製品等の安全証明体制の構築、安全な特用林産物の供給確保のための支援、被災地域の林業・木材産業の復興に向けた地域材の活用による木造建築等の普及及び木質バイオマス関連施設等の整備を推進した。


(5)国有林野の管理及び経営に関する施策

国土保全等の公益的機能の高度発揮に重要な役割を果たしている国有林野の特性を踏まえ、公益重視の管理経営を一層推進した。

また、林業の成長産業化へ貢献するため、森林施業の低コスト化の推進と技術の普及を実施するとともに、「国民の森林」としての管理経営と国有林野の活用を推進した。


(6)団体の再編整備に関する施策

森林組合に対して、国民や組合員の信頼を受けて地域の森林施策や経営の担い手として、「森林経営管理制度」においても重要な役割を果たすよう、内部牽制体制の構築、法令等遵守の徹底、経営の透明性の確保等、事業・業務執行体制の強化及び体質の改善に向けた指導を行った。


2 財政措置

(1)財政措置

諸施策を実施するため、表のとおり林業関係の一般会計予算及び東日本大震災復興特別会計予算の確保に努めた。


令和元(2019)年度林野庁関係当初予算においては、一般会計に非公共事業費約1,063億円、公共事業費約2,370億円(*1)を計上した。特に、平成30(2018)年5月に成立した「森林経営管理法」に基づき、適切な経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり林業経営者への森林の経営管理の集積・集約化及び市町村による公的管理を進め、木材の流通及び需要拡大については、川上から川下までの事業者間での需給情報等を共有できる効率的なサプライチェーンの構築を進めるとともに、CLT等の新たな製品・技術普及、JAS構造材の普及支援等により需要の拡大を図り、経済界等との協力等による環境整備を目指した。

このため、

1)「林業成長産業化総合対策」として、

(ア)「林業・木材産業成長産業化促進対策」により、意欲と能力のある林業経営者を育成し、木材生産を通じた持続的な林業経営を確立するため、出荷ロットの大規模化、資源の高度利用を図る施業、路網整備、高性能林業機械の導入、木材加工流通施設の整備等を支援

(イ)「スマート林業構築推進事業」等により、ICT等の先端技術を活用した森林施業の効率化、需給マッチングによる流通コストの削減、スマート林業の構築に向けた取組、施業現場の管理者育成等を支援

(ウ)「木材需要の拡大・生産流通構造改革促進対策」により、CLT等の利用促進、民間との連携による中高層・非住宅建築物等への木材利用の促進、公共建築物の木造化・木質化等による新たな木材需要の創出、高付加価値木材製品の輸出拡大、サプライチェーン構築に向けたマッチング等の取組等を支援

2)「「緑の人づくり」総合支援対策」により、林業への就業前の青年に対する給付金の支給、新規就業者を現場技能者に育成する「緑の雇用」研修の支援等を行うとともに、森林経営管理制度と森林環境税の創設を踏まえ、市町村の森林・林業担当職員を支援する人材の育成を推進

3)「森林・山村多面的機能発揮対策」により、森林・山村の多面的機能の発揮を図るため、地域における活動組織が実施する森林の保全管理、森林資源の利用等の取組を支援

4)「花粉発生源対策推進事業」により、花粉症対策苗木への植替えの支援、花粉飛散防止剤の実証試験、スギ・ヒノキの雄花着花状況調査等の推進、これらの成果の普及啓発等を一体的に実施

5)「シカによる森林被害緊急対策事業」により、被害が深刻な地域等における林業関係者が主体となった広域的かつ計画的な捕獲等をモデル的に実施

6)林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現するため、意欲と能力のある林業経営者やその経営者が経営管理を集積・集約化する地域に対し、間伐、路網整備、主伐後の再造林等を重点的に支援する森林整備事業の推進

7)集中豪雨、流木災害の拡大等に対する山地防災力の強化のため、荒廃山地の復旧・予防対策、総合的な流木対策の強化等を行う治山事業の推進

等の施策を重点的に講じた。

また、東日本大震災復興特別会計に非公共事業費約49億円、公共事業費約215億円を盛り込んだ。

さらに、令和元(2019)年度林野庁関係補正予算に非公共事業費約208億円、公共事業費約606億円を計上し、

1)「合板・製材・集成材国際競争力強化・輸出促進対策」により、合板・製材・構造用集成材等の国際競争力を強化するための、路網整備や高性能林業機械の導入、加工施設の大規模化・高効率化や高付加価値品目への転換、脱プラスチックにも資する木質新素材(改質リグニン)の実証プラントの整備、木材製品等の消費拡大に向けたJAS構造材等の普及・実証、輸出に向けた付加価値の高い木材の生産施設整備等を支援

2)「山林施設災害復旧等事業」により、被災した治山・林道施設、新たに発生した荒廃山地等の速やかな復旧等を推進

3)「森林整備による防災・減災対策」により、重要なインフラ施設の周辺や氾濫した河川の上流域等において、森林整備等の対策を推進

4)「治山施設等の防災・減災対策」により、重要なインフラ施設の周辺や氾濫した河川の上流域等において、治山施設の設置等により荒廃山地の復旧・予防対策を推進

等の施策を重点的に講じた。


(*1)「臨時・特別の措置」(重要インフラの緊急点検等を踏まえた防災・減災、国土強靱化のための緊急対策に係る分)約441億円を含んだ額。



(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進した。

「森林・山村対策」としては、

1)公有林等における間伐等の促進

2)国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した施業の集約化に必要な活動

3)国が実施する「緑の雇用」新規就業者育成推進事業等と連携した林業の担い手育成及び確保に必要な研修

4)民有林における長伐期化及び複層林化並びに林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

5)地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

6)市町村の森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講じた。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置、上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講じた。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とした。

さらに、上記のほか、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の整備、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じた。


3 立法措置

第198回通常国会において以下の法律が成立した。

・国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第31号)


4 税制上の措置

林業に関する税制について、令和元(2019)年度税制改正において、

1)中小企業投資促進税制の適用期限を2年延長すること(所得税・法人税)

2)商業・サービス業・農林水産業活性化税制について、経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上の見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の認定を受けることを適用条件に加えた上で適用期限を2年延長すること(所得税・法人税)

3)中小企業経営強化税制の適用期限を2年延長すること(所得税・法人税)

4)森林組合の合併に係る課税の特例の適用期限を3年延長すること(法人税)

5)中小企業等の法人税の軽減税率の特例の適用期限を2年延長すること(法人税)

6)独立行政法人農林漁業信用基金が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長すること(登録免許税)

7)森林環境税及び森林環境譲与税を創設すること

等の措置を講じた。


5 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫資金の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金について、貸付計画額を234億円とした。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を60億円とした。

森林の取得、木材の加工・流通施設等の整備、災害からの復旧を行う林業者等に対する利子助成を実施した。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施した。

令和元年東日本台風により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施した。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた林業者等に対し、実質無利子・無担保等貸付けを実施した。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について、貸付計画額を40億円とした。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

木材の生産又は流通の合理化を推進するための木材産業等高度化推進資金について貸付枠を600億円とした。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証、林業経営者に対する経営支援等の活用を促進した。

東日本大震災により被災した林業者等に対する保証料の助成等を実施した。

重大な災害により被災した林業者等に対し、保証料を実質免除した。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた林業者等に対し、無担保等により債務保証を行うとともに、保証料を実質免除した。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行った。


6 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、「農林水産省政策評価基本計画」(5年間計画)及び毎年度定める「農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を実施した。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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