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第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(1)


世界の木材需給は、中国における木材需要の増大等、主要国の需給動向に伴って大きく変化している。我が国の木材需給も、国産材供給量が増加傾向にあるなどの変化がみられる。

以下では、世界と我が国における木材需給の動向について記述するとともに、併せて木材価格の動向、違法伐採対策及び木材輸出対策について記述する。


(1)世界の木材需給の動向

(ア)世界の木材需給の概況

(世界の木材消費量は再び増加傾向)

国際連合食糧農業機関(FAO(*1))によると、世界の木材の消費量は、2008年秋以降の急速な景気悪化の影響により一時的に減少したが、2010年以降は再び増加傾向にある(資料3-1)。2018年の産業用丸太の消費量は、前年比5%増の20億3,272万m3、製材は前年比2%増の4億8,621万m3、合板等は前年比2%増の4億573万m3であった(*2)。


また、2018年の世界の木材の生産量は、産業用丸太は前年比5%増の20億2,751万m3、製材は前年比2%増の4億9,254万m3、合板等は前年比1%増の4億795万m3であった。

2018年の世界の木材の輸出入量は、産業用丸太では、輸入量が前年比8%増の1億4,067万m3、輸出量が前年比5%増の1億3,546万m3であった。中国は産業用丸太の世界最大の輸入国で、2018年の世界の産業用丸太の輸入量に占める割合は43%であった(資料3-1)。製材では、輸入量が前年比2%増の1億5,146万m3、輸出量が前年比3%増の1億5,779万m3であった。合板等では、輸入量が前年比4%増の8,980万m3、輸出量が前年比1%増の9,202万m3であった(*3)(資料3-2、3)。


(*1)「Food and Agriculture Organization of the United Nations」の略。

(*2)丸太は燃料用にも使われている。2018年の世界の燃料用丸太の消費量は、約19.4億m3であった。

(*3)FAO「FAOSTAT」(2020年2月17日現在有効なもの)による。輸入量と輸出量の差は、輸出入時の検量方法の違い等によるものと考えられる。



(主要国の木材輸入の動向)

2018年における品目別及び国別の木材輸入量を10年前と比べると、産業用丸太については、我が国の輸入量は623万m3から343万m3に減少し、全世界の輸入量に占める割合は5%から2%に低下している。また、主要な輸入国のうちフィンランドについては、産業用丸太の輸入の多くをロシアに依存していたため、ロシアの丸太輸出税の引上げにより産業用丸太の輸入量は1,337万m3から694万m3に減少している。一方、中国の輸入量は、3,209万m3から5,980万m3に大きく増加し、世界の輸入量に占める割合も27%から43%に上昇している。

製材については、米国の輸入量は、10年前の2,214万m3から2018年は2,667万m3に増加している。一方で、中国の輸入量は、国内の需要増加により726万m3から3,755万m3に増加し、世界最大の製材輸入国となっている。

合板等については、世界全体の輸入量が増加する一方、我が国の輸入量は443万m3から404万m3に減少している(資料3-2)。


(主要国の木材輸出の動向)

2018年における品目別及び国別の木材輸出量を10年前と比べると、産業用丸太については、ロシアの輸出量は、2007年以降の丸太輸出税の引上げにより3,678万m3から1,920万m3へと大幅に減少している。一方、ニュージーランドの輸出量は664万m3から2,141万m3へと増加し、世界一の産業用丸太輸出国になっている。

製材については、ロシアの輸出量が、丸太輸出税の引上げにより輸出形態が製品へシフトしたことに伴い、1,526万m3から3,166万m3に増加し、カナダを抜いて世界一の製材輸出国になっている。

合板等については、中国の輸出量は、ポプラ等の早生樹を原料とした合板の生産拡大等により、1,012万m3から1,446万m3へと増加し、世界一の輸出国となっている(資料3-3)。


(イ)各地域における木材需給の動向

このように、世界の木材貿易では、北米や欧州のみならず、ロシアや中国も大きな存在感を示しており、これらの地域の木材需給は世界の木材需給に大きな影響を与える。以下では、それぞれの地域における木材需給動向を記述する(*4)。


(*4)各地域における木材需給の動向の記述は、主にUNECE/FAO (2019) Forest Products Annual Market Review 2018-2019による。なお、UNECEは、「United Nations Economic Commission for Europe(国際連合欧州経済委員会)」の略。



(北米の動向)

米国では、2008年の住宅バブル崩壊により、住宅着工戸数は、2005年の207万戸から2009年には55万戸まで減少したが、その後増加に転じ、2018年には前年比4%増の125万戸まで回復している(資料3-4)。このことなどから、北米全体における針葉樹製材の消費量は、2018年には前年比1.0%増の9,850万m3となった。

また、2018年の北米全体における針葉樹製材の生産量は、前年比0.8%増の1億469万m3であった。このうち、米国は同3.2%増の5,950万m3、カナダは同2.3%減の4,520万m3であった。カナダでは、米国によるカナダ産針葉樹製材の輸入に対する関税賦課(*5)や中国での経済の減速等の影響により、製材工場で生産調整が行われた。

カナダから米国への針葉樹製材出荷量は前年比4.8%減の2,330万m3となり、北米以外への輸出も前年比4.7%減の660万m3となった。

山火事の影響等のいくつかの要因により、米国では2018年上半期において製材価格が過去最高となったが、2018年下半期は過剰在庫の発生により、製材価格は下落した。また、輸出市場における供給過多の結果、2018年下半期は世界主要市場においても針葉樹製材価格が下落した。


(*5)米国によるカナダ産針葉樹製材への関税賦課措置について詳しくは、「平成29年度森林及び林業の動向」第4章第1節(1)126ページを参照。



(欧州の動向)

欧州の建設市場は、2008年の世界金融危機等の影響を大きく受けたが、土木業、建築業ともに回復しており、中でも新設住宅建築の回復が建設市場全体の回復をけん引している。欧州の新設住宅着工戸数は2018年には、140万戸程度となると推定されている。

このような中で、欧州における針葉樹製材の消費量は、2018年には前年比2.6%増の9,989万m3となった。最大の消費国であるドイツでは、前年比0.8%増の1,950万m3、ドイツに次いで消費量が多い英国では同7.6%減の980万m3となった。

欧州における針葉樹製材の生産量は、域内の消費量の増加や、暴風雨や虫害を受けた森林における伐採量の増加を背景に、2018年は前年比1.7%増の1億1,250万m3となった。特にドイツとオーストリアではそれぞれ前年比で50万m3以上増加し、トルコでは30万m3以上増加した。

欧州からの針葉樹製材の輸出量は、2018年には前年比0.2%増の5,191万m3となった。中国への輸出量は、製材価格の下落及びロシアから中国への輸出量の増加の影響を受けて、2018年において250万m3(前年比25%減)となった。一方、欧州から米国への輸出は2017年の130万m3から急増し、200万m3となった。欧州の針葉樹製材の主な輸出先の一つである中東や北アフリカ地域への輸出量は、2017年に大幅に減少したが、エジプトを除く北アフリカへの輸出量が増加したことにより、2018年には前年比3.6%増加した。


(ロシアの動向)

ロシアを含むCIS諸国(*6)における針葉樹製材の消費量は、2018年には前年比0.5%減の1,649万m3となった。生産量は、前年比7.1%増の4,775万m3であり、そのうちロシアが約82%以上を占める3,940万m3(前年比4.4%増)であった。ロシアの針葉樹製材の輸出量は、2018年には前年比6.2%増の2,980万m3となり、過去最高を更新した。最大の輸出先は中国であり、2018年には1,730万m3が輸出され、同輸出量全体に占めるシェアは58%となった。

ロシアは、2007年に制定した「新ロシア森林法典」に木材の高付加価値化の実施を位置付けたことから(*7)、2007年から2008年にかけて、針葉樹丸太の輸出税率を6.5%から25%に段階的に引き上げた。その後、ロシアは、2012年8月のWTOへの加盟に伴い、加盟交渉による条件に従い、ヨーロッパアカマツ、ヨーロッパトウヒ及びヨーロッパモミについては、年間割当数量の輸出税率を引き下げる一方、年間割当数量を超える分の輸出税率は80%(*8)に引き上げた(*9)。エゾマツ、トドマツ、カラマツの輸出税率は25%のままとされた。

この結果、ロシアの産業用丸太輸出量は、2006年には5,090万m3であったが、2012年には1,765万m3まで減少した。2013年以降は2,000万m3程度で推移しており、2018年には1,920万m3となっている(*10)。ロシアから我が国への丸太輸出量については、2006年には497万m3(我が国の丸太輸入量の47%)であったが、2018年には14万m3(同4%)となっている(*11)。

2017年12月には、ロシアは、極東地域での木材製品化を進めるため、極東のエゾマツ、トドマツ、カラマツの丸太に対する輸出税率の引上げを決定した。加工品輸出比率の条件を満たさない企業に対する税率が25%から段階的に引き上げられ、2021年以降は80%の税率が適用されることとなった(*12)。


(*6)「Commonwealth of Independent States」の略。UNECEの統計上は、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア、カザフスタン、キルギス、モルドバ、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、ウクライナ及びウズベキスタンの12か国を指す。ここでは、ロシアのみの消費量が不明のため、CIS諸国全体の消費量を記載。

(*7)山根正伸 (2013) 林業経済, 65(10): 21-30.

(*8)ただし、輸出税額が55.2ユーロ/m3を下回る場合は、55.2ユーロ/m3となる。

(*9)独立行政法人日本貿易振興機構「WTO加盟に伴うロシアの関税・制度変更のポイント」(平成24(2012)年8月): 6-8.

(*10)FAO「FAOSTAT」(2020年2月17日現在有効なもの)

(*11)財務省「貿易統計」

(*12)平成29(2017)年12月21日付け日刊木材新聞1面



(中国の動向)

中国は、国内の木材産業の需要に見合うだけの森林資源を国内に有していない一方で、近年の所得の向上等を背景とした木材需要の拡大により、2018年には針葉樹丸太の輸入量は4,010万m3と過去最高に達し、18年連続で世界一の針葉樹丸太輸入国となっている。中国向け針葉樹丸太の輸出は、ニュージーランドとロシアで大半を占めるとともに、近年はオーストラリアが中国への針葉樹丸太の輸出量を増加させている。一方で、中国・米国間の貿易摩擦の影響により、米国から中国への丸太輸出量は減少した。

中国の針葉樹製材の輸入は主に住宅市場や建設市場向けであり、これらの市場では2018年も力強い成長が続いたが、中国の2018年の針葉樹製材輸入量は、僅かに減少して2,488万m3(前年比0.7%減)となった。2018年の中国向け針葉樹製材の輸入量の内訳をみると、ロシア(60%)とカナダ(17%)が多くを占めている。

また、中国からの合板等の輸出量は、2018年には前年比0.4%増の1,446万m3となっている(*13)。

2017年からは商業ベースでの天然林伐採が全面的に停止されたことから、今後、中国における木材輸入のニーズは更に高まるものと考えられる。


(*13)FAO「FAOSTAT」(2020年2月17日現在有効なもの)



(ウ)国際貿易交渉の動向

(EPA/FTA等の交渉の動き)

我が国は、平成14(2002)年にシンガポールと初めて経済連携協定(EPA(*14))を締結してから、幅広い国や地域とのEPA・FTA(*15)の締結に取り組んでいる。令和元(2019)年12月1日時点で、合計18のEPA・FTA(*16)を締結・署名している。

現在、東アジア地域包括的経済連携(RCEPアールセップ(*17))、日中韓FTA、トルコ、コロンビア等とのEPA・FTAについて交渉中等(*18)となっている。これらの交渉に当たって、我が国は、林産物の関税率の引下げが我が国及び相手国の持続可能な森林経営に悪影響を及ぼすことのないよう配慮することとしている。


(*14)「Economic Partnership Agreement」の略。

(*15)「Free Trade Agreement」の略。

(*16)シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11、EU。

(*17)「Regional Comprehensive Economic Partnership」の略。

(*18)交渉延期中又は中断中を含む。



(日米貿易協定の発効)

日米貿易協定については、平成30(2018)年9月の日米首脳会談で発表された共同声明において、日米間での貿易協定の締結に向けた交渉開始について一致したことを受け、平成31(2019)年4月から交渉が開始された。令和元(2019)年9月26日に日米首脳会談で最終合意を確認し、同年10月8日にワシントンにおいて、日米間でこの協定の署名が行われた。その後、日米両国がそれぞれ国内法上の手続を完了し、令和2(2020)年1月1日に発効した。

木材の輸入及び輸出に関しては全て除外となり、一部の特用林産物の輸入については環太平洋パートナーシップ(TPP(*19))と同内容(即時撤廃等)となった。


(*19)「Trans-Pacific Partnership」の略。



(日EU・EPAの発効)

日EU・EPA(経済連携協定)は、平成31(2019)年2月1日に発効した。

日EU・EPAの内容のうち、林産物の輸入に関しては、関税撤廃するものの、構造用集成材、SPF製材等の林産物10品目について、7年の段階的削減を経て8年目に関税を撤廃することとし、一定の関税撤廃期間を確保した。また、輸出に関しては、EUは製材で2.5%まで、合板等で6%から10%まで、木製品で4%までの関税を課していたが、交渉の結果、これらの関税は全て即時撤廃された(*20)。


(*20)日EU・EPAにおける林産物交渉の結果について詳しくは、「平成29年度森林及び林業の動向」トピックス2(4-5ページ)を参照。日EU・EPAの交渉結果を受けた木材製品の競争力強化対策については、第3章第3節(10)213ページを参照。



(TPP11協定の発効)

TPP11協定は、我が国を含む6か国(メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア)に対して平成30(2018)年12月30日に発効した。また、ベトナムに対して平成31(2019)年1月14日に発効した。

TPP11協定の内容はTPP協定の範囲内のものであり、林産物の輸入に関しては、輸入額が多い国や、輸入額の伸びが著しい国からの合板・製材・OSB(*21)(配向性削片板)に対して、16年目までの長期の関税撤廃期間と、輸入量が一定量に達した場合に関税を自動的にTPPの発効前の水準に引き上げるセーフガードが措置されている(*22)。


(*21)「Oriented Strand Board」の略。薄く切削した長方形の木片を繊維方向が揃うように並べた層を、互いに繊維方向が直交するように重ねて高温圧縮した板製品。

(*22)TPP11協定の交渉結果等を受けた木材製品の競争力強化対策については、第3章第3節(10)213ページを参照。



(WTO交渉の状況)

世界貿易機関(WTO(*23))では、貿易の更なる自由化を通じて、開発途上国の経済開発等を含め世界経済の発展を目指した「ドーハ・ラウンド交渉」が平成13(2001)年から行われている。平成29(2017)年12月に開催された「第11回WTO閣僚会議(*24)」では、参加した全閣僚の合意による閣僚宣言は採択されないまま閉幕した。


(*23)「World Trade Organization」の略。

(*24)WTO閣僚会議は、WTOの最高意思決定機関であり、原則2年に1度開催される。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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