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林野庁

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第2部 令和2年度 森林及び林業施策

概説

1 施策の重点(基本的事項)

戦後造成された人工林の本格的な利用期の到来や森林経営管理制度の創設を受けて、地域の林業経営の重要な担い手として期待される森林組合が森林の経営管理の集積・集約、木材の販売等の強化、さらにこれらを通じた山元への一層の利益還元を進め、森林組合の経営基盤強化を図ることができるよう、「森林組合法の一部を改正する法律案」を第201回国会(常会)に提出(令和2(2020)年5月28日可決成立)した。

また、パリ協定下における令和12(2030)年度の我が国の森林吸収量目標の達成及び2050年カーボンニュートラルの実現に向け、間伐等を促進するための支援措置を令和12年度まで延長するとともに、成長に優れた苗木を積極的に用いた再造林を計画的かつ効率的に推進するための措置を追加する等の「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を第204回国会(常会)に提出(令和3(2021)年3月26日可決成立)した。

さらに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による木材需要の減少に対応し、経営の継続支援、減少した需要の喚起、国有林からの木材の供給調整等の対策を講じた。

このほか、「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月閣議決定)等を踏まえ、以下の森林・林業施策を積極的に推進した。


(1)森林の有する多面的機能の発揮に関する施策

森林の有する多面的機能を将来にわたって持続的に発揮させていくため、(ア)面的なまとまりを持った森林経営の確立、(イ)再造林等による適切な更新の確保、(ウ)適切な間伐等の実施、(エ)路網整備の推進、(オ)多様で健全な森林への誘導、(カ)地球温暖化防止策及び適応策の推進、(キ)国土の保全等の推進、(ク)研究・技術開発及びその普及、(ケ)山村の振興及び地方創生への寄与、(コ)国民参加の森林づくりと森林の多様な利用の推進、(サ)国際的な協調及び貢献に関する施策を推進した。

特に、森林環境譲与税も活用した、「森林経営管理法」(平成30年法律第35号)に基づく市町村森林経営管理事業等を推進した。また、森林空間を健康、観光、教育等の多様な分野で活用して、新たな雇用と収入機会を生み出す「森林サービス産業」の創出・推進の取組を支援した。

また、荒廃山地の復旧整備や予防治山対策による事前防災・減災対策を推進するとともに、令和2年7月豪雨に伴う大規模災害発生時には、災害復旧に向けた技術職員の派遣等、地方公共団体に対する支援を迅速かつ円滑に実施した。さらに、地域の安全・安心の確保に向け「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30(2018)年12月14日閣議決定)等による森林整備や治山対策を推進した。


(2)林業の持続的かつ健全な発展に関する施策

林業の持続的かつ健全な発展を図るため、(ア)望ましい林業構造の確立、(イ)人材の育成・確保等、(ウ)林業災害による損失の補填に関する施策を推進した。

特に、先端技術の活用によって林業経営の効率化を推進するため、ICTやAI等を活用した「林業イノベーション」の取組を推進した。


(3)林産物の供給及び利用の確保に関する施策

林産物の供給及び利用を確保するため、(ア)原木の安定供給体制の構築、(イ)木材産業の競争力強化、(ウ)林産物の輸出を含む新たな木材需要の創出、(エ)消費者等の理解の醸成、(オ)林産物の輸入に関する措置に関する施策を推進した。


(4)東日本大震災からの復旧・復興に関する施策

東日本大震災によって被災した治山施設や海岸防災林、発生した崩壊地等の復旧等に取り組んだ。

また、被災地の森林・林業の再生のため、森林の放射性物質による汚染実態の把握、その移動抑制等を目的として施した技術の効果の検証、円滑な林業の再生に資する実証等を実施するとともに、関連する情報の収集、整理、情報発信等を実施した。


(5)国有林野の管理及び経営に関する施策

国土保全等の公益的機能の高度発揮に重要な役割を果たしている国有林野の特性を踏まえ、公益重視の管理経営を一層推進した。

また、林業経営者の育成を図るため、国有林の一定区域において、公益的機能を確保しつつ、一定期間、安定的に樹木を採取できる権利を設定する「樹木採取権制度」が施行された。


(6)団体の再編整備に関する施策

森林組合に対して、国民や組合員の信頼を受けて地域の森林施業や経営の担い手の中心として、「森林経営管理制度」においても重要な役割を果たすよう、事業・業務執行体制の強化及び体質の改善に向けた指導を行った。


2 財政措置

(1)財政措置

令和2(2020)年度林野庁関係当初予算においては、一般会計に非公共事業費約1,075億円、公共事業費約2,299億円(*1)を計上した。特に、「森林経営管理法」に基づき、適切な経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり行う林業経営者への森林の経営管理の集積・集約化等を進めた。また、ICTを活用したスマート林業の推進、早生樹等の利用拡大、自動化機械や木質系新素材の開発等の「林業イノベーション」の取組を推進し、生産性等の向上を図った。さらに、木材の流通及び需要拡大については、川上から川下までの事業者間での需給情報等を共有できる効率的なサプライチェーンの構築を進めるとともに、経済界等との協力の下、都市の木造化、CLT等の利用、輸出等の促進を図った。


具体的には、

1)「林業成長産業化総合対策」として、

(ア)「林業・木材産業成長産業化促進対策」により、意欲と能力のある林業経営者を育成し、木材生産を通じた持続的な林業経営を確立するため、資源の高度利用を図る施業の実施、路網整備、高性能林業機械の導入、木材加工流通施設の整備等を支援(特に、路網整備については、近年の自然災害の激じん化等を踏まえ、路網の開設に加え、法面保護工等の機能強化を推進)

(イ)「林業イノベーション推進総合対策」により、ICTを活用して資源管理や生産管理を行うスマート林業を推進するとともに、早生樹等の利用拡大、自動化機械や木質系新素材の開発等による「林業イノベーション」の取組を支援

(ウ)「木材需要の拡大・生産流通構造改革促進対策」により、都市の木造化等に向けた木質耐火部材等の利用促進、CLT等の利用促進、民間との連携による中高層・非住宅建築物等への木材利用の促進、公共建築物の木造化・木質化等による新たな木材需要の創出、高付加価値木材製品の輸出拡大、サプライチェーン構築に向けたマッチング等の取組を支援

2)「「緑の人づくり」総合支援対策」により、林業就業前の青年に対する給付金の支給や、新規就業者を現場技能者に育成する研修、高校生や社会人を対象としたインターンシップ等を支援するとともに、森林経営管理制度の円滑な実施に向け、市町村の森林・林業担当職員を支援する人材の育成を推進

3)「森林・山村多面的機能発揮対策」により、森林・山村の多面的機能の発揮を図るため、地域における活動組織が実施する森林の保全管理や森林資源の利用等の取組を支援

4)「新たな森林空間利用創出対策」により、国有林における多言語による情報発信、木道整備等を実施するとともに、森林空間を健康、観光、教育等の多様な分野で活用する新たなサービス産業(「森林サービス産業」)の創出の取組を支援

5)「花粉発生源対策推進事業」により、花粉症対策苗木への植替え、花粉飛散防止剤の実用化試験、花粉飛散量予測の精度向上につながるスギ・ヒノキの雄花着花状況調査等の推進やこれらの成果の普及啓発等を一体的に支援

6)「シカによる森林被害緊急対策事業」により、被害が深刻な地域等における林業関係者が主体となった広域的かつ計画的な捕獲等のモデル的実施、捕獲等の新技術の開発・実証、国土保全のためのシカ捕獲等を実施

7)「森林整備事業」により、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現するとともに、国土強靱化や地球温暖化防止等にも貢献するため、意欲と能力のある林業経営者やその経営者が経営管理を集積・集約化する地域に対し、間伐や路網整備、主伐後の再造林等を重点的に支援

8)「治山事業」により、豪雨災害など激じん化する災害への対応等、国土強じん化のため、荒廃山地の復旧・予防対策、危険地区の治山施設の機能強化・老朽化対策、総合的な流木対策等を推進

等の施策を重点的に講じた。

また、東日本大震災復興特別会計に非公共事業費約48億円、公共事業費約114億円を盛り込んだ。

さらに、新型コロナウイルス感染症対策として、令和2(2020)年度林野庁関係第1次・第2次補正予算等においては、

1)「林業・木材産業金融緊急対策」により、林業者等の経営維持・再建のための資金繰り等を支援するための融資の充実・円滑化等を推進

2)「輸出原木保管等緊急支援事業」により、滞留する原木の一時的な保管に必要となる借地料や運搬経費等を支援

3)「経営継続補助金」により、感染拡大防止対策とともに、林業関係者の経営継続に向けた機械・設備の導入等を支援

4)「林業・木材産業成長産業化促進対策」により、林業の雇用を維持し、防災の観点からも森林を適切に管理するため、造林や保育間伐等を支援

5)「大径原木加工施設整備緊急対策」により、輸出の停滞の影響を受け、市場に滞った大径原木を付加価値の高い木材製品に加工し、輸出するための木材加工施設の整備を支援

6)「過剰木材在庫利用緊急対策事業」により、中国等への輸出の停滞等で生じた丸太・木材製品の在庫量の増加や価格の下落等に対応するため、公共建築物等への木材製品の利用を緊急的に促進し、原木在庫の解消に貢献

等の施策を重点的に講じた。

加えて、令和2(2020)年度林野庁関係第3次補正予算に非公共事業費約212億円、公共事業費約1,343億円を計上し、

1)「林業経営体能力向上支援対策」により、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う木材需要の停滞を踏まえ、保育間伐、造林・下刈り等の原木生産を伴わない森林整備を支援

2)「合板・製材・集成材国際競争力強化・輸出促進対策」により、合板・製材・構造用集成材等の国際競争力を強化するため、路網の整備・機能強化や高性能林業機械の導入、伐採・造林作業の自動化や遠隔操作技術の導入・実証、加工施設の大規模化・高効率化や輸出向け等の高付加価値品目への転換、輸出先国の規格・基準に対応した製品の技術開発や合法性を確認するためのシステムの構築のための調査、木材製品等の技術開発等を支援するほか、「グリーン社会」の実現に向け、再造林等の森林の若返りを図るための森林整備を実施・支援するとともに、木造建築等の木材利用や、林地残材の利用拡大に向けた木質バイオマス利用促進施設の整備を支援

3)「「緑の雇用」新規就業者育成推進事業」により、就職氷河期世代が新規就業しやすい環境を整備するため、林業への適性を見極めるトライアル雇用(短期研修)等を支援

4)「治山施設等の防災・減災対策」により、森林の防災・保水機能を適切に発揮するため、山地災害危険地区や氾濫した河川の上流域等において、治山施設の整備等による流木・土石流・山腹崩壊の抑制対策等を実施・支援

5)「森林整備による防災・減災対策」により、森林の防災・保水機能を適切に発揮するため、重要なインフラ施設の周辺や氾濫した河川の上流域等での間伐等や、林道の整備・改良等の対策を実施・支援

6)「災害復旧等事業」により、令和2年7月豪雨等により被災した治山施設、林道施設等の速やかな復旧等を実施・支援

等の施策を重点的に講じた。


(*1)「臨時・特別の措置」(重要インフラの緊急点検等を踏まえた防災・減災、国土強靱化のための緊急対策に係る分)約368億円を含んだ額。



(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進した。

「森林・山村対策」としては、

1)公有林等における間伐等の促進

2)国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した施業の集約化に必要な活動

3)国が実施する「緑の雇用」新規就業者育成推進事業等と連携した林業の担い手育成及び確保に必要な研修

4)民有林における長伐期化及び複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

5)地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

6)市町村による森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講じた。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置、上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講じた。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とした。

さらに、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の運用、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じた。


3 立法措置

第201回通常国会において以下の法律が成立した。

・森林組合法の一部を改正する法律(令和2年法律第35号)

第204回通常国会において以下の法律が成立した。

・森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和3年法律第15号)


4 税制上の措置

林業に関する税制について、令和2(2020)年度税制改正において、

1)山林所得に係る森林計画特別控除の適用期限を2年延長すること(所得税)

2)林業用軽油に係る石油石炭税(地球温暖化対策のための課税の特例による上乗せ分)の還付措置の適用期限を3年延長すること(石油石炭税)

3)輸入・国産林業用A重油に係る石油石炭税の免税・還付措置の適用期限を3年延長すること(石油石炭税)

4)再生可能エネルギー発電設備等の特別償却制度(省エネ再エネ高度化投資促進税制(再生可能エネルギー部分))について、特別償却率を14%に引き下げた上でその適用期限を1年延長すること(所得税・法人税)

5)独立行政法人農林漁業信用基金が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用対象者を拡充すること(登録免許税)

6)「国有林野の管理経営に関する法律」(昭和26年法律第246号)の一部改正に伴い、樹木採取権を法人税法等における減価償却資産等として規定すること(複数税目)

7)森林組合の連携手法の多様化等に関する制度改正において、改正後の森林組合等について、現行制度と同様の特例を措置すること(複数税目)

8)林業・木材産業改善資金等の貸付けを受けて森林組合等が取得した林業者等の共同利用に供する機械等の課税標準の特例について、適用期限を3年とすること(固定資産税)

9)森林環境譲与税に地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金を活用することとし、令和2(2020)年度から譲与額を前倒しで増額すること(森林環境譲与税)

等の措置を講じた。


5 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金について貸付計画額を240億円とした。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を60億円とした。

森林の取得、木材の加工・流通施設等の整備、災害からの復旧を行う林業者等に対する利子助成を実施した。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施した。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた林業者等に対し、実質無利子・無担保等貸付けを実施した。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について貸付計画額を38億円とした。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

林業経営の基盤強化並びに木材の生産及び流通の合理化又は木材の安定供給を推進するための木材産業等高度化推進資金について貸付枠を600億円とした。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証や林業経営者に対する経営支援等の活用を促進した。

債務保証を通じ、重大な災害からの復旧、「木材の安定供給の確保に関する特別措置法」(平成8年法律第47号)に係る取組及び事業承継を支援するための措置を講じた。

東日本大震災により被災した林業者等に対する保証料の助成等を実施した。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた林業者等に対し、実質無担保等により債務保証を行うとともに、保証料を実質免除した。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行った。


6 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、「農林水産省政策評価基本計画」(5年間計画)及び毎年度定める「農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を実施した。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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