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第1部 第3章 第2節 木材利用の動向(2)

(2)建築分野における木材利用

(建築分野全体の木材利用の概況)

我が国の建築着工床面積の現状を用途別・階層別にみると、1~3階建ての低層住宅の木造率は8割に上るが、4階建て以上の中高層建築及び非住宅建築の木造率はいずれも1割以下と低い状況にある(資料3-22)。このことから、住宅が木材の需要、特に国産材の需要にとって重要であるとともに、中高層及び非住宅分野については需要拡大の余地があるといえる。

資料3-22 階層別・構造別の着工建築物の床面積

(ア)住宅における木材利用

(住宅分野は木材需要に大きく寄与)

我が国の新設住宅着工戸数は、昭和48(1973)年に過去最高の191万戸を記録した後、長期的にみると減少傾向にある。平成21(2009)年の新設住宅着工戸数は、昭和40(1965)年以来最低の79万戸であり、平成22(2010)年以降増加した期間もあったが、令和2(2020)年は前年比10%減の82万戸となっている。

木造住宅の新設住宅着工戸数についても、昭和48(1973)年に112万戸を記録した後、全体の新設住宅着工戸数と同様の推移を経て、令和2(2020)年は前年比10%減の47万戸となっている。また、新設住宅着工戸数に占める木造住宅の割合(木造率)は、平成21(2009)年に上昇して以降はほぼ横ばいで、令和2(2020)年は58%となっている(資料3-23)。そのうち、一戸建住宅における木造率は91%と高い水準にある(令和2(2020)年)。一方、共同住宅では15%となっている。その中で、木造3階建て以上の共同住宅の建築確認棟数は近年増加傾向にあり、平成30(2018)年には3,604棟に達したが、令和元(2019)年は2,747棟に減少している(資料3-24)。平成の初期と比較すれば、木造の新設住宅着工戸数については減少はしているものの、住宅分野は依然として木材の大きな需要先である。


我が国における木造住宅の主要な工法としては、「在来工法(木造軸組構法)」、「ツーバイフォー工法(枠組壁工法)」及び「木質プレハブ工法」の3つが挙げられる(*61)。令和2(2020)年における工法別のシェアは、在来工法が78%、ツーバイフォー工法が20%、木質プレハブ工法が2%となっている(*62)。在来工法による木造戸建て注文住宅については、半数以上が年間供給戸数50戸未満の中小の大工・工務店により供給されたものであり(*63)、中小の大工・工務店が木造住宅の建築に大きな役割を果たしている。


(*61)「在来工法」は、単純梁形式の梁・桁で床組や小屋梁組を構成し、それを柱で支える柱梁形式による建築工法。「ツーバイフォー工法」は、木造の枠組材に構造用合板等の面材を緊結して壁と床を作る建築工法。「木質プレハブ工法」は、木材を使用した枠組の片面又は両面に構造用合板等をあらかじめ工場で接着した木質接着複合パネルにより、壁、床、屋根を構成する建築工法。

(*62)国土交通省「住宅着工統計」(令和2(2020)年)。在来工法については、木造住宅全体からツーバイフォー工法、木質プレハブ工法を差し引いて算出。

(*63)請負契約による供給戸数についてのみ調べたもの。国土交通省調べ。



(住宅分野における国産材利用拡大の動き)

住宅メーカーにおいては、外材の代替材として、国産材を積極的に利用する取組が拡大している。

また、平成27(2015)年3月には、ツーバイフォー工法部材の日本農林規格(JAS)が改正(*64)され、国産材(スギ、ヒノキ、カラマツ)のツーバイフォー工法部材強度が適正に評価されるようになった。さらに、九州や東北地方においてスギのスタッド(*65)の量産に取り組む事例がみられるなど、国産材のツーバイフォー工法部材の安定供給体制も整備されつつある(*66)。

これらの取組により、これまであまり国産材が使われてこなかったツーバイフォー工法において、国産材利用が進んでいる。


(*64)「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格の一部を改正する件」(平成27年農林水産省告示第512号)

(*65)ツーバイフォー工法における間柱。

(*66)取組の事例については、「平成30年度森林及び林業の動向」第4章第3節(2)の事例4-8(199ページ)を参照。



(地域で流通する木材を利用した住宅の普及)

平成の初め頃(1990年代)から、木材生産者や製材業者、木材販売業者、大工・工務店、建築士等の関係者がネットワークを構築し、地域で生産された木材や自然素材を多用して、健康的に長く住み続けられる家づくりを行う取組がみられるようになった(*67)。

林野庁では、平成13(2001)年度から、森林所有者から大工・工務店等の住宅生産者までの関係者が一体となって、消費者の納得する家づくりに取り組む「顔の見える木材での家づくり」を推進している。令和元(2019)年度には、関係者の連携による家づくりに取り組む団体数は543、供給戸数は17,642戸となった(資料3-25)。


また、国土交通省では、平成24(2012)年度から、「地域型住宅ブランド化事業」により、資材供給から設計、施工に至る関連事業者から成るグループが、グループごとのルールに基づき、地域で流通する木材を活用した木造の長期優良住宅(*68)等を建設する場合に、建設工事費の一部を支援してきた。平成27(2015)年度からは「地域型住宅グリーン化事業」により、省エネルギー性能や耐久性等に優れた木造住宅等を整備する地域工務店等に対して支援しており、令和2(2020)年3月現在、695のグループが選定され、約10,000戸の木造住宅等を整備する予定となっている。

総務省では、平成12(2000)年度から、都道府県や市町村による、地域で流通する木材の利用促進の取組に対して地方財政措置を講じており、地域で流通する木材を利用した住宅の普及に向けて、都道府県や市町村が独自に支援策を講ずる取組が広がっている。令和2(2020)年8月現在、32道府県と209市町村が、本制度を活用して地域で流通する木材を利用した住宅の普及に取り組んでいる(*69)。


(*67)嶋瀬拓也 (2002) 林業経済, 54(14):1-16.

(*68)構造の腐食、腐朽及び摩損の防止や地震に対する安全性の確保、住宅の利用状況の変化に対応した構造及び設備の変更を容易にするための措置、維持保全を容易にするための措置、高齢者の利用上の利便性及び安全性やエネルギーの使用の効率性等が一定の基準を満たしている住宅。

(*69)林野庁木材産業課調べ。


コラム 木造建造物を受け継ぐための伝統技術が、ユネスコ無形文化遺産に登録

我が国の伝統的な建築文化は、木・草・土などの自然素材を建築空間に生かす知恵や、周期的な保存修理、それを見据えた材料の採取や再利用を行う技術が、古代から受け継がれ、工夫を重ねられることで発展してきた。法隆寺を始めとする歴史的建築遺産の保存修理においても、建築当初の部材と取り替える部材との調和や一体化を実現する高度な技術は不可欠のものとなっている。

令和2(2020)年12月17日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、我が国の建築文化を支えてきた17分野の技術を、「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」として、無形文化遺産に登録することを決定した。登録されるのは、木工や左官、瓦屋根や茅葺屋根、建具や畳の製作のほか、建物の外観や内装に施す装飾や彩色、漆塗り等であり、14の保存団体が継承している。我が国で古くから継承されてきた、木造建造物などの伝統的な建築文化を支える技術や価値が、世界的に認められた。

これらの技術は、日光東照宮や中尊寺金色堂、白川郷・五箇山の合掌造り集落などでも活かされている。また、平成28(2016)年の熊本地震で被災した熊本城塀ややぐらの再建等、近年多発する自然災害からの復旧にも貢献する。

伝統建築の技術を守るためには、不足している担い手の育成や、建築物の保存修理に用いる原材料の確保等が重要になる。近年、文化庁が実施する、文化財の修理に必要な木材や漆、い草等を安定的に供給する森林を増やす「ふるさと文化財の森システム推進事業」が成果を上げている。平成18(2006)年に事業が開始された当初は8件だった認定林も、令和2(2020)年には80件を超え、職人育成の場としても活用されている。

適切な周期の保存修理によって歴史的建築遺産を守り、同時に修理に必要な自然素材の育成と採取のサイクルによって多様な森林や草原等の保全を実現するこれらの技術は、持続可能な開発目標(SDGs)にも寄与するものである。ユネスコは今回の無形文化遺産登録決定に際し、自然素材の活用と、技術の継承によって周期的な保存修理を可能としていることを「持続可能な開発に沿っている」として評価した。我が国の伝統的な木造建造物やそれらを受け継ぐ技術が、改めて注目されている。

資料:文化庁ホームページ
   令和2(2020)年12月12日付け読売新聞13面
   令和2(2020)年12月19日付け東京新聞7面


(イ)非住宅・中高層分野における木材利用

(非住宅・中高層分野における木材利用の概要)

木造住宅については、近年55万戸程度で横ばいで推移しているものの、人口の減少や、住宅ストックの充実と中古住宅の流通促進施策の進展等により、今後、我が国の新設住宅着工戸数は全体として減少すると見込まれる。

このため、林業・木材産業の成長産業化を実現していくためには、中高層分野及び非住宅分野の木造化や内外装の木質化を進め、新たな木材需要を創出することが極めて重要である。

近年、新たな木質部材等の製品・技術の開発も進められてきており、中高層分野や非住宅分野で木材を利用できる環境が制度面や技術面において整えられつつある。

例えば、「建築基準法」においては、火災時の避難安全や延焼防止等のための構造材としての木材の利用に対する制限について、規模、用途、立地に応じて防耐火の基準が設けられているが、建築物の木造・木質化に資する観点等から、安全性を担保しつつ建築基準の合理化が進められている。

昭和62(1987)年には、燃えしろ設計(*70)が導入され、一定の技術的基準に適合する大断面木造建築物の建築が可能となった。平成10(1998)年には、性能規定化(*71)によって木造の耐火建築物の建築が可能となり、主要構造部の木材を防火被覆等により耐火構造とする方法のほか、設計上の工夫により、耐火性能検証法や大臣認定による高度な検証法を用いる方法が位置付けられた。また、令和元(2019)年には、耐火構造等とすべき木造建築物の規模が、高さ13m超から16m超へ見直されたほか、耐火構造等とすべき場合でも、必要な措置を講ずることにより、木材をそのまま見せる「あらわし」で使うことなどが可能となった。

この結果、都市部で指定される防火地域内も含め、建築物に木材を使用できる範囲が拡大されてきている。

また、技術面では、CLT(*72)(直交集成板)や木質耐火部材に係る製品・技術の開発が進んでおり、実際の建築物への利用が始まっている(*73)。


(*70)火災時の燃え残り部分で構造耐力を維持できる厚さを確保する設計。

(*71)満たすべき性能を基準として明示し、当該性能を有することを一定の方法により検証する規制方式とすること。

(*72)「Cross Laminated Timber」の略。

(*73)CLTや木質耐火部材に係る製品・技術の開発については、第3節(3)202-204ページを参照。



(低層非住宅分野における木材利用の事例)

低層の非住宅建築は多くが鉄骨造で建築されているが、様々な手法による木造化の動きが広まりつつある(資料3-26)。店舗等では柱のない大空間が求められる場合があるが、大断面集成材を使わず、一般流通材(*74)でも大スパン(*75)を実現できる構法の開発等により、材料費や加工費を抑え、鉄骨造並のコストで低層非住宅建築物を建設できるようになってきている。大スパンに対応したトラス(*76)等の構法開発や、規格化による簡易見積もり等の取組も進められている。例えば、大型木造の構法開発を手がける株式会社ATA(富山県滑川なめりかわ市)は、倉庫や工場等大規模建築に活用できる、木材と鋼材の長所を活かしたトラスを開発した。このトラスは現場でユニットに組む時間が短く済み、この構法で施工された釧路くしろ市の倉庫は、150ミリ厚のカラマツCLT(*77)(直交集成板)を壁に使用することで、温熱環境にも優れた木造建築物となった。また、同社においてはこのような倉庫と工場に対応した規格プランを作成し、簡易に見積もりが行えるよう工夫している(*78)。

また、多くの人々が利用する木造施設において、デザイン性が高く、快適な空間づくりに木材を活かしている例も多く見られる。

魚津うおづ市立星の杜ほしのもり小学校(富山県魚津うおづ市)は、防耐火面と多雪地ならではの積雪荷重に配慮して建てられた、平成27(2015)年建築基準法改正後の一時間準耐火構造(*79)を採用した全国初の木造3階建て小学校である。構造材、仕上げ材だけでなく、下地材も含めて全て地域産材で賄っており、自然で素直なデザインが学びの空間として高く評価されている。木の香りや温かみに直に触れられる体験や、学校のカリキュラムの中で外壁塗装を経験できる校舎は、木育の教材として相乗的な効果も生み出している。

資料3-26 木材利用の事例
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(*74)ここでは、住宅用に生産・流通しているサイズと長さと樹種の製材品を「一般流通材」としている。

(*75)建築物の構造材(主として横架材)を支える支点間の距離。

(*76)三角形状の部材を組み合わせて、外力に対する抵抗を強化した骨組み構造。

(*77)CLTについては、第3節(3)202-204ページを参照。

(*78)令和2(2020)年9月9日付け日刊木材新聞5面

(*79)壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能(通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの。



(中高層建築物等における木材利用の事例)

中高層建築物等については、一般的に高い防耐火性能が求められるため、木造で建設する際には、一定の性能を満たすよう、部材や構造の面で様々な工夫がみられる(資料3-26)。

多くの中高層建築物では、集成材等を構造材とし、耐火部材を有効に使うことで、木材を用いた耐火建築物としている。

また、令和3(2021)年2月には、宮城県仙台市において、木質耐火部材を用いた7階建ての木造ビルが建設された。用いられた木質耐火部材は製材を束ねて構成されており、当該ビルの構造材は全て製材が用いられている(事例3-2)。

事例3-2 「束ね柱(複合圧縮材)」を用いた木造7階建てビルの建設

令和3(2021)年2月に仙台駅前に建設された「髙惣木工ビル」は、主要構造部に製材を使用した、7階建ての木造高層建築である。森林認証を取得している東北3県のスギ材を始め、454m3もの木材が部材として使用されている。

当ビルの柱と梁には、施工者である株式会社シェルター(山形県山形市)が開発した、製材に石膏ボードとスギの化粧材を重ねた木質耐火部材「クールウッド」が採用されており、1~3階は2時間、4~7階は1時間の耐火性能を持つ。近年、木造の中高層建築は集成材やCLTが構造材とされることが多いが、当ビルではスギ製材の「束ね柱」や「合わせ梁」が採用されているのが大きな特徴である。これらの部材は、一般の製材工場で生産・加工された製材品を使用できるため、製材の利用拡大、特に中高層建築物を建てる際の地域材の利用拡大が期待される。また、製材工場は全国の各地方に存在していることから、生産・流通・加工・販売が地域内で完結し、輸送・加工経費が削減される等のメリットも見込まれる。

地域の森林資源を活かした、製材を用いた中高層建築物の可能性が広がることが期待される。

資料:一般社団法人日本林業協会「森林と林業」令和2(2020)年11月号:3.
   令和3(2021)年1月14日付け日刊木材新聞10面
   令和2(2020)年9月19日付け河北新報「国内最高層の純木造ビル、仙台駅東口で内覧会」



海外では、欧米を中心として、CLTを壁や床等に活用した木造中高層建築物が広がりをみせており、オーストリアでは24階建ての複合ビルが建てられた。CLTは施工の容易さなどの利点があり、我が国においても中高層建築物での利用の拡大が期待される。

令和2(2020)年10月に完成したタクマビル新館(兵庫県尼崎あまがさき市)は、2時間耐火の鉄骨架構にCLT耐震壁と耐火集成材柱を組み合わせた、環境との調和を目指す6階建て木質構造建築である。CLTを「あらわし」で使用することで、木の温もりある落ち着いた職場環境を創出するとともに、集成材で外装を覆い、まちに木の表情を生み出すよう工夫されている。免震構造を採用することで高い耐震性能を備え、地震などの自然災害に対する防災拠点機能も有している。

オフィスや店舗等の内装を木質化することにより、生産性が向上する、利用者が増えるといった良い効果が生まれる可能性が指摘されている。最近では、鉄骨造や鉄筋コンクリート造であっても、内外装に積極的に木材を用いる中高層建築物がみられるようになっている。

令和2(2020)年6月に開業した、地下2階、地上10階建ての商業施設「WITH HARAJUKU」(東京都渋谷区)は、随所に多摩たま産材を活用したデザイン性の高い文化発信拠点であり、視認性が高い原宿駅前において、多くの人々に木の空間の良さを伝えている。木材の経年変化もシミュレーションした上で外装材を配置し、50年先の長期利用も見越し、適材適所に木を用いることで、木の美しい経年変化や、部材交換も視野に入れた外装となるよう工夫されている。


(非住宅分野における木材利用の課題)

中高層等の大規模な建築物において木材利用を進めるに当たっての課題としては、特殊な構造等になってしまうためにコストがかかり増しになることや、まとまった量の地域材を活用して施設整備を行う場合に材の調達に時間を要することがあること、建築物の木造化・内装等の木質化に関する充分な知識・経験を有する設計者が少ないこと等が挙げられる。

地域材の調達に関しては、住宅に用いられる一般流通材を用いて非住宅建築物を建築する試みがみられている。また、大断面集成材等で特注となる場合は、産地と結びついて、着工前の早い段階から集材している例がみられる。特に公共建築物で地元の木材を使いたい場合に大規模な製材工場がないときは、地元の素材生産業者や木材産業事業者が連携して調整し、まとまった量を確保している例がある。

また、一般社団法人中大規模木造プレカット技術協会は、一般流通材とプレカット技術を活用した経済的かつ地域の事業者が参加できる中大規模木造づくりの仕組みの整備や、中大規模木造に求められる技術の開発・標準化及びその普及に取り組んでいる。


(木材利用に向けた人材の育成、普及の取組)

木造建築物の設計を行う技術者等の育成も重要であり、林野庁では、国土交通省と連携し、平成22(2010)年度から、木材や建築を学ぶ学生等を対象とした木材・木造技術の知識習得や、住宅・建築分野の設計者等のレベルアップに向けた活動に対して支援してきた(*80)。平成26(2014)年度からは、木造率が低位な非住宅建築物や中高層建築物等へのCLT(*81)(直交集成板)等の新たな材料を含む木材の利用を促進するため、このような建築物の木造化・木質化に必要な知見を有する設計者等の育成に対して支援している。都道府県独自の取組としても、木造建築に携わる設計者等の育成が行われている。

また、CLT等の製造を行っている製材工場が設計に協力し、木材利用を進めている例がある。


(*80)一般社団法人木を活かす建築推進協議会「平成25年度木のまち・木のいえ担い手育成拠点事業成果報告書」(平成26(2014)年3月)

(*81)CLTについては、第3節(3)202-204ページを参照。



(国産材の利用拡大に向けた取組の広がり)

地球環境や社会・経済の持続性への危機意識を背景として、我が国においても、持続可能な開発目標(SDGs)やESG(環境、社会、ガバナンス)投資への関心が高まりを見せている。

そのような中、林業・木材産業に関わる金融機関、企業、団体及び大学研究機関が連携し、木材利用の拡大に向けた調査、研究、制作活動等を通じて各種の課題解決を図る取組が実施されている。

平成28(2016)年には、農林中央金庫が事務局となり、木材利用拡大に向けた各種課題の解決を図る「産・学・金」のプラットフォームとして、「ウッドソリューション・ネットワーク」が設立された。「川上」・「川中」・「川下」の相互理解の深化に関する分科会において、調査、研究、制作活動等を実施し、令和元(2019)年には、民間企業の経営層に向けて木造建築の意義やメリット、事例を紹介したアプローチブック(*82)を発行した。

また、平成31(2019)年には、民間企業(建設事業者、設計事業者、施主等の木材の需要者)や関係団体、行政等が連携し、非住宅分野における木材利用促進に向けた懇談会である「ウッド・チェンジ・ネットワーク」を立ち上げ、需要サイドとしての木材利用を進めるための課題・条件の整理や、建築物への木材利用方策の検討等を進めている。低層小規模ビル、中規模ビル、内装木質化の別にノウハウや情報の共有等の取組を進め、令和2(2020)年度は低層小規模ビル及び中規模ビルについては参加企業によるモデル試案を、内装木質化については事例及び効果について取りまとめた。また参加企業による木材利用の取組も進んでいる(事例3-3)。さらに各地域でも同様の取組が広がっており、非住宅分野における木材の利用促進の動きが波及している。

事例3-3 CO2排出削減を目指す木造店舗「セブン-イレブン青梅新町おうめしんまち店」

セブンーイレブン・ジャパンは、これまで店舗の標準仕様において、商業施設では一般的な軽量鉄骨造を採用しており、木造店舗についてはメリットがある地域に限定してツーバイフォー工法で行っていたが、「ウッド・チェンジ・ネットワーク」への参加を契機として、木造の可能性を改めて検討してきた。木造の店舗は、一般的な鉄骨造に比べ資源調達時から建設時までのCO2排出量が少なく、解体時に産業廃棄物を削減できると言われており、着目している。

令和2(2020)年11月、同社は省エネの実証店舗として、木造の「セブン-イレブン青梅新町おうめしんまち店」を東京都内にオープンした。青梅新町店では、スギやヒノキの製材に加え、大スパンの空間づくりが可能なLVL(注)を採用し、店舗の利便性に配慮し店舗の売場内に柱が出ないよう設計を工夫した。躯体部分には軸組み工法を採用しており、断熱性・気密性を向上させることで省エネ性の向上を目指している。

同社では、今後も木造店舗の開発に挑戦する予定であり、木造店舗の標準化も検討している。

注:単板を主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着したもの。

資料:令和2(2020)年11月24日付け流通ニュースホームページ「セブンイレブン/東京都青梅市に最新省エネ店舗、電力43%減・CO2は54%減」、ウッド・チェンジ・ネットワーク「ウッド・チェンジの取組について」(ウッド・チェンジ・ネットワーク 第3回会合(令和2(2020)年3月17日)資料)



さらに、令和元(2019)年5月には、森林・林業・木材産業関係団体や建設業関係団体等からなる「森林もりを活かす都市まちの木造化推進協議会」が設立され、これまで木材があまり使われてこなかった都市部の木造化・木質化に向けた意見交換が行われている。令和元(2019)年11月には、公益社団法人経済同友会が中心となって、国産材利用拡大を目指すネットワーク組織「木材利用推進全国会議」が発足した。同会議には、各地経済同友会、都道府県、市町村、金融各社を含む企業・団体等、植林・伐採から木材加工、設計、施工、国産材の活用に至る全てのステークホルダーが連携することで、「木」を起点として、経済合理性と持続可能性を両立する豊かな地域社会の実現を目指すこととしている。このほか、これまで木材とつながりの薄かった空間デザイナー等が、森林・林業・木材産業とつながることを通じて、非住宅分野の内装等における木材利用にデザインの力で付加価値を付けようとする取組も見られた(事例3-4)。

事例3-4 空間デザイナーと林業地との連携を創出する「もりまちドア」

空間デザインや企画等を行う乃村工藝社は、一般社団法人 全国木材組合連合会と連携して、「まち」側の空間クリエイター等(デザイナー、プランナー、施主)が、「もり」側の林業・木材産業事業者との対話を通じてつながり、木材を利用した空間デザインを拡大しようとするプロジェクト「もりまちドア」を令和2(2020)年に開始した。

このプロジェクトでは、商業施設の内装やディスプレイ等非住宅の内装等で国産材を利用する空間クリエイターを増やし、木材の価値を引き出していく取組として、これまで木材を使用した経験の少ない空間クリエイター等が、東京都の多摩たま地域、埼玉県の西川にしかわ林業地域、三重県の尾鷲おわせ地域を訪れ、そこで発見した森林や木材の魅力、林業の現状、産地の方々と交流からの気づき等を空間クリエイターの視点からホームページやウェビナー等で発信している。

木材利用の新たなプレーヤーの拡大により、非住宅分野において、SDGsを始め多様な観点から木材利用の可能性が広がることが期待される。

資料:一般社団法人 全国木材組合連合会ホームページ「もりまちドア」




(*82)ウッドソリューション・ネットワーク「非住宅木造推進アプローチブック「時流をつかめ!企業価値を高める木造建築~持続可能な木材利用を経営戦略に取り込もう~」」(令和元(2019)年8月)



(ウ)公共建築物等における木材利用

(法律に基づき公共建築物等における木材の利用を促進)

我が国では、戦後、火災に強いまちづくりに向けて耐火性に優れた建築物への要請が強まるとともに、戦後復興期の大量伐採による森林資源の枯渇や国土の荒廃が懸念されたことから、国や地方公共団体が率先して建築物の非木造化を進め、公共建築物への木材の利用が抑制されていた。一方、公共建築物はシンボル性と高い展示効果があることから、公共建築物を木造で建設することにより、木材利用の重要性や木の良さに対する理解を深めることが期待できる。

このような状況を踏まえて、平成22(2010)年10月に、木造率が低く潜在的な需要が期待できる公共建築物に重点を置いて木材利用を促進するため、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(*83)」が施行された。同法では、国が「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」を策定して、木材の利用を進める方向性を明確化する(*84)とともに、地方公共団体や民間事業者等に対して、国の基本方針に則した取組を促す(*85)こととしている。

平成29(2017)年6月には、同法施行後の国、地方公共団体による取組状況を踏まえ、同基本方針を変更し、地方公共団体は、同基本方針に基づく措置の実施状況の定期的な把握や木材利用の促進のための関係部局横断的な会議の設置に努めること、国や地方公共団体はCLT(*86)(直交集成板)、木質耐火部材等の新たな木質部材の積極的な活用に取り組むこと、3階建ての木造の学校等について一定の防火措置を行うことで準耐火構造等での建築が可能となったことから積極的に木造化を促進すること等を規定した。

国では、23の府省等の全てが同法に基づく「公共建築物における木材の利用の促進のための計画」を策定しており、令和2(2020)年12月末時点において、地方公共団体では、全ての都道府県と1,741市町村のうち93%に当たる1,617市町村が、同法に基づく「公共建築物における木材の利用の促進に関する方針」を策定している(*87)。

このほか、公共建築物だけでなく、公共建築物以外での木材利用も促進するため、森林の公益的機能発揮や地域活性化等の観点から、行政の責務や森林所有者、林業事業者、木材産業事業者等の役割を明らかにした条例を制定する動きが広がりつつある。令和3(2021)年1月末時点で、18県及び9市町村(*88)において、木材利用促進を主目的とする条例が施行されている。また、11道県及び19市町村(*89)が森林づくり条例等に木材利用促進を位置付けている。そのほか、5府県及び1市(*90)で地球温暖化防止に関する条例に、温室効果ガスの吸収及び固定作用の観点から、適切な森林整備のための木材利用促進を位置付けており、3県及び18市町村(*91)において地域活性化等に関する条例の中で、木材利用促進を位置付けている(*92)。


(*83)「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号)

(*84)「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」第7条第1項

(*85)「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」第4条から第6条まで

(*86)CLTについては、第3節(3)202-204ページを参照。

(*87)方針を策定している市町村数は令和3(2021)年1月末現在の数値。

(*88)岩手県、秋田県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、兵庫県、奈良県、岡山県、広島県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、北海道置戸町、徳島県三好市、那賀町、高知県四万十町、馬路村、梼原町、熊本県山江村、宮崎県日南市、日之影町。

(*89)北海道、宮城県、長野県、岐阜県、静岡県、三重県、滋賀県、和歌山県、福岡県、宮崎県、鹿児島県、北海道弟子屈町、石川県金沢市、岐阜県関市、揖斐川町、愛知県豊田市、新城市、設楽町、東栄町、豊根村、兵庫県丹波篠山市、鳥取県若桜町、島根県津和野町、岡山県津山市、鏡野町、西粟倉村、徳島県那賀町、愛媛県久万高原町、高知県梼原町、長崎県対馬市。

(*90)群馬県、山梨県、岐阜県、京都府、熊本県、京都府京都市。

(*91)山形県、山口県、熊本県、北海道下川町、美深町、津別町、雄武町、岩手県紫波町、久慈市、秋田県北秋田市、滋賀県長浜市、東近江市、島根県隠岐の島町、山口県山口市、岩国市、萩市、徳島県上勝町、高知県梼原町、熊本県小国町、多良木町、南阿蘇村。

(*92)林野庁調査「「木材利用促進に関する条例の施行・検討状況の調査について」の結果について」(令和3(2021)年3月26日)



(公共建築物の木造化・木質化の実施状況)

国、都道府県及び市町村が着工した木造の建築物は、令和元(2019)年度には2,212件であった。このうち、市町村によるものが1,800件と約8割となっている(*93)。同年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は、13.8%となった。また、「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」により、積極的に木造化を促進することとされている低層(3階建て以下)の公共建築物においては、木造率は28.5%であった(資料3-27)。さらに、都道府県ごとの木造率については、低層で4割を超える県がある一方、都市部では低位であるなど、ばらつきがある状況となっている(資料3-28)。


国の機関による木材利用の取組状況については、令和元(2019)年度に国が整備した公共建築物のうち、同基本方針において積極的に木造化を促進するものに該当するものは83棟で、うち木造で整備を行った建築物は72棟であり、木造化率は86.7%であった。また、内装等の木質化を行った建築物は132棟であった。

林野庁と国土交通省による検証チームは、令和元(2019)年度に国が整備した、積極的に木造化を促進するとされている低層の公共建築物等83棟のうち、各省各庁において木造化になじまないと判断された建築物11棟について、各省各庁にヒアリングを行い、木造化しなかった理由等について検証した。その結果、施設が必要とする機能等の観点から木造化が困難であったと評価されたものが3棟、木造化が可能であったと評価されたものが8棟であったことから、積極的に木造化を促進するとされている低層の公共建築物等のうち木造化が困難であったものを除いた木造化率は、90.0%となった(資料3-29)。木造化が可能であったと評価された8棟はおおむね自転車置場、倉庫等の小規模な建築物であり、林野庁及び国土交通省では、これらについても木造化が徹底されるよう、各省各庁に対して働き掛けを行っていくこととしている。


低層の公共建築物については、民間事業者が整備する公共建築物(*94)が全体の6割以上を占めており、さらにその内訳をみると、医療・福祉施設が約8割となっている。今後、公共建築物への木材利用の一層の促進を図る上で、国や地方公共団体が整備する施設のみならず、これらの民間事業者が整備する施設の木造化・内装等の木質化を推進するための取組が必要である。このため、平成30(2018)年度と令和元(2019)年度の2年間にわたり、「一般社団法人木を活かす建築推進協議会」が医療・福祉施設における木材利用促進のための事例を収集し、用途に応じた木材利用の基礎的な情報や留意事項等を取りまとめ、「木を活かした医療施設・福祉施設の手引き」を作成した(*95)。また、令和2(2020)年度には、建築主向けのパンフレットを作成し、医療・福祉施設の関係者への普及啓発を行った。


(*93)国土交通省「建築着工統計調査2019年度」

(*94)公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律第2条第1項第2号に規定する建築物を指す。

(*95)一般社団法人木を活かす建築推進協議会ホームページ「木を活かした医療施設・福祉施設の手引き」



(公共建築物の木造化・木質化における発注・設計段階からの支援)

林野庁では、公共建築物等の木造化・木質化の促進のため、地方公共団体等に木造化・木質化に係る事例やデータを幅広く情報提供している。

平成29(2017)年2月に作成した「公共建築物における木材利用優良事例集」では、近年建設された公共建築物における木材利用のモデル的な事例を収集・整理して紹介している。

このほか、木造公共建築物等の整備を推進するため、発注者、木材供給者、設計者、施工者等の関係者が連携し、課題解決に向けて取り組む地域協議会に対して、専門家を派遣し、設計又は発注の段階で技術的な助言を行うなどの支援を行ってきており、同事業の結果、地域協議会が木材調達や発注に関するノウハウ等を得ることができた(*96)。

また、保育園建物と小学校建物について、木造と他構造のコスト比較等を行った。その結果、保育園建物については、木造と鉄骨造(木造と同等の内装木質化を実施)を比較した場合、スパンの小さい保育室では木造の方が安く、スパンの大きい遊戯室では同等の工事費となることが分かった(*97)。小学校建物については、2教室と中廊下、2階建てを基本単位として木造と鉄筋コンクリート造(内装木質化)のコストを比較した場合、木造の工事費の方が安くなることが分かった(*98)。


(*96)一般社団法人木を活かす建築推進協議会ホームページ「木造公共建築物等の整備に係る設計段階からの技術支援事業成果物「木造化・木質化に向けた20の支援ツール」」、「地域における民間部門主導の木造公共建築物等整備推進 報告書」

(*97)一般社団法人木を活かす建築推進協議会ホームページ「平成28年度木造公共建築物誘導経費支援報告書」

(*98)一般社団法人木を活かす建築推進協議会ホームページ「平成29年度木造公共建築物誘導経費支援報告書」



(学校の木造化を推進)

学校施設は、児童・生徒の学習及び生活の場であり、学校施設に木材を利用することは、木材の持つ高い調湿性、温かさ、柔らかさ等の特性により、健康や知的生産性等の面において良好な学習・生活環境を実現する効果が期待できる(*99)。

このため、文部科学省では、昭和60(1985)年度から、学校施設の木造化や内装の木質化を進めてきた。令和元(2019)年度に建設された公立学校施設の22.6%が木造で整備され、非木造の公立学校施設の50.5%(全公立学校施設の39.1%)で内装の木質化が行われている(*100)。

文部科学省は、平成27(2015)年3月に、大規模木造建築物の設計経験のない技術者等でも、比較的容易に木造校舎の計画・設計が進められるよう「木造校舎の構造設計標準(JIS A3301)」を改正するとともに、その考え方、具体的な設計例、留意事項等を取りまとめた技術資料を作成した。また、平成28(2016)年3月には、木造3階建ての学校を整備する際のポイントや留意事項をまとめた「木の学校づくり-木造3階建て校舎の手引-」を作成した。さらに、平成31(2019)年3月には「木の学校づくり-その構想からメンテナンスまで(改訂版)-」を、令和2(2020)年3月には「木の学校づくり 学校施設等のCLT活用事例」を作成した。

これらにより、地域材を活用した木造校舎や3階建て木造校舎の建設が進むだけでなく、木造校舎を含む大規模木造建築物の設計等の技術者の育成等が図られることにより、学校施設等での木材利用の促進が期待される。

また、文部科学省では、平成11(1999)年度以降、木材活用に関する施策紹介や専門家による講演等を行う「木材を活用した学校施設づくり講習会」を全国で開催し、林野庁では後援と講師の派遣を行っている。

さらに、文部科学省、農林水産省、国土交通省及び環境省が連携して行っている「エコスクール・プラス(*101)」において、農林水産省では、内装の木質化等を行う場合に積極的に支援することとしている。


(*99)林野庁「平成28年度都市の木質化等に向けた新たな製品・技術の開発・普及委託事業」のうち「木材の健康効果・環境貢献等に係るデータ整理」による「科学的データによる木材・木造建築物のQ&A」(平成29(2017)年3月)

(*100)文部科学省ホームページ「公立学校施設における木材の利用状況(令和元年度)」(令和2(2020)年12月22日)

(*101)学校設置者である市町村等が、環境負荷の低減に貢献するだけでなく、児童生徒の環境教育の教材としても活用できるエコスクールとして整備する学校を「エコスクール・プラス」として認定し、再生可能エネルギーの導入、省CO2対策、地域で流通する木材の導入等の支援を行う事業であり、令和2(2020)年度には55校が認定されている。平成29(2017)年度に「エコスクールパイロット・モデル事業」を改称したもので、同事業における文部科学省との連携開始年度は、農林水産省が平成14(2002)年、国土交通省が平成24(2012)年、環境省が平成28(2016)年からとなっている。



(ブロック塀から木塀への転換)

平成30(2018)年に全国知事会において結成された、国産木材活用の推進を目指すプロジェクトチームが、調査、研究を行う個別テーマの一つとして「ブロック塀から木塀への転換」を例示した。これを受けて、東京都を始めとした複数の自治体で、木塀設置に向けた取組が実施されている。効果などを検証する先駆けとして、都立高校3校と都有の弓道場及び公園で、老朽化したブロック塀から木塀への建て替えが行われた。「一般社団法人全国木材協同組合連合会」においても、林野庁の補助事業を活用し、住宅及び非住宅の外構部について、木質化を実証的に行う取組に対し支援を行っている。また木材関連団体において、木塀の標準的なモデルや仕様を公表する例もあり、木塀が木材の用途として注目を集めている。


(土木分野における木材利用)

土木資材としての木材の特徴は、軽くて施工性が高いこと、臨機応変に現場での加工成形がしやすいことなどが挙げられる。

土木分野では、かつて、橋や杭等に木材が利用されていたが、高度経済成長期を経て、主要な資材は鉄やコンクリートに置き換えられてきた。

しかし、近年では、国産材針葉樹合板について、コンクリート型枠かたわく用、工事用仮囲い、工事現場の敷板等への利用が広がっているほか、木製ガードレール、木製遮音壁、木製魚礁、木杭等への木材の利用が進められている。

このような中、「一般社団法人日本森林学会」、「一般社団法人日本木材学会」及び「公益社団法人土木学会」の3者は、平成19(2007)年に「土木における木材の利用拡大に関する横断的研究会」を結成し、平成25(2013)年3月に「提言「土木分野における木材利用の拡大へ向けて」」を発表している(*102)。平成29(2017)年3月には、土木分野での木材利用の拡大の実現に向けた取組を進める中でみえてきた解決すべき課題に対処するため、土木分野における木材利用量の実態を把握すること等について、「提言「土木分野での木材利用拡大に向けて」-地球温暖化緩和・林業再生・持続可能な建設産業を目指して-」を発表している(*103)。


(*102)土木における木材の利用拡大に関する横断的研究会ほか「提言「土木分野における木材利用の拡大へ向けて」」(平成25(2013)年3月12日)

(*103)土木における木材の利用拡大に関する横断的研究会ほか「提言「土木分野での木材利用拡大に向けて」-地球温暖化緩和・林業再生・持続可能な建設産業を目指して-」(平成29(2017)年3月22日)



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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