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林野庁

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令和元年度 森林及び林業施策


概説

1 施策の背景(基本的認識)

我が国の森林は、戦中、戦後の木材需要の高まりに伴う伐採により大きく荒廃したが、先人の様々な努力により造成された結果が実り、その約半数が50年生を超え、本格的な利用期を迎えている。この資源を「伐って、使って、植える」というサイクルを保つことで、地球温暖化防止等の森林の有する多面的機能を確保するとともに、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を両立し、先人の築いた貴重な資産を継承・発展させることが、これからの森林・林業施策の主要課題である。

しかし、多くの森林所有者が小規模零細で分散した森林を抱え、林業経営の効率化や、森林の適切な管理が確保できないおそれがある。

この課題に対応するため、「森林経営管理法」(平成30年法律第35号)が平成30(2018)年に成立し、平成31(2019)年4月から施行される。本法により、適切な経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり、意欲と能力のある林業経営者へ森林の経営管理の集積・集約化や市町村による公的管理を進めることが期待される。また、本法を踏まえ、地方公共団体が行う森林整備等の財源として、森林環境税及び森林環境譲与税が創設される。

「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成30(2018)年11月27日改訂(農林水産業・地域の活力創造本部決定))を踏まえ、国有林野の一定の区域で、公益的機能を確保しつつ、意欲と能力のある林業経営者が、一定期間、安定的に立木を伐採できる仕組みやこれら林業経営者等の育成を図るため、川中・川下の中小事業者と連携して新たな木材需要の開拓に資する取組を支援する仕組みを構築することとしている。

また、平成30(2018)年12月に決定した「SDGsアクションプラン2019」では、林業の成長産業化と森林の多面的機能の発揮に向けた諸施策や、世界の持続可能な森林経営の推進及びREDD+の支援等が盛り込まれ、SDGsの達成に向けて、森林・林業・木材産業の果たすべき役割は大きくなっている。

これらも踏まえつつ、適切な森林整備及び保全、多様で健全な森林への誘導等による森林の多面的機能の維持及び向上を図りつつ、施業の集約化や路網整備、人材の育成及び確保等を通じた原木の安定供給体制や、効率的なサプライチェーンの構築、CLTの利用や公共建築物等への木材利用、木質バイオマス利用の促進等新たな木材需要の創出に取り組むことが必要である。

「総合的なTPP等関連政策大綱」(平成29(2017)年11月24日TPP等総合対策本部決定)を踏まえ、木材加工施設の生産性向上や、競争力のある品目への転換、原木供給の低コスト化、木材製品の消費拡大対策等を推進する必要がある。

また、国有林においては、平成30(2018)年12月に策定した「国有林野の管理経営に関する基本計画」に基づき、公益重視の管理経営を推進するとともに、林業の成長産業化に向け、民有林における森林経営管理制度が円滑に機能するよう、意欲と能力のある林業経営者の育成支援等に積極的に取り組んでいく必要がある。

このほか、平成30年7月豪雨や平成30年北海道胆振東部地震等により発生した山地災害の復旧整備を推進するとともに、「平成30年7月豪雨を踏まえた治山対策検討チーム」中間取りまとめ(平成30(2018)年11月林野庁)や平成30(2018)年12月に改定された「国土強靱化基本計画」等を踏まえた効果的な治山対策や森林整備を推進することが重要である。特に、平成30(2018)年に実施した「重要インフラの緊急点検」等を踏まえ、緊急に実施すべき対策としてとりまとめられた「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30(2018)年12月14日閣議決定)を速やかに実施することが必要である。


2 財政措置

(1)財政措置

令和元(2019)年度林野庁関係予算においては、一般会計に非公共事業費約1,063億円、公共事業費約2,370億円(*1)を計上する。特に、平成30(2018)年5月に成立した「森林経営管理法」に基づき、適切な経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり意欲と能力のある林業経営者への森林の経営管理の集積・集約化や市町村による公的管理を進め、木材の流通及び需要拡大については、川上から川下までの事業者間での需給情報等を共有できる効率的なサプライチェーンの構築を進めるとともに、CLT等の新たな製品・技術普及やJAS構造材の普及支援等による代替需要の拡大を図り、経済界等との協力等による環境整備を目指す。

このため、

1)「林業成長産業化総合対策」として、

(ア)「林業・木材産業成長産業化促進対策」により、意欲と能力のある林業経営者を育成し、木材生産を通じた持続的な林業経営を確立するため、出荷ロットの大規模化、資源の高度利用を図る施業、路網整備、高性能林業機械の導入、木材加工流通施設の整備等を支援

(イ)「スマート林業構築推進事業」などにより、ICT等の先端技術を活用した森林施業の効率化や需給マッチングによる流通コストの削減などスマート林業の構築に向けた取組、施業現場の管理者育成等の支援

(ウ)「木材需要の拡大・生産流通構造改革促進対策」により、CLT等の利用促進や民間との連携による中高層・非住宅建築物等への木材利用の促進や公共建築物の木造化・木質化などによる新たな木材需要の創出、高付加価値木材製品の輸出拡大、サプライチェーン構築に向けたマッチング等の取組等を支援

2)「「緑の人づくり」総合支援対策」により、林業への就業前の青年に対する給付金の支給や、新規就業者を現場技能者に育成する「緑の雇用」研修の支援等を行うとともに、森林経営管理制度と森林環境税の創設を踏まえ、市町村の森林・林業担当職員を支援する人材の育成の推進

3)「森林・山村多面的機能発揮対策」により、森林・山村の多面的機能の発揮を図るため、地域における活動組織が実施する森林の保全管理や森林資源の利用等の取組の支援

4)「花粉発生源対策推進事業」により、花粉症対策苗木への植替えの支援、花粉飛散防止剤の実証試験、スギ・ヒノキの雄花着花状況調査等の推進やこれらの成果の普及啓発等の一体的な実施

5)「シカによる森林被害緊急対策事業」により、被害が深刻な地域等における林業関係者が主体となった広域かつ計画的な捕獲等のモデル的な実施

6)林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現するため、意欲と能力のある林業経営者や、その経営者が経営管理を集積・集約化する地域に対し、間伐や路網整備、主伐後の再造林等を重点的に支援する森林整備事業の推進

7)集中豪雨、流木災害の拡大等に対する山地防災力の強化のため、荒廃山地の復旧・予防対策、総合的な流木対策の強化等を行う治山事業の推進

等の施策を重点的に講ずる。

また、東日本大震災復興特別会計に非公共事業費約49億円、公共事業費約215億円を盛り込む。


(*1)「臨時・特別の措置」(重要インフラの緊急点検等を踏まえた防災・減災、国土強靱化のための緊急対策に係る分)約441億円を含んだ額。



(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進する。

「森林・山村対策」としては、

1)公有林等における間伐等の促進

2)国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した施業の集約化に必要な活動

3)国が実施する「緑の雇用」新規就業者育成推進事業等と連携した林業の担い手育成及び確保に必要な研修

4)民有林における長伐期化及び複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

5)地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

6)市町村の森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講ずる。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置、上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講ずる。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とする。

さらに、上記のほか、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の整備、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講ずる。


3 立法措置

第198回通常国会に、効率的かつ安定的な林業経営の育成を図るため、「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」を提出した。


4 税制上の措置

林業に関する税制について、令和元(2019)年度税制改正において、

1)中小企業投資促進税制の適用期限を2年延長すること(所得税・法人税)

2)商業・サービス業・農林水産業活性化税制について、経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上の見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の認定を受けることを適用条件に加えた上で適用期限を2年延長すること(所得税・法人税)

3)中小企業経営強化税制の適用期限を2年延長すること(所得税・法人税)

4)森林組合等の合併に係る課税の特例の適用期限を3年延長すること(法人税)

5)中小企業等の法人税の軽減税率の特例の適用期限を2年延長すること(法人税)

6)農林漁業信用基金が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長すること(登録免許税)

7)森林環境税及び森林環境譲与税を創設すること

等の措置を講ずる。


5 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫資金の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金について、貸付計画額を234億円とする。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を60億円とする。

森林の取得や木材の加工及び流通施設等の整備や災害からの復旧を行う林業者等に対する利子助成を実施する。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施する。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について、貸付計画額を40億円とする。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

木材の生産又は流通の合理化を推進するための木材産業等高度化推進資金について貸付枠を600億円とする。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証や林業経営者に対する経営支援等の活用を促進する。

東日本大震災により被災した林業者等に対する保証料の助成等を実施する。

重大な災害に被災した林業者等に要する保証料を実質免除する。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行う。


6 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、「農林水産省政策評価基本計画」(5年間計画)及び毎年度定める「農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を実施する。

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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