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林野庁

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第2部 5 国有林野の管理及び経営に関する施策


1 公益重視の管理経営の一層の推進

国有林野は、国土保全上重要な奥地脊梁(せきりょう)山地や水源地域に広く分布するなど国民生活に重要な役割を果たしており、さらに、民有林への指導やサポート等、林業の成長産業化に貢献するよう、「国民の森林(もり)」として管理経営する必要がある。

このため、公益重視の管理経営を一層推進する中で、組織・技術力・資源を活用し、森林・林業施策全体の推進に貢献するよう、「森林・林業基本計画」等に基づき、次の施策を推進した。


(1)多様な森林整備の推進

「国有林野の管理経営に関する法律」等に基づき、32森林計画区において、地域管理経営計画、国有林野施業実施計画及び国有林の地域別の森林計画を策定した。

この中で国民のニーズに応えるため、個々の国有林野を重視すべき機能に応じ、山地災害防止タイプ、自然維持タイプ、森林空間利用タイプ、快適環境形成タイプ及び水源涵(かん)養タイプに区分し、これらの機能類型区分ごとの管理経営の考え方に即して適切な森林の整備を推進した。その際、地球温暖化防止や生物多様性の保全に貢献するほか、地域経済や山村社会の持続的な発展に寄与するよう努めた。

具体的には、人工林の多くがいまだ間伐が必要な育成段階にある一方、伐採適期を迎えた高齢級の人工林が年々増加しつつあることを踏まえ、間伐を推進するとともに、針広混交林へ導くための施業、長伐期施業、小面積かつモザイク的配置に留意した施業等を推進した。なお、再造林に当たっては、効率的かつ効果的な手法の導入に努めた。

また、林道及び主として林業機械が走行する森林作業道が、それぞれの役割等に応じて適切に組み合わされた路網の整備とともに、「公益的機能維持増進協定制度」を活用した民有林との一体的な整備及び保全の取組を推進した。


(2)治山事業の推進

国有林野の9割が保安林に指定されていることを踏まえ、保安林の機能の維持・向上に向けた森林整備を計画的に進めた。

国有林野内の治山事業においては、近年頻発する集中豪雨や地震・火山等による大規模災害の発生のおそれが高まっていることを踏まえ、山地災害による被害を未然に防止し、軽減する事前防災・減災の考え方に立ち、民有林における国土保全施策との一層の連携により、効果的かつ効率的な治山対策を推進し、地域の安全と安心の確保を図った。

具体的には、荒廃山地の復旧等と荒廃森林の整備の一体的な実施、予防治山対策や火山防災対策の強化、治山施設の機能強化を含む長寿命化対策やコスト縮減対策、海岸防災林の整備・保全対策、大規模災害発生時における体制整備等を推進した。

また、国有林と民有林との連携による計画的な事業の実施、他の国土保全に関する施策と連携した流木災害対策の実施、工事実施に当たっての木材の積極的な利用、生物多様性の保全等に配慮した治山対策の実施を推進した。


(3)生物多様性の保全

生物多様性の保全の観点から、原生的な森林生態系を有する森林や希少な野生生物の生育・生息の場となる森林である「保護林」や、これらを中心としたネットワークを形成して野生生物の移動経路となる「緑の回廊」において、モニタリング調査等を行いながら適切な保護・管理を推進した。渓流等と一体となった森林については、その連続性を確保することにより、よりきめ細やかな森林生態系ネットワークの形成に努めた。その他の森林については、適切な間伐の実施等、多様で健全な森林の整備及び保全を推進した。

また、野生生物や森林生態系等の状況を適確に把握し、自然再生の推進、国内希少野生動植物種の保護を図る事業等を実施した。

さらに、世界自然遺産及びその候補地における森林の保全対策を推進するとともに、世界文化遺産登録地やその候補地及びこれらの緩衝地帯内に所在する国有林野において、森林景観等に配慮した管理経営を行った。

森林における野生鳥獣被害防止のため、広域的かつ計画的な捕獲と効果的な防除等を実施した。

また、地域住民等の多様な主体との連携により集落に近接した森林の間伐を行うことにより、明るく見通しのよい空間(緩衝帯)づくりを行うなど、野生鳥獣が警戒して出没しにくい地域づくりのための事業等を実施した。

二酸化炭素の吸収源として算入される天然生林の適切な保護及び保全を図るため、グリーン・サポート・スタッフ(森林保護員)による巡視や入林者へのマナーの啓発を行うなど、きめ細やかな森林の保全・管理活動を実施した。


2 林業の成長産業化への貢献

(1)森林施業の低コスト化の推進と技術の普及

路網と高性能林業機械とを組み合わせた効率的な間伐や、コンテナ苗を活用し伐採から造林までを一体的に行う「一貫作業システム」、複数年契約による事業発注等、低コストで効率的な作業システム、先端技術を活用した木材生産等の実証を推進した。

これらの取組について、各地での事業展開を図りつつ、現地検討会等を開催し、地域の林業関係者との情報交換を行うなど、民有林への普及・定着に努めた。また、民有林経営への普及を念頭に置いた林業の低コスト化等に向けた技術開発に、産官学連携の下で取り組んだ。

さらに、林業事業体の創意工夫を促進し、施業提案や集約化の能力向上等を支援するため、国有林野事業の発注等を通じた林業事業体の育成を推進した。


(2)民有林との連携

「森林共同施業団地」を設定し、国有林と民有林が連携した事業計画の策定に取り組むとともに、国有林と民有林とを接続する効率的な路網の整備や連携した木材の供給等、施業集約に向けた取組を推進した。

森林総合監理士等の系統的な育成に取り組み、地域の林業関係者の連携促進や市町村森林整備計画の策定とその達成に向けた支援等を行った。また、森林管理署等と都道府県の森林総合監理士等との連携による「技術的援助等チーム」の設置等を通じた民有林の人材育成支援に取り組むとともに、森林・林業関係の教育機関等において、森林・林業に関する技術指導等に取り組んだ。

さらに、「林業成長産業化地域」において、民有林と連携した供給先確保等の取組を行った。


(3)木材の安定供給体制の構築

適切な施業の結果得られる木材について、持続的かつ計画的な供給に努めるとともに、その推進に当たっては、未利用間伐材等の木質バイオマス利用等の新規需要の開拓に向け、安定供給システム販売等による国有林材の戦略的な供給に努めた。その際、林産物の供給に当たっては、間伐材の利用促進を図るため、列状間伐や路網と高性能林業機械の組合せ等による低コストで効率的な作業システムの定着に向けて取り組んだ。また、国産材の安定供給体制の構築に資するため、民有林材を需要先へ直送する取組の普及及び拡大など国産材の流通合理化を図る取組に対して支援した。このほか、民有林からの供給が期待しにくい大径長尺材等の計画的な供給に取り組んだ。

また、国産材の2割を供給し得る国有林の特性を活かし、地域の木材需要が急激に増減した場合に、必要に応じて供給時期の調整等を行うため、地域の需給動向及び関係者の意見等を迅速かつ適確に把握する取組を推進するとともに、インターネット等を活用した事業量の公表に努めた。

さらに、「未来投資戦略2017」に基づき実施した、国有林における木材の販売方法についての提案募集を踏まえ、「農林水産業・地域の活力創造プラン」における木材の生産流通構造改革の推進に資するよう国有林野の一定の区域で、公益的機能を確保しつつ、意欲と能力のある林業経営者が、一定期間・安定的に立木の伐採を行うことができる仕組み等の検討を行った。


3 「国民の森林(もり)」としての管理経営と国有林野の活用

(1)「国民の森林(もり)」としての管理経営

国有林野の取組について国民との双方向の情報受発信に努め、国民の期待や要請に適切に対応していくため、情報の開示や広報の充実を進めるとともに、森林計画の策定等の機会を通じて国民の要請の適確な把握とそれを反映した管理経営の推進に努めた。

体験活動及び学習活動の場としての「遊々(ゆうゆう)の森」の設定及び活用を図るとともに、農山漁村における体験活動と連携し、森林・林業に関する体験学習のためのプログラムの作成及び学習コース等のフィールドの整備を行い、それらの情報を提供するなど、学校、NPO、企業等の多様な主体と連携して森林環境教育を推進した。

また、NPO等による森林(もり)づくり活動の場としての「ふれあいの森」、伝統文化の継承や文化財の保存等に貢献する「木の文化を支える森」、企業等の社会貢献活動の場としての「法人の森林(もり)」など国民参加の森林(もり)づくりを推進した。


(2)国有林野の活用

国有林野の所在する地域の社会経済状況、住民の意向等を考慮して、地域における産業の振興及び住民の福祉の向上に資するよう、貸付け、売払い等による国有林野の活用を積極的に推進した。

その際、国土の保全や生物多様性の保全等に配慮しつつ、再生可能エネルギー源を利用した発電に資する国有林野の活用にも努めた。

さらに、「レクリエーションの森」について、民間活力を活かしつつ、利用者のニーズに対応した施設の整備や自然観察会等を実施するとともに、観光資源としての魅力の向上、外国人も含む旅行者に向けた情報発信等に取り組み、更なる活用を推進した。

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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