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林野庁

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第1部 第 IV 章 第2節 木材産業の動向(1)

我が国の木材産業では、製材生産の大規模工場への集中、合板生産に占める国産材の割合の上昇等の動きがみられる中で、安定的かつ効率的な原木調達が課題となっている。

以下では、木材産業の概況とともに、製材、集成材、合板、木材チップ等の各部門及び木材流通の動向について記述する(*69)。


(*69)以下のデータは、特記のある場合を除いては、林野庁「平成28年木材需給表」(平成29(2017)年9月)、農林水産省「平成28年木材統計」、「平成28年木材流通構造調査」、財務省「貿易統計」等による。



(1)木材産業の概況

(木材産業の概要)

木材産業は、林業によって生産される原木を加工して様々な木材製品(製材、集成材、合板、木材チップ等)を製造・販売することで、消費者・実需者による木材利用を可能とする(資料 IV -19)。

原木の購入元である森林所有者、素材生産業者等の供給者(川上)との関係では、原木の購入を通じて、林業や森林整備を支える役割を担っており、木材製品の販売先である工務店・住宅メーカー等の需要者(川下)との関係では、ニーズに応じて木材製品を供給しているほか、新たな木材製品の開発等によって、社会における木材利用を推進する役割も担っている(*70)。

また、木材産業は一般的に森林資源に近いところに立地し、その地域の雇用の創出と経済の活性化に貢献する。国産材を主原料とする場合には森林資源が豊富な山間部に、輸入材を原料とする場合には港湾のある臨海部に立地することが多い。

資料IV-19 木材加工・流通の概観

(*70)木材産業の役割について詳しくは、「平成26年度森林及び林業の動向」の9-10ページを参照。



(木材産業の生産規模)

我が国の木材産業の生産規模を木材・木製品製造業の製造品出荷額等でみると(*71)、長期的な減少傾向にあったが、平成22(2010)年からは回復傾向で推移し、平成27(2015)年は前年比6.7%増の約2兆6,897億円であった(*72)(資料 IV -20)。このうち、製材業の製造品出荷額等は6,970億円、集成材製造業は2,094億円、合板製造業は3,746億円、木材チップ製造業は955億円となっている(*73)。

製造品出荷額等が増加した一方で、原材料、燃料、電力の使用額等が前年とほぼ同額の1兆6,738億円であったことなどから、平成27(2015)年の木材・木製品製造業の付加価値額(*74)は前年比19.9%増の8,969億円となった。また、平成28(2016)年6月1日現在の従業者数は95,544人となっている。


(*71)製造品出荷額等、付加価値額、従業者数について、経済産業省・総務省「平成28年経済センサス-活動調査」(産業別集計(製造業)「産業編」)における「木材・木製品製造業(家具を除く)」(従業者4人以上)の数値。

(*72)製造品出荷額等には、製造品出荷額のほか、加工賃収入額、くず廃物の出荷額、その他収入額が含まれる。

(*73)製材業、集成材製造業、合板製造業、木材チップ製造業の製造品出荷額等については、それぞれ経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査」(産業別集計(製造業)「産業編」)における「一般製材業」、「集成材製造業」、「単板(ベニヤ)製造業と合板製造業の合計」、「木材チップ製造業」の数値である。

(*74)製造品出荷額等から原材料、燃料、電力の使用額等及び減価償却費を差し引き、年末と年初における在庫・半製品・仕掛品の変化額を加えたものである。



(木材の加工・流通体制の整備)

我が国の木材産業では、品質・性能、価格や供給の安定性の面において競争力のある木材製品を供給できる体制を構築することが課題となっている。

林野庁では、平成16(2004)年度から平成18(2006)年度にかけて、曲がり材や間伐材等を使用して、集成材や合板を低コストかつ大ロットで安定的に供給する「新流通・加工システム」の取組を実施した(*75)。その結果、曲がり材や間伐材等の利用量は、平成16(2004)年の45万m3から、平成18(2006)年には121万m3まで増加した。特に、同事業を契機に、合板工場における国産材利用の取組が全国的に波及し、これまでチップ材等に用途が限られていた原木が、合板用材として相応の価格で利用されるようになった。

平成18(2006)年度から平成22(2010)年度にかけては、地域で流通する木材の利用拡大を図るとともに、森林所有者の収益性を向上させる仕組みを構築するため、林業と木材産業が連携した「新生産システム」の取組を実施した。その結果、モデル地域では、地域材の利用量の増加、素材生産コストの削減、流通の合理化等に一定の成果を上げた。

平成21(2009)年度からは、国の助成により都道府県に造成した「森林整備加速化・林業再生基金」により、木材加工・流通施設の整備を支援してきた。これらの取組を契機として、製材工場や合板工場における国産材の利用量は着実に増加している。

平成29(2017)年度からは、「林業成長産業化地域創出モデル事業(*76)」の中で、ソフト面での対策と一体的に行われる木材流通加工施設等の整備に対する支援も行っている。

林野庁では、引き続き、品質及び性能の確かな製品を低コストで安定供給するため、木材加工・流通施設の整備等に対して支援を行っている。


(*75)国産材の利用が低位であった集成材や合板等の分野で、地域における生産組織や協議会の結成、参加事業体における林業生産用機械の導入、合板・集成材等の製造施設の整備等を推進するもので、全国10か所でモデル的な取組を実施した。その結果、曲がり材や間伐材等の利用量は、平成16(2004)年の約45万m3から、平成18(2006)年には121万m3まで増加した。これを契機に、合板工場における国産材利用の取組が全国的に波及したため、これまでチップ材等に用途が限られていた低質な原木が、合板用材として相応の価格で利用されるようになった。

(*76)詳しくは第 III 章(117-119ページ)を参照。



(原木の安定供給体制の構築に向けた取組)

近年、国産材を主な原料とする年間素材消費量が数万m3から10万m3を超える規模の大型の製材・合板工場等の整備が進み(資料 IV -21)、また、木質バイオマスエネルギー利用が拡大の傾向を見せる中、安定的かつ効率的な原木調達が課題となっている。しかしながら、我が国の原木の供給は、小規模・分散的となっていることなどから、変動する需要に応じて原木を適時適切に供給できていない状況にある。

このため、林野庁では、施業及び林地の集約化、主伐・再造林対策の強化等による原木供給力の増大に加え、木材の生産・流通等の状況に応じて、地域の核となる者が原木を取りまとめて供給する体制への転換、川上(供給側の森林所有者、素材生産業者)と川中(需要側の工場等)、川下(国産材製品の需要者である木造の建築物や住宅を建設しようとする工務店・住宅メーカー等)のマッチングの円滑化の推進により、原木の安定供給体制の構築を図ることとしている(*77)。平成28(2016)年5月には、このことに対する措置として、「森林法等の一部を改正する法律(*78)」により、「森林法(*79)」、「森林組合法(*80)」、「木材の安定供給の確保に関する特別措置法(*81)」を改正している(*82)。また、林野庁では、平成27(2015)年度から、国産材の安定供給体制の構築に向けて、川上から川下まで様々な関係者が木材や苗木の需給情報を共有することを目的に「需給情報連絡協議会」を全国7ブロックで開催している。さらに、国有林等による立木や素材等の協定取引を進めている(*83)。

資料IV-21 近年整備された大型木材加工工場及びCLT工場の分布状況

(*77)「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月)。安定供給体制の構築に向けた取組の現状と今後の課題について詳しくは、「平成27年度森林及び林業の動向」の18-37ページを参照。

(*78)「森林法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第44号)

(*79)「森林法」(昭和26年法律第249号)

(*80)「森林組合法」(昭和53年法律第36号)

(*81)「木材の安定供給の確保に関する特別措置法」(平成8年法律第47号)

(*82)森林法等の一部改正について詳しくは、「平成28年度森林及び林業の動向」の45-46ページを参照。

(*83)詳しくは第 V 章(198-199ページ)を参照。




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