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林野庁

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第1部 第 II 章 第2節 森林整備の動向(4)

(4)普及の推進

(林業普及指導事業の実施)

林業普及指導事業は、都道府県が本庁や地方事務所等に「林業普及指導員」を配置して、試験研究機関による研究成果の現地実証等を行うとともに、関係機関等との連携の下、森林所有者等に対する森林施業技術の指導及び情報提供、林業経営者等の育成及び確保、地域全体での森林整備や木材利用の推進等を行うものである。平成29(2017)年4月現在、全国で1,287人が林業普及指導員として活動している(事例 II -3)。

事例 II -3 林業普及指導員と連携したコンテナ苗普及に向けた取組

茨城県では、今後の苗木需要の増加を見込んで、効率的な生産・植栽が期待できるコンテナ苗生産拡大に向けた取組を推進しているが、平成27(2015)年度までは民有林における本格導入の実績はなく、実証試験を始めた段階で森林所有者等への普及も十分ではない状況にあった。

このため、林業普及指導員と、県林業技術センター、県林業種苗協同組合及びコンテナ苗生産者とが連携し、育苗方法や苗木の梱包方法の検討等を行うコンテナ苗生産技術研修会等を実施してきた。

平成28(2016)年度からは、コンテナ苗の植栽効率等を検討するモデル事業を2か年にわたり実施するとともに、コンテナ苗の生産促進と普及を目標に、県内7つの林業指導所の林業普及指導員による「コンテナ苗普及チーム」や林業技術センターの研究員と林業普及指導員の合同チームを結成し、コンテナ苗生産者に対する技術研修会や実証事業による植栽木の生育状況調査、先進地視察、林業事業体の若手作業士へのPRや勉強会等を行うとともに、森林所有者等の苗木需要者への普及を図っている。

また、森林所有者等への普及については、県内8森林組合によるコンテナ苗植栽実証事業(県森林組合連合会事業)において、各森林組合職員等が従来の裸苗と異なるコンテナ苗の取扱いや植栽方法を習得する研修も行うなど、コンテナ苗普及の取組が広がりつつある。

コンテナ苗生産技術研修会
コンテナ苗生産技術研修会

コンテナ苗植栽実証事業における植栽方法の指導
コンテナ苗植栽実証事業における
植栽方法の指導

(森林総合監理士(フォレスター)を育成)

林野庁では、森林・林業に関する専門的かつ高度な知識及び技術並びに現場経験を有し、長期的・広域的な視点に立って地域の森林づくりの全体像を示すとともに、「市町村森林整備計画」の策定等の市町村行政を技術的に支援し、施業集約化を担う「森林施業プランナー」等に対し指導・助言を行う人材として、「森林総合監理士(フォレスター)」の育成を進めている。

森林総合監理士には、森林調査、育林、森林保護、路網、作業システム、木材販売及び流通、関係法令、諸制度等に対する知識等に基づき、地域の森林・林業の姿を描く能力や、地域の関係者の合意を形成していくための行動力、コミュニケーション能力が必要とされていることから、林野庁は、平成26(2014)年度から森林総合監理士の登録・公開を開始するとともに、森林総合監理士を目指す若手技術者の育成を図るための研修や森林総合監理士の技術水準の向上を図るための継続教育、先進的な地域活動を全国に普及させるためのネットワークの構築を行っている。今後、2020年度末までに、森林総合監理士の登録数を2千人以上とすることを目標としており、平成30(2018)年3月末現在では、都道府県職員や国有林野事業の職員を中心とした1,169名が森林総合監理士として登録されている。市町村の森林・林業行政については、その体制がぜい弱である場合もあることから、森林総合監理士による支援や市町村が林業技術者を「地域林政アドバイザー」として雇用するなどの取組も推進している。また、都道府県と国有林の森林総合監理士の連携も進められている(事例 II -4)(*55)。

事例 II -4 県・国有林の森林総合監理士等による市町村林業行政に対する技術的支援の取組

大分県豊後大野(ぶんごおおの)市では、同市における森林・林業に関する地域課題を解決し、林業の成長産業化に貢献するため、同市の林業行政に対する技術的支援を行うことを目的として、平成28(2016)年3月に大分県・九州森林管理局大分森林管理署(大分県大分市)の森林総合監理士(フォレスター)等及び関係機関による「豊後大野市森林林業活性化推進チーム」が設置された。

平成28(2016)年度は、平成29(2017)年4月の「豊後大野市森林整備計画」の策定に向け、平成28(2016)年8月に稼働した木質バイオマス発電所の燃料供給体制の構築や今後増加が見込まれる主伐後の再造林による適確な更新の確保等の同市の抱える課題や、計画がひな形どおりで市の特性を踏まえた独自の計画となっていない、森林のゾーニングの根拠が不明瞭といった前期計画の反省点を踏まえ、地域のあるべき森林の姿、木材生産能力や、GISによるゾーニングの検討等を行った。その結果を基に、地域の森林・林業の目指すべき方向を明確化し、明確な根拠を持ったゾーニングを行うなどの改善を行った同市森林整備計画を策定した。

同チームは、2021年度までの6年間を取組期間として設定しており、平成29(2017)年度以降、同市森林整備計画の達成に向けた実行監理への支援(計画実行に伴う課題の抽出・検討、重点課題への対応や、同チームの取組についての評価・改善)等を継続して行い、最終年の2021年度には、次期同市森林整備計画の策定支援を行うこととしている。

リモートセンシングによる森林情報を用いて明確な根拠を持ったゾーニングを実施
リモートセンシングによる森林情報を用いて明確な根拠を持ったゾーニングを実施

(*55)「平成28年度森林及び林業の動向」59ページも参照。




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