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林野庁

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第1部 第 II 章 第1節 森林の適正な整備・保全の推進(2)

(2)森林の適正な整備・保全のための制度

(「森林・林業基本計画」で森林・林業施策の基本的な方向を明示)

森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるためには、森林を適正に整備し、保全することが重要であり、我が国では国、都道府県、市町村による森林計画制度の下で推進されている(資料 II -6)。

資料II-6 森林計画制度の体系

政府は「森林・林業基本法」に基づき(*4)、森林及び林業に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、「森林・林業基本計画」を策定し、おおむね5年ごとに見直すこととされている。直近では平成28(2016)年5月に変更が行われた。現行の基本計画は、本格的な利用期を迎えた森林資源を活かし、CLTや耐火部材等の開発・普及等による新たな木材需要の創出と、主伐と再造林対策の強化や面的なまとまりをもった森林経営の促進等による国産材の安定供給体制の構築を進め、林業・木材産業の成長産業化を図るとともに、これらの取組等を通じて、地方創生への寄与を図るほか、地球温暖化防止や生物多様性保全の取組を推進することとしている。

また、同計画では、森林の整備・保全や林業・木材産業等の事業活動等の指針とするため、「森林の有する多面的機能の発揮」と「林産物の供給及び利用」に関する目標を設定している。

「森林の有する多面的機能の発揮」の目標としては、5年後、10年後及び20年後の目標とする森林の状態を提示しており、傾斜や林地生産力といった自然条件や集落等からの距離といった社会的条件の良い森林については、育成単層林として整備を進めるとともに、急斜面の森林又は林地生産力の低い育成単層林等については、公益的機能の一層の発揮を図るため、自然条件等を踏まえつつ育成複層林への誘導を推進することとしている(資料 II -7)。「林産物の供給及び利用」の目標としては、10年後(2025年)における国産材と輸入材を合わせた木材の総需要量を7,900万m3と見通した上で、国産材の供給量及び利用量の目標を平成26(2014)年の実績の約1.7倍にあたる4,000万m3としている(資料 II -8)。


さらに、同計画は、森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策として、「森林の有する多面的機能の発揮に関する施策」、「林業の持続的かつ健全な発展に関する施策」、「林産物の供給及び利用の確保に関する施策」等を定めている。

そのほか、同計画に掲げられた課題の解決や政策の実施に法制面から対応するため、同計画の変更に合わせて、「森林法」、「分収林特別措置法」、「森林組合法」、「木材の安定供給の確保に関する特別措置法」及び「国立研究開発法人森林総合研究所法」の5法が改正された(*5)。


(*4)「森林・林業基本法」(昭和39年法律第161号)第11条

(*5)「森林法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第44号)



(「全国森林計画」・「森林整備保全事業計画」等により森林整備・保全の目標等を設定)

農林水産大臣は「森林法」に基づき、5年ごとに15年を一期として「全国森林計画」を策定し、全国の森林を対象として、森林の整備及び保全の目標、伐採立木材積、造林面積等の計画量、施業の基準等を示すこととされている(*6)。同計画は、「森林・林業基本計画」に即して策定され、都道府県知事が立てる「地域森林計画」等の指針となるものである。

平成25(2013)年10月に策定した「全国森林計画」(計画期間:平成26(2014)年度から2028年度まで)については、新たな「森林・林業基本計画」に即した計画となるよう、平成28(2016)年5月に変更された。

変更された「全国森林計画」は、林業の成長産業化の実現に向けて、森林資源の循環利用と原木の安定供給体制の構築を進めるため、森林の整備・保全に関する事項として、(ア)急速な少子高齢化や人口減少等の社会的情勢の変化を踏まえた効率的かつ効果的な森林の整備及び保全の実施、(イ)育成単層林として維持する森林における適確な更新の確保、(ウ)コンテナ苗の活用や伐採と造林の一貫作業システムの導入といった記述が追加された。また、新たな「森林・林業基本計画」の目標に即して、広域的な流域(44流域)ごとに定めている計画量等が見直された(資料 II -9)。


また、農林水産大臣は「森林法」に基づき、「全国森林計画」に掲げる森林の整備及び保全の目標の計画的かつ着実な達成に資するため、「全国森林計画」の作成と併せて、5年ごとに「森林整備保全事業計画*7」を策定することとされている(*8)。平成26(2014)年に策定された現行の計画(計画期間:平成26(2014)年度から平成30(2018)年度まで)では、4つの事業目標とその成果指標について、森林整備保全事業の成果をより分かりやすく国民に示す観点から、「森林資源の平準化の促進」が加えられ、利用可能な育成単層林について、適切な主伐・再造林や育成複層林への誘導を推進することにより、齢級構成の平準化と平均林齢の若返りを図ることとされている。

さらに、平成26(2014)年に策定された「林野庁インフラ長寿命化計画」により、森林の整備・保全を適切に進めるための基盤となる治山施設及び林道施設の維持管理・更新等を着実に推進することとされている。


(*6)「森林法」(昭和26年法律第249号)第4条

(*7)森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるよう施業方法を適切に選択し、多様な森林の整備を行う「森林整備事業」と国土の保全、水源の涵養等の森林の有する公益的機能の確保が特に必要な保安林等において治山施設の設置や機能の低下した森林の整備等を行う「治山事業」に関する計画。

(*8)「森林法」第4条



(「地域森林計画」・「市町村森林整備計画」等で地域に即した森林整備を計画)

都道府県知事と森林管理局長は「森林法」に基づき、全国158の森林計画区(流域)ごとに、「地域森林計画(*9)」と「国有林の地域別の森林計画(*10)」を立てることとされている。これらの計画では、「全国森林計画」に即しつつ、地域の特性を踏まえながら、森林の整備及び保全の目標並びに森林の区域(ゾーニング)及び伐採等の施業方法の考え方を提示している。

また、市町村長は「森林法」に基づき、「市町村森林整備計画」を立てることとされている(*11)。同計画は、地域に最も密着した地方公共団体である市町村が、地域の森林の整備等に関する長期の構想とその構想を実現するための森林の施業や保護に関する規範を森林所有者等に対して示した上で、「全国森林計画」と「地域森林計画」で示された森林の機能の考え方等を踏まえながら、各市町村が主体的に設定した森林の取扱いの違いに基づく区域(ゾーニング)や路網の計画を図示している。


(*9)「森林法」第5条

(*10)「森林法」第7条の2

(*11)「森林法」第10条の5



(「新たな森林管理システム」と森林計画制度)

新たな森林管理システムを構築した後も、これまで森林の保続培養や国土保全等を担ってきた森林法の役割は今後とも必要であり、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるための森林の適正な整備・保全は、森林計画制度の下で推進されていくこととなる(*12)。


(*12)新たな森林管理システムの構築については、第 I 章(25-36ページ)を参照




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